新潮社マンガの感想・レビュー505件<<12345>>SNS全盛時代のボーイミーツガールまんが道 #1巻応援推し殺す タカノンノstarstarstarstarstar_border兎来栄寿Xのタイムライン上で「いいね」「リポスト」の数が表示されなくなるというニュースが出てきて話題になっていました。蓋を開けてみればあくまでもタイムライン上での措置ということしたすが、個人的には「いいね」数や「リポスト」数という情報が本質を遠ざけているケースも多いのでまったく見えなくなってもそれはそれで良いのではないかと感じます。正確な情報や良識に配慮した投稿より、そうではないものの方がより拡散性は高いですし。 そんな折、このタカノンノさんの新作の『推し殺す』1巻が発売されました。 高校生にして「大森卓」というペンネームで漫画家デビューしたもののネット上での酷評を受けマンガを描くことができなくなってしまった主人公・小松悠が、大森卓作品のファンすぎて「殺す」と意気込んでマンガを描いている女性・三秋縁(みあきゆかり)と大学で出逢う物語です。 明らかに大森卓に影響を受けすぎており、またさまざまな点でこなれていない縁のマンガに対してつい的確なアドバイスをしてしまったことで縁から自分の編集者になって欲しいと懇願され、ふたりの奇妙な関係が始まっていきます。 悠が本当は相手から巨大な感情を抱かれる大森卓その人であるという秘密。それを隠したまま進行するところにストーリーとして引きがあり、また才能を持ちながら描けなくなってしまった主人公と、まだ原石ながら努力する才能はずば抜けており性格的には拗らせていてかわいい縁の主軸となるふたりのキャラクターと関係性もとても良く、どちらにも共感しながら読み進めました。タカノンノさんの描くこういう女の子は本当に良いです。 この作品には縁がSNSアカウントを作ってそこでマンガをアップロードし多くの人に見てもらおうとするエピソードがあります。その際、9万人以上のフォロワーを持ち在学中にプロデビューを果たしているminaruこと先輩の石黒成美に対して勝負を挑んでいくことになります。 ここが現代的で面白くもあり、SNSの功罪がよく表れていて考えさせられる部分でもあります。 良い面は、もちろん多くの人に見てもらえることです。一昔前、たとえば『バクマン。』などの時代はまず編集者に見初められて雑誌に載らなければ、たくさんの人にマンガを読んでもらうこともデビューすることもできませんでした。しかし、今はSNSでバズれば編集の方から声がかかることもありますし、何なら出版社を通さずとも個人で出版したりサブスク形式で配信したりといった手段もあります。作中でminaruが今は編集なんか要らない自己プロデュースの時代と言い放ちますが、そういう面も存在することは否定できません。純粋な作品を創る力とは別に、それを効果的に届けるための力もまた大事な時代です。 一方で悪い部分はといえば、SNSでの評価はあくまで指標にすぎないにも関わらずそれが目的化してしまいがちであること。また、それによって心を乱されることです。「いいね」「リポスト」「フォロワー数」などにこだわり過ぎると、やがてしんどくなる時が来ます。なぜなら最初は1つの「いいね」でも嬉しかったはずなのに、やがて「100いいねしか来なくてあまり伸びなかった」という風に感じられてしまうからです。何なら万バズが日常化していれば1000いいねでも少なく感じる人もいるでしょう。本来は1000人に良いと思ってもらえるなんて途轍もないことなのですが。 そもそも、まったく同じものを投稿したとしてもタイミングや運によってどれだけ拡散されるかは全然変わります。バズったから良い作品、バズらなかったから悪い作品、そんなはずはないのですが潜在的にはそう捉えてしまいがちです。良いマンガがまったくバズらなかったり、それが後日に驚くほどバズっていたりする光景は何度も見てきました。 それでも、やはり多くの人に見てもらっているというのが数字で実感としてわかるのは作り手側として見れば嬉しい部分も大きいことでしょう。人間、承認欲求にはなかなか抗えません。そして、編集部側などでも数字が出ているということは上を説得する材料として非常に強力です。故にそこに頼ってしまいがちです。 ただ、バズりやすさだけを求めると作品が類型化していきます。ちょうど先日『ビッグコミックオリジナル』の編集長がこのように仰っていました。「編集者は流行に乗っかるのが仕事ではなく流行を作り出すのが醍醐味である」と。研ぎ澄まされた作家性の原液を浴びるようなその人にしか描けない味がする作品を、自分の好きな気持ちや負の感情を煮詰めたものを読ませて欲しいと、贅沢な一読者としては常に願っています。 だからこそ、縁がわかりやすくバズるための手法を安易に使わず正統派なマンガを描いて勝負していこうとする姿勢を見せたとき、私は心の中で拍手喝采でした。 縁たちのまんが道はこの先どうなっていくのか。 悠が再びペンを握れる日はくるのか。 楽しみに見届けていきたいです。比べるもんじゃないお隣さんは理想の夫婦 アン・ミツコstarstarstarstarstar_border野愛タワマンに住んでヨガ講師やって素敵な旦那様と仲良く暮らす勝ち組主人公。 お洒落で優雅な暮らしをSNSで発信して、誰もが羨む幸せな日々を送っていたはずだったのに……。 いや、送っていればよかったんだよ…!! お隣さんが自分より美人で旦那もイケメンでたぶんフォロワー数も多いあの人だったというだけ。でも羨ましくなってしまって、自分の持ち物が途端にチープに見えてしまう気持ちもわからなくはない。 わからなくはないけれど、主人公の執着心には引いてしまう。幸せならいいじゃない。 結局誰も不幸にはなってないけれど「うわぁ…」みたいな気持ちにはなった。 誰かと比べたってしょうがない、自分が選んだ人や物に誇りと感謝を持てる人間でありたいなと思った。被害者面してすするラーメンはうまいか?あいにくあんたのためじゃない 柚木麻子 もりとおるstarstarstarstarstar野愛※ネタバレを含むクチコミです。ネタバレ有りで感想を書いてみた!ツユクサナツコの一生 益田ミリstarstarstarstarstar_borderかしこ※ネタバレを含むクチコミです。厳選!読んでほしいこのマンガ平和の国の島崎へ著者:瀬下猛濱田轟天5巻まで刊行作品情報はこちらしっとりと混ざり合う日常非日常#真相をお話しします 結城真一郎 もりとおるstarstarstarstarstar_border野愛視聴者に語りかけるように進んでいくミステリー。日常にあり得るシチュエーションで淡々と展開していくのが動画配信を見ているようで、目が離せなくなります。 こちらとしては語り手である主人公の言葉を信じて読むしかないのだけれど、なんとなく胡散臭いような、演技がかってるような、隠し事をしているような……手放しに信用できない感じも配信者っぽくてよくできてるなあと感心しました。 わかりやすいどんでん返しや大見得切って犯人追い詰める演出はないけれど、しっとりじわじわ日常非日常が混ざり合う感覚が面白い作品です。オムニバス形式なのも読みやすい。漫画家マンガでもあるしツユクサナツコの一生 益田ミリstarstarstarstarstar_borderかしこ手塚治虫文化賞ノミネートをきっかけに読みました。ドーナツ屋のアルバイトをしながらタウン誌やInstagramに漫画を描いているツユクサナツコが主人公です。日常に漫画のネタがあってご飯の後や寝る前にそれを作品として落とし込むまでのナツコの一日が一話になっています。年齢的には32歳でまだ若いのですが母親を亡くしたばかりだったりコロナ禍の話でもあるので、漫画家マンガでありながらテーマは死生観です。読んでみないと分からない深みがありました。もしかしたら東京ヒゴロの塩澤さんがInstagramで見つけた漫画家に原稿を依頼するとしたらこんな人かもしれません。からまわり妄想が面白い妄想先生 ゆずチリ六文銭英語教師・色咲桃子は、男子生徒ならいつでもエロいことを考えていると思っているほど偏った思考の持ち主で、生徒のちょっとした言動で妄想を広げる(大体シモ)癖がある。 しかし、生徒は別に何とも思っていない、そのギャップの滑稽さを狙った作品。 1人で妄想、というか終いには暴走している色咲先生が、おバカ可愛くてずっと読めてしまう。 クラスメイトも、天然の妄想屋や純情なギャル、ハーフの女子高生など続々登場してきて層も厚く、この絡みも合わさると何重にも妄想が広がって面白い。 エロコメ的なノリが好きな人にはおすすめできる作品です。 最果てから、徒歩5分最果てから、徒歩5分 糸井のぞstarstarstarstar_borderstar_border寸々膳さんや伊吹くんの過去等、色々描き切れていないことがあって残念…。 が、ギルダの3人が「夕雨子さん」に願望を押しつけていたのと同じように、百合子さんも夕雨子さんに「自分を殺してくれる」という期待を押しつけていたことに気付くラストが良かった。 自分の居場所を選び、誰と過ごすかを選び、生と死に向き合っていくお話を経て、最終的に主人公たち4人は衝動的に身体が動いた方で生きていくことを決める最終話。「最果てから徒歩6分」という副題もイカす。跡地はどうなったんだろう大家さんと僕 矢部太郎starstarstarstarstar_borderゆゆゆ新宿のはずれにある、もと二世帯住宅に引っ越した矢部さん。 引っ越しの原因は、集合住宅ではありえないような企画をテレビ番組で行ったこと。 新たな自宅は完全分離型の元二世帯住宅で、一階には過干渉気味の大家さんが住んでいた。 最初は帰宅後のコールなどに戸惑うものの、徐々に大家さんと半同居しているような生活にも慣れていく。 大家さんは矢部さんの中でのイメージなので、本人からもチャームポイントの目が描かれてないと言われるなど、実際とは異なるのだけど、それでも眼鏡のほんわかとしたおばあちゃん像からはとても優しそうな雰囲気が伝わってくる。 この大家さん、明らかにお嬢様として育った方で、さらにはずれとはいえ新宿に住まう、高齢かつ独り身の女性。 パンピーとは住む世界が違う。挨拶が「ごきげんよう」だ。女学校だ。 なぜ二階を貸したのかは作中でオイオイ語られているが、不動産屋も「この人なら大丈夫だろう」と思ったのかもしれない。 大家さんは記憶がしばし戦前や若い頃へいったり、昔からあるもの以外は目に入っていなかったり。 でもタクシーでいつもの伊勢丹へ行けばいつも通りお買い物をする生活ができているとのこと。 読んでいて、これは田舎で素敵なボケ方をしていると話題に上がるお年寄りの、都会版かもしれないと思った。 認知症医療の第一人者の先生も「年を取れば人はみなボケる」と言われているので、年を取ってボケ始めても、慣れ親しんだ場所でいつもと変わらぬ生活を続けられるのは羨ましいなと思う。 番組だとなぜかオドオドしている人の良さそうな芸人さんだなと思っていたが、出版された本も悪意が削ぎ落とされたような内容で、こういう人柄の方なのかなと思った。 しかし、さすが新宿伊勢丹。すごいな。「記憶消してもっかい読みて〜!」が叶ったら…?記憶を消して読みたい漫画 タカノンノ名無しおもしろい!!! 最初はやっぱり「あったらいいな」と思うんですが、読んでくうちにゾッとするような展開に…!!でもラストはとてもエモい!!! 読んだ記憶を消すって、たしかにそういうことだよな…是非とも連載化してほしいです…! #読切応援怪異の介護 コイケナツキ名無し「終わりって、1話終わりって意味だよね…?」と思ってしまうぐらい(見る人が見れば)完成度が高い読切です(断言)。連載化したら、怪異の数だけエピソードが多くなると確信しています!エロスとタナトスの狭間蛍火艶夜 amasestarstarstarstarstar天沢聖司※ネタバレを含むクチコミです。認知症との向き合い方 #読切応援怪異の介護 コイケナツキ名無し※ネタバレを含むクチコミです。関係、感情、死を描き切っている蛍火艶夜 amase名無し特攻隊員の同性愛を描いたものではあるが…なんかもうシチュエーションだけで何とも言えない 特攻するから当然死ぬわけだし、生きて戻れないのもわかってる。 男性しかいないし逃げ出したら非国民としてそれこそ祖国の恥。 特攻隊員の逢瀬ってなきにしもあったんじゃないかなーと思いますねてん。 人間死に直面すると制欲が増す→男性しかいない→どうにもできない感情をそこで吐き出す ありそう… このスカーフを交換するやつとか切ない どの登場人物も切ない 作者の性癖、これが描きたいってのが直で出ててほんと好きです。かわいい姫乃ちゃんに恋はまだ早い ゆずチリstarstarstarstarstar山下真司子供らしさが全面に出ててほっこりする。 ピヨちゃん読んでるみたいなもん。これはどうみても、おひとりさまだからできるゴージャスホテルライフおひとりさまホテル マキヒロチ まろ まろ まろstarstarstarstarstar_borderゆゆゆそう、高級ホテルも一人なら、がんばれば手が届きそうな値段のときがあるんだよね。 若い頃、泊まってみたい!と予約サイトをウキウキ眺めていた時期がある。 遠すぎて泊まれない、せっかく上京しても仕事が忙しくて深夜にたどり着いて寝て起きるだけになってしまうから、泊まるのがもったいない。 そんなことを考えて実行しなかったら、泊まる機会もなくなってしまった。 本作に登場するのは、ホテルを仕事にするほど好きで、一人でどんどん泊まっていく人たち。 そして、ホテルに泊まっては用意された空間を我が家のように満喫して過ごす。すごい。 私は旅先だと時間がもったいなくて、そんな贅沢な真似ができない。一泊二泊と言わず、もっとゆとりのある旅を選べたら、ゆっくりと過ごせるんだろうか。 登場人物たちが、満たされているようで、足りない感じがあるのは『おひとりさま』の演出だからかと思いきや、恋人がいる人の悩みも描かれていて、生きていたら悩みはあるよねと腑に落ちた。 悩みや不満は尽きないから、好きなことで薄めたい。「かわいそう」は誰が決めたかわいそうな私たち 乃田ユウキstarstarstarstarstar_bordernyaeメッセージ性がハッキリしていてよかったです。 他人が、自分が持ってないものを持っているのを羨んで勝手に相手が自分より幸せだろうと決めつけることは、相手にとって残酷だったり失礼だったりする。実際、美しい容姿を持っているのは恵まれていることだと言っていいと思う。ただ、恵まれているからと言ってその人が自分の理想としている人間関係や人生を持っているかと言ったらそれは本人にしかわからない。絶妙におバカ宇宙戦艦ティラミス 宮川サトシ 伊藤亰starstarstarstarstar_border山下真司表紙もパッと見ちゃんとしてそうだけどおかしい。 絵のタッチとギャグのバランスが絶妙でめっちゃ笑える。クレしんのかほりのする狸化け! へだてなく 夜なのに朝日名無しめっっっちゃ好き。最初のおっちゃんの「改行気持ち悪いなあ」でもう笑った、ほんとそう。 妙に調子がよくて小賢しいけどそれより愛らしさが上回る男の子・くぬぎがきゃわいい。 今まで名詞のあとに事変って付ければ何でもお洒落でかっこよくなると思ってたけどたぬきは例外だった。平成たぬき事変はまぬけな可愛さがある。 多摩ニュータウンの狸の話も、京都の狸の話も好きだけど、浅草の狸ってのもいいですね。たぬきはいいものだ。 私もロイホのハンバーグ食べたい。ほのぼのダークメルヘン天国に近いバイト horieri名無し※ネタバレを含むクチコミです。読むだけでツラい世界で一番君が嫌い 佐藤夏starstarstarstarstar_border山下真司この手の考えさせる社会派漫画は読むだけでキツいから苦手。幼なじみはつくれる今日から始める幼なじみ 帯屋ミドリ六文銭「私の幼なじみになってください」 と、愛の告白のごとく関係がはじまる、主人公・相田航平と転校生・柚木楓の2人。 席も隣、家も隣というおまけつき。 この距離は、もうよくある幼なじみフラグでしかないので、あくまで「幼なじみ」として関係を深めていきます。 朝起こしにいくとか、部屋の窓ごしに会話するとか。 だけど、朝起こしにいこうとするも航平の親御さんが気になるのでいけなかったり、また意外と家と家の間が微妙に離れていて思ってたのと違うことに戸惑い、失敗することも多々。 だけど、この「幼なじみとしてのテンプレ」をこなそうと頑張る2人がとにかく可愛くて・・・良いラブコメです。 幼なじみなら、間接キスも余裕だろとジュースを交換し飲もうとするも、2人して口をつけないで飲む様に自分はやられました(添付画像参照) 『からかい上手の高木さん』が完結してロスってましたが、本作で補充されている気分なので、高木さんが好きな人はハマると思います。(萌えポイントと関係性は違いますが) 世界で一番君が嫌い世界で一番君が嫌い 佐藤夏starstarstar_borderstar_borderstar_border寸々う〜ん、キャラクターが話を進めるためのセリフを強要されている感じがする…。 「謝られるとさ 許さない方が心狭い感じするよね」「でもね 同時に嫌うのって疲れちゃうんだなぁって思った」「うちのお母さんはね世の中に引け目があるの」「日常の小さな失敗から少しずつ自信を失って どんどん生活範囲も世界も狭めていくの」 小学生からこんなセリフ(に至る思考)が出るか…?せめて高校生くらいが主人公の方が説得力があった。『推しの肌が荒れた』感想推しの肌が荒れた ~もぐこん作品集~ もぐこん名無し※ネタバレを含むクチコミです。<<12345>>