愛蔵版 国民クイズ
2001年刊の新装版との【違い】について
愛蔵版 国民クイズ 加藤伸吉 杉元伶一
名無し
内容についてはもういろんな人が評しているのでここでは純粋な【書誌】的な部分について書いていきたい。 良い点としては、加藤伸吉のド迫力の絵を鑑賞するにはもってこいの【B5版サイズ】での復刊でモーニング連載時の【カラーページ】もそのまま再現されている。一コマ一コマ、この凄まじい描き込みぶりを見ているだけでも目が楽しい。 ただ、なにぶんデカいので紙媒体での読みやすさは新装版(2001)に軍配がくだるだろうか❓ 豪華版は紙のみならず、今回やや安価なkindle版も出ているので、そちらで堪能するのもアリかなと。 残念だった点としては2001年に復刊した際の作画の加藤伸吉の巻末オマケ漫画は今回【未収録】だという事。 豪華版とあって【新規描きおろし】等もちょっと期待していたところだがそれもない。かなり昔の作品で、近年の加藤先生の絵柄とは浮いてしまう面も生じるだろうし、これは致し方ないかもしれない。 良い点2としては、原作者の杉元伶一の【新規あとがき】だろうか。 本編で没になったCM案など、当時の裏話を色々と書いていて結構面白い。 小説化する構想もあったのは今回初めて知ったーー加藤先生の絵が強烈すぎて文章にしても微妙かな?との判断らしい。そこは挿絵付きでやってほしかった! 今回の復刊を奇縁に、また何か二人で新作を描いたりせえへんかな・・とちょっと期待しています.....👍
誰も懲りない
「世代を越えて引き継がれてしまう負の連鎖」を描いた機能不全家族漫画
誰も懲りない 中村珍
名無し
「家族」によって押し込まれ、ねじ込まれ、見放され、将来の蓋を閉められたある女の物語。 「ギリギリの正気と生命を保っているだけでも心の底から凄い」と思ってしまう程の極限とも言える理不尽な精神・身体への暴言・暴力(精神的虐待・身体的虐待・性的虐待)を「家族(および近親者だった人)」から受けている女性の主人公が、親族同様に自分勝手に生きようとせず、理性・常識性をギリギリに保ちつつも狂いきってしまわないどころか、そこかしこに自分を責めてしまうほど脆い心を持つ上、家族がクズになり下がるほど歪んでいようとも、家族との縁を切りきっていないところは読んでいて苦しかったです。 主人公が抱える怒りは、途中までは各々が努力して上手く機能していた家族が有る出来事を発端に崩壊した事に依るものです。 主人公が抱える「家庭崩壊のトラウマ」や「信じて居た者からの裏切りと置き去り」によって湧いた怒りは、幼少時~少女時代に家族から与えられていた「一家の誇り」と「幸福」の記憶が残っているだけに性質が悪く、その感情がコントロール出来なくなった時に、主人公自身もまた暴言・暴力を弱き立場になった者へと振るう…あれほど忌み嫌っていたにも関わらず。 モノクロ(ほとんど白い背景)で構成されたシンプルな作画である一方、チクチクする感覚と、ガンガンと殴られる感覚が半端ないです。 かきおろしパートでの主人公の言葉は何度読み返しても「経験した人にしか口に出来ない言葉なのだろう」「現代の悲惨な精神構造がここにある」と感じてしまいます。 ニーチェが指摘した「奇妙な自己虐待の本能」、あるいはフーコーが言った「生-権力による自己監視システム」の苦しみが、本作ではこれでもかとばかりに描かれている…そんな漫画作品です。 重すぎる上に辛すぎる機能不全家族漫画ですが、私は思うところがあってたまに読み返しています。