太田出版マンガの感想・レビュー169件<<34567>>世界一エロティックな漫画その男、甘党につき えすとえむ野愛飯漫画における料理の力は相当強い。道を間違えた人が生き方を改めたり、仲違いした夫婦や友達が絆を取り戻したりというのが日常茶飯事だ。 そこまでの力を日常生活で実感することはなくとも、香りや味で記憶が蘇ることは割とあるんじゃないかと思う。いわゆるプルースト効果ってやつ。 もしかして、味覚や香りが経験したこともないような甘美な記憶を生み出すこともある? 少なくともこの作品を読めば、味わったこともないような官能的なショコラの味を呼び起こすことができます。 ショコラを食べたあとに挟まるエロティックな描写も実際の出来事ではなく味の比喩として描かれているんだろうな、と思っている。 ジャン=ルイがそこにいれば、ヌテラのクレープも板チョコも至極のショコラに変わるのかも…? 結局のところ、ショコラそのものよりもジャン=ルイが纏うショコラの香りに惹かれてしまったんだろうな…。 祝! 映画化。原作漫画「ファンシー」収録の一冊学校 山本直樹名無し「ファンシー」が実写映画化と聞いたので記念カキコ。ひとまず予告は面白そうでいい http://fancy-movie.com/アラフォーあるあるあした死ぬには、 雁須磨子さいろくなのだろう、たぶん。 30代からあるらしいと書いてあって恐ろしいが…更年期障害?を言い訳に自分がどんどん弱っていく様が自覚できているわけで、エリートまで行かないにしてもすごくしっかり頑張っていて「出来るオフィスワーカー」であるのにコレは辛い。というか怖い。 このマンガはどう締め括るのだろうか、ハッピーな悟りを開いてくれると読み手も救われるのだけど… 割とヘビーな内容で全く他人事に思えないんですよね…おもしろいよ青い花 志村貴子大奥ふみちゃんとあーちゃんがかわいいです。志村貴子さんの絵は本当にきれいで、表紙の水彩塗りに引きつけられます。アナログだからこそ出せる空気…。主人公2人以外のキャラクターもとても魅力的です。 出来れば愛も欲しいけれども愛がなくても喰ってゆけます。 よしながふみ名無しグルメ漫画や食レポエッセイ漫画が好きで、 面白いと聞いたものは読まずにはいられなくなる。 けれど「愛がなくても喰ってゆけます。」は 存在を知ってもなかなか手をださなかった。 題名から、自分の好みのタイプの漫画では なさそうだと思ったから。 非モテ系の主人公がフラレ捲りながら 「食いものがうまけりゃいいのよ」 とヤケ喰いし捲る漫画なのかな~と。 自分がどちらかというとそういう系では あるだけに、身につまされそうな気分に なりそうな危険を感じたので。 実際の内容は、あながち外れてもいなかったが、 どちらかというと 「愛は欲しいがなるようにしかならんし」 みたいな感じだった。 友人知人関係にも恵まれているし、美味しい店に 一緒に行く仲間達もいる。 料理や会話を楽しく味わいながら想いを共有する。 だからといって恋が始まり成就するとは限らんのよね、 という感じの漫画だった。 もっとも全15話が全て、主人公・YながFみさんの 婚活的な話ではなく、単に友達と楽しく食事を するのが目的でお店に行く話とか、 他人の世話をやいたりコミュニケーション目的での 飲み食い話もある。 だが、そのほとんどで目的地には到達できなかったりする。 着地点がズレたりしてしまう。 どうもYながFみさんは、 恋愛成就とか他の目的の解決のための手段として 美味しいものを食べに行くのだが、 美味しいものを食べることに注力してしまって 本来の目的を忘れがち、あきらめがち(笑)。 なんかそういう 「人生ってままならないよねえ」 「でもまあ皆で美味しく楽しく食事が出来たし」 「まあ食べ物を美味しく味わえるうちはいいよね」 みたいな感じというか。 その感じがとても面白かった。 グルメ漫画や食レポ漫画、 とくに料理対決漫画なんかだと 「美味さが全てを解決」 みたいな話が多いから、 そういうグルメ漫画に食傷気味なときに読めば 心がホッと癒される?漫画だよな、と思った。 永遠に読んでいられる絵本のような作品8月のソーダ水 コマツシンヤぺそAmazonで偶然見かけてジャケ買いした作品だったのですが、表紙通り可愛らしい素敵な作品でした…!まさかフルカラーだとは読むまで知りませんでした。 http://webcomic.ohtabooks.com/soda-water/ 海辺の街に住む住む女の子・リサは、海岸で拾ったガラスのバイオリンを弾いたり、友達のもな子ちゃんと灯台に遊びに行ったり毎日楽しく過ごしています。そしてリサの周りではいつも、パラソルで旅をする少年が訪れたり、灯台が歩き出したと…不思議な出来事が起こるんです。 エーゲ海の白い街のような美しい町並みと、優しくて幻想的で不思議なお話。ページを隅から隅まで舐めるようにして何度も読みたいし、永遠に読んでいられます。 電子で購入しましたが紙でも書い直したいくらいほど良かったです…! 藤子・F・不二雄、星新一、九井諒子の描くSF(すこしふしぎ)なお話が好きな人は絶対気に入る作品です。優しくて綺麗なものが見たくなったときに、「8月のソーダ水」おすすめです…! https://i.imgur.com/HX5IFmx.jpg菌類の惑星で恋の冒険!きのこ人間の結婚 村山慶あうしぃ@カワイイマンガ菌類が独自の進化を遂げ、支配する惑星。知性の発達したきのこの「人間」は、基本単為生殖だが、時々交接による生殖をするつがいが現れる。 牧人族のアリアラと書記族のエリエラは、身分を越えた恋をして、結婚する。しかし、交接の相性や、エリエラへの王族の横恋慕などの問題から、牧人の里と王宮は混乱する。二人の行く末は……? ……というこの物語の世界は、かなり特殊だ。 惑星を支配する、きのこや黴といった「菌類」は、植物を醸しながら大地を覆い、その上できのこから進化した「人間」たちが生活している。 彼らの姿は私達「動物の」人間と酷似しているが、胸部をきのこの「つば」が覆い、下半身は「傘」がスカートの様に広がる。(必然的に?)乳房がある造形のきのこ人間たちは、雌雄の別があるようでいて、みんな女性的である。 恋人たちは「百合」の様相を呈しながら、あくまでも交接があり、さらに多数の者は単為生殖の為、恋心ゆえの行動が理解できないという、不思議なジェンダー観。 そのような中で、愛情を育んでしまったアリアラとエリエラ。彼女達が冒険の果てに辿り着く場所に思いを巡らせながら、まるで『風の谷のナウシカ』の「腐海」のような世界が、百科事典まで付けて詳細に描写されるのを、じっくりと堪能したい。 ----- こちらから試し読みページに飛べます。 http://webcomic.ohtabooks.com/kinoko/ みることと、みられることとあなたのアソコを見せてください いがらしみきお影絵が趣味2010年代という時代にひと区切りがついて、2020年代という新しい時代がはじまりましたが、この新時代を迎えるにあたって、ひとつ思ったことがあります。「2020年代は、なにかをつくるひとよりも、なにかをきちんとみることのできるひとを培っていかないと、そろそろまずいのではないかという気がしている」ということです。 技術が発達して、ものづくりへの敷居が下がって(発信することもふくめ)、ひと昔まえよりもかんたんにみてもらえるようになりました。それじたいは悪いことではないと思います。ただし、それと並行して、この供給過多の状態が、みることの株を暴落させてはいないかと不安に思うのです。 つくることは、まあ、こういってしまえば(程度に差はあるにせよ)誰にでもできます。つくって、はい、できました、とすれば、あとは声をデカくしてみてもらえばいいだけの話です。それに比べると、みるというのは、けっして誰にでもできることではないと思います。しかも、技術が発達して、ものづくりへの敷居が下がっても、みることの困難さというのは依然としてまったく変わっていないと思うのです。 そんなことを思っていた矢先の、2010年代最後の年の瀬に「あなたのアソコを見せてください」なんていう、ただひたすらみることに焦点を当てたマンガが、しかも、いがらしみきおの手で描かれていたのには驚いたと同時に嬉しかったですね。なにしろ、ファンなので。このマンガ的にいうなれば、欲情の対象とでもいえましょうか。まあ、いがらしみきおさんとセックスはしたくないですけども。 欲情には少なくとも2種類あると思います。ひとつは生殖、すなわちセックスに結びつく欲情。もうひとつは純粋に対象を羨望するほうの欲情。いがらしみきおさんとセックスはしたくないけれど羨望の的とというのは、おそらく後者になると思います。火とアソコが結びついてしまったミコちゃんは、どちらかといえば前者。ロリくんは彼の言うことを信じるなら、後者ということになると思います。それでは、本当に惚れた相手とはセックスできなくなってしまうピンさんはどうなのか。ピンさんの女性の衣服にまつわるほうは前者かもしれませんが、セックスできなくなってしまう場合はどうなんでしょう。いがらしみきおとセックスはしたくない、とかいうのではなく、したい欲情はあるのに、できなくなってしまうんです。 まあ、とにかく欲情には色々な種類があるかと思います。でも、どの欲情にもひとつだけ共通して言えることがある。それは、欲情には本来的に、欲情される相手がいないということです。欲情それ自体はあくまでもこちらの側だけで起こっていることで、欲情される相手がいる場合というのは、単に欲情するというのを超えて相手に働きかけているんです(A:わたしはあなたを欲しています。B:それは嬉しいです。)。なので、欲情というのはきわめて個人的な営みなんですね。孤独な営みといってもいいかもしれません。 そうなんです。このマンガの登場人物はみんな孤独に欲情を実践している。なにしろ、彼らにおけるそれらは、誰かにみられて褒められるどころか、おぞましいと蔑まれる行為ばかりです。何の見返りもありはしない。それは自分"だけ"のもので、誰かが代わりにその渇望を満たしてくれるなんてことはありえないんです。 2020年代、ひとはますますみられることに慣れ、みられることに満足を憶えることになるでしょう。でも、それって、当たり前のことですが、みてくれるひとがいないとはじまりません。まあ、仮にみてくれるひとがいたとして、はたしてそれで本当に満足できるのか。おそらく、きっと、本当の意味でみられないことには満足しないと思うんです。じゃあ、本当の意味でみてくれるひと、欲情してくれるひと、羨望してくれるひととはいったいどういうひとなのか。あるいは、どうして本当に好きな相手とはセックスができないのか。そして、必ずしもお互いのことを見合っていないふたり(実にすれちがったセックスでしたね)が最後に笑い合えたのはどうしてなのか。そろそろ何か答えのようなものがみえてきそうではありませんか。おばさんは、頑張っているのだ!あした死ぬには、 雁須磨子名無し『最近、更年期なんだよね~。』『またまたぁ~。まだまだ若いじゃないですかぁ~』と言って笑い合う。 以前よりは、更年期障害を理解してくれる人は多くなってきたが、人によって全く症状が違うので一概にどうすればいいかといった対処法が無いのが難しいところ。 終りが見えない戦いに、折り合いをつけながらどうにか生活をしている。 それを、漫画で表現してくれる時代になって私は嬉しい!! いろんなものを受け止めながらおばさんは、頑張っているのだ! 因みに、おじさんの更年期障害もあるらしい。死ぬまで恋は必要だ、男も女もGENTE オノ・ナツメさいろくとはルチアーノの言葉。ルチアーノのとは表紙の一番←の青いキャラ。 オノ・ナツメ作品を読み返しながらクチコミ書いていこうと思ったけどGENTEはその中でも少し異色。 連載誌のカラーが出ていると言えばなるほどという感じではあるんだけど。 簡単に言うと老眼鏡の初老のカッコいいオッサンを好む妻のため、新しいリストランテのオーナーであるロレンツォはスタッフを老眼鏡のベテランだらけにしてしまう。 いわゆる"枯れ専"のための作品なのだけどこれがまた素晴らしい。勝手に彼らの背景をいっぱい想像しながら妄想しつつ読んでいくと最高の作品と思えてくる。 GENTEはそんな枯れ専や腐女子にもオススメ。 奇才いがらしみきおの描く「遊動民」誰でもないところからの眺め いがらしみきおさいろくSinkやI(アイ)が好きな人は好きなんじゃないかな 羊の木も面白かったけど不気味でしかたなかった、なのに読みたくなる中毒性みたいなものが強い作家だと思います。 遊動民っていう言葉はあとがきで先生が直接書いてた話からだけど、読んでるときはしばらく意味がわからなかったけど読み終わって「なるほど?」というぐらいには納得感が得られました。 でもほんとシュール…というかなんだろう?不気味さもそうだけど今作は「なんで」っていうのがわからなかったなーはじめて読んだ小田扉作品だったそっと好かれる 小田扉starstarstarstarstarウマタロ最初に表紙を見た時は、買うのを躊躇するレベルだった。 「そっと好かれる」というタイトルがまずよく分からなかったし、 「ヤリーー」という謎のフレーズが余計に怪しくて、結局買ってしまった。 で、どんなもんかと読んでみたら大爆笑するほどじゃないんだけど、 独特の笑いに満ちあふれていて、最初から最後までずっとニヤケた顔が続いてしまうような短編集だった。シュールとも違う、脱力気味の笑いというか。 とぼけたセリフとカット、キャラクターの表情の変化等、どこをとっても味がある。パロディネタも良い。例えば、「サイボーグ大作戦」では、メンバーが「01」から「06」で、お互いの必殺技を打ち明けるシーンとかね。短編集『男ロワイヤル』にも収録されている、野木さん&古野さんコンビが登場する作品も味わい深くて好き。こういう話を読みたい時があるロマンス タムくんのラブストーリー ウィスット・ポンニミットhysyskシリアスな大人の恋愛でもなく、ちょっとエロいラブコメでもなく、ファンタジックでロマンチックな恋愛。人間が有史以来営んできて、これからも続いていくような…。いい歳こいたおっさんが声を大にしてこれを好きだというのは気恥ずかしさがあるが、表題作の『ロマンス』がとても良くて、心が洗われる。描き下ろしの『ラブ・エレベーター』もめっちゃわかるな〜という感じで、失恋したり歳を重ねたりすることも悪くないと思える小品が詰まっている。 タムくんの作品解説も面白くて、タイのバスのルール(座る人が立ってる人の荷物を持ってあげる)は素敵だなと思った。 アニメ映画化するので読み返そうどうにかなる日々 志村貴子名無しどどどどの話が映画になるんだろう… どちらにしろ読み返そう。 https://twitter.com/dounika_anime/status/1197077496295911431テーマはトラウマだけどギャグ短編集王様ランチ 三宅乱丈名無し※ネタバレを含むクチコミです。ユーレイ窓がとにかく怖い三宅乱丈作品集 ユーレイ窓 三宅乱丈nyaeこれ読んだのは結構前なんですが、表題作の「ユーレイ窓」がとにかく怖かったという記憶があります。それ以外の話がどんなだったか思い出せないほど。読み返せば良いんですが、ユーレイ窓が怖すぎてなんか読めない。 短編集ですが全部がホラーというわけではないです。ただこれだけは伝えておきたい。 ユーレイ窓はとにかく怖い。 サガノヘルマーは、今、どこにいるのだろう。わんぱくTRIPPER サガノヘルマー(とりあえず)名無し…って、別にググればいくらでも現在のサガノヘルマー情報は出てくるのですがね。 しかし、どんなにググって「知識」を得ても、この奇才の掲載当時の衝撃度は、知らない人にはたぶん推測することもできないのです。 かつてヤンマガ本誌で、つまり、日本中のコンビニで誰でもごくごく手軽に買える媒体で、常軌を逸したエロとグロをまき散らしまくっていた異形の奇才が、今はほぼ忘れられてしまっているのに茫然とする。 このマンバでも、作品一覧に『BLACK BRAIN』がないのだから。ヤンマガで連載して単行本10巻とか出していたのに…。 まあ、それもしょうがないのか。 ヒドい(=凄い)漫画家だもんなあ。 今じゃあ絶対、一般誌に載せられないよなあ。ホントにヒドい(=凄い)もんなあ。 『わんぱくTRIPPER』は、サガノヘルマーのデビュー作です。 さすがにデビュー作だけあって、その資質が全開です。作者も編集部も、ほぼコントロールできてないです。ヒドい(=凄い)です。個人的には、ブラブレや後年の成年誌発表作より、イっちゃってると思います。 素晴らしいです。 駕籠真太郎とかがお好きなかたは、ぜひ。 これが、日本中で若者が読んでいた雑誌に載っていた時代があったんだなあ。 「僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない」 ポール・ニザン まあ、少なくとも毎週サガノヘルマーを読んでたのが二十歳頃だったら、そりゃあ美しくはないよなあ。ヒドい(=凄い)よなあ。夏の漫画BLUE 山本直樹大トロ山本直樹の漫画で一番好きです! セックスのことが描かれているけれどいやらしくないです。泣いちゃいます。薄幸の少女、初子の報われない青春。赤い文化住宅の初子 松田洋子nyae親がおらず貧乏で高校進学もできない環境に置かれながらも懸命に生きる初子。 幼い頃に父親が借金を残して蒸発、母親も他界。兄とふたり暮らし。兄も、妹想いではあるが貧しさに心が荒んでいる。 初子にとっての心の支えは兄ともうひとり、クラスメイトで交際相手の三島くん。かつては彼と同じ高校に進学するつもりだったが、アルバイト先からも十分な給与をもらえず、進学を諦めるしかなくなる。 初子の周りにはどうしようもなく薄情な大人ばかり。 まともに仕事をしない担任や、弱った初子を介抱するついでに宗教に勧誘するおばさん。最終的には、蒸発した父親が浮浪者になって戻ってくる。 最後の最後までとにかく報われない初子だけど、ほんの一握りの希望を捨てずに健気に生きる初子の姿には色んな感情が混ざり、泣ける。 ちなみに、この作品は実写映画化されており、当時原作のことは何も知らずに観に行っている。まあ面白かったという記憶はあるが、キャストの顔とか名前、内容もほぼすべて覚えておらず、原作を読んでも何も思い起こされなかった。 同じく掲載されている、工場の息子が主役の話はまた雰囲気がガラッと変わって読み応えがあった。広島弁ていいな。 青春漫画といえばこれさきくさの咲く頃 ふみふみこnyae「人に勧めたい青春漫画Best」の中の1つです。 仲が良かった昔と違い、少し距離が開いてしまっている幼馴染の3人が主人公。 恋や進路に悩み、それぞれ人に言えない秘めた気持ちを抱え過ごした一年間の話。 希望どおりにならないことも自分なりに折り合いをつけながら子供と大人の狭間で揺れる思春期の心や、田舎町ならではの閉塞感や安心感を見事に描き出していると思います。 さすがふみふみこ!という感じです。哲学的な世紀末方舟 しりあがり寿マウナケアしりあがり寿、と言えばシュールなギャグが持ち味。しかしこの作品はシュールはシュールですが、意図したギャグは一切なし。水の中に全てのもやもやしたことをぶち込んで世界は終わるのだ、といわんばかりの哲学的な終末を淡々と描き切っています。発端はやまない雨。歯みがき会社の方舟による世界一周キャンペーンが大ヒットする中、人々の生活は少しずつ壊れ始めます。この雨、というファクターは、物語を語る上で非常に重要なパーツ。群集心理によって起こる暴動の喧騒は雨音にかき消され、死体は雨に流され、たまった水に世の中の雑多な物は沈んでいく。そして残るは島影ひとつ見えない大海原。作品に”静かな”というイメージを与えるのにこれほど効果的な使い方はないと思います。この作品が描かれたのは西暦2000年。いわゆる世紀末。あとがきには著者による「輝ける未来」が創造できなくなった趣旨のコメントがあります。それから10年経ちましたが、この世界よりも、もっと閉塞感のある氷の時代になってしまったように感じるのは気のせいでしょうか。とにかく音楽をやりたくなる音楽と漫画 大橋裕之hysysk「バンドやるならギターとベースとドラムとボーカル集めてコピーから始める」みたいなのは単なる固定観念に過ぎず、音楽はもっと自由なんだということを教えてくれる話。「これなら自分にもできそう」というのは大抵勘違いなんだけど、生きていくうえでそんな勘違いを起こしてくれるようなものを求めているのも確か。 大橋さんの漫画は、普通なら「ださい」とされてるものを「かっこいい」と言ったり、お決まりの流れなら否定するところを逆に肯定したりする。たったそれだけのことでも話は思わぬ方向に転がり出すし、凝り固まった思考をぶち壊してくれる。そこに希望と可能性がある。 ピコピコ少年ピコピコ少年 押切蓮介マウナケア作者のゲーム体験を通して描かれた青春記で、作者の暗くて毒のある絵柄が、黎明期当時まだまだ反社会的イメージのあったゲームにマッチしていて、明日のことをまるで考えていなかったバカな自分の少年時代を思い出してしまいました。ゲームの内容を深く掘り下げず、体験談をもとにしているのがいいんですよね。私はおそらく著者と5~6年は年が離れているかな? でもゲームのブームという現象ならば、不良の巣窟インベーダーハウスがゲームセンターであっても、携帯ゲーム機ゲーム&ウオッチがゲームボーイであっても、似たような体験をしているので、すんなり”ああそうだ”と思ってしまう。革命的なことばかりだった80年代。あの時代の空気を体験した人にとってゲーム用語は共通言語。酒場のネタにはもってこいの漫画です。30~40代、50歳未満まではイケる作品じゃないかな?スゴイうみべの女の子 浅野いにおstarstarstarstarstar_borderさいろく見ちゃいけないもの感もあってすごい懐かしい気持ちと、「山本直樹先生と肩を並べようとしているな!こやつめ!」みたいな上から目線で物申したくなる気持ちとか色々な気持ちと世間体が素直に好きと言わせてくれないけど好き。 あとエロい。<<34567>>
飯漫画における料理の力は相当強い。道を間違えた人が生き方を改めたり、仲違いした夫婦や友達が絆を取り戻したりというのが日常茶飯事だ。 そこまでの力を日常生活で実感することはなくとも、香りや味で記憶が蘇ることは割とあるんじゃないかと思う。いわゆるプルースト効果ってやつ。 もしかして、味覚や香りが経験したこともないような甘美な記憶を生み出すこともある? 少なくともこの作品を読めば、味わったこともないような官能的なショコラの味を呼び起こすことができます。 ショコラを食べたあとに挟まるエロティックな描写も実際の出来事ではなく味の比喩として描かれているんだろうな、と思っている。 ジャン=ルイがそこにいれば、ヌテラのクレープも板チョコも至極のショコラに変わるのかも…? 結局のところ、ショコラそのものよりもジャン=ルイが纏うショコラの香りに惹かれてしまったんだろうな…。