γ―ガンマ―

ヒーローお悩み相談課、担当は姉妹百合!

γ―ガンマ― 荻野純
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

宇宙人の侵略をきっかけに、怪人や怪獣の脅威に次々と晒される近未来の地球。しかし地球人の中からは、それに対抗するヒーローも生まれ続けていた。 あちこちで繰り広げられる様々なヒーロー達の闘い。しかし、ヒーロー達にもそれぞれ悩みがあった……そんな彼らの相談に乗るのは、防衛軍相談課の北鹿姉妹。妹は、かつて最強ヒーローだった……。 ★★★★★ 特撮フィクションのお約束を打ち壊すように、怪獣も怪人もあちこちで同時に出現するし、それに対抗するヒーローも盛り沢山。ライダー系、ウルトラ系、戦隊系、マーベル系、魔法少女系……アベンジャーズもビックリの多彩さだ。燃える! 宿敵を倒して力を失ったヒーローは闘えないことに悩み、特殊能力を得たばかりの人間は力の振るい方に悩み、強力なヒーローも時に心折れ闘えなくなり……様々な事情を抱えた超人達は、相談課の世話になる。 それに対応する北鹿姉妹の妹は、無類のヒーローオタク。そして、かつて最強のヒーローとして活躍し、今は力を殆ど失っている存在。そんな彼女はヒーローの本心を突き、的確なアドバイスをするが、実は少しだけ残った力のせいで自分の呪縛を解けずにいる。そしてそんな妹を、姉は心配し、何が何でも守ると誓う。 妹の為にあろうとする姉と、苦しみ故に甘えずにはいられない妹の過剰に想い合う心は、甘いトキメキに近い感情を感じさせる。 暗躍する勢力に削られ続けるヒーロー達。その残酷さとグロテスクさ、黒幕の壮大な世界変革のストーリーは、現人類の終末を悲愴に演出する。 コメディもありながら、かなり暗く生々しい物語に引きずり込まれる。平和の無い世界で寄り添う姉妹の行く末と、希望の光として闘うヒーロー達の超パワーが炸裂するド派手なバトルを、手に汗握りながら見つめたい。 全てのヒーロー・特撮・魔法少女好きの心に、熱く・甘く・不穏に響く作品! (勿論百合好きにもね!)

ラタキアの魔女 笠辺哲短編集

「奇妙な味」の果実

ラタキアの魔女 笠辺哲短編集 笠辺哲
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し

笠辺哲をなんと評価すれば良いだろう。 なに気にキャリアのある人で、もう期待の俊才などと言うのも失礼だろう。 「ゼロ年代コミティア系の良心」? いや、別にコミティアに「悪心」が他にあるとも思っていないのだが。 SF的なテイストだと宮崎夏次系のほうがハードコアだが、笠辺哲には独自のつかみどころのない気持ちよさがあって、とにかくいつ読んでも絶妙に「宙ぶらりん」な読後感を味わわせてくれる。 絵柄も話も、少しユルいヌケたところがあって、それなのに描いている世界はちゃんと棘があり、読み重りがする。 かつての小説界であれば、「奇妙な味」というのが相応しいような、貴重な才能だ。 それはともかく。 なんでこの人は、このペンネームなんだろう。 どう考えても映画監督・俳優のジョン・カサヴェテスから取って付けていると思うのだが、その作品に、カサヴェテスっぽさは特にない。 この作品集が刊行された時のインタビューがネットで見つかったが、そこでは、自分から「(アイデアの)ベースになりやすいのが映画」と話題を振って、好きなのはタランティーノ『パルプ・フィクション』、黒澤作品、デビッド・リーン作品、キューブリック作品、『天井桟敷の人々』とズラズラ列挙するのに、カサヴェテスのことはまったく触れていない。 音の響きが面白いから借りた…くらいのことなのだろうか? 不思議。 (もちろんそれで全然構わないのだが。自分のように、カサヴェテスの名前に惹かれてコミックス買っちゃったヤツもいて、その辺もまたつかみどころがない感じがして、なかなか良いと思います)

ストロベリーシェイク

ヘタレ×天然の百合感情はすれ違う?

ストロベリーシェイク 林家志弦
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

人気アイドル・橘樹里亜(16)は同じ事務所の新人・浅川蘭(16)に一目惚れ。悶々と妄想するだけで何も出来ない樹里亜と、樹里亜への想いが徐々に募っていくのに全く気づかない蘭の、仲良しなのにすれ違うヘンテコ恋物語……この物語に、終わりは来るのか? ♡♡♡♡♡ 蘭に恋した樹里亜は日々、蘭の妄想に勤しみ、息を荒くして悶える変態。しかし蘭はそんな樹里亜の下心に全く気付かず、仕事上ではカッコいい先輩に憧れ、尊敬の眼差しを向ける、見事な天然。真っ直ぐに樹里亜を想う蘭に、ヘタレの樹里亜は気持ちを伝える事すらままならない。 基本噛み合わない、突っ込みどころ満載の二人のやりとり。そこに百合百戦錬磨のヘアメイク×アイドルのカップルや、メンバーがみんなレズビアンのバンドZLAYが絡んで百合濃度を高めるものの、奔放な彼女らは突っ込みどころを増やすばかり。百合ボケのカオス状態……。 そのボケを全て拾うのは、樹里亜のマネージャー・冴木。鬼の様に厳しく樹里亜に突っ込んでいくが、樹里亜は止まらないし、蘭は自覚なく育っていくし、突っ込む対象は増えていくし……。 舌打ちし、毒付き、体を張りやがて疲れ、諦めていく冴木……何気にこの人が、一番面白い。 想い合っているのに噛み合わない樹里亜と蘭のやり取りに、「お付き合い前夜」の甘いドキドキを思い出しながら、行く先にある感動的なドラマに期待して読んでいただきたい!絶対泣くから! そしていちいち名言が多い百合ビジュアルバンドZLAY×樹里亜&蘭のコラボレーションは熱い!ライブの空気感まで想像しながら読みたい。

はやて×ブレード2

天地の星、黒鉄の星。

はやて×ブレード2 林家志弦
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

はやて×ブレード、読みました? どうでした?最高でしょ? もちろん続編読みますよねー? というわけで『はやて×ブレード2』です。ツーではありません、「ニャーン」と読んでください。 ★★★★★ 中高一貫女子校・天地学園で、剣技に優れた「剣技特待生(剣待生)」達が、「刃友」(しんゆう)とバディを組んで「星奪り」というランキングを競うお話。 前シリーズでは、熱いドラマと暑苦しいおバカなギャグで、様々な「刃友」達の関係性を描き、感動と笑いで悶死させられた訳ですが、終盤に新たな勢力が編入してきた事で、物語は新たなフェーズに入り、それは「2」に引き継がれます。 「2」の大きな柱として、新勢力「黒組」と旧勢力の、学園統治を巡る全面戦争……会長を完全に引き摺り下ろそうとする黒組に対し、旧勢力が「やっぱ天地会長がラスボスでないと、つまらん!」という結束で立ち向かう争いになっていきます。 しかし一筋縄で行かないのが、我らのラスボス・天地会長。 会長の意向は全ての剣待生を翻弄し、自分を脅かす者達が「自分を見ていない」事に腹を立てると、とんでもない舞台を設定。全ての剣待生が自分を目指し向かってくるように仕向けます。 この物語は全ての剣待生の為に在りながら、最終的には「天地会長」が光り輝く独壇場となっていくのです。 その存在感、圧倒的。 しかし、天地会長の大きな物語から、はみ出す物語がありました。前シリーズで解決しなかった、主人公・黒鉄はやてと、双子の姉・ナギの因縁です。 二人は自らの存在証明を賭けて、ようやく刀を交えます。分かり合えない心、分かってしまう互いの感覚、よく覚えている相手の動き……双子ならではのバトルと感情交換は、どこまでも熱く、尊い。 いつもバカみたいにはしゃいでた黒鉄はやての、全てを曝け出した全身全霊の闘いを、最後まで見届ける物語……その感動も、圧倒的!