祥伝社マンガの感想・レビュー475件<<1617181920>>人生で一度しかない"青春"の群像劇魔法が使えなくても 紀伊カンナsogor25様々な背景をもって上京してきた若者達の群像劇。紀伊カンナさんはこれまでBL作品を中心に発表されてきたけど、絵柄・キャラ造形含めて男女問わずに魅力的なキャラを描ける方なのだと実感する。連作短編集の形式で毎話中心人物が変わるんだけど、みんながみんな何かしらの明確な答えを見つけるわけではないのに登場人物は皆輝いて見える。色んな出来事があった後、物語上そんなに深く絡んでなかった岸くんと環の会話で締めるっていう構成もいいし、そこの環のセリフがこの作品全体を的確に言い表してて何回も読み返してしまう。まさにこの世は白か黒かだけじゃないねずみ色ばかり、でもだからこそいいと思わせてくれる作品。 そして物語の余韻をいい意味で吹っ飛ばしてくれる最後の見開き。ただこれはこれで物語の結論とは別の意味で真理。二ノ宮先生の酒豪っぷりに爆笑平成よっぱらい研究所 完全版 二ノ宮知子名無しエッセイマンガです。二ノ宮知子先生のマンガには常識を超えた天才(奇人?)キャラクターが登場しますが、これを読むとさすが生みの親だなぁと感嘆します。酒で起こした失敗は酒で忘れる!明るい酔っ払いは最高!平成の名著だと思います。リクエストをよろしく感想リクエストをよろしく 河内遙む波よ聞いてくれもいいけどこっちもいいじゃん!? なんかおもしろそうだったので1巻読んでみました。 結構ラジオ好きなのでこういう制作の裏側には興味あるのですが、ああいうラジオ収録ブースを前にした時の感動はわからないなぁ〜…と思います。 でもこの作品で主人公に感情移入してラジオブースの見開きページ見た時心踊りました。 楽しいんだろうなこの現場は! すごい昔に地元のラジオ曲に潜り込んだ時のことを一瞬思い出しました。 単純に喋りがうまい主人公がそのままパーソナリティになってもあんまし面白くない気するのですが、波よ聞いてくれも、リクエストをよろしくも、こういう意外な人物、しかしその辺にいそうな人物が喋りをやるってとこがいいですね。 ずっと喋る仕事、よくよく考えるとすごい仕事だなと思います。話題性にとんだ内容でないといけないし、考えてもいなかったような話題を振ってくるリスナーもいるだろうし。 色々想像膨らむ漫画かと思います!たいやき夢の端々 須藤佑実名無したまたま第三話を読みましたが…絵の情感といい、セリフ回しのセンスの良さといい、昭和の空気を濃厚に感じさせる時代考証の見事さといい、こんな才能のある人がいるんだ…と思いました。 隔月のようですが…これ描くために相当な力量を注いでるのでしょうね。 戦争の影を感じさせるという点では、こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」以来です。ひさひざに心に刺さるマンガに出会いました。デビュー作も収録。パンドラの匣的短編集パンドラ ねむようこ名無しねむようこのちょっとダーク寄りでポップな短編集。デビュー作のナイトフルーツの衝撃たるや。まぁこんな作品を新人がいきなり描いてきたらビックリするよな、という内容。かなりダークなのにギャグテイスト。 個人的には『流行性感冒』が好き。割り切っているようなのは、自分のことを分かりきれていないから。気がついた時の女の子の動揺、どうしようもなさが上手い。これも良い短編集六人いてもそれぞれ世界は寒い 高野雀名無し※ネタバレを含むクチコミです。キャラを掘り下げた1巻世界は寒い 高野雀starstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)※ネタバレを含むクチコミです。妙にリアリティある北国の恋愛はしっこの恋 町麻衣たかアヤメくんののんびり肉食日誌の町麻衣先生の作品。 「漁師の息子は家が金持ちゆえ、年頃になるとプレハブ部屋が与えられる」という「うわありそう…」とやたらリアルな描写が忘れられない。 狭い行動範囲で暮らし、学生時代のつながりが卒業しても継続する「地方・地元感」と、漁師・農家の「仕事」、そして「恋愛」の3要素が絶妙に噛み合って独特の雰囲気が出てて好き。 地方のリアルな空気感を味える映画やドラマのような素敵な作品でした。ハラハラするあなたのことはそれほど いくえみ綾大トロ※ネタバレを含むクチコミです。この短篇集に収録された「青いサイダー」はあまりにも天才的!夜とコンクリート 町田洋兎来栄寿読み始めてすぐに衝撃を受け、読み終えると五秒ほど深く嘆息しながら、その卓越したセンスに拍手を送るばかりでした。漫画読みでいて良かった、と心の底から思えた作品です。そして、何度か読み返す内に涙すら零れて来ました。 町田洋先生のこれまでの作品は、イメージでいえば圧倒的に「夏」。自分の中にある過去の夏の情景が想い起こされます。しかし、それは常夏の南国のような陽気な夏ではありません。どちらかと言えば、夏休みのプール教室に行ったものの知り合いが誰もおらず蝉時雨の中で歩んだ孤独な帰り道や、最後の一本の線香花火の火が消えて後片付けをしている時のような、鮮烈な季節の中にある陰。夏の終わりに存在する、独特の寂しさのようなものを感じさせます。そして、それは切なくもどこか仄かに温かです。 ■ 町田洋、その誉れ高き新鋭 町田洋先生は、そもそもが珍しい経歴の作家です。元々は自サイトで漫画を掲載していた所、電脳マヴォに掲載。そして、デビュー作となる前短篇集、『惑星9の休日』が、描き下ろし単行本として祥伝社から昨年刊行されました。今の時代、連載も無く単行本が出される、しかも新人が、というのは非常に稀なケースです。ネットの海の中で人知れず花を開いていた才能が発掘され、そうして特殊なルートでデビューを果たすことができたということは、マンガ業界における一つの希望でもあります。 それに続き、電脳マヴォに掲載された三作品を中心に、描き下ろしとして8ページの短編「発泡酒」を加えて書籍化されたのが、二冊目となる『夜のコンクリート』。その内の一作「夏休みの町」は、文化庁メディア芸術祭で新人賞を受賞しています。 ちなみに、『夜とコンクリート』刊行にあたって、最初は電脳マヴォに「青いサイダー」だけを残すことが町田先生に提案されたそうです。しかし、その提案とは逆に町田先生は「青いサイダー」のみを掲載作から外すことを要望したのだとか。私はそのエピソードを知って、とても納得が行きました。それは、言い換えれば他の2篇をWEBで読んで既読の状態であっても、本を買った時に「青いサイダー」さえ読んで貰えれば満足して貰えるだろうという自信の表れではないでしょうか。 ■ かつて見たこともない描線が織りなす、独特の世界 町田洋先生の描く絵は、シンプルですがそれ故にエモーショナルです。 表題作「夜とコンクリート」と「発泡酒」ではフリーハンドで、「夏休みの町」では定規を使った作画になっています。 その中で、異彩を放つのが「青いサイダー」。この作品だけは、全ての絵も書き文字も、Windowsのペイントで描いたかのように直線のみで構成されています。 数多くの漫画作品に触れて来た私ですが、かつて出逢ったことのない画面作りにまず衝撃を受けました。 『夜とコンクリート』P109 > この島はシマさんという > ステレオタイプな島だねと > 人はいうだろうけど > まぎれもなく僕の友人なのだ という、1ページ目から始まる「青いサイダー」。何を言ってるか解らないと思いますが、私も解りませんでした。しかし、このちょっと掴み辛い物語、読み進め、じっくり咀嚼するとその味わい深さに唸らされて行きます。 近年の中でも、町田洋先生は静寂を紙の上に現出させるのが一番上手い作家です。敢えて何も語らせない、キャラクターが無言でいるコマの多さ。そして、どこまでも静謐を感じさせる広漠な風景。それらは謂わばミロのヴィーナスの両腕のようなもので、無限の想いの余地が茫洋として広がり行きます。ぽっかりと開いた空間に夏の匂いと追憶を感じながら、そこに成長と共にある大人になることへの寂寥感、それとコントラストを成す大人として世界の要請に付き合ったが故に生じた後悔といった繊細な情動がもたらされ、胸を締め付けられます。 ■ 今年の夏の傍らに、町田洋を 「夜とコンクリート」「夏休みの町」「青いサイダー」「発泡酒」という四篇によって構成されるこの本は、一冊の短篇集として総体的にも完成度が高いです。「夏祭り」や「夏影 -summer lights-」を夏が来る度に聴きたい曲だとすれば、『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』は夏が来る度に読みたいマンガ。 是非、夏の夜に一人静かになれる場所で、町田洋という海に潜ってみて下さい。漫画の世界の無限性を改めて感じさせてくれる、清冽なる才気がそこに輝いています。 かわかみじゅんこ先生らしいタイトル少女ケニヤ かわかみじゅんこかしこ先生がインタビューで、中学生当時みんなが「ナウシカ」で盛り上がってる中「少年ケニヤ」を観に行ったとおっしゃられていた。そのセンスが作風そのものだなぁと思った。マンガの内容は全然ジャングルとは関係なくて女子高生が恋愛に目覚める話なんだけど、恋の熱狂と野生を掛け合わせる要素の活かし方もかっこいい。情報量と絵のスタイルが魅力!カラスのいとし京都めし 魚田南たか化けカラスがバイトして京都の美味しいごはんを食べる話。 フリーハンドで描いた味のある線と、トーン使いが好き。 なので、ご飯の描写は美味しそうというより「オシャレ」という感じが、他のグルメ漫画と一線を画している。 1巻16話で20件、2巻14話で17件のお店が紹介されており、素敵なお店が次から次へと出てくる贅沢さがいい。 2巻ではカラスの過去と家族に触れられており、正直ご飯よりこっちが気になる。そ、そっちのことかーこちらから入れましょうか?…アレを 松田環名無しセックスレスにもいろいろあって、この作品で扱うセックスレスは男性側の問題。 しかも本当はしたいけど、いろいろあって精神的に勃たないという状況。 ゆえに、セックス自体には肯定的という部分がみそで、申し訳なさもあってか嫁からの一足飛びの提案を許容してしまうという部分が面白い。 全然、ほんと全く拒否らない。少し引きながらも、わりとすんなり受け入れる。 そして嫁のアグレッシブさ。 正直、興味津々な内容だ。 そっちで出来てしまったからこそ、本来の形ではこれからどうなってしまうのか。 コミカルに描いてはいるが、あくまでこの形は本来の形でできない状況での代替品でしかなく、呼び水にするためのものとして始まっている。 しかし、世の中には様々な性的嗜好は溢れかえっているので、むしろこれこそが最高で元には戻れない人もいるだろう。 男性側がそこに情けなさを感じてしまい、より不能なドツボに嵌ってしまうこともあるかもしれない。 どう転んでいくのか、今後の展開が楽しみだ。寂しい日の夜に読む漫画夜とコンクリート 町田洋にわかなんというか町田洋という作家が描く空間は、人の心象風景から紡がれた物語を描く作家という印象がある。ちょっと変わった世界なのに、そこに抵抗感を一切覚えない。むしろそういうものもあるんだと、するりと頭に入ってくる。建物が聞こえる男も、夏休みの街にいた男も、島と話していた少年もどこかにいる気がする。そう考えたとき、なんだか気持ちが落ち着く。タイトル通りとは恐れ入った!彼氏可愛いよ彼氏きょうは私が抱きます。 高田ローズたかFEEL YOUNG11月号の巻頭がからっぽダンスRで、まずそれを読み、最後のページをめくって現れたのがこれで動揺が走った。タイトルが目に入った瞬間「マジかよ...!!」とテンションが上がり、興奮を抑え楽しみを取って置くことにして最後に読んだ。 かわいい扉絵。 線が細めでトーンや小物でキラキラした紙面。 彼ピッピ・ミキオの清潔感だけあって突出したところのない平凡な見た目。 主人公の「いや無理でしょ…」っていう正直なリアクション、 全部いいけど、やっぱ「ミキちゃん」がかわいかったのが何より最高だった(ベッドの上で) 雑誌は毎月読み出してそんな経ってないけど、自分の中で「ジェンダーレス男子に愛されています。」で高まった敬愛の念が、「きょうは私が抱きます。」で頂点に達した。ひとつの女性誌の中で、恋愛の形にダイバーシティがあるのって素晴らしい。 なおこの2ヶ月後の2019年1月号から、同じ女性攻めをテーマにした松田環先生の「こちらから入れましょうか、その…アレを」が始まったけれどど、2作の雰囲気は驚くほど違う。こちらは女性漫画らしくキラキラしてるけど、『アレ』の方はちょっと気だるげで退廃的で淫靡な感じ。 これらの作品に掲載ゴーサインを出した編集部の姿勢を全面的に支持するし、一生勝手についてくぞフィーヤン。そして高田ローズ先生…! https://twitter.com/RoseTAKADA/status/1048572649926942722?s=20ちがう人間だから「受け入れる」違国日記 ヤマシタトモコにわかそれぞれの孤独の在り方は違うし、理解し合えないことはあるけど、歩み寄れる。こうした人との距離の測り方は現代においてとても大事なテーマをもった作品だと思う。 槙生のスタンスは、分かるまで話し合うわけでも、押し付けるわけでもなく、「受け入れる」こと。理解できなくとも朝ちゃんだけの「寂しさ」があることを認める。それはどこか悲しいことにも思えるが、仕方ない。ふたりは「ちがう人間」なのだから。けれど、「砂漠」があることを認めてくれる人が側にいる。それは朝ちゃんにとって、一部の読者にとって命綱になってくれるのではないだろうか。励みになりますねぇずっと独身でいるつもり? おかざき真里名無しタイトルに対して「うるせぇな」と心の中で瞬時につっこんでしまう人は私以外にもいるはずです。 適齢期の女性と適齢期を通り越してきた女性にはきっと励みになる、共感できる漫画です。 それにしても親からのかわいそう発言は刺さります…人形のように美しいけれど、お人形じゃないHER ヤマシタトモコにわかヤマシタトモコの女性は人形のように美しい。色気があって、身体のバランスがよくって、はっきりとした顔立ちをしている。ただ、彼女たちの本当の魅力は『お人形』じゃないところにある。 この作品に扱いやすそうな女性は一人も出てこない。誰もが自身のスタイルを意識しているからだ。自分の内側の本音と外側の出来事。そうした揺さぶりの中から生まれる衝動。瞬間、彼女たちの表情や仕草はこれ以上ないほど瑞々しく描写される。その魅力はお人形には決してない、人だから出てくるものに違いない。何度でも読みたい。私はBL初心者ですが…ばらの森にいた頃 雲田はるこstarstarstar_borderstar_borderstar_borderかしこ昭和元禄落語心中の人が描いたんだ〜!と無邪気に読み始めたら、想像以上にがっつり性描写があってびっくりしたけど、ページをめくる手が止まらなかった。 男性同士の恋愛だから自分(女)を介入する必要がなくて、純粋にキャラクターを愛でられる。これまたみんな可愛いんだよね!どうしてこんなに魅力的に描いちゃうのってくらい。 雲田はるこ先生のストーリーの膨らませ方が興味深い。ラブシーンへの持って行き方がとてもナチュラル。生活に潜む日仏の違いモンプチ 嫁はフランス人 じゃんぽ~る西たか じゃんぽ~る西先生の、「外国の人形のようにかわいらしくデフォルメされている登場人物とアクセントのように挟まれるリアルな絵」という作画のスタイルが好きです。 機械に強いフランス人の奥様と、日本ですくすく大きくなる七央くん、そして日本人的な日本人男性のじゃんぽ〜る先生の3人暮らしは読んでて全然飽きません。 現在FEEL YOUNGで連載中の、奥様が来日に至るまでを描いたTOKYO異邦人も、ハチャメチャに面白いのでおすすめです!! (画像: こういうリアリティとデフォルメの絶妙なバランスが最高…!)理想の大学生活がここにあるアヤメくんののんびり肉食日誌 町麻衣starstarstarstarstarたか アカデミックでとってもお洒落な恋愛漫画。ヒャーッ、たまらん大好き…!! まずそもそも表紙が良すぎる。図鑑の挿絵を彷彿とさせる、落ち着いた色合いでシンプルなデザイン。超いい... 超洒落てる…! イギリスからの帰国子女で一言で言うと変なやつのアヤメくんと、青森出身で真面目なギャルの椿ちゃん。もうこの2人の組み合わせだけで最高なのに、みんなお勉強のできる子たちで、恋愛以外ではいっつもワニ洗ったりキリン解体したり化石掘ったりしてるのが面白い。 主人公の椿ちゃんが勉強のためにNYやイギリスなどたくさん海外に行くところも、一緒に世界を旅行している気持ちになれてトキメキます。モンゴルとかテンション上がる…! みんなでワイワイ化石掘っていたかと思えば、アヤメくんと椿ちゃんの本気の恋愛パートもあって、そしてシンプルな線なんだけど凄まじい色気があるところがたまりません(さすがフィーヤン)。 研究一本で根暗な青春でもなく、恋愛一色で頭カラッポな青春でもない。**「勉強にも打ち込むし、オシャレもするし恋愛もする」**という、まさに『理想の大学生活』を描いた作品。この勉学と恋愛のバランスを取る感覚がなんとなく海外ドラマっぽくてよけいに格好よく感じます。 アヤメくんと椿ちゃんが、どんなエンディングを迎えるのか。終わりは来てほしくないけれど、最後まで楽しみに見守りたいと思います。 http://feelyoung.jp/box/machimai.phpちょっといい話ミッドナイトブルー 須藤佑実名無し切ないけど爽やかさがある読後感。色も暗めの青で統一されてて綺麗。寝る前に読みたい。モノローグが極まってる恋のシャレード ルネッサンス吉田かしこ女子高生と予備校講師の恋愛。 主人公が誰にも言わなかった親の離婚を先生に打ち明けたことから関係が始まる。だけど先生は高校教師だった時に付き合ってた教え子が自殺しちゃったことに未だに立ち直れないでいる。ふたりの恋のまねごとは悩みに悩んで浮き沈みが激しい。この混沌とした感情が描かれた物語にモノローグがすごく刺さる。 ママは夜勤/あの子は命日/真夜中/私はひとりぼっち/先生もひとりぼっち 絵と言葉がそれぞれに作用し合うことで得られる高揚感がモーレツに得られます。ご一読あれ!地球に近くて遠い、惑星9惑星9の休日 町田洋にわか惑星9という宇宙の辺境にある小さな星にいる人々の話。 連作短編集のような形式で、惑星9の住人の生活が描かれている。どれもがちょっと不思議だけれど、描かれる人の思考や感情は共感できるので、気持ちよく世界観に引き込まれていける。 中でも「衛星の夜」という月の話が好きだった。昔、月を調査していた老人が回想する形で、そこで出会った不思議な粘菌のワルツについて語る話。ワルツの可愛らしさもさることながら、物語の自然なファンタジー感がたまらない。他の作品もハズレなし。おすすめの一冊。<<1617181920>>
様々な背景をもって上京してきた若者達の群像劇。紀伊カンナさんはこれまでBL作品を中心に発表されてきたけど、絵柄・キャラ造形含めて男女問わずに魅力的なキャラを描ける方なのだと実感する。連作短編集の形式で毎話中心人物が変わるんだけど、みんながみんな何かしらの明確な答えを見つけるわけではないのに登場人物は皆輝いて見える。色んな出来事があった後、物語上そんなに深く絡んでなかった岸くんと環の会話で締めるっていう構成もいいし、そこの環のセリフがこの作品全体を的確に言い表してて何回も読み返してしまう。まさにこの世は白か黒かだけじゃないねずみ色ばかり、でもだからこそいいと思わせてくれる作品。 そして物語の余韻をいい意味で吹っ飛ばしてくれる最後の見開き。ただこれはこれで物語の結論とは別の意味で真理。