100万の命の上に俺は立っている

現実世界とパラレルワールドと中二病と

100万の命の上に俺は立っている 奈央晃徳 山川直輝
ゆゆゆ
ゆゆゆ

アニメ化されたと聞いたことがあったので、タイトルは知っていて、でもアニメはまだ見たことなくて、漫画をいつか読もうと思っていて‥ついに読み始めた。 主人公たちはパラレルワールドで、全滅しないようタスクをこなしていくという、おつかいゲームのようなことをマスターを名乗る人にやらされている。 今読んでいる時点では、ストーリーはただそれだけ。 人間関係はごちゃごちゃしている。 ただ、その先に何が待っているのか、それは誰もわからない。 剣と魔法とモンスターもいるのに、主人公が中二病というか、一歩引いているせいかファンタジーというにはちょっと冷めているかんじがする。 パラレルワールドには勇者として登場しているせいか、反則のような俺TUEEE設定だけど、そこはあまり気にならない。むしろ、ものすごく強いわけではない。 忘れかけるけど、彼らは普通の中学生。 これが一番残酷な設定にも思える。 ちなみに、「100万の命の上に」という一文から、ゲームの「俺の屍を越えてゆけ」が思い浮かんだ。 この作品の「100万の命」は、いったいなんのことなんだろう。

THE COMPLETE WORKS1 銃声

初期大友は思った以上に上級者向けで人を選ぶ漫画だったという話

THE COMPLETE WORKS1 銃声 大友克洋
名無し

大友克洋に単行本未収録作品が数多いのは漫画マニアなら周知のこと、 あーAKIRAや童夢以前の感じな、ショートピースでお馴染みの初期短編のノリなら知ってるぜ、さアどんなもんよーーと、読んでみたら........難しかった。 未発表の習作を含めた1960年代〜70年代に描かれた短編が載っているのだけれど、その時代というとまんが表現が子どものものから青年を経て、大人を志向したものに変化していく過渡期の時代なだけあってかなり文芸色・実験性の強い作品が多い。 だが気に入った作品もいくつかはあったので軽く触れておく。 ・エンタメ部門 「スマイリーおじさん」 賭け事がやめられない喰えないジジイに、死んだ父親に代わってジジイの借金を回収しようとする若者が翻弄されるユーモラスな話。原作マーク・トウェインの力もあるだろうが、本作品集のなかでは一番オモロい内容だった。 ・文芸部門 「橋と そして...」 アンブローズ・ビアスの「アウルクリーク橋の出来事」を翻案したと思しき一作。ベトナム戦争下、米兵に橋に吊るされ処刑されんとする若者。幸運にも綱が切れて逃げ延びるも.....。戦争って、マジでクソだと思わされる話だ。 ・芸術部門 「まっちうりの少女」 東京に上京する際、編集者に見せるために描いたという習作で、じつに本巻ぶっちぎりの大傑作。当時の公民権運動に触発されたと思われる、童話と人種差別を組み合わせた少女漫画的内容。マッチ売りの貧しい黒人の少女が主人公で、すごく悲しいストーリーなんだけど、その悲しさの向こう側にほのかな叙情が浮かび上がってくる。ある少年に助けられるけど、主人公がお礼を一言も言わないでいるので少年が立ち去ってしまうシーンが、何か来るものがあった。この一作が読めただけでも、買った甲斐はあったかなと思う。一番好きです。 巻末には大友自身による各作品を語った談話が載っている。これは割に面白かった。 結論としては積極的にはすすめないが、大友克洋の大ファンなら読んでみてもよいだろうといったところ。

誰が奥寺翔を殺したのか?

誰が主人公を殺すのか。 #1巻応援

誰が奥寺翔を殺したのか? 行徒 河田雄志
兎来栄寿
兎来栄寿

「お、大好きな行徒さんと河田雄志さんの新しい連載が始まったぞ! 今回はどんなギャグで笑わせてくれるのかな〜」 と、ページを開いてビックリ。 あれ……誰が殺したクックロビンみたいな感じではなく、もしかしてこれガチのヤツですか? そんな第一印象を抱いた本作は、1994〜1995年の田舎の街を舞台にしたヤンキー×ミステリサスペンスです。 94年といえば、『クローズ』や『ろくでなしBLUES』や『カメレオン』や『疾風伝説 特攻の拓』などなどが連載していたヤンキーマンガ全盛時代でもあり、懐かしさを感じずにはいられません。 ただ本作が一味違うのは、話の中心にいるのが剣道で全国を目指す主人公・奥寺翔の異常性です。 はっきり言って、彼がこの街に転校してこなければこの作品の物語は上記のような一般的なヤンキーマンガの枠に収まっていた筈です。しかし、翔という劇薬が加わることで、そしてその彼が殺されるということがタイトルと冒頭で既に示されているというところで、独特の味わいを出しています。 3年の水原が統べる川坂高等学校で、1年のトップを張るのがイケメンの城場。整備工場で祖父と暮らし、不良ではあるものの気骨のある城場のクラスに、翔は転入します。物腰は柔らかいものの、どこか不気味な気配を放つ翔は、剣道場を解放するために城場たちと衝突していき――というところからストーリーは展開していきます。 1巻はまだ序の口で、2巻以降から魅力的な新キャラも登場して物語はますます盛り上がっていきます。 しかし、タイトルと冒頭のシーンが表す通りであると仮定するならば、本作は明確にフーダニットのミステリであり、恐らくは1巻に登場するキャラの中に犯人がいそうな気がします。 不良同士の抗争やヒエラルキーにおける葛藤なども、並のヤンキーマンガ以上に描かれていて面白いのですが、目下最大の焦点はそこです。学ランを着ていることから男子学生の誰かであり、体格からして丸茂ではなさそう。喋り方からすると城場っぽさもありますが、学ランのボタンを全部締めているのは森田っぽさもある。 1年後の1995年、誰がどうして奥寺翔を殺したのか。今、非常に続きが気になる作品です。 ただ、それ以上の本作の最大の謎はなぜお二方が突然こんな物語を始めたのか、ということです。いえ、行徒さんの画力の高さがシリアスに生かされているのは素晴らしいと思うんですが。だがしかし、だがしかし……(困惑)

人間消失

謎すぎる世界

人間消失 江戸川エドガワ
六文銭
六文銭

進路希望を提出していないことで居残りさせられていた同級生4人。 すると突然、4人以外の人間がいなくなってしまったという話。 ちょっと何言っているかわからないかもしれないが、本当にそうなんです。教室に風がふき、カーテンがふわっとなったら、もう誰もいない感じ。 パラレルワールドに迷いこんだとか、そんな描写や説明もなく、一瞬で世界に取り残された4人。 学校はもちろん、街も誰もいないし、電車もこない。 コロナ感染など息苦しい世界に辟易としていたこともあって、4人しかいない世界に恐怖するよりも、その自由を楽しみ始める。 カラオケいったり、お店で好きなもの取ったりやりたい放題していく。 が、数日経つと、徐々に電気がとまり、食料も腐りはじめ、ネズミが蔓延し(動物はいる?)だんだんと自分たち以外の人間がいないことで、当たり前の生活のが保てなくなってくる。 そうなると当然4人の関係にも綻びがでてきて・・・という展開。 (1巻の冒頭がその結果です。) こういう、ディストピア的な話、大好物なんで本作も好きな部類なのですが、世界観の設定がいかんせん謎すぎる。 なにかの陰謀で・・・とか、戦争によって崩壊された世界で・・・とか、そういう説明があったほうがまだ納得できるタイプなので、この一瞬で今までの世界とは違う世界にいってしまうとか、むしろ恐怖でしかない。 この展開が自分的には新鮮で、 だから、逆にどういうオチがつくのか気になって読んでしまっております。 誰もいない世界でどうやって生きていくのか? この世界の意味は? など、謎を念頭に最後まで読み続けたいと思います。

ピーチガール 新装版

ガングロギャルとか

ピーチガール 新装版 上田美和
ゆゆゆ
ゆゆゆ

元水泳部でこんがり焼けた肌、塩素で赤くなった髪の毛と、一見遊んでいそうな見た目、吊り目で強気そうな顔立ちの、内面は純粋で真面目なもも。 そして、もものオトモダチとして仲良くする、なんでも欲しがる、分かりやすく悪役の(なので見ていてイラッとしてくる)さえ。 ももが好きな同じ中学校出身のとーじ。 とーじを奪われまいと適当に指さしてしまった、学年一のモテ男の岡安。 彼女たち4人による、ドキドキハラハラ恋愛漫画「ピーチガール」。 帰省して、ふと思い出したこの漫画。 たしかガングロと呼ばれたお肌こんがりファッションが若者の間で流行っていた頃に本誌で読んでいた漫画だ。 あの頃テレビでは、ヤマンバのような髪型をしたチョコレート色の顔のギャルが「黒人みたいになりたーい」と言って、日焼けサロンに通う姿を特集していたのを覚えている。 今だと、プールで日焼けして、色素が抜けているくらいでどうして主人公は勘違いされてるの?となるかもしれないけど、当時はそう見られ得る時代だった。 漫画では読むにつれて、読者側としてはその容姿はだんだん気にならなくなり、(ももは日焼けした肌を嫌がっていたが)他のキャラクターも強いて気にしておらず、普通の恋愛漫画と変わらなくなったように思う。 ガングロギャルの時代はおわり、美白の時代へ移り変わっていったせいもあるかもしれない。 読み直してみたら、さえはお友達にみえるときもあるけど、やっぱりムカつくなあと思ってしまった。