きれいなおじさんは、好きですか。

男子高校生は女装おじさんに現実を見るか #1巻応援

きれいなおじさんは、好きですか。 座紀光倫
兎来栄寿
兎来栄寿

『少年の残響』以来の座紀光倫さんの『シリウス』帰還作品。女装が趣味のおじさんが、男子高校生に一目惚れされて告白されるところから始まる物語です。 最近の異性装は本当にレベル高いですからね。声だって訓練次第でどうとでもなりますし。有名な方々もたくさんいますが、そういうことが実際にあってもおかしくない時代です。 主人公たちはなし崩し的に連絡先交換をして、映画館デートをして、動物園デートをして……と着実にステップアップしていきます。テンポ感は『島耕作』ほどとは言えないまでも、少なくとも1巻で『君に届け』は置き去りにしています。 毎回真実を告げようと思うものの、言い出せずにいるおじさん側の葛藤と、それに対してピュアすぎる男子高校生の対比が面白い構図になっており味わいを生み出しています。座紀光倫さんの少年への嗜好性が、とても良い方向に作用している作品です。 言い寄られる側のおじさんも、社会生活で辛いことがあったときにふと男子高校生の存在が支えになる瞬間があることを自覚するなど段々まんざらでもなくなっていっており、最終的な着地点が非常に気になる物語です。 もしも、本当はお姉さんではなくおじさんだと気付いてしまったときに、彼はどういう反応をするのか。BL系レーベルではなく、少年誌でこういった作品が出てくる時代性を改めて噛み締めます。 かわいい男子高校生が見たい方、女装中年との微笑ましい絡みを見てみたい方にお薦めです。

恋をしたのに世界は滅びる気配もない

本に救われた青年とふたりの女性 #1巻応援

恋をしたのに世界は滅びる気配もない 東雲
兎来栄寿
兎来栄寿

東雲さんの初連載・初単行本……なんですが、画力的にもそれぞれ魅力的過ぎる女の子たちもそうであると感じさせない作品です。 図書館の本に救われ読んでいるときだけ自由でいられて生きてこられた原体験から、人と接するのが極端に苦手でありながらも司書をしている主人公の青年・天城。もう、その設定だけで深く共感せずにはいられませんでした。 その上で ″「好き」を手離さずいてくれたら…って この先どんな人生を歩んでも 「好き」をお守りに揚々と立ち向かってほしいから 俺も本が楽しみで生きれてるとこあるし…″ なんていうセリフまで出てきたら大好きにならざるを得ないではないですか。あまつさえ、ふたりのヒロインがどちらも非常に良いんですよね。 片や、天城が勤める図書館に夫の遺言を携えてやってきた謎多き美女。1話終盤でその謎の一端が明かされ、3話や巻末のおまけで更なる魅力が明かされます。綺麗さとかわいさを併せ持つだけではなく、食に貪欲なところや表情豊かで感受性も高く世界観を持っているところも非常に良いです。 一方、天城の幼馴染の空岡も、登場から僅か3ページで好きになる要素しか出てこないと思わせてくれる人物。3話では、そのかわいさが爆発します。何と言っても幼馴染ですので。幼馴染からしか摂れない栄養があります。 マンガなのでどちらか片方のルートしかないわけですが、これがゲームならどちらのシナリオも楽しみたい。甲乙つけ難い。 決めゴマの大胆さや表情の繊細な魅力も素晴らしいです。 それにつけてもやはり、根底に流れるのが冒頭1P目で描かれるような″想い″であるところに一番強く惹きつけられます。 巻末のおまけを見るだに、東雲さんはグルメマンガの才能もおありのようで。けんさ焼きは近々作ってみたいです。

逢いたくて、島耕作

不安しかないが…

逢いたくて、島耕作 弘兼憲史 諏訪符馬
名無し

島耕作のスピンオフはコケまくってるからこれも地雷臭しかしない。まず令和の現代にシマコー好きな大学生なんて設定が無理があるし、作中で主人公が「スピンオフ含む全1200話を1000回以上読んだ」とヤケクソめいたこと言ってるのも説得力がない。そんなの物理的に不可能に決まってんだろ。やたらと数字盛るだけで説得力が何もない。シマコー愛を語る割に現状それらしい描写もないのはいただけない。 島の出世で不幸になった今野を救う話らしいが、正直今野よりも救ってほしいキャラは他に山ほどいるんだよな。 あとは台詞もやたら長い。長々と説明台詞だらけで読むのもただただしんどい。聞いた話だとこれでも台詞の量削った方だというから困惑しかない。 そして何より申し訳ないが絵がヘタクソ。これに尽きる。 まあ色々酷評したけどまだ1話だから様子見だろうか。主人公はシマコーシリーズを「聖典」とまで言って前述のように読みまくり「どのページにどんな台詞があったかも頭に入ってる」と豪語しているので、半端なことは絶対できないくらいにハードルが上がってるので、どんなマニアックな知識が出てくるかという点は期待したい。