Deadmeat Paradox 電子限定『義父の息子』収録版

ゾンビを守る弁護士が目指す世界とは

Deadmeat Paradox 電子限定『義父の息子』収録版 金田サト
ANAGUMA
ANAGUMA

この作品に出てくるゾンビが面白いのは「死んでいる」以外はほとんど人間と変わらないところ。理性もしっかりあるのでコミュニケーションを取ることだって問題なく出来るのですが、気味悪がられたり、労働力として搾取されるなど差別の対象でもあります。 そして主人公・ゴールドはトラブルに巻き込まれがちなゾンビからの相談を受け付ける弁護士という絶妙な設定です。もし「人とほぼ変わらないゾンビ」がいたらこの世界でどんな問題が起こるんだろうというのを想像させるのにピッタリの仕事ですよね。 自分にかけられた生命保険を死んでいるゾンビは受け取れるのか(!)という問題に端を発し、事態はゾンビのありようを問う裁判に発展していきます。生と死の境界、人権と差別、それらを規定する法のあり方、といったテーマを現実の社会とも比べながら読み解いていける構造になっているのが鮮やかです。 エンディングは裁判の決着を経て世界がどう変わったのかがわかるまで。ゴールドの人物像から受けた印象と同様、結末もスマートで素敵でした。 1巻で綺麗にまとまっているとは思うのですが、もう少しこの世界の物語を見ていたかったというのが本音!色んなストーリーが作れそうだなと…。そう思わせてくれる魅力的な世界と人物が描かれていた作品でした。

あやかしメルヒェン

座敷わらし、ドイツに降り立つ。 #1巻応援

あやかしメルヒェン 白乃雪
sogor25
sogor25

就職浪人中のコテツの家には、祖母の代から棲み着いている花緒という座敷わらしがいます。 霊感の全くないコテツは花緒のことを認識していませんが、花緒はコテツのことを慕っており、座敷わらしとして彼のことを守ると決意しています。 ある日、帰りの遅いコテツを迎えに行くために少し家を離れた花緒でしたが、 その瞬間にコテツの家に雷が落ち、部屋が全焼してしまいます。 しかし、焼け残りを整理していたコテツは何を思い立ったのか、ワーキングホリデーのために海外に飛び立ち、ドイツの「黒い森」にあるシェアハウスに住み始めます。 この作品は、そんなコテツに付いていった花緒とシェアハウスに棲むドイツのあやかしとの日常を描く物語です。 物語は基本的には人間には視認できないあやかしたちの視点で描かれています。 コテツが訪れたシェアハウスには不思議と各国のあやかしが集まり、日本のあやかしとの違いに花緒は毎度驚かされています。 特に、コテツのことを守ろうとする花緒と人間を敵視する精霊・ラッツェルとのいがみ合いが引き金になって騒動が巻き起こるのですが、気付いたら丸く収まっている、そんな様子が微笑ましい作品です。 また、花緒のことを認識していないコテツとそんな彼を慕う花緒の関係性もとても魅力的で、コテツが花緒を認識していないので一方通行ではあるのですが、人間と人外とのパートナーのようにも読める作品です。 1巻まで読了

決してマネしないでください。

論理と愛嬌が溢れる学者バカのストーカー・コメディ

決してマネしないでください。 蛇蔵
名無し

学者や研究者といえば、頭が良い人なのは間違いない。 だがその分、人間的な面白みに欠ける、とか 世間知に欠ける、コミュ障、といった負のイメージを 抱かれやすい感じもする。 論理的=冷静≒冷血、というか。 実際にはそうでもないだろう(と思いたい)けれども、 漫画的にはソッチのほうがわかりやすく面白いのか、 とかく漫画では学者や研究者はロボットみたいな人間に 描かれがちに思う。 この漫画の主人公の掛田氏も完ぺきな理系人間で 色々とコミュ障な面はある。 しかし掛田氏も周りの人達も、十分に人間的で感情的だ。 女性が極端に少ない工科医大で学食のお姉さんに 恋をしてしまい、なんとか親しくなりたいと アプローチを試みる。 掛田氏の友人や教師も彼の恋を応援し手助けをする。 何度失敗してもあきらめずに。 ただしそのアプローチ手法が徹底して理系的というコメディ。 だがその理系的手法や周囲の協力からあふれ出している 愛嬌がたまらない。 その上に、あふれ出す愛嬌が、理系的でサラッとしていて 全然ベタベタ湿っぽくなく、一歩間違えれば キモくてエロいストーカーの世界になるところを 理系的な分だけわりと爽やか?に 笑えて楽しい世界になっていて、良い。 そして想われ人の飯島さん(学食のお姉さん)も、 結構ド天然なんだけれど凄く可愛らしい。 私的にはこれがツボった。 理系と天然の恋。面白過ぎる。