違国日記

違国日記

【電子限定!雑誌掲載時のカラー原画を特別収録!】35歳、少女小説家。(亡き母の妹) 15歳、女子中学生。(姉の遺児) 女王と子犬は2人暮らし。少女小説家の高代槙生(こうだいまきお)(35)は姉夫婦の葬式で遺児の・朝(あさ)(15)が親戚間をたらい回しにされているのを見過ごせず、勢いで引き取ることにした。しかし姪を連れ帰ったものの、翌日には我に返り、持ち前の人見知りが発動。槙生は、誰かと暮らすのには不向きな自分の性格を忘れていた……。対する朝は、人見知りもなく、“大人らしくない大人”・槙生との暮らしをもの珍しくも素直に受け止めていく。不器用人間と子犬のような姪がおくる年の差同居譚、手さぐり暮らしの第1巻!
女の園の星

女の園の星

【電子限定!描き下ろし特典ペーパー収録】「声を出して笑った」の声、続出!!! 漫画賞総ナメ『夢中さ、きみに。』の和山やま初連載! ある女子校、2年4組担任・星先生。生徒たちが学級日誌で繰り広げる絵しりとりに翻弄され、教室で犬のお世話をし、漫画家志望の生徒にアドバイス。時には同僚と飲みに行く…。な~んてことない日常が、なぜこんなにも笑えて愛おしいんでしょう!? どんな時もあなたを笑わせる未体験マンガ、お確かめあれ! 電子版にも本体表紙を収録!
私はカレン、日本に恋したフランス人

私はカレン、日本に恋したフランス人

【電子限定!描き下ろし特典ペーパー収録】1996年、日本。1人のフランス人が成田空港に降り立った。フランス生まれフランス育ちのフランス人女性・カレン(26)。パリのテレビ局で技術部長として日々奮闘する彼女が5週間の長期休暇の先として選んだのは、それまで全く縁もゆかりもなかった国―― 日本だった! 軽い気持ちで訪れた日本で、彼女の人生は大きく変わる。清潔な空港、定刻通りに動くシステム、雑多な渋谷の街並み、ガングロギャル、山手線のアナウンス、ガラケーとiモード、歌舞伎、着物、ウォシュレット……。彼女を魅了した様々な「日本」は、意外にもあなたの傍にある。主人公カレンの日本との出会いから、日本人との結婚、母国と全く違う日本での育児に奮闘するまでの23年間を描く、ちょっぴりノスタルジックな異文化エッセイ漫画!
こちらから入れましょうか?…アレを

こちらから入れましょうか?…アレを

新婚2年。優等生人生歩んできた俺・高遠敦が愛しの妻・優とできなくなって3ヶ月。俺より妻の方が経験豊富だったことに劣等感が生まれ、いつしか男として機能しなくなっていた。妻のことが好きだからこそ、できないのに困っている…。そんなある日、優が入手してきたのはペニ○ンだった。※女性が男性に入れる用のお道具。………えっ俺が入れられんの? 想定外の事案すぎるんだが??? だけど、それで2人の危機を乗り越えるなら――? 夫婦円満のため俺は覚悟を決めた。したい妻×デキない夫……+妻を仕込んだ元彼。脱レス!? 夫婦エロコメ第1巻!
たか
たか
2020/10/29
鏡のように退屈なスケーターと超一流バレエダンサーの出会い
新刊ページで見つけフィギュアスケートということでホイホイ釣られて1話を試し読みしたところ(元スケオタ)、主人公の設定がものすごく面白くて思わず購入してしまいました。 https://twitter.com/MJ_FF_ed/status/1319745411427565569?s=20 というのも、主人公・いばらは最高峰の技術を持った世界レベルの選手でありながら、競技者としての勝利への欲も、表現者としての情熱も全くないという無味乾燥な青年。試合では必ず大技を失敗するから、観客には演技時間をトイレ休憩扱いされる始末。 新たに振付師として紹介されたロシアの超一流バレエダンサー・ヴァシリーには 「日本でフィギュアスケートって公務員だったりする?」 「もしかして年金は早くからもらえたりする?」 「社会的な地位が約束されている?」 と(ロシアっぽい)質問攻めにされ、「スケートなんて好きじゃないけど家族のために滑ってる、わけではない」ということを念入りに確認され、出会い頭に「好きでやってるにしちゃ酷い演技だ」と歯に衣着せぬ評価を下される。 いばらはそれに対して、顔を引きつらせて硬直するわけでもなく、怒り狂ったり泣きわめくわけでもなく、曖昧に微笑みを浮かべて自分のために怒るコーチを宥めるだけ…と、もうこれだけで面白い……!! そんな選手面白すぎる。 https://twitter.com/JOEfyfs/status/1317799300353597441?s=20 実際いばらは振付師をワクワクさせるような高い技術を持った選手なんだけど、振り付けを作ってみても彼自身になんの情動もないために、「鏡やオウムみたい」で退屈だと思われてしまう有様。 この「どうやったらそんな情緒が死んだ状態で競技者として世界最高レベルまで登りつめることができるんだよ……!?」 という疑問が、しっかりと上下巻かけて答え合わせされてすごくよかったです。 上巻では、20歳にもなった一流アスリートの息子の選曲や衣装に口を出すという背景情報から、「あっ…お母さんヤバそう(察し)」とじわじわ伝わって来て、「日本人だからシャイ()」というだけでは説明のつかない、ヤバいまでの自己主張のなさの原因が推測出来ます。 そして下巻でついにそのお母さんが登場するわけですが、想像通りまあとんでもない毒親で…胸糞悪かったです。(しかもその流れでサラリといばらが幼少期に不審者から性暴力を受けていたことも明らかになります) 上下巻を通じて、大きな成功、勝利のカタストロフがないところが特徴的でそれがすごく素晴らしい点だなと思います。 「20歳の男の子がほんの少しだけ良い方向に変化するだけのお話」。はたから見たら取るに足りない些細な成長だけど、本人や周囲の人間(そして読者)にとっては驚天動地の変化を切り取って描いている、というのが素敵だなと思います。 そして何より、この作品を語るうえで外せないのが、とんでもない絵の耽美さ……!! https://i.imgur.com/BHfGzPs.png (『アクトアウト 下』冬房承) 「版画のように平面的なのに、顔はギリシャ彫刻のように立体的」という画風なんですよね。もう完全に「美」ただそれだけを追求していて、そこに独自の執念すら感じました。特に筋肉と瞳に命を賭けているのがビンビン伝わってきます。 さらに絵で特徴的なのが、カメラの位置(構図)です。 9割方、対象を正面から描いていて、煽り・俯瞰はほぼありません。むしろ俯瞰のカットでも何故か平面的に見えてきます。 コマ割りが少女漫画的なうえに、少年漫画のスポーツやアクションシーンで迫力を出すために人の絵に重ねて描く効果線がないために、突然選手同士が衝突したり、いきなり胸ぐらを掴むシーンの迫力がちょっとびっくりするくらいありません。 けど「それでいいのだ!!」と思えるくらい、作品全体が「自分はこういう美を表現したいんだ」という独自の美意識に溢れていて素晴らしかったです。神聖さを感じるほどに、美しい…。 上下巻で完結していますが、芸術に身を捧げた超一流のアーティストであるヴァシリーと出会い親の呪縛から解放され情緒が芽生えたいばらが、表現する心を手に入れたことで一体どれほどの選手となるのか。もうメチャクチャ気になります。これは続編出てほしい…! 【連載ページ】 https://www.shodensha.co.jp/mangajam/jam022.html https://twitter.com/JOEfyfs/status/1320364798010224640?s=20
影絵が趣味
影絵が趣味
2020/10/10
交わらない視線のメロドラマとして
表題作の『デイト』を始めとして、南Q太の漫画のキャラたちは、大抵ひとりあらぬ方角に視線を向けている。メロドラマの描き手として、南Q太は、もうたったのこれだけのことで勝利しているといっても過言ではありません。 メロドラマですから、お年頃の男女が出合う。まあ、南Q太のばあいは、男と男のときもあれば、女と女のときもありますけど、性別はどうであれ、必ずといっていいほど出会った二人が視線をたがいに介そうとしないのです。デビュー当初から比較的ラフな線画でドライなメロドラマをいくつも描いていますが、どれもキャラの黒目には力が入っている。とりわけ、その黒目がどの方角を向いているのかが如実に描かれているのです。 南Q太はこのように視線を中心にしてメロドラマを構築する。視線がたがいに交わらないということで、そこに何かしらの関係性を描いてしまうのです。 表題作の『デイト』で言うなれば、まず交わらない視線劇の積み重ねがあり、その状況を打開するために、居酒屋の座敷で向かい合う男女、のぶおくんはテーブルの下に足を伸ばして、みどりさんのひざを小突く。これが決定的な瞬間となるわけです。視線は交わらないし、会話だって上手くいかないのは分かっている、だからこそ、この些細な行動が決定的な瞬間として利いてくる。事実、次のページで二人はラブホテルにいて、やっぱりおかしいよ、とか何とか言いながら身体を重ねてしまいます。そして、事後にはまた交わらない視線にもどってしまうんですけど、二人の関係性は事前とは大きく変わっているのです。
世界は寒い

世界は寒い

女子高生の殺人計画―― 「殺したいやつが居ない人間なんか居ねえだろ?」それは、閉店間際のフードコートに忘れられていた。紙袋に入った拳銃を拾ったのは、バイトの女子高生6人組。突然手に入れた武器を前に、彼女たちは思い浮かべる。裏切られた元カレ、生き別れた父親、支配的な母親―― あるいは自分自身。自分たちの世界をより良くするために、消えてほしいと願う人間を…。「女子高生がひとを殺すなんて誰も思わない。これってチャンスじゃないの?」
婚姻届に判を捺しただけですが

婚姻届に判を捺しただけですが

病めるときも健やかなるときも愛し合わないことを誓います。「世間の目を欺くために、俺と結婚してください」彼氏、いない。飲んでくれる友達、いる。仕事、めちゃくちゃ楽しい! そんなわけで、大加戸明葉(おおかど あきは・27歳)の結婚願望、特になし。ところがそんな日常の中、突然降って湧いた電撃プロポーズ! 相手は30分前に出会ったばかりの文芸編集者・百瀬柊(ももせ しゅう)。仕事はできるがコミュ障(ただし美形)の百瀬は、とある理由から“既婚者”の肩書きを手に入れるため、偽装結婚をしたいのだと言う。はじめは突っぱねた明葉だったが――!? 幸せな結婚って? 仲良し夫婦って…? 即席の偽装結婚夫婦がおくる、不意キュン必至のラブコメディ、第1巻! 巻末には電子限定特典も収録。
アクトアウト

アクトアウト

【電子限定!描き下ろし特典ペーパー収録】世界レベルの技術を持ちながらも大技では必ず失敗してしまう、無冠のフィギュアスケーター名雪いばら。腑抜けた演技を繰り返しスケートファンからも見放されつつあるいばらの元に、かつて『神童』と謳われたバレエダンサー ヴァシリー・ミハイロヴィチがやって来る。「芸術も闘争も楽しめないクセにどうしてリンクにいるの?」芸術(バレエ)に身を捧げたヴァシリーからの問いかけに返す言葉もないいばらだが、次の国際大会はもう目前まで迫ってきており…。
違国日記

違国日記

【電子限定!雑誌掲載時のカラー原画を特別収録!】35歳、少女小説家。(亡き母の妹) 15歳、女子中学生。(姉の遺児) 女王と子犬は2人暮らし。少女小説家の高代槙生(こうだいまきお)(35)は姉夫婦の葬式で遺児の・朝(あさ)(15)が親戚間をたらい回しにされているのを見過ごせず、勢いで引き取ることにした。しかし姪を連れ帰ったものの、翌日には我に返り、持ち前の人見知りが発動。槙生は、誰かと暮らすのには不向きな自分の性格を忘れていた……。対する朝は、人見知りもなく、“大人らしくない大人”・槙生との暮らしをもの珍しくも素直に受け止めていく。不器用人間と子犬のような姪がおくる年の差同居譚、手さぐり暮らしの第1巻!
こちらから入れましょうか?…アレを

こちらから入れましょうか?…アレを

新婚2年。優等生人生歩んできた俺・高遠敦が愛しの妻・優とできなくなって3ヶ月。俺より妻の方が経験豊富だったことに劣等感が生まれ、いつしか男として機能しなくなっていた。妻のことが好きだからこそ、できないのに困っている…。そんなある日、優が入手してきたのはペニ○ンだった。※女性が男性に入れる用のお道具。………えっ俺が入れられんの? 想定外の事案すぎるんだが??? だけど、それで2人の危機を乗り越えるなら――? 夫婦円満のため俺は覚悟を決めた。したい妻×デキない夫……+妻を仕込んだ元彼。脱レス!? 夫婦エロコメ第1巻!
後ハッピーマニア

後ハッピーマニア

【電子限定!雑誌掲載時のカラー扉&おまけマンガ収録】かつて、ハッピーを追い求めあまたの男たちと20代を暴走した女がいた。彼女の名はカヨコ(旧:シゲカヨ)。恋に恋した時代もあったけど、フツーでまじめな男タカハシと結婚し、気づけばまさかの15年。だが… しかし!! カヨコにぞっこんだったはずのタカハシから、突然「好きな人と付き合いたい」と離婚を突きつけられる……! 45歳、専業主婦。子供なし、スキルなし、金なし。別れたくないのは、愛してるから? 生活を失いたくないから? 大大大ピンチの崖っぷちで、カヨコはふたたびハッピーを求めてさ迷いはじめるのであった! ※おまけマンガは2017年に掲載された「後ハッピーマニア」プロトタイプ版のフィール・ヤング本誌9月号の再掲載記念で描かれた紙の単行本未収録マンガです。

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たか
たか
2020/10/29
鏡のように退屈なスケーターと超一流バレエダンサーの出会い
新刊ページで見つけフィギュアスケートということでホイホイ釣られて1話を試し読みしたところ(元スケオタ)、主人公の設定がものすごく面白くて思わず購入してしまいました。 https://twitter.com/MJ_FF_ed/status/1319745411427565569?s=20 というのも、主人公・いばらは最高峰の技術を持った世界レベルの選手でありながら、競技者としての勝利への欲も、表現者としての情熱も全くないという無味乾燥な青年。試合では必ず大技を失敗するから、観客には演技時間をトイレ休憩扱いされる始末。 新たに振付師として紹介されたロシアの超一流バレエダンサー・ヴァシリーには 「日本でフィギュアスケートって公務員だったりする?」 「もしかして年金は早くからもらえたりする?」 「社会的な地位が約束されている?」 と(ロシアっぽい)質問攻めにされ、「スケートなんて好きじゃないけど家族のために滑ってる、わけではない」ということを念入りに確認され、出会い頭に「好きでやってるにしちゃ酷い演技だ」と歯に衣着せぬ評価を下される。 いばらはそれに対して、顔を引きつらせて硬直するわけでもなく、怒り狂ったり泣きわめくわけでもなく、曖昧に微笑みを浮かべて自分のために怒るコーチを宥めるだけ…と、もうこれだけで面白い……!! そんな選手面白すぎる。 https://twitter.com/JOEfyfs/status/1317799300353597441?s=20 実際いばらは振付師をワクワクさせるような高い技術を持った選手なんだけど、振り付けを作ってみても彼自身になんの情動もないために、「鏡やオウムみたい」で退屈だと思われてしまう有様。 この「どうやったらそんな情緒が死んだ状態で競技者として世界最高レベルまで登りつめることができるんだよ……!?」 という疑問が、しっかりと上下巻かけて答え合わせされてすごくよかったです。 上巻では、20歳にもなった一流アスリートの息子の選曲や衣装に口を出すという背景情報から、「あっ…お母さんヤバそう(察し)」とじわじわ伝わって来て、「日本人だからシャイ()」というだけでは説明のつかない、ヤバいまでの自己主張のなさの原因が推測出来ます。 そして下巻でついにそのお母さんが登場するわけですが、想像通りまあとんでもない毒親で…胸糞悪かったです。(しかもその流れでサラリといばらが幼少期に不審者から性暴力を受けていたことも明らかになります) 上下巻を通じて、大きな成功、勝利のカタストロフがないところが特徴的でそれがすごく素晴らしい点だなと思います。 「20歳の男の子がほんの少しだけ良い方向に変化するだけのお話」。はたから見たら取るに足りない些細な成長だけど、本人や周囲の人間(そして読者)にとっては驚天動地の変化を切り取って描いている、というのが素敵だなと思います。 そして何より、この作品を語るうえで外せないのが、とんでもない絵の耽美さ……!! https://i.imgur.com/BHfGzPs.png (『アクトアウト 下』冬房承) 「版画のように平面的なのに、顔はギリシャ彫刻のように立体的」という画風なんですよね。もう完全に「美」ただそれだけを追求していて、そこに独自の執念すら感じました。特に筋肉と瞳に命を賭けているのがビンビン伝わってきます。 さらに絵で特徴的なのが、カメラの位置(構図)です。 9割方、対象を正面から描いていて、煽り・俯瞰はほぼありません。むしろ俯瞰のカットでも何故か平面的に見えてきます。 コマ割りが少女漫画的なうえに、少年漫画のスポーツやアクションシーンで迫力を出すために人の絵に重ねて描く効果線がないために、突然選手同士が衝突したり、いきなり胸ぐらを掴むシーンの迫力がちょっとびっくりするくらいありません。 けど「それでいいのだ!!」と思えるくらい、作品全体が「自分はこういう美を表現したいんだ」という独自の美意識に溢れていて素晴らしかったです。神聖さを感じるほどに、美しい…。 上下巻で完結していますが、芸術に身を捧げた超一流のアーティストであるヴァシリーと出会い親の呪縛から解放され情緒が芽生えたいばらが、表現する心を手に入れたことで一体どれほどの選手となるのか。もうメチャクチャ気になります。これは続編出てほしい…! 【連載ページ】 https://www.shodensha.co.jp/mangajam/jam022.html https://twitter.com/JOEfyfs/status/1320364798010224640?s=20
兎来栄寿
兎来栄寿
2019/01/31
この短篇集に収録された「青いサイダー」はあまりにも天才的!
読み始めてすぐに衝撃を受け、読み終えると五秒ほど深く嘆息しながら、その卓越したセンスに拍手を送るばかりでした。漫画読みでいて良かった、と心の底から思えた作品です。そして、何度か読み返す内に涙すら零れて来ました。 町田洋先生のこれまでの作品は、イメージでいえば圧倒的に「夏」。自分の中にある過去の夏の情景が想い起こされます。しかし、それは常夏の南国のような陽気な夏ではありません。どちらかと言えば、夏休みのプール教室に行ったものの知り合いが誰もおらず蝉時雨の中で歩んだ孤独な帰り道や、最後の一本の線香花火の火が消えて後片付けをしている時のような、鮮烈な季節の中にある陰。夏の終わりに存在する、独特の寂しさのようなものを感じさせます。そして、それは切なくもどこか仄かに温かです。   ■ 町田洋、その誉れ高き新鋭 町田洋先生は、そもそもが珍しい経歴の作家です。元々は自サイトで漫画を掲載していた所、電脳マヴォに掲載。そして、デビュー作となる前短篇集、『惑星9の休日』が、描き下ろし単行本として祥伝社から昨年刊行されました。今の時代、連載も無く単行本が出される、しかも新人が、というのは非常に稀なケースです。ネットの海の中で人知れず花を開いていた才能が発掘され、そうして特殊なルートでデビューを果たすことができたということは、マンガ業界における一つの希望でもあります。 それに続き、電脳マヴォに掲載された三作品を中心に、描き下ろしとして8ページの短編「発泡酒」を加えて書籍化されたのが、二冊目となる『夜のコンクリート』。その内の一作「夏休みの町」は、文化庁メディア芸術祭で新人賞を受賞しています。 ちなみに、『夜とコンクリート』刊行にあたって、最初は電脳マヴォに「青いサイダー」だけを残すことが町田先生に提案されたそうです。しかし、その提案とは逆に町田先生は「青いサイダー」のみを掲載作から外すことを要望したのだとか。私はそのエピソードを知って、とても納得が行きました。それは、言い換えれば他の2篇をWEBで読んで既読の状態であっても、本を買った時に「青いサイダー」さえ読んで貰えれば満足して貰えるだろうという自信の表れではないでしょうか。   ■ かつて見たこともない描線が織りなす、独特の世界 町田洋先生の描く絵は、シンプルですがそれ故にエモーショナルです。 表題作「夜とコンクリート」と「発泡酒」ではフリーハンドで、「夏休みの町」では定規を使った作画になっています。 その中で、異彩を放つのが「青いサイダー」。この作品だけは、全ての絵も書き文字も、Windowsのペイントで描いたかのように直線のみで構成されています。 数多くの漫画作品に触れて来た私ですが、かつて出逢ったことのない画面作りにまず衝撃を受けました。 『夜とコンクリート』P109 > この島はシマさんという > ステレオタイプな島だねと > 人はいうだろうけど > まぎれもなく僕の友人なのだ という、1ページ目から始まる「青いサイダー」。何を言ってるか解らないと思いますが、私も解りませんでした。しかし、このちょっと掴み辛い物語、読み進め、じっくり咀嚼するとその味わい深さに唸らされて行きます。 近年の中でも、町田洋先生は静寂を紙の上に現出させるのが一番上手い作家です。敢えて何も語らせない、キャラクターが無言でいるコマの多さ。そして、どこまでも静謐を感じさせる広漠な風景。それらは謂わばミロのヴィーナスの両腕のようなもので、無限の想いの余地が茫洋として広がり行きます。ぽっかりと開いた空間に夏の匂いと追憶を感じながら、そこに成長と共にある大人になることへの寂寥感、それとコントラストを成す大人として世界の要請に付き合ったが故に生じた後悔といった繊細な情動がもたらされ、胸を締め付けられます。   ■ 今年の夏の傍らに、町田洋を 「夜とコンクリート」「夏休みの町」「青いサイダー」「発泡酒」という四篇によって構成されるこの本は、一冊の短篇集として総体的にも完成度が高いです。「夏祭り」や「夏影 -summer lights-」を夏が来る度に聴きたい曲だとすれば、『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』は夏が来る度に読みたいマンガ。 是非、夏の夜に一人静かになれる場所で、町田洋という海に潜ってみて下さい。漫画の世界の無限性を改めて感じさせてくれる、清冽なる才気がそこに輝いています。
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たか
たか
2020/10/29
鏡のように退屈なスケーターと超一流バレエダンサーの出会い
新刊ページで見つけフィギュアスケートということでホイホイ釣られて1話を試し読みしたところ(元スケオタ)、主人公の設定がものすごく面白くて思わず購入してしまいました。 https://twitter.com/MJ_FF_ed/status/1319745411427565569?s=20 というのも、主人公・いばらは最高峰の技術を持った世界レベルの選手でありながら、競技者としての勝利への欲も、表現者としての情熱も全くないという無味乾燥な青年。試合では必ず大技を失敗するから、観客には演技時間をトイレ休憩扱いされる始末。 新たに振付師として紹介されたロシアの超一流バレエダンサー・ヴァシリーには 「日本でフィギュアスケートって公務員だったりする?」 「もしかして年金は早くからもらえたりする?」 「社会的な地位が約束されている?」 と(ロシアっぽい)質問攻めにされ、「スケートなんて好きじゃないけど家族のために滑ってる、わけではない」ということを念入りに確認され、出会い頭に「好きでやってるにしちゃ酷い演技だ」と歯に衣着せぬ評価を下される。 いばらはそれに対して、顔を引きつらせて硬直するわけでもなく、怒り狂ったり泣きわめくわけでもなく、曖昧に微笑みを浮かべて自分のために怒るコーチを宥めるだけ…と、もうこれだけで面白い……!! そんな選手面白すぎる。 https://twitter.com/JOEfyfs/status/1317799300353597441?s=20 実際いばらは振付師をワクワクさせるような高い技術を持った選手なんだけど、振り付けを作ってみても彼自身になんの情動もないために、「鏡やオウムみたい」で退屈だと思われてしまう有様。 この「どうやったらそんな情緒が死んだ状態で競技者として世界最高レベルまで登りつめることができるんだよ……!?」 という疑問が、しっかりと上下巻かけて答え合わせされてすごくよかったです。 上巻では、20歳にもなった一流アスリートの息子の選曲や衣装に口を出すという背景情報から、「あっ…お母さんヤバそう(察し)」とじわじわ伝わって来て、「日本人だからシャイ()」というだけでは説明のつかない、ヤバいまでの自己主張のなさの原因が推測出来ます。 そして下巻でついにそのお母さんが登場するわけですが、想像通りまあとんでもない毒親で…胸糞悪かったです。(しかもその流れでサラリといばらが幼少期に不審者から性暴力を受けていたことも明らかになります) 上下巻を通じて、大きな成功、勝利のカタストロフがないところが特徴的でそれがすごく素晴らしい点だなと思います。 「20歳の男の子がほんの少しだけ良い方向に変化するだけのお話」。はたから見たら取るに足りない些細な成長だけど、本人や周囲の人間(そして読者)にとっては驚天動地の変化を切り取って描いている、というのが素敵だなと思います。 そして何より、この作品を語るうえで外せないのが、とんでもない絵の耽美さ……!! https://i.imgur.com/BHfGzPs.png (『アクトアウト 下』冬房承) 「版画のように平面的なのに、顔はギリシャ彫刻のように立体的」という画風なんですよね。もう完全に「美」ただそれだけを追求していて、そこに独自の執念すら感じました。特に筋肉と瞳に命を賭けているのがビンビン伝わってきます。 さらに絵で特徴的なのが、カメラの位置(構図)です。 9割方、対象を正面から描いていて、煽り・俯瞰はほぼありません。むしろ俯瞰のカットでも何故か平面的に見えてきます。 コマ割りが少女漫画的なうえに、少年漫画のスポーツやアクションシーンで迫力を出すために人の絵に重ねて描く効果線がないために、突然選手同士が衝突したり、いきなり胸ぐらを掴むシーンの迫力がちょっとびっくりするくらいありません。 けど「それでいいのだ!!」と思えるくらい、作品全体が「自分はこういう美を表現したいんだ」という独自の美意識に溢れていて素晴らしかったです。神聖さを感じるほどに、美しい…。 上下巻で完結していますが、芸術に身を捧げた超一流のアーティストであるヴァシリーと出会い親の呪縛から解放され情緒が芽生えたいばらが、表現する心を手に入れたことで一体どれほどの選手となるのか。もうメチャクチャ気になります。これは続編出てほしい…! 【連載ページ】 https://www.shodensha.co.jp/mangajam/jam022.html https://twitter.com/JOEfyfs/status/1320364798010224640?s=20
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