カワセミさんの釣りごはん

釣りJKマンガ、流行ってきてる?

カワセミさんの釣りごはん 匡乃下キヨマサ
さいろく
さいろく
ゆるキャン△の釣り版のような感じ(雑) 放課後ていぼう日誌もそうだけど、どちらも釣りのアドバイスが細かく載っていて釣りをしてみたくなる。いいマンガだ。。。 こちらも九州ではあるが福岡が舞台であるというところで釣れる魚や時期なんかにも違いが出るのかな(放課後ていぼう日誌は熊本の県南なので九州の北東と南西で結構違う) 方言は似てそうだけどこっちは方言が強めである。 どちらも女子4人であり、この辺はもうけいおん!からの鉄板のような布陣なのだろう、きっと。 これが3人だと深淵に潜む百合要素が顔を出しづらいのだろう。きっとそう。 釣りごはん、最初は絵柄が安定しない感が強くて結構シワの描き方とかシルエットに癖がある+描きたいことが多すぎてゴチャついてしまってた感があったけど(あと肉感が強調されすぎ)4巻あたりからコメディタッチのノリが板についてきてまとまってきているというか、読みやすさが上がった。 そしてやはりオッサンはたまにしか出てこない方がいいのだと思った。 序盤はヒロイン(?)の兄だったり職場の人だったりオッサンの出番多かったけど、あんま人増やさない方がわかりやすい(考えてみたらその下り必要なかったねって話なら最初から居ないほうがいい)と編集が判断したのか、それともセンセイが学習されているのかわからないが、とにかく良くなってきているので応援していきたい。 にしても主人公ちゃんの身長設定低すぎる気はする。
先生の子を妊娠しました

不朽の名作が電子で復活 #1巻応援

先生の子を妊娠しました きづきあきら サトウナンキ
兎来栄寿
兎来栄寿
きづきあきらさん&サトウナンキさんの過去作品『いちごの学校』が、改題され電子書籍として刊行されました。 きづきあきらさん&サトウナンキさんといえば、人間の闇や病みを描くことに定評のあるコンビで私は名前を見掛けたら必ず作家買いするほど好きです。代表作は『ヨイコノミライ』や『うそつきパラドクス』などが挙げられると思いますが、場合によってはこちらを最高傑作と推す人もいるほどの名作です。 改題された新タイトルの通り、本作は女生徒が先生と関係を持ち子供を孕んでしまう物語です。一般的な恋愛マンガでは、男性教師×女生徒という組み合わせはそれなりにポピュラーなジャンルです。しかし、本作の場合はそれが非常にリアルで重いものとして描かれます。 特に印象的なのは、女生徒を妊娠させた主人公の「責任」。「責任を取る」と口で言うのは簡単でも、実際にそうなってしまった時にどうするのが「責任を取る」ことになるのか。相手に対して、相手の親に対して、自分の親に対して、学校に対して、同僚に対して、生徒に対して、そして自分の子供に対して。 愛する気持ちがすべてに勝る甘美で絶対的なものだったとしても、その先にある果たすべき道義や免れない誹りと向き合った時に、生身の人間はどうしたって削れます。現実がそれほど容易くないことを、重みを持って描いています。 主人公が受け持つ現国のテストのように曖昧な部分はあったとしても、それでも学校のテストには答があります。しかし、人生には定型の答はありません。幸せとは相対比較したり誰かに決められるものではありませんが、それでも愛する人と結ばれ愛する人との間の子を授かった彼らが、本当に幸せと言えるのだろうかと考えずにはいられません。 引用される『星の王子さま』や『ひかりごけ』やボードレールなども人によって解釈が様々に分かれる作品であり、そのことを一層強調しているように感じます。 1話ラストの ″自分の命が自分のために存在しなくなった とりあえず今 それだけはわかるんだ″ というモノローグが昔からとても好きでしたが、かつて読んだときよりも実感を伴っています。 余談ですが、甘々な夫婦生活部分と学生時代のツンツンな時の対比をシンプルなラブコメとして描いたら今のTwitterではバズりそうだなぁと詮無きことを思いました。
黒猫は泣かない。新装版

欠けているから、誰かの救いになり得る #1巻応援

黒猫は泣かない。新装版 寺田浩晃
兎来栄寿
兎来栄寿
″教室にいるほとんどの人にはわからなかったとしても、隅っこで窓の外を見て 実は泣いてる、そんな子を見つけ出して、大丈夫だよ。と言ってあげられるような、 そんな作品が描きたいといつも思っています。 それは商業的に見たらとても頭の悪いことなのかもしれないし、 数字の面で言えば需要はあまりないのかもしれないけど、それでも僕はそういうものが好きだし、 そういうものに救われたし、 この先もそういう作品を死ぬまで描き続けると思います″ (作者解説より) そんな切なる想いで象られた作品を、どうして好きにならずにいられるでしょうか。 私は、物語の力を信じています。 私自身、物語があったからこそ今この瞬間まで生きていられているからです。 私を生かしてくれる素晴らしい作り手の方々には常々感謝し、尊敬しています。 本作は、寺田浩晃さんが2022年の5月にインディーズ版として刊行したものに加筆修正を加えた全国流通版。4篇の短編が収録されています。世界の片隅で喘いでいる人たちに届けたい物語群です。 表題作の「黒猫は泣かない。」は、優秀なOLになったが故に人間として大切なものを気付けば失ってしまっていた女性の話。自分の内なる声に耳を塞いで、気付かないフリをして心を麻痺させながら生きている人は今の時代多くいることでしょう。日々の行動や選択の積み重ねの中で、少しずつ自分が削られていき本当に大切なものを奪われてしまう……そんなことが起きないよう、まだ進路修正が効く内に進む方向を正したいものです。 「くろいりんごときいろいそら」は、この本の中でも特に大好きなお話です。多くの人と、自分が違うということの苦しさ。常識という名の幻想から外れたところにいるが故に、異端として排除され迫害されるのは人類の歴史上ずっと続く負の側面です。過去に比べれば現代は少しずつ良い方へ向かってはいますが、それでもまだ現実的にかず多く存在するこの哀しみや辛み。それでも、そんな痛みを背負って生きていた人を慰撫し、背中を押してくれるこの物語の優しさに世界における救い、物語の意味と可能性を感じます。最後の見開きは、とてもとても美しいものでした。 『世にも奇妙な物語』で実写化もされた「三途の川アウトレットパーク」の読切版は、設定の面白さがまずあります。三途の川の岸辺にアウトレットが建っているというアンバランスなヴィジュアルの珍妙さ。そして、前世の行動によって来世用の買い物ができるというシステム。その設定を十全に生かした展開の妙が光ります。私たちは、まだアウトレットに行く前なのでこれから徳を積んでいくことを選んでいけるでしょう。 最後の「ELECTOPIA」は、欠けた少女と少年の美しいお話です。現実には居場所がなく、それが虚構と解っていてもVRゲームの中でだけ生き生きと生きることができる主人公に共感する人も多いはずです。何を考えているか理解不能な少年の、素敵な幸せの見つけ方が好きです。生きている内に世界の美しさに気付けるのは、本当に幸せなことですね。 この短編集は、おでんで言うとちくわぶです。 なお、単行本購入者には豪華声優陣(春名風花さん、内山昂輝さん、ファイルーズあいさん、悠木碧さん、岡本信彦さんなど)によるボイスコミック動画の視聴権も付いてきます。第一線で活躍する声優さんたちが命を吹き込むと、一度読んだマンガもまた全然別の作品のように感じられます。
黒と誠 本の雑誌を創った男たち

『本の雑誌』立ち上げを描く、出版業界マンガ

黒と誠 本の雑誌を創った男たち カミムラ晋作
六文銭
六文銭
この手の業界漫画が好きなジャンルなのですが、今度は『本の雑誌』という、いわゆる小説の書評を掲載する雑誌をつくった椎名誠と目黒考二2人を中心に描いた話。 わたくし、これを読むまで、そういう雑誌があることを存じてませんでした。 ネットがない時代、情報はこういう雑誌が担っていたんだと痛感します。 また出版業界もイケイケだから、本は沢山うまれてくるわけで、その中から選定して紹介する、そしてそこにニーズを見出す慧眼はうなります。 最初は、2人で500部から自主制作かつ自腹でスタートして・・・というのもアツい。 何か大きなムーブメントになったものも、最初は小さな、本当に小さな個人の情熱だったりするの好きなんですよね。 ここに打算とかなく、まじりっけなしの純粋な動機だけで人を動かす感じ。 昭和の親父にはビンビン響きます。 雑誌や本とか、創り手の思いがこもったものは、それがなんであれいいもんだなとあらためて思いました。 とりあえず、御託はいいから、形にしてみるって大事ですね。 もともとの知名度のある2人に興味ある人はもちろん、出版業界全体の歴史に興味ある人はおすすめします。
んじゃま、ここらでお茶にしましょうか。

雲のように自由な旅路 #1巻応援

んじゃま、ここらでお茶にしましょうか。 胡桃ちの
兎来栄寿
兎来栄寿
多くの人が一度は夢見るかもしれない、何にも縛られず目的もない自由な旅。 筆者の過去作に登場した20歳の女性・キサが、各地を奔放に転々とながらその土地の人たちとお茶を楽しみながら交流をしたり、名所や名物を楽しんだりしていく4コママンガです。 「中学の時は3年間進学塾に通っていたけど時間の無駄だった」 「そのせいで綺麗な夕焼けや数十年に1度の流星群を見逃してもったいなかった」 「だから今は高校時代からバイトして貯めたお金が尽きるまで自由気ままに旅をする」 というキサのスタンスが好きです。 第一話から私の地元の世界遺産・吉野山がガッツリと出てきて驚かされました。春の桜だけでなく、新緑の夏や紅葉の秋、雪景色の冬とすべての季節に魅力があること、またその名の通りに数多くの桜を観ることができる「一目千本」を決めシーンで迫力たっぷりに描いてくださっていて嬉しかったです。柿の葉寿司や見目美しい桜羊羹なども地元民として親しんでいる品で、残念ながら桜の時期を逃して訪れたキサでしたがまた満開の桜も見にきて欲しいです。 試される大地で日本国内ではなかなか見られない景色を観たり、時には奇妙な労働もしたり、秘境の温泉に浸かったり、寂れた宿の再建に携わったり……。 筆者自身がコロナで旅に出掛けられなくなってしまった鬱憤を晴らすために描いたということですので、旅気分を味わいたい方は読んでみてはいかがでしょうか。