束の間の一花

余命短い女子大生が出会った"束の間の恋"の物語 #1巻応援

束の間の一花 タダノなつ
sogor25
sogor25

高校2年のときに病気が発覚し、余命2年と宣告された主人公の一花。 それでも彼女は普通に生活することを望み、家族以外に病気のことを伝えないままいつしか余命と言われた2年が過ぎ、大学にも進学することができました。 ただ、病気が治ったわけではなく、命の終わりを感じながら生きてきた一花。そんな彼女が大学で哲学の講師・萬木(ゆるぎ)と出会い、彼に思いを寄せ始めます。 徐々に萬木と交流を深めていく一花でしたが、ある日突然、彼女の知らないうちに萬木が大学を辞めたていことを聞かされます。 そんな彼女が駅で偶然萬木と再会するところから物語が動き始めます。 萬木との出会いにより生きる希望を見出していた一花は、彼との再会により更にその恋心を燃え上がらせていきます。 一方の萬木のほうも決して一花のことを蔑ろにしていたわけではないのですが、彼女に何も伝えずに大学を辞めたのには「ある理由」がありました。 互いが互いのことを想って接していて、両想いとも言える関係の2人なのに、一花の「余命」そして萬木の「ある理由」のためにその想いがすれ違ってしまう、そんな切ない様子が描かれる、2人それぞれにとっての"束の間の恋"の物語です。 1巻まで読了

見えない私の恋は不自由。【コミックス版】

"ロービジョン"な女性のままならない恋の行方 #1巻応援

見えない私の恋は不自由。【コミックス版】 ばにー浦沢
sogor25
sogor25

主人公の波川塔子は"ロービジョン"と呼ばれる、視覚に障害のある女性です。 彼女の場合は遺伝性の近視で、高校の頃はメガネで視力矯正できていたのですが、25歳を過ぎた頃から視野が狭くなり、現在では本人曰く「トイレットペーパーの芯を覗いたみたいな状態」になっていました。 そんな彼女と職場の同僚や付き合って5年の彼氏の尚、そして職場で偶然再会した高校の後輩・鈴本との関係を描く作品です。 いわゆる視覚障害者を描いている作品ではありますが、視覚障害といってももちろんその症状や境遇は人それぞれで、主人公の塔子の場合はサポートが必要なときはあるものの他の人と同じようにオフィスで仕事をしていて、特別な存在ではなく 職場のコミュニティの一員として描かれています。 そのため"ロービジョン"だからこその視点で描かれている内容も読者に共感しやすいものになっています。 また、塔子の彼氏である尚と高校の後輩である鈴本は、それぞれが塔子の視覚障害のことを理解して彼女に接しているのですが、その"理解"のベクトルが異なっている様子が描かれていて、それが塔子との関係性や塔子自身の思いにも影響していく様子を読んでいると色々な感情が芽生えてくる、そんな作品になっています。 2巻まで読了

ごめん、名波くんとは付き合えない

死の運命を変えるために 名波くんからの「告白」を回避せよ! #1巻応援

ごめん、名波くんとは付き合えない 我楽谷
sogor25
sogor25

高校2年生の小乾睦樹さんは同級生の名波くんのことが好きだったのですが、あと一歩が踏み出せないまま もうすぐ3年生になろうとしていました。 そんなある日 名波くんに突然呼び出された小乾さんは彼から「付き合ってください」と告白を受けます。 しかしその直後。暴走したトラックが突っ込んできて、小乾さんの目の前で名波くんはそのトラックに轢かれて死んでしまいます。 ところが次の瞬間、彼女はなぜか2年生の春、新学期初日にタイムリープしていました。 その後、彼女をタイムリープさせた張本人である"死神"が登場し、「高校2年生の間に小乾さんに告白すること」が名波くんの死の運命のトリガーであることが判明します。 この作品は名波くんの死を回避するために彼から告白を受けないよう奮闘する 小乾さんの姿を描く作品です。 名波くんに告白をさせないために彼と距離を取ろうとする小乾さんですが、何も知らない友人たちが2人の仲を取り持とうと画策してきたり、小乾さんをタイムリープさせた死神がいたずら心から妨害してきたりとなかなか思い通りに動くことができません。 そんなやり取りをしているで彼女に「名波くんと距離を取りすぎると今度は逆に彼に嫌われてしまうのではないか」という思いが芽生え始めます。 名波くんを守りたい気持ちと彼に嫌われてしまうかもという不安とが小乾さんの中で大きな葛藤となり、運命をさらに狂わせていきます。 果たして小乾さんは無事に2年生を終えて名波くんを守り抜くことができるのか、今後の展開を見守っていきたい作品です。 1巻まで読了

ILY.

ドット絵で紡がれる、10年前と同じ姿で現れた彼女との恋愛ミステリー #1巻応援

ILY. なるめ
sogor25
sogor25

大学に馴染めず中退してから就職もせず、バイトも転々としていて、実家からの6万の仕送りでなんとか食いつないでいる28歳の成田基生(もとき)。 彼の唯一の心の拠り所は、高校生の頃に付き合っていた彼女・百合沢愛理でした。 高校を卒業してから音信不通になってしまった彼女、それでも基生は携帯から毎日 愛理にメールを送っていました。 そんなある日、彼の携帯に愛理から10年振りに返信が届きます。 そのメールを見て逆に10年という年月と今の自分の現実を思い知らされた基生は、携帯を捨てて愛理のことを忘れるために 彼女と最後に行った思い出の海岸へ向かいます。 しかしそこで彼は10年前と同じ姿をした愛理と再会する、という導入の作品です。 この作品の1番の特徴は全編が"フルカラーのドット絵"で描かれていることにあります。 この作画に加えて、高校の頃の彼女が当時の姿のまま現れるというストーリー、そして各所に見られる演出などが組み合わさリ、かつてのノベルゲームのようなミステリアスな雰囲気を醸し出している作品です。 愛理は10年前と同じ姿であるというだけではなく、当時と同じように基生のことを想っている様子が伺えて、その様子が一層この物語の謎めいた雰囲気を引き立てています。 現状はまだ提示されている情報が少ないため、今後どのように展開していくのかが楽しみな作品です。 1巻まで読了

僕の未来は魔女の中

魔女とオカルトの要素が詰まったハイブリッドなファンタジー #1巻応援

僕の未来は魔女の中 なかだまお
sogor25
sogor25

主人公の中学生・将太の周りでは10日ほど前からいくつかの異変が起こり始めました。 見知らぬ少女が出てくる同じ夢を見ること、他の人には見えない謎の黒い生物が見え始めたこと、そして隣の家にアナというルーマニアからの留学生が引っ越してきたこと。 親しく接してくれる彼女になぜか得体の知れない恐怖感を覚えていた将太でしたが、夢の中に出てきた少女が彼の目の前に現れたことで、アナの正体が"魔女"であることが明らかになる、という導入の作品です。 繰り返し見続ける夢に自分にしか見えない謎の生物、そして隣に越してきた海外からの不思議な留学生に"魔女"というキーワードと、オカルトファンタジーとして胸躍る要素が詰まった作品です。 そして そんな状況下に巻き込まれただけだと思われていた将太にもどうやら秘密の要素が隠されていることが明らかになり、ストーリーの魅力も自然に高まっていきます。 1巻の後半では今後の敵となりそうな存在も仄めかされ、今後の展開にさらに注目していきたい作品です 集英社系列のホーム社という出版社が運営する『 WEB漫画サイト「Z」』というサイトで連載されている作品。 私もこのサイト自体を初めて知ったのですが、オカルトファンタジーが好きな方には是非薦めたい作品です。 1巻まで読了

しまのおと

妻を亡くした男と全聾の姪、共に暮らす日々を描くヒューマンドラマ #1巻応援

しまのおと 仲山米
sogor25
sogor25

舞台は小さな島にある町。絵描きとして生計を立てる源太郎は9年前に全聾である妻のなお美を不慮の事故で亡くし、後悔の念に苛まれながら日々を送っていました。 そんなある日、なお美の妹・ゆう子が病気で亡くなったとの知らせが入ります。 全聾のなお美の事故で源太郎のことを責めていたゆう子だったのですが、1人娘の翔子を何故か源太郎に預けるという遺言を残していました。 ゆう子に子供がいたことも聞かされてなかった源太郎でしたが、翔子もなお美と同じ全聾であることを知らされます。 この作品は、妻の事故死という過去に縛られ続けている源太郎と、 母親を亡くした翔子が共に暮らす様子を描いた作品です。 妻の死という過去を未だに乗り越えられずにいる源太郎とまだ幼いうちに母親を亡くしてしまった全聾の少女・翔子。 それぞれ内面に異なるベクトルの障壁を抱える2人が共に暮らすことにより、徐々にその障壁を乗り越えていく様子が描かれていきます。 舞台となる島の風景は美しいですが やや閉鎖的に見える部分も感じられ、それがなお美、そして翔子が全聾であるという要素とも関わってきて、マンガの絵としてもストーリーとしても緻密に組み立てられている作品です。 1巻まで読了

きみのせかいに恋はない

セクマイという"型"に嵌めず自分自身を見つめ直す物語 #1巻応援

きみのせかいに恋はない 伊咲ウタ
sogor25
sogor25

高校生の花井チカは同級生の君嶋に告白され、付き合うことになる。 しかし実は彼女は、人に対して"恋愛感情"というものを持ったことがなく、仲の良かった君嶋に対してもその"一線"を超えることができず、結果的に別れることになってしまう。 その後、大学の心理学部に進学した彼女は、ある教授との出会いから"恋愛感情"がわからない自分自身がどういう存在なのかを見つめ直し始める、という物語。 「恋愛感情がわからない」という説明で気付く人もいるかもしれないが、この作品はいわゆる「アセクシャル」をテーマとして暑かった作品。 しかし、主人公のチカが「アセクシャル」なのかと聞かれると、すぐには首肯できない作品でもある。 作中でも「アセクシャル(無性愛者)」とは「性別を問わず他社に対する性的な欲求を持たず、関心や欲求を抱かない人」という説明があり、チカも自身がこの説明と合致するという印象を抱いている。 しかし、チカは「自分がアセクシャルなのかどうか」という過程を通り、さらにその先の「自分がどういう人間なのか」という部分にまで考えを巡らせるようになる。 セクシャルマイノリティを扱う作品では、それぞれの"定義"というものが存在しているがためにその"定義"に沿った人物像という形で描かれやすく、実はそれは「男らしさ」「女らしさ」のような、本来セクシャルマイノリティとは対局に位置するはずの考え方に近づいてしまっているのかもしれない。 この作品では、登場人物が自らをセクシャルマイノリティという定義の枠組みに当て嵌めていくのではなく、定義を知ることで逆に自身がどういうアイデンティティを持っているのかを丁寧に因数分解して見つめ直すという過程が描かれていて、"定義"よりも"個"としての存在を大切に描いているような印象を受ける。 『性別X』などのエッセイマンガでは"定義"を説明しながらその定義に当て嵌まらない人も実際にはいるという説明が著者の実体験に沿う形で描かれることも多いが、もしかしたらこの作品はそういう意味でリアルに近い形でフィクションとしてキャラクターの成長の過程を描いている稀有な作品なのかもしれない。

もっとみる