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ポンコツ魔王の田舎暮らし

笑えて癒されて少し泣けるスローライフ魔王 #1巻応援

ポンコツ魔王の田舎暮らし 渡邉ポポ
兎来栄寿
兎来栄寿

『埼玉の女子高生ってどう思いますか?』の渡邉ポポさん最新作です。今作も推せます。 最強にして最凶でありながら、その性格は圧倒的に陰キャでコミュ障というアンバランスな魔王が本作の主人公。 ″骨″との闘いに疲れて 「知っているか 魔王は逃げられる」 とばかりに魔界から人間界の田舎に逃げてきた彼女が、奇妙な新生活を送っていくゆるいコメディとなっています。 話しかけられることを極端に忌み嫌い、無人販売所や自販機を見ては人間界とは何とコミュ障に優しい住みやすい世界かと感激する魔王が憎めず楽しいです。 個人的に特に好きなのは、ゆるさ極まったドラゴンちゃんたち。ヴィジュアルからしてとてもかわいくて大好きですが、いろいろな仕草もまたかわいい。ぬいぐるみなどがもしあったら欲しいレベルです。 渡邉ポポさんの描くかわいいキャラと田舎の風景とゆるい空気を纏ったギャグが合わさった心地よさときたらないのですが、本作はそれだけでは終わりません。エピソードによっては少し切なくなるところもまた味わいのひとつ。普段のゆるさとのギャップもあって堪りません。 『よつばと!』と『ぼっち・ざ・ろっく!』と『葬送のフリーレン』の要素を併せ持つ作品、というと売れ線感がある気がしてきますね。

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吹部やめたい萩野さん【電子単行本】

ゆるく明るく楽しい吹奏楽部コメディ #1巻応援

吹部やめたい萩野さん 桃原
兎来栄寿
兎来栄寿

読切掲載時に人気を博し、連載化された期待作の単行本1巻が満を持して発売されました。 中学時代から吹奏楽部の経験者で、地味で根暗な眼鏡っ子のおはぎこと萩野(チューバ)。 高校から吹奏楽を始めて吹くどころか腹式呼吸もろくにできないものの、顔はかわいい桐谷(バスクラリネット)。 そのふたりが中心となって、高校の吹奏楽部を舞台に繰り広げられるコメディです。作者本人が公言している通り阿部共実さんのフォロワーであることがよく伝わるアニメ塗り調のパキッとしていてかわいい画風に、独特のギャグがミックスされた心地よい世界が展開されています。 特に、各所でのセリフのセンスがとても光っています。たとえば1,2話から引用すると 「猟奇的な偏見!」 「何そのモールス信号みたいな呼び方」 「先輩は私の毒牙に侵された生ける屍」 「人生は! かさぶただらけが丁度いい! この屈辱は私の命を彩り焦がす青春の研鑽だ!」 といった具合で、ボケもツッコミも普通には思いつかなさそうな言葉の並びが出てきます。かわいい絵柄ながら、パワーを感じる表情や勢いとワードセンスのマリアージュが絶妙です。 話が進むにつれて魅力的なキャラが増えていきますが、個人的には芒乃さんや藤村さんが好きです。2年のトランペットの鶴巻先輩を巡るラブがコメるようなコメらないようなところも楽しいです。 阿部共実さんのダークな部分やブラックな部分を取り除いて、残った光の部分に独自のスパイスをかけたような作品となっているので、気軽に何かを読みたい方や笑いたい方にお薦めします。 どうでも良いのですが、「バァァスゥゥクゥゥラァァア!?」は某看護師ドラマの「あ〜さ〜く〜ら〜〜〜!?」を意識しているのかがほんの少しだけ気になります。

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ナックルガール

復讐×ストリートファイト×JK #1巻応援

ナックルガール Daywalker JGstreet
兎来栄寿
兎来栄寿

最近、Amazonプライムを開くと大々的に宣伝が出てくる『ナックルガール』。三吉彩花さん主演の映画が公開され、それと同時に元々webtoon形式だった本作を、見開きマンガ化した書籍版が発売されました。 本作は、ボクシングガールだった主人公・蘭が、妹を酷い目に遭わせた犯人の正体を探して復讐を果たそうとする物語です。 韓国作品では、このように家族に何かが起こり主人公が奮起する復讐譚の建て付けの物語はかなり多く、人気を博しやすい印象です(『梨泰院クラス』しかり、『外見至上主義』しかり)。家族というのは国を越えて普遍的ですし、感情移入がし易くなるからでしょう。 本作が優れているのは、まず作画。キャラクターがスタイリッシュでありながら、激しいバトルアクションもカラーで繰り広げられていきます。 そして、物語内容としては『ホーリーランド』を思わせるような路上格闘×下剋上的要素。蘭はボクシングではかなりの腕前を持っていますが、とはいえ体重50kgの女性。彼女の前には、体重90kgの柔道使いや剣道の有段者などが続々と立ち塞がります。ストリートファイトにおいて絶対的である体格差やリーチの差をどのように克服して、攻略していくのか。そこに大きな楽しみがあります。 更に、妹を酷い目に遭わせたのは一体誰なのかという謎を巡る物語も見どころのひとつ。1,2巻の範囲でも、話は2転3転していきます。果たして、蘭は本懐を遂げることができるのか。 スタイリッシュな絵柄で、サスペンスフルなストーリーと手に汗握るストリートファイトを楽しめる作品です。webtoonから見開きマンガ化された作品としてはコマ割りの違和感も小さく、一般的なマンガと変わらない感覚で読めるでしょう。 屈強な男たち相手にバチボコに闘う女の子が見たい方にお薦めです。

スイリ先生、はしたないっ!

物騒じゃない学園ミステリ #1巻応援

スイリ先生、はしたないっ! 井上とさず
兎来栄寿
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探偵も助手もかわいい女の子の推理モノないかな〜、あんまり人が死なないグロくないミステリが読みたいな〜、と思っているそこのあなたに推薦したい作品がこちらです。 鋭い観察眼と考察力を持ちながらも 「推理なんてはしたない」 という論理をお持ちのスイリ先生こと化学教師の御神琴翠璃(おみごとすいり)が、名探偵の助手になりたいという願望を抱く生徒・家達和音(やだちわと)と共に、学校で起こるさまざまな謎を解き明かしていく学園ミステリです。 ・シュークリーム消失事件 ・図書室の本バラバラ事件 ・セーラー夏服大量消失事件 などなど、日常で起こり得る範囲の人が死なない事件が発生して、それを解決していきます。 メインキャラはもちろんのこと脇役の生徒ひとりひとりにも味があって、幕間のおまけでは更にそこが補強されていて良いです。学園ミステリといえばつきものなのが青春成分ですが、そこもバッチリです。読んでいて思わずニコニコしてしまうシーンも。井上とさずさんの描く子がシンプルにかわいいのも相まって良い風味を醸し出しています。 推理をはしたないと思いながらも、毎回「生徒のため」というお題目を掲げられたスイリ先生が恵体を披露しながら健康的に推理を行っていく解決シーンも見どころのひとつ。学園の風紀が乱れる! 殺人事件のように解りやすい見せ場を作れないので話作りが毎回大変とのことですが、こういったタイプのミステリももっと増えて欲しいなと思っていた身としては嬉しいですし続けていって欲しいです。 『氷菓』のような作品がお好きな方はぜひ。

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スーパースターを唄って。

血を流しているマンガが、ここにある #1巻応援

スーパースターを唄って。 薄場圭
兎来栄寿
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10月発売の中でも最注目作品のひとつでしょう。 スピードワゴンは 「環境で悪人になっただと?  ちがうねッ!!  こいつは生まれついての悪だッ! 」 と、かの名台詞で説いていましたが、この社会には間違いなく環境が生み出してしまう悪があります。 本作の主人公たちは、まさにそういった類の人種。凄絶な家庭で生まれ育ち、若くして天涯孤独の身となって薬の売人をして口に糊している雪人。彼の親友であるメイジ。世界が彼らに生ませたグチャグチャな感情を、音楽として世の中に吐き出すことで昇華していく物語です。 助けてくれる大人もいない世界で、身も心もボロクズになりながら生きてきた日々。どうにもならない絶望の泥濘の中で溺れながら辛うじて息をしている雪人の仮面のような笑顔からは、熱さのような痛みが、飛沫となった血潮が溢れ出しています。 それでも、確かに雪人は亡くなってしまった母や姉に愛されていた。だからこそ、失わずに済んだものがある。それ故に、曲げられない生き方とそこから紡ぎ出せる雪人だけのリリックが存在する。それを最大熱量で、親友と共に解き放つ。そんなエモい話があるでしょうか。 生き方も言葉も真っ直ぐにぶつけてくるリリーとの出逢いを始め、違うけれど同じように苦しんでいる同じ時と場所に生きている人物たちと交差しながら、クソみたいな人生が少しだけマシになっていく。 雪人ほど酷くはありませんが、碌でもない家庭で育ったもの同士だからこそ解り合えることというのはあるので、メイジとの絆が芽生えたときのエピソードなどは強く共感します。 単体で見ればかわいらしさもありながら、それ以上に斬り刻むようなリアルさを迫力として体現する薄場圭さんの絵も作品にガッチリとハマっています。 荒々しく、血を流してマンガを描いている。鋭利に突きつけてくる、愛しい作品です。

北福佳猫作品集「君に降るミモザ」お気に入り度
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北福佳猫作品集「君に降るミモザ」

新しい季節の色を感じる短編集 #1巻応援

北福佳猫作品集「君に降るミモザ」 北福佳猫
兎来栄寿
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北福佳猫さんの作品集が遂に! 北福佳猫さんといえば『原始人彼氏』のインパクトがあまりにも大きかったと思いますが、この1冊を読めば解るはずです。デビュー作の「明日へのla」から始まり、感情を揺さぶる正統派学園ラブストーリーの巧さや良さが煌めいているということが。 ミモザに染まった表紙絵がとても鮮やかで目を引きますが、表題作でありこの作品集に収録されている中では最も最近描かれた(それでも2021年ですが)「君に降るミモザ」は特に好きな1篇です。ドイツ系アメリカ人と日本人のハーフで、友達もいない時代を長く過ごしてきた立花クラウゼ瑠輝(るか)が転校をして新たな環境で不安で一杯の最初の日に、クラスの人気者である真風保(まかぜたもつ)と良い出逢いを果たすことでこれまでにない充実した学校生活を送っていけるようになる話です。居場所がない苦しさ、馴染めなかったらどうしようという不安で一杯の転校先で受け入れられる嬉しさ、絆が芽生え花咲く瞬間の輝きが鮮烈に描かれています。3~4月に咲いて春の訪れを告げるミモザのごとく、人生の新しい季節が降り注ぐ様子が過去の自分の想いと重なりながら感情を揺れ動かしてくれます。 男子校から転校してきた都と運命的(?)な出逢いを果たした、ちょっと重くて痛いオンナである宮本きらりを描いた「今日もやってんなキラリ」は、ヒロインの突き抜けたキャラクターが特徴的。ただ、その理由付けが上手くなされており20ページほどの短さの中で綺麗にまとめられていてもっとこのふたりの関係性を見ていたくなります。 前後編で80ページほどある「夜明けの星が燃える」は、歌劇部が非常に人気で精力的な活動をしている中高一貫の女子校に高校から入り、廃部寸前の演劇部に入部する女の子・晶の物語。数少ない演劇部員の伊万里と千世の3人だけで歌劇部に対抗すべく奮闘していく中で、徐々に明らかになっていく晶の才能とその影響も受けて変化していく関係性が見どころです。自分がやってきたことが誰かに影響を与えたとして、それが目に見えないと無かったものと思ってしまいがちですが、それでも確かに動かしたものがあってそれを知覚できたときは代え難い歓びを得るものだよなあとしみじみと思います。 デビュー作の「明日へのla」は、優等生のヒロインと、落ちこぼれながらギターに命を懸ける少年の物語でまさに青春。抑圧されて秘めた想いや憧れを解き放つ、その瞬間の気持ちよさ。無限の前途がある若者たちの相貌が瑞々しいです。 あとがきで筆者が描いていたように、今や直視できないそうですが、読者としては「明日へのla」から「君に降るミモザ」の数年間での大きな成長が見て取れて、そこもまた味わい深いです。 『原始人彼氏』のような作品も描けることを既に示している北福佳猫さん、これからまたどのようなものを生み出してくださるのか楽しみです。 余談ですが、田中メカさんとの合作の「かわいいふたり」なども今後どこかで収録して欲しいですね。

志信さんと僕の謎解きペットショップ@COMICお気に入り度
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