ゆゆゆ
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2023/10/05
老いも若きも自動車レースに熱中
車には詳しくありません。 でも、街なかで大切に乗られているんだろう、あの白い車を見るたびに「豆腐屋さん」という単語が思い浮かびます。 本作は近未来の日本が舞台。箱根あたりは噴火によって有毒ガスが蔓延し、人が住めない状況なので、車を街なかをビュンビュン飛ばしても問題ありません。 公道ものの、こういう前提条件はとても好きです。 さらに、時代はEV一択という世界観。 「この車古いなあ」という感覚はガソリン車全般になります。何がでてきても、ガソリン車であればすべからく古いのです。おもしろいですね。 作中に出てきた、若者はシミュレーターに慣れていて、車をぶつけること(ぶつけられること)に躊躇いがないという話もおもしろいなと思いました。 他のことがらでもそういう違いって、生まれてきているのかもしれません。 メインとなる公道レースは、車の重量でタイヤの大きさが決まる、ただそれだけのルール。 日本で行われるレースなのに、外国の車が強いと言われています。 そこに現れた、イギリスからやってきた何やらすごい経歴を持つ少年。 車に詳しくなくても、大変そうなルールの中、何やらすごいことをしているというのは、物語の流れや解説でわかります。 そう、説明も丁寧です。この漫画は初心者にも優しいのです。 世界線が同じ続編なので、もしかするとイニシャルDを読まれていた方には「この人がこうなったんだ」と思うシーンがあるのかもしれません。
ゆゆゆ
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2023/10/03
ちょっとズレてるご令嬢が地味でガリ勉の三男に惚れ、ものすごいアタックする話。
だけだったら、ふつうのラブコメだった。 ものすごくイケメン高能力高身長、性格は俺様系の第一王子がご令嬢にちょっかいを出さなければ。 恋は盲目故か、第一王子をゴミのようにとらえるご令嬢シャリーナ。 たしなめるガリ勉リオル。 気にもしない王子レオナルド。 不可解なセリフとともにアタックしてくる、神出鬼没な王子から逃げるご令嬢。 逃げるのを手助けするガリ勉。 ハイスペック故、なんなく追いつく王子。 一巻無料で読んでみたら、予想外におもしろくて、とってもビックリ。 タイトルが長いので油断していた。 まさか、ファンタジーもので、恋愛全振り(コメディだけども)とは思わなかった。 この世界には、魔法はあるけど、魔王はでてこない(もしくは関わってこない)。 ただし、魔王よりたちの悪い第一王子は出てくる(ものすごく関わってくる)。 人の恋路を邪魔するやつは、という言葉があるけれど、まさしくそれで、読んでいてヤキモキワクワク。 とはいえ、王子からしたら、黒鼠ことガリ勉リオルがそれにあたるんだよなあ。強メンタルすぎる。
ゆゆゆ
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2023/10/01
もしも平均値じゃなくて、中央値と言っていたら
転生ものではあるが、転生前トラブルが、働きすぎによる過労ではなく、過度な期待に対する疲れというのが斬新だなと思った。 周囲から大注目され普通に過ごすことが難しかった女の子が、なんやかんやで転生できることに。 転生前に、あれほどの期待を受けていたのに、自分は世界を変えるようなすごい人ではなかったと悪意なく神様に指摘される。 次は普通に生活したいと願って神様へ「能力を平均値に」してもらえるよう、依頼する。 神様は守った! 平均値を与えた!! その世界に存在する偉大なるものたちの平均を!!! 神様は特大チートになるねなんて言わない。 そして生まれる、強強主人公(でも普通に過ごしたい)。 得てしまったものは仕方ない。強強主人公爆誕。 世界のせいか、前世の反省か。 強強すぎてバランスブレイカーすぎる、めちゃくちゃな存在ながらも、友人に囲まれ、やりたいことができて、前世ではできなかったような生活をおくれていて、よかったねえとほのぼの読んでしまう。 全然普通な存在でなくても、ちょっと変な娘と受け入れてもらって、普通に生活できているようにみえるので、普通ってなんだろうと考えてしまった。 ふと考えさせられるものの、漫画はタイトルのテンションそのままなコメディなのでとても読みやすいです。
ゆゆゆ
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2023/10/01
戦隊モノヒーローに求めるもの
Uターン公務員就職し、常に「公務ですから」と業務に全力で取り組むイケメンエリート。 それだけでも眩しい設定なのに、彼がローカルヒーローの中の人まで演じることに。公務で。 人の心はあるのかわからないほど、機械めいたように見える彼だが「公務ですから」とスーツアクターも公務として全力でやりとげていく。 イケメンは何を着てもイケメン。 ローカルヒーローといえども、かなり凝ったスーツが作られている。 そのローカルヒーローをプロデュースしたのがデビュー後泣かず飛ばず、戦隊モノ大好きな漫画家。 なんやかんやののち、漫画家の彼女からはイケメンエリートへ好意の矢印が出ているが、イケメンエリートは気づくことがあるんだろうか。 まあ、気づかなくても青里市の公務には問題ない。 それに「公務ですから」を決め台詞に、イケメンが漫画家にあんなことこんなことを御奉仕してキャッ♡な展開になってしまったら、掲載誌も変わってしまう。 そうならないあたりが、少年誌掲載ラブコメである所以なのかもしれない。 と、つらつらと考えて、私の妄想はどこへ向かおうとしているのかと悩んでしまった。
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2023/09/25
今はその国で戦争が行われている。
戦争前は聞いても覚えられなかった地名。 すっかりわかるようになっていた。 キエフ、チェルノブイリ通り。 戦争がある日常が通常となってしまっている国。 読んでいて思い出したのは、その戦争が起こる前、コロナよりも前、まだスマートフォンもなかった頃。 原発跡地がある街に、ガイガーカウンターとともにバイクで出かけ、自然に帰ろうとする街を写真に撮っていた女性(たしか女性だった)のホームページがあった。 森に飲まれつつある、時が止まった美しい街だけど、これほど線量がある。ここから先は行けない。 など、写真とともに彼女は書いていた。 そのホームページに、街の手前、まだ放射線量が高い地域に、よそへ越さず、昔からの生活を続けている家族がいたとも書かれていた。 線量の高いものを食べる、それがなんだ、この土地から離れたくないのだと言っていた。 あの人たちは今どうしているんだろう。 さて、漫画に登場する人たちの行動に、どうしてそんな恐ろしいことを!と思ってしまう。 でも、そもそも知らないのだし、放射線も放射能も見えないからわからないのだし。 自分も言われなければ同じことをしているのだろうし。 未来人はやるせない気持ちにしかなれない。 読んでみて、第一話が鮮烈な印象を残してくれたのだけど、その中でも街の人がバタバタと亡くなっていく様子が淡々とした描写で、なんともそら恐ろしかった。 そして主人公の女性が少しでも幸せに今を生きるのはどの方法だったのか、考えてしまった。 口述史というのは非常にセンセーショナルなものだけど、この作品も類に漏れず、読んだ人に思うことを残す激しさがある。
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2023/09/25
安売りキャベツ一玉と晩酌と
ある日ある時ある街に住む、年配と言われる年頃だろうか、あるご夫婦をカメラで追っているかのような読切漫画。 こういう日々が我が身に訪れるのが待ち遠しいと同時に、少し不安になる。 冒頭、安売りのキャベツを前に、どうやって食べきるか二人で思案する。 一玉買ってアレヤコレヤすれば、問題ないような気もするけど、買って新鮮なうちに食べきりたい派なんだろうかと悩んでしまった。 いや、そこがメインじゃないと気付くのは少し先。 ちょっとしたセリフにいろいろな事柄が詰まっている。 慣れ親しんだ人との会話はそういうものなんだろう。 読んでいるこちらはフルスロットルで、理解するために必要なピースを回収する。 読切は読切ゆえに、情報が詰まっている。 忙しいし、読み直して最初と異なる読後が得られるのがとても心地よい。 『ふたりきり晩酌』とタイトルにあるとおり、ある日ある時あるご夫婦が晩酌をするまでのお話なのだけど。 この漫画で描かれているのは、長い人生を考えれば何気ない日常のひとコマでしかないのかもしれないのだけど。 その「ある日ある時」の選び方が素敵だなと思った。
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2023/09/20
中世の戦争
かわいい女の子たちによる聖歌隊。 対して、戦争だからそういうものだとはいえ、残虐なシーンがごろごろ。 彼らの論理や倫理としては間違っていないとはいえ、今とは異なるため読み続けていると、ズーンと沈んできます。 シャールカが落ち込むのを見て、そうなるよねと同調したり。。 歴史ものでしばしば先が気になってやってしまうネタバレとして、フス戦争を調べました。 勝ったのか、負けたのか、なんだこれは。 いや勝ち負けでなく、歴史は変わったのかが重要か。 盛大なネタバレ覚悟でフス戦争について読んだのに、『乙女戦争』という漫画としては無傷でした。 ちなみに先に、チェコの伝説『乙女戦争』を読んでいたら人名に馴染みがあるものの内容が違って混乱するところでした。 この作品は、フス戦争とチェコの伝説をかけ合わせた物語だったんですね。 なお、冒頭で残虐なシーンと書きましたが、時代を考えると日本は応仁の乱前後。 日本も日本で、彼らなりのルールがあるものの、ヒャッハーな世界です。 世界的にそういうものだったのかもしれません。 現在、Kindle Unlimitedで全巻無料で読めるみたいです。 タイトルだけ知ってたなと言う方には良い機会だと思います。
ゆゆゆ
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2023/09/19
ルールがわからなくても楽しいです
あれ、9巻があると思ったら、ない?! 8巻のあとがきに「9巻でお会いできたらうれしい」とあるのに?! と探すも、出てきたのは悲しい打ち切りの考察。 でも私はラッキーだ。 続編の『ひらけ駒!return』がすでに刊行されている。 『ひらけ駒!』では、将棋に一過性でハマっているだけだと思った我が子が、どんどん将棋にのめり込み、悩み成長していく様子が描かれている。 母は子供よりゆるいペースで将棋を学びつつ、プロ棋士たちにキャーキャーしたり、子供の成長を喜んだり、心配したり。 すごくリアルな、子どもを見守る母目線がたくさんあるなと思ったら、あるブログに南Q太先生(おなじシングルマザー)の子供も将棋にはまっていると書かれたブログがあるとリンクが貼られていた。 漫画のワンシーンのような先生のブログで綴られる日常に、これがベースにあるんだなと理解した。 漫画に描かれている、将棋を嗜む様々な人たちを見ていたら、特に主人公の母が将棋の試合に参加し始めた頃合いくらいから、自分も将棋を勉強したくなってきて、アプリをインストールした。 作中でもいろいろ出てきていたけど、それ以上に基本的なルールがたくさんあって、びっくりした。 軽くさわりだけ、と思っていたのに、なかなか壁は厚かった。 主人公の宝くんが、どれほどのめり込んでいったのかよくわかった。
ゆゆゆ
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2023/09/16
新しいゲームって嬉しいよね
この働かない兄妹はとっても仲良し。 両親も二人のニートを見捨てていない。 この設定だけで、なんとほのぼのすることか。 新しいゲームに喜び、兄と一緒に遊ぶ妹。 流行りのアイドルの踊りとやらを深夜に二人して踊ったり、深夜に突然料理を作り始めたり、二度寝だと二人で一つのベッドに寝ようとしたり。 仲が良すぎて、小学生か幼児の兄妹をみている気持ちになるけど、彼らは既卒かつ未就労。 仲が良いのは兄妹だけでなく、両親とも仲が良い。 愛情たっぷり込めて、今も育てられている、働かないふたり。 餃子にわさびを入れる驚きプレーを母が止めないのに驚き、そしてわさび味に当たる父に驚き。 でも毎年肩たたき券をくれる娘というのは、一周回って、嬉しいものなのかもしれないなと思った。 お母さんは将来を考え、兄には就職活動、妹には花嫁修業をさせようとしているのだけど、妹の就職活動はいいんだろうか。生きていくすべをまず身につけろということだろうか。 お父さんの方も会社の人に料理上手な息子を主夫にいかがと勧めているので、なんとかなると思っているのは働かない道もあるということかもしれない。 スエット着た兄妹(特に妹の春子)の言動を見ていると、忙しくする日々で忘れていたものを思い出せるような気がする。
ゆゆゆ
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2023/09/15
ネタバレ
赤には気をつけろ。
タイトルの赤い隣人、赤い屋根の家、赤系統の服… 対して、主人公一家は青色のアパート、服、カバン… 赤の他人のフリした人が一番こわい。 印象に残っているのは、旦那さんが妻の主人公に対してモラハラ男だったというところ。 夫婦でなく他人になったことで、モラハラ要素が見られなくなり、3人でほのぼの過ごせるようになったのは良かったねと思えてしまった。 離婚を伝えたときの子供の反応を考えると、主人公は子供に旦那さんを悪く言っていないと思える。 逆に旦那さんが奥さんに対してモラハラ言動をしているのを、子供は聞いていたはず。 外から見ると平和な家庭だったのに、誰かをけなして成り立つ、危うい生活だったんじゃないか。 それを知ってか知らずか、子連れ避難を『誘拐』と表現する赤いトートバッグの奥様。 トートバッグがない状態でも、率直にズケズケ人を評価するきらいがあるようで、主人公はそういう人を引き寄せる気質があるんだろうか。 とはいえ、子どもの無断連れ去り別居は、誘拐スレスレ案件。 子供だけ置いていなくなっても、また違うドラマが生まれるし、精神的DVを受けている状況で、どうするのが良かったんだろう。 悶々と考えてしまう。 野原広子さんのシンプルなイラスト、4コマ調コマ割りだからこそ浮き彫りになる、人間の内面の嫌な感じ。 旦那さんを悪く言うのは最後まで「赤の他人」というのも、最後まで赤でおもしろかったです。