生卵
生卵
2ヶ月前
この漫画は現在絶版になっていて紙でも電子でも基本的に読むことが出来ません。 唯一読む方法は中古で出回っているこの作品を購入することくらい。なのですが運良く1巻と3巻の新品を買うことができ 2巻は中古だけしか無かったので中古品を取り寄せ、ようやく読むことができました。 ストーリーは全寮制の高校に通う 高校3年生の主人公・小野が、片思い中の現国教師の池田が高校3年生限定で愛人を作っているという噂を耳にし 告白する所から物語がスタートします。 そして二人はセフレの関係性になるのですが池田の体には生々しい傷の数々 背中には大きなアイロンで付けられたような火傷の跡がついています。 誰かにつけられたであろう池田の生々しい傷の数々 俺だけは過去の奴らみたいに池田にはこんな事はしない!!と誓う小野でしたが、池田の数々の異常行動と一般的ではない激しすぎるセックスに普通の高校生の小野は疲弊しつつ戸惑っていきます。 高3限定とは一体何なのか? 池田の傷の謎とは? 高校で代々伝わる非合法のスナッフビデオの謎 これらを3巻でざっくりと紐解いていくのがこの高3限定という漫画で BL的な要素よりもサスペンスやバイオレンス表現の方がメインで描かれた作品となっています。 この漫画には作者が影響を受けたという実在の事件が存在していて(明言はされていないがおそらく女子高生コンクリート詰め殺人事件) 理不尽な暴力を受け続けた人に対して救いがあって欲しい、という作者が中学生の頃に感じたその願いを作品として昇華したのがこの作品らしく 主人公は暴力を一貫して否定し続けるし 池田は自分が受けた暴力に対して意味を持たせようと肯定的ですらあります。 暴力を極端に描くことで暴力を否定していると言う事はわかった上でキツイ表現の連続で 読んだことを若干後悔しそうになる作品ではありましたが この作品を読む事ができて良かったです。
兎来栄寿
兎来栄寿
約2ヶ月前
『姫ちゃんのリボン』で一世を風靡した水沢めぐみさんも、昨年で還暦を迎えられたという事実に隔世の感があります。私が生まれる前からずっとマンガを描き続けられている水沢さんですが、未だに作品には優しさや瑞々しさが溢れており敬服するばかりです。 『空の音色』、どうしたって『空色のメロディ』を思い出さずにはいられないタイトルですが、内容は異なります。 漫画家として10年目を迎えるものの直近はぱっとせず行き詰まりを感じていた主人公・花音(29)。ある日、姉夫婦が事故で他界し5歳の姪・音色を引き取って育てることに。仕事や恋愛も大変な渦中で、さらにまったくの未経験である子育てが加わりてんてこ舞いになる花音の奮闘の日々が描かれていきます。 身内が亡くなったことを悼む暇もなく、忙しない上に神経を使い続けなければならない日々の到来。父と母がなくなったという事実すら受け止めきれていない5歳児との向き合い方の難しさが伝わってきます。 お弁当の中では特にたまごやきが好きだという音色のために、たまごやき入りのお弁当を作って持たせるものの残され続けてしまい、些細なことであると頭では理解しながらも心にダメージを負って荒んでいってしまうさまなどはリアリティがありました。子供に悪気はまったくなくても、削られてしまいますよね。 ただ、そうした辛さや大変さを乗り越えて、道端の何気ない風景をゆっくりと眺めながらふたりが段々と距離を縮め家族となっていく描写の暖かさには心をほぐされます。 彼氏がまたダメな男で無神経に人の心を削ってくるのですが、幸いにして友人には恵まれており多香ちゃんのような子が側にいてくれるのはありがたいことだなぁと思います。 かわいくて読みやすい絵柄と水沢めぐみさんらしいハートフルさは、本作でも十二分に堪能できます。ファンの方はもちろん、そうでない方もここから水沢めぐみさんの世界に入るのも良いでしょう。