兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
お金と時間に余裕がある芸能人に美食家が多いのは必然的ですが、その中でもとりわけ成功した芸人さんがたくさんの美味しいお店を知っているのことが多いのは、芸能人の中でも特に芸人さんは上下や横の繋がりが強く、そうした繋がりも含めた交友関係も広いことで多くの情報が集まってくるからでしょう。 何せ、ご飯に行くにしても後輩には侮られないような店や「流石!」と思われる店を知っていなければならない。先輩と行くとなれば更にハードルは上がり、相手もそれなりに良い所を知っているという前提の上でそれでも満足して喜んでもらえるように料理はもちろん雰囲気から接客まで良い店を選ばなければいけない。 「仮に舞台で滑っても……  食事では絶対に滑りたくない……」 という1コマ目から始まる本作は、ペナルティのヒデさんが1話ごとにさまざまな先輩後輩と多くの実在のお店にご飯にいったり、リモート飲みをしたりするお話です。 ココリコ・遠藤章造さん、品川庄司・庄司智春さん、銀シャリ・橋本直さん、とにかく明るい安村さん、馬場園梓さん、はんにゃ金田さん、チャド・マレーンさん、レギュラー・西川さん、ナインティナイン矢部さんなど、錚々たる有名芸人たちとの会食の様子は芸人らしく会話の端々でボケやツッコミが小気味よく出てきて笑わせてきます。また、他にも話の中でたくさんの芸人が登場するので、お笑い好きの人はより楽しめます。 ヒデさんが五反田出身ということで、都内のお店が中心ですがどれも行ってみたくなるような良いお店と料理ばかり。平和軒のレバニラや、春菊とチーズと青唐どうふのおでんなど、機会があれば行って食べて来たいです。 料理の描写がリアルでとても美味しそうな上に、最高の味わい方やメニューを知り尽くしているヒデさんたちがそれはもう美味しそうに食べるので、シズル感が異常です。夜中には絶対読んではいけません。 純粋なグルメマンガとしてだけでも高い完成度を誇る内容ですが、芸人に詳しい人は更にさまざまなポイントを楽しめる、しかも滑らないお店をたくさん知ることができる1冊で何度も美味しい作品です。 なお、作中でも描かれている通りこんな生活を満喫できるのは最上位の一握りの芸人だけで、売れない頃は月収25円でジュース1本買うのに5ヶ月かかるという厳しい世界です。私も特殊な人生なので、人一倍売れる前の芸人さんたちと交流してきたので肌身で解ります。だからこそ、売れればこんな生活ができるんだという憧れを持つ指針となるという意味でもこのように描かれることもある側面では大事なのではないかと思います。