兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
少年サンデーSで『清楚なフリをしてますが』を連載していた倉地千尋さんがTwitterで6年連載されていた、実体験を元にしているという作品です。 タイトル通り、初めて自身に訪れた生理のことを恥ずかしくて家族にも友人にも言えず、何とか隠し続けて生きようとする少女のお話です。 女子の体に対する知識もなく想像力も働かないクラスメイトの男子の無思慮な言葉に傷付けられてしまい、それがより自分の体に起こっている変化を隠し通そうという方向へと向かってしまうのは現実でもたくさん起こっていそうです。 保健の授業で習えること、あるいは家族から教われることは人によって大きく差があるでしょう。特に男性は知識としては習って知っていても、この作品で描かれているような個別具体的な悩みや羞恥心、苦しみというのはなかなか想像しにくいものであろうと思います。逆に言えば、このマンガを読めば理解できることは沢山あるので、保健の時間に読む教本にして欲しいくらいです。 血の付いたパンツを隠し続け、最終的に庭に数多のパンツを埋め続けた、という筆者の行動にあなたは何を思うでしょうか。 急激な体や心の変化に戸惑う第二次性徴期の心理的な動きや、友達との関係性なども非常にリアルで当時のことを思い出しながら読んでいました。あの頃の自分は、そんな状態になっていた子に対して上手く接することができていたかな……。 Kindleで全巻0円で読めるので、ぜひ多くの方に触れてみて欲しいです。
たか
たか
1年以上前
最近おざわゆき先生の『またのお越しを』を読むためにBE・LOVEをチェックしてるのですが、その際にいつも見かけて気になっていたのがこの作品。1巻を買って読んでみたら…なんですかこれは!最高じゃないですか!!!真夏さんかっこよすぎる! 物語は東大卒エリート・秀太郎(36)が仕事も人間関係も上手く行かず死を考えていたところを、居酒屋の店員の真夏(30)が温かく手を差し伸べたことで始まります。 順調に告白・交際と進みいよいよ結婚の挨拶へ秀太郎の実家を訪れると、そこには真夏をダニ扱いする、絵に描いたような最高のクソ姑が! (▼あいだ夏波『東大くんと元ギャルさん~格差婚ロワイヤル~』1話) https://i.imgur.com/mMRbFNl.jpg 嫁姑モノには、嫁のほうが圧倒的に弱くてただ姑からの虐めに耐える…みたいなじめじめしたシンデレラ系のお話もありますよね。 が、これはそうでは全くありません。 愛する未来の夫と大切な愛息子を賭け、最高のヴィランと最高のヒーローによる少年漫画のような熱いバトルが繰り広げられるんです。 というのも、真夏は元ギャルで元レディース総長の娘なのでメンタルが激強で、八王子育ちで義理人情を知っている一本筋の通った気持ちのいい女性なんです。なので当然、周囲の人々もいい人ばかり。 しかもタフでかっこよくて……! 1話の秀太郎に声をかけるシーンが超イケメンで、私は即オチしてしまいました。 この圧倒的ヒーローと対するのが、圧倒的クソバアアの秀太郎母。 秀太郎の居ない間に手切れ金を渡そうとし「真夏に恐喝された」と嘘をつき、真夏が働く居酒屋を潰そうと裏から手を回し、真夏が秀太郎に渡した手製のぬか漬けを勝手に捨て、防犯カメラの映像を編集し真夏が暴言を吐いたように見せかけ……。 次から次へと最高のクソ姑ムーブを繰り広げ、真夏と秀太郎、そして真夏と居酒屋の関係を崩壊させようとする。 この仕打ちに秀太郎の気持ちを大切にしつつ、真夏が立ち向かっていくのが熱い。 そしてこの漫画の本当に面白いところは、ギスギスどろどろした関係の中に黄金の精神が見えるところですね。 真夏は一度、秀太郎に裏切られる(真夏の言葉を信じず母を守ることを優先した)のですが、そのときのセリフが本当に素晴らしいんです。 (▼あいだ夏波『東大くんと元ギャルさん~格差婚ロワイヤル~ 分冊版(5)』) https://i.imgur.com/i6ZbPR9.jpg https://i.imgur.com/uUl2IFZ.jpg 「あのクソババアは信じらんねーくれー性格が悪くて大っっ嫌いだけどさ…」 「あたしはあのくそババアのこと…きっとまだ1000分の1ぐらいしか知らねえんだ」 「残り999の中に大嫌いがひっくり返るくらい好きなトコがあるかも知んねーじゃん??」 「だから残りの999も全部大っ嫌いってわかるまでは諦めない」 どれだけの仕打ちを受けても、相手を絶対的な悪とはみなさない。 この視野の広さ・善性の強さはまさに少年漫画の主人公の資質で、それがどろどろの中で輝いていて爽やかな気持ちになるんです…。 現在、最新話は8話。 真夏が祭りで助けた、明らかに身分の高いスーさん的な老紳士の正体が判明し、物語は第2ラウンドへ…!! マジのガチでいま読むのがおすすめの作品です!! https://comic-days.com/episode/3269754496472158458 ちなみに私は以下のような読み方で最新話まで読みました。 1巻(1話〜4話) +分冊(5話) +BE・LOVE コミックDAYS(6〜8話)
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し
1年以上前
笠辺哲をなんと評価すれば良いだろう。 なに気にキャリアのある人で、もう期待の俊才などと言うのも失礼だろう。 「ゼロ年代コミティア系の良心」? いや、別にコミティアに「悪心」が他にあるとも思っていないのだが。 SF的なテイストだと宮崎夏次系のほうがハードコアだが、笠辺哲には独自のつかみどころのない気持ちよさがあって、とにかくいつ読んでも絶妙に「宙ぶらりん」な読後感を味わわせてくれる。 絵柄も話も、少しユルいヌケたところがあって、それなのに描いている世界はちゃんと棘があり、読み重りがする。 かつての小説界であれば、「奇妙な味」というのが相応しいような、貴重な才能だ。 それはともかく。 なんでこの人は、このペンネームなんだろう。 どう考えても映画監督・俳優のジョン・カサヴェテスから取って付けていると思うのだが、その作品に、カサヴェテスっぽさは特にない。 この作品集が刊行された時のインタビューがネットで見つかったが、そこでは、自分から「(アイデアの)ベースになりやすいのが映画」と話題を振って、好きなのはタランティーノ『パルプ・フィクション』、黒澤作品、デビッド・リーン作品、キューブリック作品、『天井桟敷の人々』とズラズラ列挙するのに、カサヴェテスのことはまったく触れていない。 音の響きが面白いから借りた…くらいのことなのだろうか? 不思議。 (もちろんそれで全然構わないのだが。自分のように、カサヴェテスの名前に惹かれてコミックス買っちゃったヤツもいて、その辺もまたつかみどころがない感じがして、なかなか良いと思います)