酒チャビン
酒チャビン
1年以上前
わたしが贔屓にしているマンガ家である土田先生と、元スタージョッキーである田原さんのタッグによる競馬マンガです。駄作のできようがありません。 前半4巻くらいまで一話完結のギャグものなのですが(しかもさすが土田先生のギャグは面白い)、後半にいくに従って、かなりレースの奥深いところまで描いてくる本格競馬マンガに変身していきます。 さすが元超一流ジョッキーの原作(というか監修)が入っているだけあって、必殺技などのファンタジー路線ではなく、徹底してリアルなスポーツとしての競馬が描かれており、読み応えたっぷりです。 出場している全ジョッキーの位置どりや、その時々で考えていることなどが、すごく丁寧に描写されており、競馬が好きな方はまず間違いなくどハマりすることができると思いますし、昨今のソシャゲブームで競馬を見始めたよって方も、深く競馬を知ることができるきっかけとなることは間違いないと思います。 そういった意味で、完全に☆5でいいマンガなのですが、一点、ちょっと特に後半ジメッぽさが過度になりすぎてしまっていて、そこが個人的な好みに合わなかったので、一応4にしておきました。ジメッとした部分は土田先生の持ち味でもありますし、それが熱さや感動につながることが多いのですが、本作品の終盤は少しメメしく写ってしまいました。個人の感想ですが、悪くいうつもりは本当になかったです。すいません。
ぺそ
ぺそ
1年以上前
1949年の熊本県黒川温泉。温泉旅館・新明館の長男である主人公の哲也さん(19)は暮らしを支えるため学校を辞め、家業の他に近所の農作業や土木作業をして働いている。ちなみに19歳というのは数え年なので今で言う17歳です。 道が舗装されていない、バスが通ってない、ズックが貴重だから普段はわらじ、家族10人暮らしで家にラジオがない、林間学校の生徒たちが米を持参してくる、家族で晴れ着で百貨店に出かける…というのが当時の暮らしぶり。 家でわらじを編んだり道がまだアスファルトじゃなかったことは、父や祖父から聞いた昔の話と重なり実感を持って読むことが出来ました。 温泉を引くための配管もまだ竹で高熱に耐えられないので4・5カ月に一度新しいものに替えなくてはならず、山から竹を取ってきて節を抜いて設置するのも哲也さんの役目。 そのことについて「わしは長男じゃからあたりまえばい」というセリフがあり、山道を2俵(120kg)の米や石炭を「おいこ」で運ぶ姿とあいまって「リアル炭治郎だ…」と、なんだか感じ入ってしまいました。 https://togetter.com/li/1612718 常に自分たちの温泉を良くしようと考えている哲也さんは両親に呆れられながらも、露天風呂から見える裏山の竹を切ってツヅジやサツキを植えたり、岩肌をノミで(!)彫って洞窟温泉を作ったり…。 向上心が強く勤勉な哲也さんの姿に頭が下がる思いがします。 新明館そして黒川温泉が今後どうなっていくのか続きが楽しみです。 【現在の新明館の公式サイト】 https://shinmeikan.jp/spa/
1949年の熊本県黒川温泉。温泉旅館・新明館の長男である主人公の哲也さん(19)は暮らしを支え...
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
「シシファック」の堀北カモメさんが初の連載を始める。 それは、2022年のマンガ界において明らかに大きなトピックのひとつでした。 「シシファック」をご存知ない方は、検索またはマンバのリンクを辿って読んでみてください。 野生の獣のような剥き出しの荒々しさは、技術云々を超えたところにある圧倒的な熱量を体内を駆け巡る血液に与えてくれ、興奮を呼び覚ましてくれます。 この『ゲモノが通す』も、「シシファック」の持つ類稀なる熱量を見事に引き継いでいます。その上で、秀でた現代的なキャラクターたちの魅力、抜群なセリフのセンス、エンターテインメント性たっぷりの設定やストーリー展開など更なる進化を遂げた境地を見せてくれます。 作者の実体験からくる「補修職人」のディティールも素晴らしく、あまり知らない、しかし誰しもの身近に存在する世界を見せてくれる仕事マンガとしての魅力も携わっています。 それでも、やはり一番の魅力はこの作品に込められた魂の超常的な熱量。『ゲモノが通す』という怪作が放つ咆哮を、言葉では伝えきれない原石というにはあまりに巨大な聳え立つ巌の魅力を、その身で体感してみてください。 明らかに人を選ぶ作品ですが、『忍者と極道』などが好きな方には特にお薦めです。 #マンバ読書会