野愛
野愛
2021/04/07
人生崩壊を食い止められるなら、何をする?
久しぶりに再会したいじめられっ子の森といじめっ子の赤城。 逃げようとしてうっかり高所から落ちたと思ったら、森の体に赤城の精神が入った状態で高校時代に転生してしまう。 赤城は元の世界に戻るべく、森の人生を崩壊させた事件を解決していく…というお話。 あらすじだけを読むと「???」となってしまいますが、これがまた面白い。 いじめっ子といじめられっ子が入れ替わるわけではないので、赤城は過去の自分自身にいじめられることになる。 森がやり返すわけではなく(森自身は人魂みたいに赤城の近くを漂ってる)、赤城が自らの行動を反省したりやり直すことで未来が開かれていくという構図。 いじめっ子がただただ改心していくシリアスなお話ではなくポップなノリのギャグ漫画でめちゃくちゃ笑えるのもよい! 森の親友でこれまたいじめられっ子の卓や、森に恋するクラスの女王愛梨、校内の風紀を取り締まる菊池、赤城の舎弟やまじんなど、いじめられっ子もいじめっ子もそれ以外もみんな個性的で愛すべきキャラクターだらけ。 だからこそ、いじめ描写の残酷さが際立つ。 いいところも悪いところもある普通の愛すべき人間が、理由もなく暴力を受ける悲しさ。理由もなく暴力を振るう歪さ。 話せばわかりあえるのに、人を好きになったり笑ったりできる同じ人間なのに、そう思ってしまうからより恐ろしく悲しく感じられる。 しかもいじめ描写は作者さんの実体験がもとになっているそうで。もう言葉も出ませんね。 森と赤城のように人生をやり直すことはできないけれど、生まれ変わったつもりでファイティングポーズをとったり逆に拳を下げたりはできるかもしれない。 さんざん笑って少し立ち止まって、人生を見つめ直せるかもしれない作品でした。
野愛
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2021/03/25
観光は観光客にまかせて歩きましょう
先週のおすすめランキングを見て気になったので読んでみました。 こういう「ただ〇〇するだけ」の漫画は大体面白いと相場が決まっているので(当社比)。 やっぱり、面白かったです。 まず主人公の人間性が好きです。 タイトスカートを着こなすそれなりに美人なお姉さん。 「それなりに」って言われてイラっとしちゃうのに当たり障りなく対応するのがとてもいい。人と関わるのがめんどいから善人として生きてる人だ、というのが1ページで読みとれます。言い訳みたいに薄っすら恋をしてるのも解像度が高いです。 そして日々のストレスを癒やすべくひたすら徘徊します。 グルメスポットやら大自然やら目的があるわけではなく、石像や古い家を見ながら思考を巡らしひたすら歩きます。 「軽い城下町」とか「スパッとハウス」なんてキラーワードも次々生まれます。 何も考えずゆるゆる〜ではなく、目についたものを考察し分析し頭を回転させながらの徘徊、めちゃくちゃ楽しそうです。 「癒される」ではなく「癒える」なのも能動的な感じがしてよいですね。 癒されるのを待ってるだけじゃつまらない、自分から癒えに行きましょう。歩きましょう。
野愛
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2021/03/16
ショムニの飲み会しんどそう、と現代人は思う
昔ドラマやってたなあ懐かしいなあなんて気持ちで読んでみました。 ほんとに変わったんだなあ、時代。 坪井千夏はめちゃくちゃ強くていい女で、上下関係や社会常識なんてつまらないものをぶち壊していく的なお話かと思っていましたが、この会社別に平和じゃない?ショムニも他部署も変わらず平和なホモソーシャル。良くも悪くもホモソーシャルな世界観がここにはありました。 豪快で大胆で物怖じしない。下品でデリカシーがなくて、男の数で女の価値が決まるだなんてとんでも理論を振り翳す。 坪井千夏27歳美人OLにこの人格がおさまっているから、ショムニは面白い漫画として成り立っている。 主人公男だったらドラマ化絶対しないよなあ…。 そして今のこのご時世なら、塚原は普通にモテる。そんな気がする。 女が男の中で男と同じ振る舞いをして戦うのが男女平等だった時代から、変わりつつあるんだねえ…なんてしみじみ感じてしまいました。 それにしても8割下ネタなのでよくこれドラマ化したな、うまくやったなあと感心してしまいました。 まあそんなとこに注目せずにコミカル要素だけを楽しむのもよし、時代の変化に想いを馳せるもよし、だと思います!
野愛
野愛
2021/03/14
過去と向き合うという地獄
あなたは今までどれだけの人を傷つけましたか? と問われて、正確な数字を答えられる人はきっといないはず。 傷つけたことすら気づいてないことも、忘れてしまったこともたくさんあるはず。 そんな過去が今の自分をぶち壊しにきたら、どうする? 愛する妻と子どもと暮らす、平凡な高校教師・岩野。 ある日突然、カコと名乗る女に監禁され日常が奪われていく。 カコの正体と目的を突き止めるべく、岩野は自らの過去と向き合っていく。 過去に交際していた女性達と会うたびに、蓋をしていた記憶が開いていく。 人は誰しも思い出したくない過去はある。 傷つけたり傷ついたりした記憶ほど忘れたいものないので、その傷をひとつひとつ突きつけられるなんて拷問だよ…と岩野に同情してしまうほど。 黒歴史と笑い飛ばせない過去くらい、人にはあるものでしょう。それによって現在進行形で傷ついている人がいたとしたら、どう生きていけばいいのでしょうか。 カコの正体と目的を知り、岩野が出した答えが妥当な気がした。正解ではない気がするけど、人は生きてかないといけないし。 すっきりしないくらいがちょうどいい。過去は消えないものだから。