結局は、情熱が全てを動かすあくたの死に際 竹屋まり子六文銭「天才と凡人の比較」 的な題材は、若い頃から結構好きで、とくに圧倒的な才能によって凡人を駆逐していく様は爽快感があり、同時に英雄的な憧れを抱いたもんでした。 自分には、そういう才能がないと気づいたのも大きな理由だと思います。 だけど、年食ってつくづく感じることがある。 月並みですが、天才と呼ばれる人たちはすべからく努力していること。 それこそ、寝食を忘れるほど、その対象に没頭しているんです。 才能にあぐらなんてかいていない。 人並み以上に光る才能がありながら、それを磨く手を一切やめない。 イチローはどんなに体調が悪い日でも素振りをやめなかったようだし、藤井聡太は寝ても冷めても将棋のことばっかり考えているっぽい。 凡人との差は才能ではなく、ひとえにこの狂気ともとれる情熱の差なんだと感じるようになりました。 しかも、空腹、睡眠欲、そして性欲などといった欲に負ける程度のものじゃない。むしろ凌駕していく、これを才能と呼ぶんだと。 本題。 本作の舞台は文芸界。 主人公は、やり手のサラリーマンだったが、ある日を堺に会社にいけなくなってしまう。 そんな時、大学時代の文芸部の後輩で、時の人となった黄泉野季郎と出会い、自分のなかにくすぶっていた文芸への思いを再熱させるという展開。 天才・黄泉野季郎と凡人主人公の対比だが、上述のとおり今では見る目も違う。 天才が凡人を圧倒する様よりも、凡人が障害に屈せずどう乗り越えていくのか、そこに焦点があたる。 何より滾る情熱を、現実とどう折り合いをつけるのか? 一般的な幸福と、自身の中にある情熱に従うべきかとの選択に揺れる表現が(水に潜ったようなシーンとか)、とにかく秀逸で読んでいてひきつけられます。 ただでさえ凋落の厳しい文芸界に、編集者の言葉の切れ味もスゴイ(添付参照) ホントに一握りの才能しか生きられない逆境の世界なんだと痛感させられれます。 だからこそ、主人公は何を武器に、そして全てを投げ売ってまで向き合おうとする世界でどう戦うのか、今後の展開が予想できなくて楽しみです。 そして、読んでいてつくづく、情熱こそが人を動かすんだと改めて感じた作品でした。 何マンガというのだろうか?限界独身女子(26)ごはん 的場りょう六文銭仕事に疲れて退職し、ニートさながらに自堕落な生活をしている独身女性の日常を描いた作品。 タイトルに「ごはん」とあるが、あんまり美味しそうに食べないというか、どちらかというと美味しくなさそうである。 ご飯を食べること自体苦痛みたいな。 『鬱ごはん』をご存知だったら近い雰囲気。 主人公は小さい頃からコツコツと真面目に生きてきた経緯があって、1回崩れると立ち直るのが厳しいんだろうなぁという感じが読んでて伝わってくる。 しかし、この手のマンガってカテゴリ的にはなんなんだろうか?とか考えてしまった。 グルメではないし、ちょっとしたお色気はあるけど、ただひたすら主人公のマイナス思考や鬱っぽい様子をみているのが多くて、自分自身何目的で読んだのかわからなくなる。 そういう意味では新感覚な感じ。 立ち上がりそうにないけど、再生を描くのかな? 最後に妹(モデル?アイドル?)も出てきて、姉である主人公とどうからむのか期待。 家族の絆も診る小児科マンガハネチンとブッキーのお子さま診療録 佐原ミズ六文銭小児科を題材としたマンガは数あれど、大抵、障害の有無だったり虐待だったりが多く、読んでいてキツくなるんですが、テーマとしてドラマチックな展開ができるので(その表現が正しいか疑問ではあるが)、マンガとしてそうなる展開も是非に及ばずと思いながら読んでました。 が、本作は、なんの変哲もない家事や育児に追われた人たちが、ブッキーというデスメタルよろしくの文字通り一風変わった容姿の小児科医によって救われていくストーリー。 なんのドラマチックな展開もないのですが、淡々とした日常に潜むちょっとした苦労の数々に、子持ちの人なら共感必至だと思います。 ありていにいうとすごくいいです。 主人公のハネチンこと羽根田は、奥さんを亡くされて、幼い子ども2人の育児をしながら、仕事も人並み以上にこなそうとしてままならず、焦りから子供に当たってしまい、後悔する・・・ 後悔するくらいならやらなければいい なんて言えるのは、その感情に至ったことがない人間のセリフで、100%悪いとわかっていても、止められないことだってある。 特に子育ての場合は、理屈ではどうにも割り切れないことが多々ある。 それを的確に描いているのが、なんとも新鮮でした。 ブッキーの、患者とのつかずはなれずな程よい距離感もいい。 病気だけでなく、その病気に至る経緯から家族の関係性も診る小児科マンガで、今後も期待大な作品です。愛が重すぎて堕ちていく2人の女子高生霧尾ファンクラブ 地球のお魚ぽんちゃん六文銭クラスの男子・霧尾くんが、好きすぎる三好藍美と染谷波の2人の女子高生が主人公。 基本的に、この2人が霧尾くんに対してどっちが本当に好きか?のマウントをとりながら、愛を語りあう感じ。 これが漫才のようで面白い。 作者の独特のワードセンスが高すぎて、テンポの良い掛け合いと相まって笑いがとまらない。 『女の園の星』の和山やま先生が好きなら、たぶんハマると思う。 3巻の 「霧尾くんのドリンクバーがあったら、汗・涙・よだれ どれ選んで飲む?」 「おめえ なんで おしっこの選択肢ねぇんだよ」 が、マンガのセリフで衝撃うけた、おそらく今年最後のホームランです。 ただでさえ何言っているかわからないのに、それを超える狂気を繰り出す感じがたまらないっす。 だけど、1巻の最後とか、伏線なのか2人の関係に謎の描写があるのが、めっちゃ気になる。 霧尾くんが好きなフリして、2人は百合なのかな? それは、それでワイは好きだ。カップル×デスゲームカップルゲーム【合冊版】 cheeery六文銭真実の愛をカップルに試す「カップルゲーム」 いわゆるミッション的なものをクリアして、最後に優勝したカップルには1億の賞金がだされるという。 そして、ミッションをクリアできなかったカップルはその場で殺されることも含めて、デスゲーム的なスリリングな展開が面白い。 また、カップルにだされるミッションも、謎かけ的なものや、どう解決するのか?まで先が気になるようにつくっているのが絶妙だったりする。 主人公カップルの彼氏のほうの元彼女(しかも今も愛し合っている)が参戦しているのだが、 「カップルをシャッフルして〇〇する」 ミッションのときに、その2人が一緒になってしまったのは、さすがに続き気になりすぎた。 最新話がまだ、ここまでなのだが、この後、関係がどうなってしまうんだろう。 なんか、ネトフリかなんかで動画がつくられそうな感じがした。 容姿に翻弄された女の一生ブスの一生 分冊版 鳴宮苑六文銭謎の読後感のある作品。 容姿に恵まれず、不遇の高校時代を過ごした主人公。 自分がブスであるから、見向きもしないし誰からも相手にもされないと思い込む。 メイク駆使して改善しても、いわゆるカースト上位の女子たちのダシに使われるだけ。 そんな日々に嫌気がさし、大学入学と同時に整形に手をだす。 ただ、ベースが悪いせいか整形したにも関わらず、望んだ姿にはなれない。 ロクでもない男にしか相手にされない自分にひたすら苦しむ。 そこで、祖母の遺産にまで手を出し、さらなる整形を実施。 やっと自分が「選ぶ側」の人間になったと感じるも、まだ足りない。 可愛いが足りないから結局何もかも上手くいかないと思い込む。 可愛くなれば幸せになれる、そう信じてきた主人公に、高校からの同級生が放つ最後の言葉 あなたの「可愛い」は誰かに依存しているものだ 自分の「可愛い」がないから一生満足できない これが刺さる。 結局、前提が崩れていて、同級生は最初からずっとわかっていたのだ。 わかっていたのに止められなかったことを悔いながら主人公のもとをさる。 しかし、そんな訴えも虚しく、主人公はとまらない。 この呪いとも思える思考に取り憑かれた主人公に、ラストはゾッとした。 人工的に容姿を手に入れても、その考え方を改めない限りブスはブス。 それをさしてブスの一生というタイトルなんだと自分は感じた。 巻末のエピローグは本来あるべきだった想いがつまって、そこがまた物悲しい。 1人の人間が堕ちていくまでを描いた作品で、サクサク読めるわりに、グサグサささりました。 タワマンを通して描く人間模様この部屋から東京タワーは永遠に見えない 川野倫 麻布競馬場六文銭タワマン文学なる、格差社会にルサンチマンこじらせたようなものがSNS界隈で話題になった。 そのコミカライズな本作。 テーマ的にあまり興味がなかったのだが、アプリで読んでいて特に添付画像にある2話目がよくてハマってしまった。 結局自分は、男側がうらぶれて、女性が現実をみて早々に見切りをつけて去っていく展開に弱いのだと思う。 それだけだと、男性がいつまで変わらず思い続ける純情っぽく描かれ、他方、女性が変わってしまい不純というか強かというかの対比になりがちですが、本作がグッときたのは 「自分の幸せを自分で選んだ」 というセリフ。 これがキツイ。 変わってないから純情とかではなく、ただその状態を、ともすれば結果的に不幸になってしまう状態でも、怠惰だとか思想に合わないからやりたくないだとか自己を正当化して選択しているだけに過ぎないことを突きつけられる。 そりゃフラれるし、そんな自分に酔っている感じが痛々しい。 (でも、自分はやっぱりこういう男主人公話が好きだったりします。) こんな感じで、うまくいかない人間関係や、一見順調そうにみえて裏がある人間模様をタワマンという現代の成功の象徴通して描かれる作品です。 題材を今っぽくしてますが、本質的なものはあまりかわらない感じが文学だなと感じました。良い話だけではない、認知症介護のリアルも描く祖母の髪を切った日 しかばね先生六文銭自分もおばあちゃん子だっただけにタイトルだけでグッとくるものがあって読んだが、予想の斜めうえをいく展開で逆にそれが良かった。 シンプルに祖母との関係を描いた泣ける話かと思ったが、どっこい認知症になってしまった祖母の介護で精神すりへっていく苦悩も描いた作品でした。 主人公の幼少期の複雑な家庭環境、母親がおらず父親はいつもいないから、祖母に育てられたという状況も相まって、祖母への愛情と、認知症になったことで罵詈雑言を投げかけられ辛さの愛憎渦巻く感じがリアルだなと思った。 添付画像のように、介護に疲れた主人公が泣き言を吐くシーンも多々あり、人によっては嫌悪感を抱くかもしれないが、自分は共感できてしまった。 良いところばかり強調し表現されるよりも、誤魔化しがなくよっぽど良かった。実際は、こういうもんだと身につまされた。 認知症の祖母との生活や、幼少期の不幸話が多いので基本暗い展開が多いが、それでも読後感は不思議と悪くない作品でした。 死んだら思いでしかもっていけないと言われているのに、大事な人も思い出も忘れていく認知症が一番怖い病気だと改めて痛感した。俺もまだ本気だしてない件俺はまだ本気出してないだけ 青野春秋六文銭この本読むと謎に元気が出る。 中年のおっさんが、急にサラリーマン辞めて一念発起して漫画家になろうとする話。 突拍子もない展開だが、プロの漫画家にすんなりなれるわけもなく、当然父親にブチぎれられたり、世間とか社会の厳しさとか、そういうのが普通にやってくる。 バイトで糊口をしのぐのだけど、バイト先でも年下にからかわれたり(例えば店長と呼ばれる。ポジションではなく年齢的な意味で)、バイト先のメンバーと合コン行っても合コン相手にディスられる。 逆に、娘だったり、友人だったり、元会社の後輩だったり、応援してくれる人もいる。 人間同士のつながりみたいなのが色濃く出て、主人公を小馬鹿にする人と、そうじゃない人の対比が良い。 最初のうちは、何の根拠のない自信をもっている主人公を薄目でみているんだけど、抜けているけど味のある人間味にだんだん応援したくなってくるから不思議。 周囲の人間に恵まれてて、これはこれで楽しそうとか思ってしまう。 ダメでもいいじゃない、人間だもの、みたいなフレーズが浮かぶ。 俺はまだ本気出してない と思いながら、その可能性の中で生きていくのも、ある意味幸せなのかもなぁ。 六文銭1年以上前『後藤さんは振り向かせたい!』のお気に入り度をstarstarstarstarstar_borderにしました。後藤さんは振り向かせたい!みきぽん六文銭1年以上前『藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>藤子・F・不二雄六文銭1年以上前『恐らく誰の人生にも影響を及ぼすことはない僕のサラリーマン生活』のお気に入り度をstarstarstarstarstar_borderにしました。恐らく誰の人生にも影響を及ぼすことはない僕のサラリーマン生活青木ぼんろ « First ‹ Prev … 5 6 7 8 9 10 11 12 13 … Next › Last » もっとみる
結局は、情熱が全てを動かすあくたの死に際 竹屋まり子六文銭「天才と凡人の比較」 的な題材は、若い頃から結構好きで、とくに圧倒的な才能によって凡人を駆逐していく様は爽快感があり、同時に英雄的な憧れを抱いたもんでした。 自分には、そういう才能がないと気づいたのも大きな理由だと思います。 だけど、年食ってつくづく感じることがある。 月並みですが、天才と呼ばれる人たちはすべからく努力していること。 それこそ、寝食を忘れるほど、その対象に没頭しているんです。 才能にあぐらなんてかいていない。 人並み以上に光る才能がありながら、それを磨く手を一切やめない。 イチローはどんなに体調が悪い日でも素振りをやめなかったようだし、藤井聡太は寝ても冷めても将棋のことばっかり考えているっぽい。 凡人との差は才能ではなく、ひとえにこの狂気ともとれる情熱の差なんだと感じるようになりました。 しかも、空腹、睡眠欲、そして性欲などといった欲に負ける程度のものじゃない。むしろ凌駕していく、これを才能と呼ぶんだと。 本題。 本作の舞台は文芸界。 主人公は、やり手のサラリーマンだったが、ある日を堺に会社にいけなくなってしまう。 そんな時、大学時代の文芸部の後輩で、時の人となった黄泉野季郎と出会い、自分のなかにくすぶっていた文芸への思いを再熱させるという展開。 天才・黄泉野季郎と凡人主人公の対比だが、上述のとおり今では見る目も違う。 天才が凡人を圧倒する様よりも、凡人が障害に屈せずどう乗り越えていくのか、そこに焦点があたる。 何より滾る情熱を、現実とどう折り合いをつけるのか? 一般的な幸福と、自身の中にある情熱に従うべきかとの選択に揺れる表現が(水に潜ったようなシーンとか)、とにかく秀逸で読んでいてひきつけられます。 ただでさえ凋落の厳しい文芸界に、編集者の言葉の切れ味もスゴイ(添付参照) ホントに一握りの才能しか生きられない逆境の世界なんだと痛感させられれます。 だからこそ、主人公は何を武器に、そして全てを投げ売ってまで向き合おうとする世界でどう戦うのか、今後の展開が予想できなくて楽しみです。 そして、読んでいてつくづく、情熱こそが人を動かすんだと改めて感じた作品でした。 何マンガというのだろうか?限界独身女子(26)ごはん 的場りょう六文銭仕事に疲れて退職し、ニートさながらに自堕落な生活をしている独身女性の日常を描いた作品。 タイトルに「ごはん」とあるが、あんまり美味しそうに食べないというか、どちらかというと美味しくなさそうである。 ご飯を食べること自体苦痛みたいな。 『鬱ごはん』をご存知だったら近い雰囲気。 主人公は小さい頃からコツコツと真面目に生きてきた経緯があって、1回崩れると立ち直るのが厳しいんだろうなぁという感じが読んでて伝わってくる。 しかし、この手のマンガってカテゴリ的にはなんなんだろうか?とか考えてしまった。 グルメではないし、ちょっとしたお色気はあるけど、ただひたすら主人公のマイナス思考や鬱っぽい様子をみているのが多くて、自分自身何目的で読んだのかわからなくなる。 そういう意味では新感覚な感じ。 立ち上がりそうにないけど、再生を描くのかな? 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それは、それでワイは好きだ。カップル×デスゲームカップルゲーム【合冊版】 cheeery六文銭真実の愛をカップルに試す「カップルゲーム」 いわゆるミッション的なものをクリアして、最後に優勝したカップルには1億の賞金がだされるという。 そして、ミッションをクリアできなかったカップルはその場で殺されることも含めて、デスゲーム的なスリリングな展開が面白い。 また、カップルにだされるミッションも、謎かけ的なものや、どう解決するのか?まで先が気になるようにつくっているのが絶妙だったりする。 主人公カップルの彼氏のほうの元彼女(しかも今も愛し合っている)が参戦しているのだが、 「カップルをシャッフルして〇〇する」 ミッションのときに、その2人が一緒になってしまったのは、さすがに続き気になりすぎた。 最新話がまだ、ここまでなのだが、この後、関係がどうなってしまうんだろう。 なんか、ネトフリかなんかで動画がつくられそうな感じがした。 容姿に翻弄された女の一生ブスの一生 分冊版 鳴宮苑六文銭謎の読後感のある作品。 容姿に恵まれず、不遇の高校時代を過ごした主人公。 自分がブスであるから、見向きもしないし誰からも相手にもされないと思い込む。 メイク駆使して改善しても、いわゆるカースト上位の女子たちのダシに使われるだけ。 そんな日々に嫌気がさし、大学入学と同時に整形に手をだす。 ただ、ベースが悪いせいか整形したにも関わらず、望んだ姿にはなれない。 ロクでもない男にしか相手にされない自分にひたすら苦しむ。 そこで、祖母の遺産にまで手を出し、さらなる整形を実施。 やっと自分が「選ぶ側」の人間になったと感じるも、まだ足りない。 可愛いが足りないから結局何もかも上手くいかないと思い込む。 可愛くなれば幸せになれる、そう信じてきた主人公に、高校からの同級生が放つ最後の言葉 あなたの「可愛い」は誰かに依存しているものだ 自分の「可愛い」がないから一生満足できない これが刺さる。 結局、前提が崩れていて、同級生は最初からずっとわかっていたのだ。 わかっていたのに止められなかったことを悔いながら主人公のもとをさる。 しかし、そんな訴えも虚しく、主人公はとまらない。 この呪いとも思える思考に取り憑かれた主人公に、ラストはゾッとした。 人工的に容姿を手に入れても、その考え方を改めない限りブスはブス。 それをさしてブスの一生というタイトルなんだと自分は感じた。 巻末のエピローグは本来あるべきだった想いがつまって、そこがまた物悲しい。 1人の人間が堕ちていくまでを描いた作品で、サクサク読めるわりに、グサグサささりました。 タワマンを通して描く人間模様この部屋から東京タワーは永遠に見えない 川野倫 麻布競馬場六文銭タワマン文学なる、格差社会にルサンチマンこじらせたようなものがSNS界隈で話題になった。 そのコミカライズな本作。 テーマ的にあまり興味がなかったのだが、アプリで読んでいて特に添付画像にある2話目がよくてハマってしまった。 結局自分は、男側がうらぶれて、女性が現実をみて早々に見切りをつけて去っていく展開に弱いのだと思う。 それだけだと、男性がいつまで変わらず思い続ける純情っぽく描かれ、他方、女性が変わってしまい不純というか強かというかの対比になりがちですが、本作がグッときたのは 「自分の幸せを自分で選んだ」 というセリフ。 これがキツイ。 変わってないから純情とかではなく、ただその状態を、ともすれば結果的に不幸になってしまう状態でも、怠惰だとか思想に合わないからやりたくないだとか自己を正当化して選択しているだけに過ぎないことを突きつけられる。 そりゃフラれるし、そんな自分に酔っている感じが痛々しい。 (でも、自分はやっぱりこういう男主人公話が好きだったりします。) こんな感じで、うまくいかない人間関係や、一見順調そうにみえて裏がある人間模様をタワマンという現代の成功の象徴通して描かれる作品です。 題材を今っぽくしてますが、本質的なものはあまりかわらない感じが文学だなと感じました。良い話だけではない、認知症介護のリアルも描く祖母の髪を切った日 しかばね先生六文銭自分もおばあちゃん子だっただけにタイトルだけでグッとくるものがあって読んだが、予想の斜めうえをいく展開で逆にそれが良かった。 シンプルに祖母との関係を描いた泣ける話かと思ったが、どっこい認知症になってしまった祖母の介護で精神すりへっていく苦悩も描いた作品でした。 主人公の幼少期の複雑な家庭環境、母親がおらず父親はいつもいないから、祖母に育てられたという状況も相まって、祖母への愛情と、認知症になったことで罵詈雑言を投げかけられ辛さの愛憎渦巻く感じがリアルだなと思った。 添付画像のように、介護に疲れた主人公が泣き言を吐くシーンも多々あり、人によっては嫌悪感を抱くかもしれないが、自分は共感できてしまった。 良いところばかり強調し表現されるよりも、誤魔化しがなくよっぽど良かった。実際は、こういうもんだと身につまされた。 認知症の祖母との生活や、幼少期の不幸話が多いので基本暗い展開が多いが、それでも読後感は不思議と悪くない作品でした。 死んだら思いでしかもっていけないと言われているのに、大事な人も思い出も忘れていく認知症が一番怖い病気だと改めて痛感した。俺もまだ本気だしてない件俺はまだ本気出してないだけ 青野春秋六文銭この本読むと謎に元気が出る。 中年のおっさんが、急にサラリーマン辞めて一念発起して漫画家になろうとする話。 突拍子もない展開だが、プロの漫画家にすんなりなれるわけもなく、当然父親にブチぎれられたり、世間とか社会の厳しさとか、そういうのが普通にやってくる。 バイトで糊口をしのぐのだけど、バイト先でも年下にからかわれたり(例えば店長と呼ばれる。ポジションではなく年齢的な意味で)、バイト先のメンバーと合コン行っても合コン相手にディスられる。 逆に、娘だったり、友人だったり、元会社の後輩だったり、応援してくれる人もいる。 人間同士のつながりみたいなのが色濃く出て、主人公を小馬鹿にする人と、そうじゃない人の対比が良い。 最初のうちは、何の根拠のない自信をもっている主人公を薄目でみているんだけど、抜けているけど味のある人間味にだんだん応援したくなってくるから不思議。 周囲の人間に恵まれてて、これはこれで楽しそうとか思ってしまう。 ダメでもいいじゃない、人間だもの、みたいなフレーズが浮かぶ。 俺はまだ本気出してない と思いながら、その可能性の中で生きていくのも、ある意味幸せなのかもなぁ。 六文銭1年以上前『後藤さんは振り向かせたい!』のお気に入り度をstarstarstarstarstar_borderにしました。後藤さんは振り向かせたい!みきぽん六文銭1年以上前『藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>藤子・F・不二雄六文銭1年以上前『恐らく誰の人生にも影響を及ぼすことはない僕のサラリーマン生活』のお気に入り度をstarstarstarstarstar_borderにしました。恐らく誰の人生にも影響を及ぼすことはない僕のサラリーマン生活青木ぼんろ
「天才と凡人の比較」 的な題材は、若い頃から結構好きで、とくに圧倒的な才能によって凡人を駆逐していく様は爽快感があり、同時に英雄的な憧れを抱いたもんでした。 自分には、そういう才能がないと気づいたのも大きな理由だと思います。 だけど、年食ってつくづく感じることがある。 月並みですが、天才と呼ばれる人たちはすべからく努力していること。 それこそ、寝食を忘れるほど、その対象に没頭しているんです。 才能にあぐらなんてかいていない。 人並み以上に光る才能がありながら、それを磨く手を一切やめない。 イチローはどんなに体調が悪い日でも素振りをやめなかったようだし、藤井聡太は寝ても冷めても将棋のことばっかり考えているっぽい。 凡人との差は才能ではなく、ひとえにこの狂気ともとれる情熱の差なんだと感じるようになりました。 しかも、空腹、睡眠欲、そして性欲などといった欲に負ける程度のものじゃない。むしろ凌駕していく、これを才能と呼ぶんだと。 本題。 本作の舞台は文芸界。 主人公は、やり手のサラリーマンだったが、ある日を堺に会社にいけなくなってしまう。 そんな時、大学時代の文芸部の後輩で、時の人となった黄泉野季郎と出会い、自分のなかにくすぶっていた文芸への思いを再熱させるという展開。 天才・黄泉野季郎と凡人主人公の対比だが、上述のとおり今では見る目も違う。 天才が凡人を圧倒する様よりも、凡人が障害に屈せずどう乗り越えていくのか、そこに焦点があたる。 何より滾る情熱を、現実とどう折り合いをつけるのか? 一般的な幸福と、自身の中にある情熱に従うべきかとの選択に揺れる表現が(水に潜ったようなシーンとか)、とにかく秀逸で読んでいてひきつけられます。 ただでさえ凋落の厳しい文芸界に、編集者の言葉の切れ味もスゴイ(添付参照) ホントに一握りの才能しか生きられない逆境の世界なんだと痛感させられれます。 だからこそ、主人公は何を武器に、そして全てを投げ売ってまで向き合おうとする世界でどう戦うのか、今後の展開が予想できなくて楽しみです。 そして、読んでいてつくづく、情熱こそが人を動かすんだと改めて感じた作品でした。