マウナケア
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1年以上前
このタイトルにこの表紙だと、弁当を扱う食マンガと思われがち。確かに食マンガであり弁当ネタも多く出てはきます。ただ、私はむしろ教育的な部分が大きい作品だと思うんです。主役は國木田大学農学部のちょっとかわった講師・結城玄米。この人、授業にぬか床を持ちこむは、大学に勝手に畑は作るは、やることなすことマイペース。ですがその正体は食文化史のエキスパート。「食べることは生きること」という信念に基づいて、一家で囲む食卓の大切さや、食べ物に対する感謝の気持ち、食文化のありがたさを身をもって教えてくれる、言動一致の人。そして彼の想いは関わる人たちにしっかりと受け継がれていきます。それは母親への気持ちの変化であったり、郷土料理の本質を深く知ることであったり。それを通して教え子たちが成長していく過程が感動的で、うらやましくもあります。押しつけがましくないのに、すっと人の心の中に入ってくる玄米先生の授業だったら、何度でも受けてみたいですね。私も農学部出身なので、もしこんな先生がいたら今ここでこの原稿を書いてはいなかったかも。
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1年以上前
『バジリスク~甲賀忍法帖~』『Y十M(ワイじゅうエム)~柳生忍法帖~』に続く、せがわまさき作画の山田風太郎の忍法帖シリーズで、短編作品の漫画化。単行本一冊に1話収録となっています。しかし…この短編のラインナップ、原作は前2作と比べ、いささか趣が異なるというか、ずばりエロすぎ。漫画化にあたりエンタメ忍術路線から本来の山田風太郎路線によくぞ舵を切ったものだとは思いますが、評価は分かれるかもしれませんね。私は好きですけど。1巻に収められているのは大島山十郎という小姓と上杉家の物語。直江兼続や前田咄然斎(慶次郎)も出てきて賑やかな中、山十郎にまつわる謎が関ヶ原前夜の情勢に関わってくる。発想の飛躍も独創的、忍術も淫靡。幻想的な読後感を与えてくれます。2巻は「剣鬼喇嘛仏」というお話で、宮本武蔵を追う剣豪・長岡与五郎が主人公。秘術にはまりナニがアレを離さなくなってしまい孕むまでその姿で闘うという、コメディ一歩寸前なのですが、ラストにオリジナルエピローグがあり、これが何とも切ない。本編では「小便はどうするのじゃ」なんて言ってたのに…。ちなみに3巻のみ普通の現代劇、と色々な面で不思議な選択です。
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1年以上前
この作品の連載が始まったのはバブル絶頂期。そして主人公・高根沢八一は証券会社の営業マン。そんな華やかなりし時代の花形職業という浮ついた設定なのに、話はどんどん陰鬱になっていく。あの時代のサラリーマン漫画にしては異色の作品。しかしながら当時の若者の恋愛観がしっかり描かれていて、そんなところがヤングサラリーマンには人気だったと記憶しています。テーマはタイトル通りの理想の結婚相手探し。八一はさまざまなタイプの女性と付き合うのですが、うまくいかずに破局、の繰り返し。なぜダメなのか、その答えは読者にはよくわかるように描かれていて、逆に劇中の八一はそれに気づかないという、なんとももどかしいストーリーが延々と続きます。八一の恋愛下手っぷり、そして八一に関わる女性たちの行動。恋愛に対する価値観が変わりつつあった時代の中、まわりはそれに乗っかって成長していくのに、八一は変わることができない。いつの時代もこういう人っていますよね。こういう側面だけ見ると人間ってあまり変わっていないのかもなあ。30歳前に結婚で焦る、ってことはさすがになくなってきたけれども。