あうしぃ@カワイイマンガ
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朝がまたくるから

贖罪の歌、優しく響く。

朝がまたくるから 羅川真里茂
あうしぃ@カワイイマンガ
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幸せになりたいけれども、それを得ることは許されない……そんな苦しみや罪の意識を抱えながらも、寄り添わずにはいられない人達を描いた、三つの物語。 羅川先生が過去の連載で駆使してきた、お気楽コメディに苦しみを隠す技を封印。剥き出しにして突き付けてくる状況と感情は、生々しく、痛々しい。 三つの季語に詩情を託し、様々な「救い」の形を謳い上げる、これらはそんな「贖罪の歌達」。目を背けなければ、最後には必ず、優しさに出会える。 ●葦の穂綿 ふと出会った男性に、心惹かれる。どこか壁のある彼の、向き合っている「罪」を知った時……。 とてつもなく重い物を背負った、赦しを得られない人に、それでも支えたいと思う人が、ほんのひと時、寄り添う話。 ●半夏生 カメラマンになりたい女と、女装したい男子高校生。秘密を共有するうち、惹かれ合い、一線を超えるも……。 やましさと、どうしようもなく惹かれる気持ちを、互いの閉塞感の中で育んでしまった二人の、精一杯のけじめのつけ方の話。 ●冬霞 ネグレクトされた幼い双子を、若い男が誘拐する。何かから逃げる男は、一方で双子には、真っ当な愛情を注ぐ。彼は一体何をしたいのか……。 大きな負の連鎖に連なる、男と双子。双子を真っ当にしようとする男の動機を知ると、そのクソッタレな状況と、それに抗して足掻く男、そして彼に愛情を貰って始めて、自らの感情を出すことを覚える双子に、本質的に幸せを求める人の性を見て、切なくなる。 この作品については名作『赤ちゃんと僕』を描いたことで得た物が、反映されているのかもしれない。虐待の実態など、極端な事例のようでいて、実際に報道で触れる痛ましい事件のリアリティがある。

新装版 しゃにむにGO

人の脆さとテニス愛の四重奏曲

新装版 しゃにむにGO 羅川真里茂
あうしぃ@カワイイマンガ
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愛情を見失う者、支配しようとする者、失いたくなくて縋る者、恋と競技愛が混乱する者……。悩み足掻き、それでもテニスを「愛する」高校生達の、頂点を目指す三年間の物語。 ----- 常に世代のトップを争ってきた、滝田留宇衣と佐世古駿。精神面で佐世古駿に水をあけられ、ジュニア界から脱落した滝田留宇衣は、高校で出会った運動神経の鬼・伊出延久と共に、学生テニスの頂点を目指す。 物語は、この三人に、足の障害でテニスを断念した尚田ひなこを加えた四人が、様々に関わり、響き合う、切迫し熱気を帯びた四重奏の様相を呈する。 物語は、伊出延久の能天気さに覆われた、前向きコメディタッチで進行して行くが、話が進むにつれ四人は様々に、苦しみ崩れてゆく。 闘う動機を試合中に見失い、プロを目指したい気持ちが試合に反映されない滝田留宇衣。 しがらみから逃れる為に、自分のテニスにライバルの滝田と、好意を持つひなこのみを入れて孤立する佐世古駿。 プレイできない代償を、伊出と佐世古の両方を支えることに求め、自分の本心を見失う尚田ひなこ。 そして、常に明るい伊出延久も、テニスをする動機をひなこへの恋に置いてしまい、恋に躓くと立ち止まってしまう。 彼等が等しく見失うのは「テニスへの初期衝動」。この物語は、四人がそれぞれ苦しみながら、最終的に本当の愛と実力を手に入れる「歓喜の歌」なのである。 苦しみが深い分だけ、解放された時の晴れやかさと、きらめきに包まれた彼等の姿に、共に涙するほど心動かされる。 彼らの周りのチームメイト、指導者、ライバル達も、全員が苦しみを抱えており、その物語の解決を、ひとつひとつ丹念に描く。大小様々な物語にじっくり寄り添って、最後に皆で笑いたい、そんな作品だ。 ----- 加えて、作中で「車椅子テニス」をがっちりと取り上げて、困難の中でも、自分の心に真っ直ぐ向き合うことが描かれていて、心温まる。パラリンピック東京大会前に、『ブレードガール 片脚のランナー 』などと併せて読んでおきたい。

東京のらぼう!

西東京の四季を遊ぶ家族!

東京のらぼう! 関口太郎
あうしぃ@カワイイマンガ
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ここは東京都あきる野市。タワマンもお台場もないけれど、ちょっと歩けば自然がいっぱい!何でも作れるけど仕事が暇な父たんと、今日は何して遊ぶのかな......(ちょっと面倒) ----- あきる野市は、都心から西にちょっと(?)離れた、そこそこの(?)ベッドタウン。新宿から拝島駅経由、JR五日市線でおよそ1時間。八王子や青梅に隣接する。秋川渓谷や丘陵地帯を擁し、武蔵五日市駅から三頭山(檜原都民の森)へのバスがあるなど、自然にとても近い街。 自然大好きな漫画家の「とうたん(父)」は、連載を打ち切られた時に、「家賃が安い」という「かあたん(母)」の後押しもあり、この地への移住を決める。その時お腹にいた子が13歳になり、10歳、4歳の三姉妹と、かしましくも楽しい「ちょい田舎暮らし」を楽しむ、そんなお話である。 とうたんのアウトドアスキルと好奇心に振り回されつつ、三者三様にとうたんとの遊びを楽しむ姉妹。特に中学生の長女は、簡単には父についてはいかないが、その歳なりの付き合い方で楽しませる父の懐の深さが優しい。 そしてとにかく食に関しては、都会では絶対に手に入らない食材が盛り沢山。調理に成功すればめっちゃ美味いし、多少失敗しても、それすらも楽しめる。「東京」でこんな食生活を送れるなんて、羨ましい。 とうたんは、アウトドア以外でも(暇なのか?)子供達の相手をよくする。そして子供達の写真などの記録をとりたがる。それはまるで、過ぎていく今を何とか繋ぎ止めようとするようで、一緒にセンチな気分になる。 大ゴマで、見開きで、展開される自然と子供達の光景に、息を飲む。そんな美しい自然と、程良く触れ合いながら生き生きと暮らしたいと願う人に贈られた「あきる野暮らし漫画」。憧れるし、あきる野に住みたくなる、そんな作品だ。

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