百合百景

心も体も触れたい二人の百合SS

百合百景 はちこ
あうしぃ@カワイイマンガ
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1ページに百合感情を端的に表現されると、そのページに目を奪われ先に進めなくなる、という感じ、『百合ドリル』を読まれた方にはお分かり頂けるだろうか? 『百合ドリル』は複数の作家さんが寄稿されていたが、『百合百景』とその続刊『百合ごよみ 百合百景2』は、はちこ先生がお一人で、1ページ(時々2〜4ページ)の百合ショートショート(SS)を描き綴っている。 少ないコマで、あるいは一枚絵で、二人の百合的関係性を、割と明るく大らかに、そしてしばしばエッチに描き出す。 非常にスキンシップが多く、読んでいてドギマギしてしまうが、触れたいのに間合いを測りかねたり、触れていても想いは微妙に追いつかなかったり、想い合っているのに互いに気付かなかったり……二人の感情の距離感が色々で面白いし、端的に表現されるせいか心にストレートに響く。 2巻とも女子高生のお話が多いが、女子二人のあらゆる百合関係性を描き出し、更に進んでいくとOLや年の差百合、そして『百合ごよみ』には時節要素も加わり、百合関係性の博覧会の様相。飽きることがない。 私はこの2冊を読むのに、概ね5日はかかった。そのくらい濃厚なこの作品。あなたは何日かけて読む?

そういう年頃になっちゃった年の差姉妹

十歳差妹の「成長」に姉たじろぐ。 #1巻応援

そういう年頃になっちゃった年の差姉妹 はちこ
あうしぃ@カワイイマンガ
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二人の百合シチュエーションを、あっけらかんと、そしてちょっとエッチに描くはちこ先生の新作は、10歳差姉妹の関係性コメディ。 Twitterで時折見られたこの姉妹のお話が、遂に、ついに書籍化となった事を、まずは言祝ぎたい。待ってました! 形としては、16歳の姉と6歳の妹のやり取りと、それから10年後、26歳の姉と16歳の妹のやり取りが比較されながら描かれる。 姉は年の離れた妹を溺愛。いわゆる「目に入れても痛くない」というやつだ。そして妹も、姉が大好き。 しかし、この「大好き」という言葉が曲者だ。 姉はいつまでもこの言葉を「親愛の情」と受け取るが、成長してしまった妹の感情は……? そして単なるスキンシップからキスに至るまで、6歳と16歳でこんなに意味が変わるのか、ということに、こうして比較して描かれるとはっきり気付かされ、軽く驚く。 ほのぼの仲良し姉妹を見た後に繰り広げられる、妹の成長を掴み切れていない姉にグイグイ迫る妹、ドキドキしつつも妹の真意を図りかね、たじろぐ姉……というやり取りが、クセになる。いつまでも眺めていたい、至上の姉妹百合!

あうしぃ@カワイイマンガ
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1年以上前
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あうしぃ@カワイイマンガ
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1年以上前
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雑貨店とある

甘味+和雑貨、究極の癒しスポット。 #1巻応援

雑貨店とある 上村五十鈴
あうしぃ@カワイイマンガ
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ああ、心がささくれ立っている。気が滅入る。心を手っ取り早く立て直したい、口角を上げて笑いたい……私はそんな時に、甘味が食べたくなる。 まずは一口、ほんの少しでいい、甘味を口に入れた瞬間の、脳がすうっとして、幸せな気持ちになるあの瞬間。 形は可愛く。目でも楽しんでから、少しずつ形を崩して、口の中に運んでいく。 そして食べる場所も、素敵な方がいい。あのいい感じの店に行く、という高揚感が、甘味の浪漫を倍増させる。 そんな素敵な甘味処を夢見る私の理想郷が、この作品にはあった。 ★★★★★ 場所は東京、「雑貨店とある」と看板が出ているお店。中には和雑貨が並び、落ち着いた雰囲気。店内には飲食スペースが設けられ、店主の手による飲料や甘味が提供される。 その店には何かに躓いたり、落ち込んだりする人が引き寄せられる。彼らは店の雰囲気と、何よりも提供される甘味に驚き、癒されていく。 季節のメニューが響いたり、懐かしの味に感涙したり、食材の意味に感動したり……という「メニューの小粋さ」も素晴らしい。しかしそれ以上に、どのメニューも甘さが脳天に響きそう! 店主の甘味は、自分のこだわりよりも食材や食べるお客の事を考えて作られていて、甘味好きのツボを徹底して突いてくる。お客と甘味の話をする、どこか呑気な店主は楽しそうだ。 そんな「雑貨店とある」は素晴らしい癒しスポットなのだが……店主もバイト君も暇そうなのが、ちょっと心配。 お客を立てて損をする店主と、店を心配するバイト君、そして大量の柚子の行方は……次巻も、大切な癒しスポットがつぶれてしまわない様に祈りながら、出てくる甘味の味を空想して愉しみたい。

シャトル・プリンセス

美しすぎる日本代表の、重責と苦闘。

シャトル・プリンセス 咲香里
あうしぃ@カワイイマンガ
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【世界と戦うアスリート漫画③〜スポーツコラム風に】 2020年3月17日現在、バドミントン女子ダブルスの世界ランキング十傑には、日本ペアが三組入っている。永く日本のトップであった福島×廣田組を、永原×松本組が猛追。そして2016リオ五輪金の髙橋×松友組は、2020東京五輪代表の二枠から遠ざかりつつある。 (2021.7.29追記あり) 新勢力の後塵を拝している髙橋×松友組も、かつては2012ロンドン五輪銀の藤井×垣岩組を乗り越えてきた。 世界レベルの国内選手と争い、乗り越える事で進化してきた、日本バドの女子ダブルス。その源流には、小椋×潮田組という伝説がいた。ルックスと実力を兼ね備えた二人には、余りにも過剰な期待と注目が集まったものだった。 ★★★★★ 『シャトル・プリンセス』の主人公は、日本トップクラスの女子バドミントン選手達。 インターハイを制して高校を卒業した有沢は、勝ち続ける事の重圧からバドミントン自体を辞めたいと考えるが、気迫で圧倒してくる西条に惹かれ、西条とのダブルスを申し入れる。 二人はすぐに頭角を現し、日本の頂点を獲ると世界への挑戦を始める。 界隈からの期待とやっかみ、ビジュアル面での過剰な人気、それに反して結果を残せないことへの批判、そして世界の壁。……2013年発表のこの作品は、恐らく2008年迄に小椋×潮田組が通ってきたと思われる苦闘の歴史をなぞる。 その上で、勝気で正直な西条がストレートに状況への違和感を表明するのを、若いのに落ち着いた有沢が冷静に受け止める、というやり取りで、過剰な重圧を二人で乗り越える過程が描かれ、この二人なら……という期待感が高まる。 長年『スマッシュ!』で高校生のバドミントン競技を描いてこられた咲香里先生が、この世界を見てこられた知見が詰まっているのだろう。観戦者の私が感じていた「オグシオ・フィーバー」への違和感も、当事者達の「それでも競技が注目されたい」という願いも、選手達の複雑な思いも……様々な思惑の絡んだ「女子ダブルス」が描かれていて、これは相当な問題作となるかも、と期待しながら次巻を待っていた。 ……残念ながら1巻で(中途半端な状態で)打ち切りのようだが、今後も各競技で現れるだろう「美しすぎる○○選手」を考え、日本代表の重責に思いを馳せるために、続刊は無いことを念頭に置いて、読んでみてもいいかもしれない。

出没!ビール女子

仕事帰りは一人、ビールでOFF! #1巻応援

出没!ビール女子 猫原ねんず
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

ビールは解放のお酒、と言ってしまいたい。 仕事帰り、飲み屋でソワソワビールを待つ。本当にもう仕事終わりにしていいの?と思いながら、やって来たビールを口に含み、苦味を感じる前にグイグイ喉に流し込み……クハァー!の瞬間、スイッチがONからOFFに切り替わる、そんな気がする。 おひとりさま女子の主人公は、仕事帰りや面倒な飲み会の後、一人色々な店でビールと、こってり目の料理を堪能する。 ビールを飲んでクハァー!で対外モードから一人モードにスイッチを入れ替える。そして回想で、様々なビールと人との縁を思い出す。 一人で飲むという行為で、大切な人の存在をしみじみ確認する……そういう自分の保ち方、いいなぁと思う。 様々な地域や国の食文化が入り乱れる日本の都市では、共に提供されるビールもバラエティ豊かになる。分かる人ならこの作品の目次を見ているだけでも楽しいだろう。 海外勢はドイツ、ベルギー、イタリア、メキシコ、アメリカ、中国。日本からもメジャー会社のお馴染みの奴からクラフトビールと、幅広い。ビールの蘊蓄は最小限に、料理との取り合わせを魅力いっぱいに取り上げており、読んでいて喉が鳴る。というか、一緒にクハァー!をやりたくなる。 読み終わった後、取り敢えず身近でどんなビールが飲めるかな……という基準で飲食店を探したくなる、そんな漫画だ。

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