オンサイト!

岩登り漫画の元祖〜取り憑かれる子供達

オンサイト! 尾瀬あきら
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

オリンピックを目前にして、ボルダリング漫画が幾つか連載されているが、皆さんは、ボルダリングとフリークライミング、ごっちゃになっていないだろうか? まず、岩壁を登るものの総称として「ロッククライミング」がある。 ロッククライミングは、岩に器具を打ち込み、縄ばしごやロープを使って登る「人工登攀」と、最低限の安全確保のロープのみで、壁面に足場を見つけて身体能力で登る「フリークライミング」に分けられる。 フリークライミングの中でも、安全ロープすら使わず、3〜5メートルの低い壁を攻略するのが「ボルダリング」。10〜20メートルの高い壁を、安全ロープを持つ人と二人で挑む「ルートクライミング」より始めやすい。 (ルートクライミングの中でも難易度の高い種目が「リード」で、ボルダリング、リードに「スピード」を加えたのが、オリンピック競技のスポーツクライミング) 人工壁を登る大会の様子はTVで目にするが、あの選手達はしばしば、自然の岩壁にも挑戦する。決して安全ではない、人間を拒む険しい自然に、目を輝かせて挑戦してしまう彼らの初期衝動を描いたのが、この『オンサイト!』という作品だ。 ★★★★★ 増水した川から絶望した少女を助け出す為、少年は急な崖を、少女を背負って登る。命懸けの登攀に成功した少年は、その時から、岩登りに取り憑かれる。そして彼の背で、共に登った少女もまた……。 ★★★★★ 少年は二度、三度と同じ壁を登ろうとするが、上手くいかず、危険な目に遭う。自然の厳しさを知って尚、岩に惹かれる彼を、少女はフリークライミング講習に誘う。そこで面白さに嵌った二人は、のめり込んでいく。 体力では断然有利な少年だが、クライミングのセンスは少女の方が上で、互いは競うように日々、研鑽を積む。 彼らの前には両親の不和、在日韓国人の微妙な問題といった重苦しさが現れる。しかし彼らはそれを忘れるように、クライミングに打ち込む。その様は切ないのだが、面倒な人間のドラマに立ち向かうのではなく、逃げるように別の事に夢中になることで、彼らは却って人として成長する。特に生気のなかった少女の前向きな変貌は、見ていて楽しい。 弱々しい子供がある時、何かに魅入られ、そこから一つ一つ積み上げるうちに、いつの間にか大きな世界を見据えるようになる。そんな成長譚として、震える物語だ。 『のぼる小寺さん』の10年前、2005年のこの作品は、フリークライミングの全体像と、競技に魅入られる選手のマインドに触れられる感動作。最近の「ボルダリング女子漫画」の原点として、比較してみても面白いかもしれない。

フリクションガール

マネ厳禁!学校の壁を登る女子に出会った!

フリクションガール noga
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

一人暗く過ごしていた新高校一年生・うーちゃんは、妙な光景に出会う。え…… 誰かが非常階段を、 「外から」よじ登ってる! (注:絶対マネしないでね!) 何やってるの!と思わず声をかけたうーちゃん、登っていた女子・ギャオに誘われ、あれよあれよとボルダリングに挑戦することに。 今までピアノに打ち込んできたうーちゃん。受験に失敗し、失意の中で「指が駄目になる」覚悟で挑んだボルダリング。ギャオの喜ぶ顔を見て、もっとやってみたくなる。……「サイコーになる」って、どんなだろう? ★★★★★ この作品、ボルダリングの「魅力」の取り上げ方が、独特だ。 まず、ギャオが登る場所。学校の非常階段を外から攻略、岩を見ればマリア様の上もお構いなし、そして荘厳なステンドグラス窓も、彼女には攻略対象でしかない。 全ての壁が……自然であれ人工であれ……攻略対象なのだろうが、ギャオの場合、かなり無謀で、挑戦的だ。日常の風景の中に、まるで未踏の地を進む冒険家のようなときめきを見出している。 我々は、真似してはいけない。鍛え抜かれたギャオの挑戦の日々を、この作品で眩しく見つめるだけにしよう。 それから、途中から参加のマミちゃんの、ダイエットやインスタ映えという視点も、ああ確かに大事だよね、と思わされる。(ダイエットきっかけでボルダリングする漫画として『ぽちゃクライム!』もご覧下さい!) ★★★★★ 取り敢えず、ギャオとマミちゃんと遊ぶのが楽しい、から始まる、うーちゃんのボルダリング。 ここでカバーを見返してほしい。 物語最初の暗い表情とも、最後の柔らかな笑顔とも違う表情。いつの日かこれを見るのが、きっとこの作品の到達点なのだろう。うーちゃん変われるか!? あと、部活とかって……?

ぽちゃクライム!

頑張るボルダリング百合with甘味 #1巻応援

ぽちゃクライム! みんたろう
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

高校で再会した幼馴染は、スリムで綺麗になっていた!ボルダリング部に勧誘する幼馴染・あいらに「ダイエットになる」と乗せられ、それなら……と、ぽっちゃり女子つぐみは試しに壁を登る。 ★★★★★ それにしても確かにダイエットにボルダリング、良いかもしれない。 一人でジョギングやジムは辛くて飽きそう。けどバレー部だのバドミントン部だのは、レギュラーだ規律だと煩くて、別の意味で痩せそう。その点ボルダリングは、個々の達成度や目標設定で進められ、求道的だけど押し付けがましくない。仲間に恵まれれば、ギスギスしない向上心がある、楽しい全身運動の趣味になるだろう。 ★★★★★ あいらと二人で壁を攻略し、初めてのゴールに運動苦手なつぐみは感動し、即座にボルダリング部へ入部!優しい部の雰囲気のおかげで次第にボルダリングにハマっていく……んだけど、この子、甘味はまだ食べてる。……ダイエットは? そしてそれを止めないどころか、むしろ甘味を与えるあいら。彼女はふんわり白肌のつぐみが大好き。つぐみに見惚れてキュンキュンし、彼女の一言ですぐ挙動不審に。……ダイエットは? 百合要素もありつつ、ボルダリングの道具やテクニック、心構え、そしてつぐみの成長もしっかり描かれ、次巻、つぐみ始めてのコンペ(競技会)へ。 今のところ「アスリート系」というより「部活日常物」っぽい。細い線の絵柄も安定して可愛く、キラキラふわふわした表現が爽やかに甘い。関係性の安定している百合作品として、気軽に追いかけたい可愛い作品が、また一つ生まれた!(そしてその先にダイエットの可能性があるのかも、併せて見て行きたい)

あうしぃ@カワイイマンガ
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