【追記】東京五輪が2021年に延期になり、五輪開催時には福島×廣田組(フクヒロペア)は永原×松本組(ナガマツペア)をランキングで再逆転。1位フクヒロ、2位ナガマツ共に五輪に出場となった。
しかし結果は両ペア共に準々決勝敗退。世界で戦う事の厳しさを改めて実感する事になっただろうが、試合はハイレベルで素晴らしかった。
どうか今後もバドミントンは世界を見て戦って欲しいし、他の競技も、そしてそれを扱う漫画も、どんどん世界を戦う事を視野に入れて欲しいと思う。
【世界と戦うアスリート漫画③〜スポーツコラム風に】
2020年3月17日現在、バドミントン女子ダブルスの世界ランキング十傑には、日本ペアが三組入っている。永く日本のトップであった福島×廣田組を、永原×松本組が猛追。そして2016リオ五輪金の髙橋×松友組は、2020東京五輪代表の二枠から遠ざかりつつある。
(2021.7.29追記あり)
新勢力の後塵を拝している髙橋×松友組も、かつては2012ロンドン五輪銀の藤井×垣岩組を乗り越えてきた。
世界レベルの国内選手と争い、乗り越える事で進化してきた、日本バドの女子ダブルス。その源流には、小椋×潮田組という伝説がいた。ルックスと実力を兼ね備えた二人には、余りにも過剰な期待と注目が集まったものだった。
★★★★★
『シャトル・プリンセス』の主人公は、日本トップクラスの女子バドミントン選手達。
インターハイを制して高校を卒業した有沢は、勝ち続ける事の重圧からバドミントン自体を辞めたいと考えるが、気迫で圧倒してくる西条に惹かれ、西条とのダブルスを申し入れる。
二人はすぐに頭角を現し、日本の頂点を獲ると世界への挑戦を始める。
界隈からの期待とやっかみ、ビジュアル面での過剰な人気、それに反して結果を残せないことへの批判、そして世界の壁。……2013年発表のこの作品は、恐らく2008年迄に小椋×潮田組が通ってきたと思われる苦闘の歴史をなぞる。
その上で、勝気で正直な西条がストレートに状況への違和感を表明するのを、若いのに落ち着いた有沢が冷静に受け止める、というやり取りで、過剰な重圧を二人で乗り越える過程が描かれ、この二人なら……という期待感が高まる。
長年『スマッシュ!』で高校生のバドミントン競技を描いてこられた咲香里先生が、この世界を見てこられた知見が詰まっているのだろう。観戦者の私が感じていた「オグシオ・フィーバー」への違和感も、当事者達の「それでも競技が注目されたい」という願いも、選手達の複雑な思いも……様々な思惑の絡んだ「女子ダブルス」が描かれていて、これは相当な問題作となるかも、と期待しながら次巻を待っていた。
……残念ながら1巻で(中途半端な状態で)打ち切りのようだが、今後も各競技で現れるだろう「美しすぎる○○選手」を考え、日本代表の重責に思いを馳せるために、続刊は無いことを念頭に置いて、読んでみてもいいかもしれない。
西条美香——叩き上げの実業団選手。どちらかというとパワー重視。 有沢由利——天才プレイヤー。どちらかというと技重視。 この二人がバドミントンで世界一を目指します。