TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫
1年以上前
表紙の目ヂカラに心を掴まれてジャケ買いし、内容を読んでさらに心を掴まれました。とにかく画力を活かした演出が抜群です。 キャラの作画はCLAMPの目ヂカラと矢沢あいのフェミニンな細身のシルエットを見事に融合させており奇跡的なバランスで成り立っています。 そして手の細かな演技や表情付けなどは週刊漫画とは思えないほど繊細に描写されており手の動きだけでキャラの悲痛な感情が伝わってきます。 背景に関しては繊細なトーンワークによる光の表現が特に素晴らしく、この現実感のあまりないキャラたちを違和感なく世界に溶け込ませています。 さらに、シリアスとギャグの配分が非常によく。80〜90年代のサンデーが好きだった人にはたまらない配分になっていると思います。店長がパトレイバーの後藤さんに似ていますがその辺りの感覚はパトレイバーに近いと思います。 ストーリーに関しても初めての挫折を経験した少女の鬱と中年の危機に差し掛かったおじさんの鬱という2種類の鬱を恋愛という誰にでもわかる主題を使いながら見事に描き切っています。 少女漫画が好きな人、そして少年漫画が好きな人、もちろん青年漫画が好きな人、どの層の人にもお勧めできる恋愛マンガです!
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前
大切な誰かに教わった物。最早分かち難く身についた行為。大好きなそれを、奪われるとしたら……。 ♫♫♫♫♫ バンド活動に飽きていた高校生・伊賀は、小さな年上の女の子・なずなの津軽三味線の音に触れる。 そのとんでもない音に魅了された伊賀は、なずなに三味線を教わろうとするが、なずなはやると言ったりやらないと言ってみたり……。 伊賀が頑なななずなの心の殻を、少しずつ優しく剥いで行くたびに見えてくる、なずなの心の傷は痛々しい。 全3巻中2巻を費やして、なずなが三味線を「弾きたい」と「弾けない」を行き来する物語は余りに繊細で、苦しい。しかし、なずながそのドラマの重さから解放され、自分らしく三味線を鳴らす時、物凄いカタルシスに満たされる。 ♫♫♫♫♫ 自分の三味線の音は血であり、過去であり、自己であるなずなにとって、三味線を奪われる事は、己の存在を否定される事だった。 例えば同じ津軽三味線漫画『ましろのおと』で、祖父の音を捨てて、自分の音=自分の存在証明を得るべく迷走する主人公の澤村雪と、苦しむポイントは違うが「自分の音=自己を鳴らす」という命題は共通している。 むしろ澤村雪の姿は、なずなの姉を神格化し、なずなの姉の様になりたくても叶わなかった、伊賀と同学年の橘ハルコの方に重なる。 『ましろのおと』に興味のある方は、2008年に同様の命題にチャレンジした『なずなのねいろ』も是非、読んでみていただきたい。
ななし
ななし
1年以上前
3年ほど前にこれのプロトタイプを初めて読んで『異世界』ブームを逆手に取った逆転の発想がすごいと感心したやつ。 https://twitter.com/amaousansan/status/933651957444521985?s=20 普段『異世界転移』する場合、基本的にはトラックに轢かれたり過労死したり、のっぴきならない事態のせいで劇的にこの世から違う世界へ飛ばされ(しかもだいたいは地球よりスローライフで素敵な暮らしをしている)、神様が誤って主人公の人生を終わらせてしまったとかで二度と地球に戻れず、そのお詫びでチート能力を手に入れる…と。 こうやってありがちな流れ挙げるだけでも、飛ばされた瞬間がいかに重要かわかるものだけど、この「フリーターが地味に異世界転移するマンガ」はマジで転移が地味。 仕事中などのふとした瞬間になんっっの脈絡もなく異世界に飛ばされて、自体を把握する前に(多分5〜10秒以下)でまた日本に戻ってくる。 なんなら大方の場合、ボーッとしてたりよそ見しているので転移したことにすら気づいていないんだけど、そのぼんやりしてるときに主人公がとった行動のおかげで多くの異世界人たちの命が救われるというのが面白い。 (チャリのかごにフライドチキン入れたまま転移したことで狼の群れに出会い、主人公に群れが着いてったことで狼に襲われてた異世界人の命が救われたやつ好きです。群れはずるいよ) 主人公をこんな雑にランダムに、何度も異世界と日本をいったり来たりさせるなんて、異世界ブームの真っ最中によく考えたなぁとホント感心します。 久々に単行本で読んでみると、もはやテレビをザッピングしまくる人を端から見ているみたいでちょっと鬱陶しいくらいでした。 行くなら行く、行かないなら行かないでハッキリしてほしい。 あと主人公がちょいちょい異世界に飛ばされてるのを友人に信じてもらえないところも「うぎー!」となりました。スカッとしたい…。 とまあ、こんな感じであくまで徹底して『異世界もの』のお約束に反している作品でした。