死んでから本気出す

いじめられっ子が死んで幽霊になったら最強だった件 #1巻応援

死んでから本気出す 橋本くらら
sogor25
sogor25

学校でいじめに遭っていた15歳の高井瀬奈はある日、車道に飛び出したネコを助けようとしてトラックに轢かれてしまいます。 すると次の瞬間、目の前に"霊界の案内人"と名乗る少女・ファミリアが現れて、瀬奈が死んで幽霊になったのだと追われます。 ファミリア曰く、瀬奈には人間を驚かせる"幽霊の才能"があるらしく、そこで彼女は瀬奈にあるミッションを提案します。 それが「四十九日の間に100人の人間を驚かせることができれば異世界に転生させてもらえる」というもの。 そのミッションを聞いた瀬奈は、現世と決別し異世界への転生をするために人間たちを驚かせはじめる、という物語です。 自身がいじめられてきた経験が影響しているのか、驚かせる人間は"悪人"だけと決めて瀬名は行動を始めます。 そのため、序盤では勧善懲悪的な爽快さのある展開が繰り広げられます。 このまま"最凶の幽霊"として無双する瀬奈の様子が描かれるのかと思いきや、どうやらそういうわけではなさそうです。 そこには瀬奈をいじめていた同級生に対する瀬奈自身のトラウマや、現世に遺された母親の存在などがあり、さらに1巻の最後にはこれまでの物語からは想像できない思わぬ展開が加わることで、爽快感だけじゃないストーリーの魅力が生まれている作品です。 1巻まで読了

死ニカエリ

自殺の「方法」を異能力にして蘇るバトルアクション #1巻応援

死ニカエリ 反転邪郎 反転シャロウ
sogor25
sogor25

主人公の青年は両親が無理心中を図ったという過去の経験から"自殺"というものに過剰に敏感になっている大学生。 彼が近所の「自殺の名所」と呼ばれる場所の前を通りがかったとき、中学生くらいの少年がその中に入っていこうとするのを目撃します。 慌てて彼を止めようとその自殺の名所に入っていく主人公でしたが、少年に追いついた場所にはすでにもう1人“先客”がいて、しかもその男は不思議な能力を使い2人に襲いかかってくる という導入の物語です。 この作品は、1話の序盤で単なる噂話として語られている、自殺者がゾンビのように蘇る「死ニカエリ」と呼ばれる存在にまつわる物語です。 この「死ニカエリ」はただ自殺した人間が生き返っただけでなく、その自殺の方法に由来する特殊な能力を有しているという特徴があります。 異能バトル的な設定ではあるのですが その能力の発現方法はかなりインパクトがあり スプラッターホラーに近い雰囲気もある作品です。 また「自殺」という行為そのものに強い抵抗を示す主人公なのですが、1巻の途中である事実が判明し、今後の展開次第ではありますが、主人公の心の葛藤や倫理観の衝突にも注目したい作品です。 1巻まで読了

世界が終わったあとの漫画家と編集者

たとえ世界が終わっても変わらないもの

世界が終わったあとの漫画家と編集者 さのさくら
nyae
nyae

おそらくなにかウイルス的なもので世の中が荒廃し、多くの人が亡くなってしまった世界で、生き残った人たちがどう生きるか。 それは意外と、いまと変わらないかもしれない? 主人公の漫画家志望の女性・真野さんと、編集者の男性・K澤さんがひたすら連載を目指して打ち合わせをしているところが描かれます。しかしネタを出すにも「もうそれはあるんだよな…」というものばかり。これ、今と対して変わらないな…?(そういう話の中に実在の作品名が出てきたりするのが笑える) ただ、ところどころになにか得体のしれない不安感は漂っていて、例えば編集のK澤さんの正体が謎なところ。漫画編集であることは間違いないようですが、意図的に顔を見せないように描かれているし、過去に何が秘密を持っていそう。そこが読んでいてずっとこわい。あとは、現在進行系でどんどん人が死んでいっているのが話の流れでわかること。 そういう世界観でありながら、ネタ出しのためにしてるふたりの会話が面白くて、感心する所も多いです。死生観について話しているところでは思わず「あ〜」という声が出た。 ページ数もあまり多くなくサクッと読めるのでおすすめしたい。

ドナー法―ある臓器移植コーディネーターの記録―

肉親の臓器で生きる他人へ向ける感情

ドナー法―ある臓器移植コーディネーターの記録― いなずまたかし
兎来栄寿
兎来栄寿

『1718』のいなずまたかしさんの新作は、医療監修が入った「臓器移植コーディネーター」という職種(日本では70人程度)を描くマンガです。 医療AIの技術が発達した近未来的な世界観で、「全国民に死亡時の臓器提供が義務付けられている」という法が制定されているという設定で描かれています。しかし、多少の違いはあれど実質的にはほぼ現代劇です。 1巻で描かれるのは ・幼い娘が脳死して受け入れられないまま臓器提供をし受給者に会う権利を行使する両親 ・70代の母親に養われる50歳になったニートの女性 ・就職で不利になる臓器移植受給者の若者 ・自分を捨てた父親から臓器提供を受けて生きながらえることになる青年 といったエピソード。どのお話も現代社会に存在する問題を端的かつ的確に切り取っており、人によっては自らに近しいテーマのお話に強く共感できることでしょう。 主人公のコーディネーター・立浪は、臓器提供という1分1秒を争う仕事を完遂するために時に非人道的に見える言動で反感を買いますが、ある意味ではそうして憎まれ役になることも死に行く者や遺族へのサポートになっている面もあるだろうなと感じます。 また、臓器提供というテーマについても改めて考えさせられました。他人の一部を体に宿して生きるということが持つ意味。提供する者、受給して生きていく者、それぞれの側面から生まれるドラマは重厚で深いです。 実写ドラマ化されても良い作品です。