くらげバンチの感想・レビュー255件<<7891011>>マンガなしで生きられない人にこそ読んで欲しいマンガマンガに、編集って必要ですか? 青木U平兎来栄寿あまりにも切実で、あまりにも強く共感する所があって、読んでいて名状し難い感情に襲われます。大好きです。 近年持て囃される「編集者不要論」。誰しもが情報を発信できるようになった今の時代、作家も個人で電子書籍を出版することが可能になり、宣伝も編集者より作家がSNSを活用して行った方がむしろ効率的な場面すらある世の中。 旧来の枠組を超えた現代の編集者に求められる仕事というのも沢山あると思いますし、編集者がいなかったら即打ち切られていたりそもそも誕生もしなかった名作がどれだけあるだろうと思いもするのですが……。ともあれ時代と共にマンガの在り方が変わり、それに伴って編集者や出版社、その周辺の在り方も変化を余儀なくされている過渡期であるのは事実であると思います。 そんな時代背景をベースに、ファッション雑誌編集部からやって来たマンガのことなんて全然解ってなさそうな若い女性編集者に気を揉むベテラン作家のお話として始まる本作。最初は少しゆるい感じで始まりながら、1巻は強烈な終わり方をします。その後の展開を解った上でまた1話から読むと何とも言えない味わいがあります。 単行本の続きがすぐwebで読めますし、そこからが真骨頂となっています。特に 「私が世界と繋がれるのはマンガだけだから」 というセリフは共感というレベルを超えて「これは私だ」と思わされて泣けました。ぜひ最新話まで追ってみて欲しい傑作です。奇妙な能力を持つ地味で小柄な男子、京くんか「」く「」し「」ご「」と「 二駅ずい 住野よる名無し人の感情が動くとき、頭に「!」や「?」「…」がニョキッと生えてくるのが見える能力を持つ男の子。 そのせいなのか人との距離のとり方に慎重なところがあり、気になる女の子、三木さんのシャンプーの香りが変わったことに気づいたとき、「シャンプーが変わるって、つまりどういうことなのか」でさんざん思い悩む。 そんなとき三木さんのかくしごと?をふと耳にしてしまい…。 バンチのウェブサイトで最初だけなら読めるみたいです。 思春期で複雑な高校生のやり取りが微笑ましい、そして絵が美麗で素晴らしい。 ちょっと単行本買ってきます。何を食べたら絵もマンガもこんなに上手く描けるんですかプリズムの咲く庭 海島千本短編集 海島千本兎来栄寿イラストが上手ければマンガも上手く描ける? いやいやいや。マンガってそんなに単純なものではないのですよ。……普通は。一枚絵ですべてを表すイラストと、連続したコマで以って物語を表すマンガ。その二つは似ているように見えて根本的に異なるものです。コマ割りや構図のバランス、視線誘導、間の取り方、セリフや言葉選びなどマンガならではの要素も沢山ある訳です。 しかし、スーパーイラストレーター海島千本さんは普通ではありませんでした。絵が上手いのは勿論のこと、あまりにもマンガも上手い……。 9編の短編にWEBで話題となった「髪はおんなの」の続編となる描き下ろしを加えた計10編を掲載した短編集。現代劇、ファンタジー、SFにホラー、サイレントマンガまで内容は様々ですがどれも非常に上質。一気に読むのが勿体なく、一日に一話ずつ読んで少しずつ噛み締めていくのがより幸せである気すらして来ます。 SNSでしばしば公開されているマンガも面白く、今後もご活躍が楽しみです。センス抜群! 二次沼に引き摺り込まれる中年男性の悲劇部長が堕ちるマンガ 中村朝兎来栄寿最近のギャグマンガの中でも個人的に特にツボに入っている作品です。 上司である純朴で真面目な部長を、悪魔のような腐女子と夢女子の部下二人が沼へと引き摺り込み、あまつさえ部長総受けの同人シリーズをガンガン発行していくというアクロバティックな物語。 実際に存在したらとんでもないのですが、未知なる女性向けオタクコンテンツに中年男性として独自の共感を見出してハマっていき布教者が喜ぶコメントを発していく小山田部長のキャラクターが絶妙です。実在する部長・小山田誠一郎のTwitterアカウント @oyamadaseiitiro をフォローしていると、更に楽しめること請け合いです。 また、とにかく天性のものを感じさせるセリフのセンス。小気味良いテンポで繰り広げられる掛け合いや、強引なルビの面白さなど随所にギャグマンガとして光るものがあります。 この作品自体も楽しみですし、中村朝さんの今後の活躍も併せて楽しみです。BLを読んでなくても楽しめる上質メタフィクションコメディ絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男 紺吉sogor25自身がいる世界がBL世界であることを自覚している主人公が、ちゃんと女性と結ばれて両親に孫を見せるために自身および周囲に迫る恋愛フラグを全力で回避する、というメタフィクションコメディ。なので「わたしの宇宙」というよりは「恋愛フラグ0女子の迷走」に「僕がモブであるために」を混入させたような作品。ただ、BLっぽいネタもあればストレートな恋愛マンガにも当て嵌まりそうなネタまで豊富。そして全てのフラグを回避しようとする主人公の、全勢力を掛けて斜に構える感じが痛快。 実際主人公は自分がBL世界にいることを知覚してるけど、世界の全てを把握してるわけではなくてフラグの回避に探り探りな感がある。その様子を見ると異世界転生のよう。また、フラグ回避に心血を注ぐ様子は"モブキャラ"という存在のメタネタのようでもある。思ってたより多層的なネタが詰まってる。なのでタイトルに反して広い範囲の方々が楽しめそうな作品。 1巻まで読了なごむ作品セブンティウイザン タイム涼介めあ70歳で初の子を授かるというふつうでは考えられない内容ですが、感動する場面多数あり。プリズムの咲く庭感想プリズムの咲く庭 海島千本短編集 海島千本いい漫画読み野郎絵がうますぎる アニメーターっぽいキャラデとレイアウトっぽい構図の決め方は若干否めませんが何しろ絵がうますぎるので! 目を引く構図と気持ちのいい構図、バチっと決まるポーズがさすがといったところ。このトビラとか好きです。 書き込みと鉛筆っぽいブラシも作風にあってらっしゃるな〜と。 ファンになってしまいました。 他国とかここでもないどこかの描写も素敵ですね。 ゴシックぽい建築物とメイドさんかと思えば次の話ではシチリアとかどこかその辺の海辺の街をデッサン力で何の苦労もなく描き切ってらっしゃる感じがします。 読み終わった後に幸せな気持ちになるのもいいですね。 影から日向にでたようなポッと暖かかくなる感じがして好きです。 長編になった場合どんな漫画を描かれるのかな、と期待してしまいます。凄い短編の名手が現れたプリズムの咲く庭 海島千本短編集 海島千本sogor2510篇からなる短編集。各話とも大きな仕掛けがないのに20ページ程の短い中にすごいドラマがある。どれを取っても長編作品に膨らませられるのに、それぞれのいいところだけをギュッと詰めこんだ1冊。 内容のバリエーションを見ても、ファンタジーあり、青春劇あり、ホラーあり、ホラーあり、セリフ無しのサイレントマンガありと多彩。 短編集だとどの作品が一番好みかなって考えるんだけど、この中からは選べない。短い話の中で世界観がしっかり出来上がってる、最初と最後の話が繋がってて全体が締まっている等々、読後感は「ひきだしにテラリウム」を想起させる。それくらい個々の作品の完成度が高く、かつ色の違う作品が揃ってる。絵がうますぎる神短編集プリズムの咲く庭 海島千本短編集 海島千本ANAGUMAアニメーターとしても活躍されている海島さんの初短編集。 まず絵が気絶するくらいうまい。ほんとに。マジで。 どの話も絵的に派手なことが起きるわけではないんですが キャラクターの気持ちがイッパツで流れ込んでくる圧倒的・絵・パワーによって、感情の機微をミリ単位で調節するかのような繊細な物語が見事に成立しています。 これだけ絶妙な表情が描けるのは本当にすごい。 今年読んだ短編集ではダントツに好きでした!ありがとうございます!!!!どんな紆余曲折があっても最終的には優しい世界に辿り着く作品Artiste(アルティスト) さもえど太郎sogor25初出では露骨に性格が悪いと言うかめんどくさそうなキャラが話が進むと良い面が見られてジルベールや他の登場人物と和解する、その過程の描き方が本当に上手い。なので巻ごとに波乱はあるんだけどずっと穏やかな気持ちで読んでいられる。 そう言えば、4巻後半のマンガ家の話について、実体験が入っているのでは?的な感想を幾つか見かけたけど、個人的には深読みし過ぎではないかと思ってます。入居者に”芸術家”という条件があるのでマンガ家の登場自体は自然だし、そもそもこの作品はそういう不条理さを訴えることが主題の作品ではないと思うのです。 4巻まで読了。これは見事なセルフ翻案ヒル・ツー 今井大輔sogor25前作「ヒル」から比べてサスペンス度合いが強いと共に、巻き込まれた形の主人公のユウキが事件に前のめりに動くので物語の速度感がかなり早く感じる。そして速度感があるからこそ1ページ先の展開を読ませない。 前作の設定をちゃんと活かしつつ、前作とは明確に違う読み口の作品、むしろ1話から大きく事件が動く分、前作未読の方はこちらか先に読んでもらうのもアリかもしれない。 しかし5年以上前の作品が電書で人気になって新編開始、でこれだけの物語を作り上げるあたりは流石の一言。 2巻まで読了。表紙はこんなだけど結構かわいいところもある不良・魔法少女たちの話間違った子を魔法少女にしてしまった 双龍mampuku カードキャプターさくら~プリキュアシリーズで現代・魔法少女の文脈が築き上げられ、それをまんまと逆手に取ったまどマギが爆発的旋風を巻き起こしたことで、その後雨後の筍のように乱立したメタ魔法少女"大喜利"のような作品群のうちの一つ。 「雨後の筍」もほんとうにピンキリではあるんですが、ただ「みんなが思う魔法少女像」という共通幻想が読者層にしっかりあるので、意外と何やってても面白くもあるんですね。これだけ娯楽が細分化して文化が分断された時代なので、いずれ「ドラクエ風ファンタジー世界における【勇者】の存在意義」や「悪だくみをする代官と越後屋」、「サザエさん世界で未だに適用されている昭和の常識」、「少年漫画において【王道】と呼ばれる作品ジャンルが【仲間との冒険とバトル】であること」などの共通理解はもしかしたら時代とともに失われていくかもしれません。でも「児童向け作品」というのはいつの時代もちょっとやそっとじゃ変わらないし、それにおよそ誰しもが通って育ちますからやはり文化として強いです。 「若者が『春はあげぽよ』で笑うことができるのは誰もが枕草子を習うからだ」 というツイートがバズっていましたがまさにその通り。(最近ベストセラーのユヴァル・ノア・ハラリなど読むと詳しく載っています。) 前置きが長くなりましたが、みんなの知ってる普通の魔法少女は授業サボってタバコを吸わないし、変身する前から拳で魔物に応戦しないし、ましてそのまま叩き潰したりもしない、そういう常識を裏切っていくことで笑いを生み出しているギャグ漫画なわけです。ただ、それだけだとさすがに出オチになってしまうので他にもいろいろな付加価値がついてます。キャラ絵が可愛くてセクシーであることと、バトルの作画がダイナミックであること、伏線が多く登場する勢力も入り組んでいるので先の展開が読めないことなどがあげられます。 私はドンピシャで好きなキャラがいるので楽しく読んでいます。真面目で成績優秀、美人生徒会長で巨乳の「奈子」。高潔で正義感が強く、そのくせやたら好戦的なところも本当ツボ。ちょっと違った実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。 ペス山ポピーやむちゃ第一印象は、風俗に行った漫画と似てるなぁ~ということです。キャラ自体もそうだけど、全体的に病んでる。自虐的で、私なんか…と言いつつ人の話を聞かず自己完結強めのところとか、あくまで告白本?読ませるための面白さがもっとあればいいのに~と思いました。でもその分リアリティはあるのかもしれないですね。 「SM」は永遠のテーマですから、もっともっと掘り下げたマゾヒズムに期待してます! 次にくる!?Artiste(アルティスト) さもえど太郎名無し次にくるマンガ大賞ということもありチェック! おもしろかったが、まだこれからという印象。 次巻以降の展開を楽しみにしている。赤裸々すぎてすごい実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。 ペス山ポピーstarstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)嗜虐趣味を持たない自分からしたら理解しがたいが、一方であまりに赤裸々に語るこのエッセイ漫画を読むと彼女の嗜好を、欲求を理解したいと強く思う。 読んでいて自分の中にふと浮かび上がってきた感情は「感謝」だった。 ネテロ会長みたいになってしまったが、何かが自分の中で許されていく感覚があった。 自分で自分をハグしてあげたい。 普通の人間なんてこの世にいないと思っている。 細かく分類すればどこまでも違って、平均をとろうとすること自体が間違っている。 それでも「普通」を追い求め、規範で縛り、押しつけてくるのが世の中の構造だ。 子どもの頃から誰しもが無意識にそうしてしまっている。 現在、マイノリティにも光が当たり少しずつだが世の中は変わりつつあるが、互いの理解は根本的には無理だと思っている。 分かったふりをするのが上限で、最大限の譲歩だ。 理解しようとし続ける行為の先にこそ救いはある気がするので、今後もいろんな赤裸々に語ってくれる人たちが現れてくれると嬉しい。<<7891011>>
あまりにも切実で、あまりにも強く共感する所があって、読んでいて名状し難い感情に襲われます。大好きです。 近年持て囃される「編集者不要論」。誰しもが情報を発信できるようになった今の時代、作家も個人で電子書籍を出版することが可能になり、宣伝も編集者より作家がSNSを活用して行った方がむしろ効率的な場面すらある世の中。 旧来の枠組を超えた現代の編集者に求められる仕事というのも沢山あると思いますし、編集者がいなかったら即打ち切られていたりそもそも誕生もしなかった名作がどれだけあるだろうと思いもするのですが……。ともあれ時代と共にマンガの在り方が変わり、それに伴って編集者や出版社、その周辺の在り方も変化を余儀なくされている過渡期であるのは事実であると思います。 そんな時代背景をベースに、ファッション雑誌編集部からやって来たマンガのことなんて全然解ってなさそうな若い女性編集者に気を揉むベテラン作家のお話として始まる本作。最初は少しゆるい感じで始まりながら、1巻は強烈な終わり方をします。その後の展開を解った上でまた1話から読むと何とも言えない味わいがあります。 単行本の続きがすぐwebで読めますし、そこからが真骨頂となっています。特に 「私が世界と繋がれるのはマンガだけだから」 というセリフは共感というレベルを超えて「これは私だ」と思わされて泣けました。ぜひ最新話まで追ってみて欲しい傑作です。