近未来の日本。
15年前に新・臓器移植法(ドナー法)が成立した。
新しい法律は、全国民に死亡時に臓器提供を義務付けるというもの。
その法律に伴い臓器移植コーディネーターの立浪の関わった患者のお話。

立浪は、「臓器は、鮮度が命」と、悲しむ遺族にも容赦がない。
脳死状態なら7つの臓器が移植可能、命に関わるものは、6つ。
それによって救われる命があるためだ。
法律とはいえ、人の命と引き換えの臓器移植。
これからの日本にも近々こんな時代が来るだろうと思う。
立浪は、とてもプロフェショナル。シビアだが、奥底には愛が見える。
それぞれの、患者にそれぞれの人生が見える秀作。
立浪の雙眼の理由も後々触れられるだろう。

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ドナー法―ある臓器移植コーディネーターの記録―

肉親の臓器で生きる他人へ向ける感情

ドナー法―ある臓器移植コーディネーターの記録― いなずまたかし
兎来栄寿
兎来栄寿

『1718』のいなずまたかしさんの新作は、医療監修が入った「臓器移植コーディネーター」という職種(日本では70人程度)を描くマンガです。 医療AIの技術が発達した近未来的な世界観で、「全国民に死亡時の臓器提供が義務付けられている」という法が制定されているという設定で描かれています。しかし、多少の違いはあれど実質的にはほぼ現代劇です。 1巻で描かれるのは ・幼い娘が脳死して受け入れられないまま臓器提供をし受給者に会う権利を行使する両親 ・70代の母親に養われる50歳になったニートの女性 ・就職で不利になる臓器移植受給者の若者 ・自分を捨てた父親から臓器提供を受けて生きながらえることになる青年 といったエピソード。どのお話も現代社会に存在する問題を端的かつ的確に切り取っており、人によっては自らに近しいテーマのお話に強く共感できることでしょう。 主人公のコーディネーター・立浪は、臓器提供という1分1秒を争う仕事を完遂するために時に非人道的に見える言動で反感を買いますが、ある意味ではそうして憎まれ役になることも死に行く者や遺族へのサポートになっている面もあるだろうなと感じます。 また、臓器提供というテーマについても改めて考えさせられました。他人の一部を体に宿して生きるということが持つ意味。提供する者、受給して生きていく者、それぞれの側面から生まれるドラマは重厚で深いです。 実写ドラマ化されても良い作品です。

どなーほうあるぞうきいしょくこーでぃねーたーのきろく
ドナー法―ある臓器移植コーディネーターの記録― 1巻
ドナー法―ある臓器移植コーディネーターの記録― 2巻
ドナー法―ある臓器移植コーディネーターの記録― 3巻(完)
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