ぱじ

温かくもどこか切ない老人と幼子の生活

ぱじ 村上たかし
六文銭
六文銭

両親がなくなり、残された幼い娘とおじいちゃんだけで暮らす・・・その生活を想像しただけで、私、秒で泣けます。 なんか読んでて、切ないんですよ。 もう先が長くないとわかっている老人が必死に子育てする姿とか。 幼い子どもが、両親が亡くなってシンドイながらも気丈に振る舞う姿とか。 一生懸命、ご飯食べている姿とか。 全て胸にくる。 作品自体、別に泣かせにきているわけでもないんです。 地域住民など二人に関わる人、全員が優しくて支援してくれて、ほっこりハートフルな世界に包まれているのです。 読んでて優しい気持ちになれます。 だけど、私は、どこか漂う二人の哀愁にページをめくるたびに涙腺が緩みっぱなしなんです。 えもいわれぬ不安感ーきっとこんな生活も長く続かないんだろうという考えが暗い影をおとして、病気とかひどい目にあうわけでもないのに、ただ物悲しいのです。 おじいちゃん子だった、自分の原体験に基づくのでしょうね。 最後も大方の予想通りなのですが、不思議とこれまでの悲しさはなく、充足感を得られるハッピーエンドだと思います。(詳しくは書きませんが…。) 家族を思うこと、優しく生きること、周囲との温かい絆をもつこと、思いやりに満ちた1冊です。

メリーちゃんと羊

全ての生物はカワイイろくでなし

メリーちゃんと羊 竹田エリ
名無し

メリーちゃんの世界は 人間系ー生物系ー人間系の 隔世遺伝で成り立っている。 ようするに、人間同士が結婚すると生まれた子供は 羊、ライオン、ヘビ、バッタ、などの各種生物系。 ただし知能や体格は人間並みで社会に溶け込んでいる。 その生物達が結婚すると生まれる子供は人間系。 なのでメリーちゃんの小学校の級友は 「父親がライオンだから怠け者で」とか 「父親がパンダで可愛さを利用して詐欺行為を」とか 悩んだりしている。 独特な世界を舞台にシュールなギャグが連発される。 どちらかというと「雄ライオン=怠け者」とか 「パンダ=可愛いが根は凶暴」とかの 色々な生物のネガティブな印象を強調したギャグが多い。 人間と動物のギャップをギャグにした漫画というよりも、 動物を擬人化することで動物のろくでもない部分を 強調した漫画のようにも感じる。 そういう目で見ると、登場人物の殆どが 人間系とか動物系以前に、それぞれハタ迷惑で かなり「ろくでなし系」に見えてくる。 雄ライオンは警察官なんだけれど 「雄ライオンだから怠け者警官」だし、 カッコウは他所の家庭に乗り込んで 「カッコウだから乗っ取り託卵当たり前」だし、 バッタは殴る蹴るの暴行をはたらくも 「バッタ(仮面ライダーのモデル)だから正義」だし。 何らかの生物であること以前に ハタ迷惑なロクデナシなキャラばかりの漫画だ。 これはもう異生物の共棲をギャグにしたというより、 ろくでなしを動物化することでギャグに仕立て上げたような、 そんな感じの漫画でもある。 面白いからいいけれど(笑)。

Y氏の隣人

いままでの人生に影響あったかもしれない

Y氏の隣人 吉田ひろゆき
ひさぴよ
ひさぴよ

中学生の頃に出会って、今でもたまに読み返す漫画。この漫画に登場する無数の人生が、20年以上経っても自分の中で物事を判断するときの支えの一つになっているかもしれない。読み終わってふと我に返ると現実の自分を見つめることができるので、メンタル弱くなったら読む、御守りみたいな作品。 作品を少し紹介すると、1988年から2002年までヤングジャンプで連載していた現代のお伽噺風のヒューマン・ドラマです。 悩める人間たちのもとに、胡散臭い神様や天使・悪魔といった存在が現れ、謎の秘密道具を与えては、人間たちの運命を大きく変えていく・・・という1話完結型の短編漫画で、「笑ゥせぇるすまん」に近いテイストです。喪黒福造みたいな際立った不気味さはありませんが、Y氏の隣人には、ザビエールをはじめとしたバリエーション豊かな妖しげなキャラクターが揃ってます。 作者・吉田ひろゆき氏は、元銀行員という異色の経歴を持っており、これがデビュー作になります。作品には、銀行員時代に見てきたと思われる人間模様が至るところに登場します。(余談ですが矢口高雄も元銀行員) 悩みやトラブルの原因で一番多いのが金銭関係だったり、 神様が渡すアイテムにしても、無限に使えるわけではなく、使用する度に「貯金」や「利息」といった制限が必ず付いてまわります。 そして人間の善行・悪行を「積み立て」として捉えて、その勘定が合わなくなったときに破滅が訪れる。 まさに因果応報!という感じで大好きな世界観なのですが、 この作品の凄いところは、「自分は、善人になるぞ!」と意気込んで善行を積んだとしても、必ずしも思っていた通りの結果にはならない、というところ。 この不条理さと、因果のバランス関係がほどよくて、人生ってヤツは一筋縄ではいかない…と読む度に思わせてくれます。ハッピーエンドになるのか、バッドエンドになるのか、一話一話のオチを予想しながら読むのも一興。 1巻から読み通すのは時間がかかるので、まずは「Y氏の隣人~傑作100選~」から読んでみては。