Lost Children
身分の異なる2人の友情、決別、そして未来の物語 #1巻応援
Lost Children 隅山巴文
sogor25
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舞台となるのは厳格な身分制度が残るシャルダオ連邦王国。 その身分制度の最下層ガティヤに属する少年ランは、乾物屋の店主に難癖をつけられているところを通りがかりの女性カヤに助けられ、そこで彼女の息子・ユリと出会います。 富裕層の子供でありながら学校でいじめられているユリは最下層に見ながら一生懸命に生きるランと意気投合し親交を深めていきます。 そんな身分の違う2人の友情を描いた作品です。 と、ここまで紹介したあらすじなんですが、実はこちらは本編第3話からの内容になっています。 というのも第1~2話はこの2人の出会いから6年後を描いており、ランは革命軍の一員として政府と戦っており、一方のユリは山岳地帯の村というランとは離れた場所でひっそりと暮らしています。 なぜこの2人が袂を分かつことになったのか、そして今後2人の運命がどのような道を進んでいくことになるのか、過去から現在そして未来へ向かう繋がりから目が離せない作品です。 この作品は日本国内の作家さんが書かれているのですが、最初は単行本として書き下ろされフランスで発売されており、現在は秋田書店の別冊少年チャンピオンで連載中のようです。 そういう経緯もあって、今後も応援していきたい作品です。 2巻まで読了
クワトロバッテリー
2組のバッテリー、4通りの可能性 #1巻応援
クワトロバッテリー 高嶋栄充
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野球マンガにおいて、投手と捕手の一組・"バッテリー"は絶対のパートナーとして描かれることが多い。野球というスポーツの特性上、攻撃は全員参加なのに対し守備は投手の占める比重が異常に高く、投手及びサインを出して投球をコントロールする捕手は、個々の能力以上に2人の間に強い信頼関係がないと成り立たないからだ。では、そのバッテリーが1チームに"2組"いるとしたら、果たしてどうなるのか。 幼馴染で中学からバッテリーを組む投手の夏速一汰と捕手の虹村優多郎、そして2人とは別の中学で天才バッテリーとして名を馳せる投手の天宮地大と捕手の氷波蓮。この4人が同じ高校に進む所から物語が始まる。当然中学時代は個々のバッテリーしか知らなかった4人は、高校でそれぞれの人間性や才能に触れるうちに徐々に心境が変化していく。 夏速はコントロール度外視で誰よりも速い球を投げることに全てを懸けていて、それに幼い頃から付き合ってくれていた虹村に全面の信頼を置いている。 虹村は夏速に対して絶対の友情を感じてはいるが、抜群のコントロールを持つ天宮の球を受け、"配球"という捕手としての醍醐味を初めて感じる。 天宮は自分への絶対的な自信から中学の頃から氷波と対立していたが、氷波の能力を最大限に認めていて、自分と組むのは彼しかいないと思っている。 氷波も同じ思いではいたが、ノーコンの夏速の投球を自身の指導で劇的に改善させられたことから、夏速を教育して成長させることの楽しさを感じ始めている。 というように、元々が別々の2組のバッテリーだった4人が同じチームになることにより、いつのまにか一方通行の4人片思いのような状態となってしまっている。しかも、それぞれの気持ちのベクトルの原点が元々の信頼関係や選手としての能力、もしくは自己実現の楽しさのような感情であったりと様々。 この"一方通行の四角関係"が、本来投手も捕手も1人しか試合に出られない高校野球という舞台においてどういう化学反応を引き起こすのか、これまでの野球マンガでは見られなかったものが見られそうでとても楽しみな作品。 1巻まで読了。
永遠の陽射しの屍
絶望と希望を胸に滅びゆく世界を生き抜く物語 #1巻応援
永遠の陽射しの屍 森田将文
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世界にゾンビが現れて半年が経過した世界。 街はすでに壊滅状態で、生存者はほとんど残っていません。 そんな中で息を潜めて暮らしている主人公の三倉。 彼がある日食料を求めて民家に忍び込むと、そこには1人の女の子が。 驚いた三倉でしたか、その女の子・ゆゆと話していると、彼女のお母さんが感染してゾンビになってしまっているらしいと察します。 しかし、そうこうしているうちにそのゾンビ化したゆゆのお母さんが現れてふたりを襲い始めます。 なんとか逃げ出した御蔵でしたが、襲われた時に傷を負ったことで自分も感染してしまったということを悟ります。 この作品は自分が完全にゾンビになって自我を失う前に余裕を安全な場所まで 連れて行くと誓った御蔵 の様子を描いた物語です。 ゾンビものといえば「噛まれてしばらくするとゾンビ化して自我を失ってしまう」という作品が多く、ゲームの「バイオハザード」シリーズの主人公のように耐性を持っているためにゾンビ化しない作品、「空腹なぼくら」のようにゾンビになっても自我を残している作品などもありますが、この作品は本来であればすぐにゾンビ化するところをなぜか主人公の三倉はゾンビ化せず、ただ確実にゾンビ化は進行しているという状態です。 そのため、ゆゆを連れて生き延びるという既に目の前にある試練に加えて、自らがゾンビ化してしまう前になんとかゆゆを安全なところまで連れて行かなければならない、というタイムリミットのある試練が三倉には課せられています。 その結果、物語により緊迫感が生まれるとともに、自分が遠くない将来にゾンビ化してしまうだろうこと、いつゾンビ化してゆゆを襲ってしまうか分からないこと、などいろいろな要素が絡み合った三倉の複雑な心境が描かれる作品です。 1巻まで読了