マンガ酒

酒豪列伝よりも下戸の喜怒哀楽語りが多い酒エッセイ

マンガ酒 新久千映 鈴木小波 北駒生 他
名無し

お酒大好きな酒豪漫画家連中が登場するかと思いきや 「実は私は下戸でして」で始まる漫画が多い。 どうらやコミック・ゼノン連載陣を中心に リレー形式で酒に関する話を語ってもらった エッセイ的な漫画を纏めた本らしい。 下戸でもいいです酒にまつわる思い出話でもいいし、 みたいなワリと緩い感じの企画だったみたい。 そりゃそうだ、漫画家がみんな 土田世紀先生や西原理恵子先生みたいな人 ばかりのわけがない。 むしろ、このくらいの人が揃うほうが普通。 これで酒豪ばかりのエッセイ漫画がそろったら、 コミック・ゼノンはどんな雑誌だよ、となるし。 漫画ゴラクやアクションならともかく(ゴメン、偏見です)。 そんな感じで、ヘベレケに泥酔した話とか 酒乱気味に大暴れして大失態みたいな話とか それほどにはなくて、 下戸からみた客観的な酔っ払い観察記、 みたいな話が多い。 この漫画を読んで酒を飲みたくなる人は少ないだろうが、 お酒にたまに触れる生活、 家族や友達に酒好きがいる日常、 酒が引き出してくれて知った自分や知人の意外な一面、 世の中には、そんなあれこれがあってもイイんじゃないの、 と思ったりはする漫画だった。 そういう意味ではいわゆる飲兵衛漫画とは 別角度からの酒肯定漫画なんだけれども、 果たしてこの漫画を企画した意図が そういうことだったのかどうかは解らない。

ワカコ酒

猫娘的OL様の一人酒

ワカコ酒 新久千映
名無し

OLとして仕事も充分にこなし、 チャンと彼氏もいる(らしい)。 しかし「お一人様」で飲むのが好きなワカコさん。 そういう主人公の漫画だと聞いていたので 「カワイイOLなのに実はオヤジ吞みが好きな  ギャップありキャラ」 の漫画か、と思っていた。 読む前は。 そして読んだ感想としては カワイイ面もあるのだが何か違う。 オヤジ吞みに近い感じはあるが、どこか違う。 そう感じた。 なんせ猫娘(by水木しげる)かと、と思うほどの 目玉が大きいキャラで、その猫目が 更にでかくなったりニヤリとした感じの半眼になったり、 まさに猫が眼をつむったように糸目になったり。 なので、通常で言う「綺麗」「カワイイ」とか、 そこから生じる「ギャップがおもしろい」 というのとは少し違う感じがした。 カワイイといえば・・いえなくもないが。 酒も肴も本当に好きで、 チャンと敬意を払いつつ味わっている。 だが時々、料理や、酒を味わう場にたいして いい感じに「高飛車」だったりする(笑)。 さあ、私を楽しませておくれ!みたいな 部分を感じることがある。 わりとSMでいう隠れSみたいなキャラ なのかもなあ、とも思った。 カニ味噌を食べて 「~は旨いのう」 なんて、ただのカワイイ人は絶対に言わないし(笑)。 けれど、作者の新久先生が猫好きだとわかって、 隠れSというよりは ワカコさんはそのまんま猫なんだ、と思い至った。 美形とか綺麗ではないが、カワイイ。 仕草や感性が独特っぽい。 そして少し、ツンデレのツンの部分が隠し味。 あー猫が一人飲みしたらこんな感じだろうな、 こんなことを考えながら吞むんじゃないかな、 と思い至った。 本能の導くままに酒を肴を味わい、 時に目を見開き、時に目を細め、 時にキョロキョロし、 時に少しだけ上から目線になり、 そんな、猫みたいなカワイイ哲学者が 酒と肴を楽しみ、味わい、考える。 それがワカコ酒かな?と思った。

モブ子の恋

誰かの大切な秘密を知ってしまい陰から応援したくなるそんな感じ

モブ子の恋 田村茜
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

ここまでひそやかで奥ゆかしくて優しく見守っていたくなる恋は久しぶりだ。 大学生になって同じスーパーでバイトを続けて1年。 モブ子は控えめで大人しく同僚の誰からも連絡先を聞けてなかったりする。 そんな中、自然と目で追ってしまうのは同い年で困ったときにそれとなく助けてくれる入江くん。 まだ恋と自覚できないような淡い想いを抱いて、バイトに精を出す。 たまらない。 コミュ障と片付けてしまいたくないような、他人を思いやれるがゆえに控えめになってしまう様も見ていてもどかしくて仕方ない。 が、それがいいのだ。 入江くんもまた、そんなモブ子を暖かい目で見つめ、気遣っている。 なんとも前時代的とも言えるこの言葉にしない距離感。 お互いに踏み込まない。 踏み込まないが、その平行線はとても暖かいのだ。 それとなくいる。 それとなく見ている。 意識し合ってるのにお互いそれには感知できず。 ああ、もどかしい! でも、僕は見守ることしかできないのです。 完全なる蚊帳の外。 僕自身、イケイケな恋はしてこなかったので、モブ子と入江くんに感情移入しつつも、どうにか背中プッシュしてくれと新人ちゃんにも感情移入できるいう楽しい読み方ができている。 今後どうなっていくのか楽しみ。