私の彼は仕事ができない

自分も他人も見つめなおして愛してあげよう

私の彼は仕事ができない 山田可南
野愛
野愛

男女問わずなんともイヤな気持ちになるタイトル。好きな人ならダメなところも知りたいとは思うものの、社会におけるウィークポイントって見たくないし見ちゃいけないような気がします。 とある書店のフロア長を務める主人公・はる奈。彼女が働く書店に彼氏・名古木が就職するところから物語がはじまります。 本が大好きでやる気十分の名古木ですが要領悪いしミス多め、もしや私の彼氏は仕事ができない人なのでは…?というお話。 仕事ができないとは言え、真面目で優しい名古木の人となりが絶妙なんです。 周囲の人をよく見ているし、お客さん思いで仕事熱心。はる奈のことを心から尊敬し愛しているのが伝わります。 だからこそ見てられないししんどくなるはる奈の気持ちが痛いほどわかります。 恋人同士じゃなくて純粋な仕事のパートナーなら、仕事関係なく恋人とか夫婦というだけならそこまで辛くないんだろうな…。人間同士って難しい。 単純な仕事や恋愛の話ではなく、性別や環境や能力など人間の深層心理にあるバイアスを描いている作品です。心抉られる題材なのに、軽快で前向きなので自分のことも他人のこともちゃんと見つめて受け入れようという気持ちにさせてくれます。

モブ子の恋

可愛すぎる非リア地味カップルの恋愛

モブ子の恋 田村茜
六文銭
六文銭

恋愛漫画って、学園イチのモテ男とか、眼鏡とったら実は美人とかそういう感じになりがちで、自分にとってはファンタジーみたいなものなんですが、本作は違います。 モブみたいに背景のような女子と寡黙な眼鏡男子という、どこにでもいる地味同士の恋愛なんです。 ・・・いや、わかりますよ。 恋愛漫画に美男美女を用意するのは、そこに花があるからで、別にリアリティもいらないし、なんなら石油王とかCEOとかアイドルとか、ド派手なほうが良いとかいうのもわかります。 どこにでもいる地味カップルなんて、ドラマもクソもないだろうと。 でも違うんだ!ということを声を大にして言いたい。 この初々しい感じが、とにかく可愛いんです! 些細なことで悩んだり、一歩踏み出す勇気がなかったり、かと思えば急に大胆だったり・・・ 地味ゆえに経験がないからコントロールできず、全てに全力で一生懸命なんです。 これがもう、読んでいてドキドキして、つい感情移入してしまい、2人を応援したくなるんです。 というか、見守る感じに近いですね。もう、保護者かと。 久々に清いものを見させていただきました。 しかし、何気ない日々も美しくなってしまうんだから、恋愛ってすごいですね。

めしぬま。

どんな顔して飯を食おうが自由なんだよ

めしぬま。 あみだむく
野愛
野愛

この漫画を正しく理解したいし消化したい、そう思ってなんだかんだちょいちょい読んでいました。 普段は地味キャラの主人公がひたすら美味しそうに飯を食うというのは、飯漫画としてはよくある物語だと思います。 飯を食うときの顔が恍惚としている、っていうのも割と多いですよね…明らかにそういう顔として描いてるよね…?って穿った見方をしてしまう漫画も正直多いです。 めしぬまくんの飯を食う表情も恍惚としていて、そういうお顔に見えちゃう。そんな彼の食事シーンを見て、周囲の人達も食欲をそそられたりドキドキしたり顔を赤らめたりする。 そういう目で見るわたしがおかしいの?めしぬまくん明らかにエロく描かれてますよね? 飯漫画っていうのは…自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ…なんて心のゴローちゃんが出てきそうになるんだけれども、いやいろんな見方があっていいのかもしれません。 可愛い女の子がエロいかもしれない表情で飯を食う漫画に対して「いやそういう目で見るのがおかしい、飯は飯やん」って思ってたのに性別が変わると戸惑うっていうのはわたしの視野が狭いんだろうなあと思いました。 食べる表情がエロかろうとエロくなかろうと、人は食事をするし美味いものを食べたいのです。どう見えるかどう見られるかなんて、食欲の前ではどうだっていいことなんだと思います。 めしぬまくんが他者からどう見られているか気になって食事してたら悲しいもんな。 という結論に落ち着きました。飯くらいみんな好きに食おう、見たけりゃ見ろよくらいにめしぬまくんが思っていてくれたらいいな。 作者の意図もめしぬまくんの気持ちもわからないけども、わたしはこの読み方でこの漫画を好きになりました。

マンガ肉

肉エピソードを読めば、各先生の作風もわかる(のかも)

マンガ肉 高尾じんぐ 仙道ますみ 横田卓馬 大井昌和 カレー沢薫 大島千春 深山おから KUJIRA 仲川麻子 谷口菜津子 棚橋なもしろ 小手川ゆあ 紀伊カンナ 川端新 まつだこうた ばったん 沼ちよ子 宇野ユキアキ 地球のお魚ぽんちゃん 碓井ツカサ 松崎夏未 粉山カタ 宮元一佐
名無し

総勢23人もの漫画家先生たちが、 肉に関する思いや思い出や思い込みなどを かなり自由にエッセイ的に描いていらっしゃる。 さすがに肉を嫌いという人は少ないし、 肉と言えばエネルギーの塊だし、 マンガ連載という激務をこなしている先生方は それぞれに肉を味わうことで英気を養って 仕事を頑張っている方が多いみたい。 それでも各先生ごとに結構な個性の違いがあり、 谷口奈津子先生と宇野ユキアキ先生は それぞれに「生肉」の持つ魔性的な魅力について 描かれていますが話の内容はかなり違う。 大井昌和先生と横田卓馬先生はともに 「編集さんにご馳走してもらった初の高級しゃぶしゃぶ」 について描かれていますが、感想は正反対。 棚橋なもしろ先生は肉食女子会エピソードをもとにして いかに肉が下衆トークの醍醐味を増すかについて語り、 大島千春先生は肉を煮込むことで心がいかに安らぐか を描いています。 こうした各先生のエピソードを読むと、 普通の書評を読むよりも、もっとよりわかりやすく 「ああ、この先生は多分こういうマンガを描いているのだろうな」 と、わかったような気になります。 大島千春先生の「いぶり暮らし」は読んだことがあるので 「いぶり暮らしの作者の先生らしい肉マンガだなあ」 と思いましたし。 こういうエッセイ漫画集って、 今まで知らなかった漫画や先生を知るいい本かもしれませんね。 読んでみて、自分と肉の好き嫌いや拘りが似ている先生とか、 先生の名前や代表作の名前は知っているけれども 読んだことは無かった、という先生に興味を覚えて その先生の作品を読んでみる気になる人も 多いのではないでしょうか? 最初から、そういうPR的な効果を狙ったエッセイ集なのかな? 私も棚橋先生の回を読んで、 「この先生の漫画って思っていたより下衆くて面白いかもな」 と興味を持ちました。 色々と違っていたらスミマセン(笑)