束の間の一花
死を前にした二人の力強い疾走
束の間の一花 タダノなつ
さいろく
さいろく
逃避行、とは違う。しっくり来るかもと思ったけど全然逃げてない。 若くして余命宣告を受けた二人の行く末を、まさに「夜に駆ける」ような二人の疾走を描いている。 2巻を読み終わり、思わず「うー」と声が出る。 決して幸せになんかなり得ないであろうこの二人の、きっと短い物語。 なんて劇的、なんて詩的なんだ。 辛いけど幸せになって欲しい。この物語はどう締めくくられるんだろう、どう転ばされるのかわからないけど、転ぶのがわかっている物語。 3巻はきっと最終巻なのだろう。 それが出たらYOASOBI聴きながら読もう、そう思ってしまった。 最初はアンマッチな見た目してるなと思ったけど(そういえば先生何歳だかわからん)一花もポジティブで天然でアホウだけど芯があるし、死を恐れている彼女がふと我に返り歩みを停めてしまっているシーンでは読んでいるこっちまで息苦しくなってくる。 「心のほうが先にくたばってしまった」という表現は大人の男性ならではだなと思ったり、「なんなんだ人生!なんにもしなきゃいいのか!?」は死にかけてるからこそ出てくる言葉なんだろうなと思ったりしたけど、こんなにもパワフルに躍動する死にぞこないのセリフに胸を打たれる事はきっとない。いいセリフがいっぱい出てくる。 2巻までの間にバッチリ心を奪われる流れ。 正直絵というか線は上手とは言い難いけど表情や画角・コマの展開は、空気の流れるスピードが伝わってくる。 べた褒めっぽく書いてしまったけど、きっと短い二人のストーリーは読んで損はない結末になるんじゃないかと思う。
ぷにぷにぷにおちゃん ~赤ちゃん観察日記~
可愛すぎるよ、ぷにおちゃん
ぷにぷにぷにおちゃん ~赤ちゃん観察日記~ にくきゅうぷにお
六文銭
六文銭
自分も子育てしているせいか、 子育て・夫婦系のエッセイをよく読むようになりました。 皆さん苦労していて、共感できるんですよね。 というか、この苦労を共感したいためだけに読んでいる感じ。 だけど、やっぱり、子育ての大変さを呪詛のごとく吐き出して共有するのって、それはそれで精神衛生上よくないなぁと最近思いました。 大変だけど、楽しみたいんですよね。 本来は、子供は可愛いもんで、子供と過ごせる日々はとても尊いことなんだって思いますもの。 そして改めて、本作を読み、そのことを再認識しました。 ぷにお、可愛すぎるよ。 そして、自分の子供に似てて(多くの人がそう思っているようですが、新生児はだいたい同じなのか?)とにかく愛おしいです。 キラキラした瞳も、ぷにぷにのほっぺも、てりてりの唇も、 意味不明な行動も、全部可愛いくて、全部幸せにしてくれる。 どこの家庭も、子育て大変ですけど、 配偶者は理解してくれず、非協力的かもしれませんけど、 そういうエッセイで傷を共感しあうのも良いですが、 本質的には、 子供は可愛い! に立ち戻れる作品だと思います。 ぷにおに思い知らされました。
束の間の一花
余命短い女子大生が出会った"束の間の恋"の物語 #1巻応援
束の間の一花 タダノなつ
sogor25
sogor25
高校2年のときに病気が発覚し、余命2年と宣告された主人公の一花。 それでも彼女は普通に生活することを望み、家族以外に病気のことを伝えないままいつしか余命と言われた2年が過ぎ、大学にも進学することができました。 ただ、病気が治ったわけではなく、命の終わりを感じながら生きてきた一花。そんな彼女が大学で哲学の講師・萬木(ゆるぎ)と出会い、彼に思いを寄せ始めます。 徐々に萬木と交流を深めていく一花でしたが、ある日突然、彼女の知らないうちに萬木が大学を辞めたていことを聞かされます。 そんな彼女が駅で偶然萬木と再会するところから物語が動き始めます。 萬木との出会いにより生きる希望を見出していた一花は、彼との再会により更にその恋心を燃え上がらせていきます。 一方の萬木のほうも決して一花のことを蔑ろにしていたわけではないのですが、彼女に何も伝えずに大学を辞めたのには「ある理由」がありました。 互いが互いのことを想って接していて、両想いとも言える関係の2人なのに、一花の「余命」そして萬木の「ある理由」のためにその想いがすれ違ってしまう、そんな切ない様子が描かれる、2人それぞれにとっての"束の間の恋"の物語です。 1巻まで読了
ごめん、名波くんとは付き合えない
死の運命を変えるために 名波くんからの「告白」を回避せよ! #1巻応援
ごめん、名波くんとは付き合えない 我楽谷
sogor25
sogor25
高校2年生の小乾睦樹さんは同級生の名波くんのことが好きだったのですが、あと一歩が踏み出せないまま もうすぐ3年生になろうとしていました。 そんなある日 名波くんに突然呼び出された小乾さんは彼から「付き合ってください」と告白を受けます。 しかしその直後。暴走したトラックが突っ込んできて、小乾さんの目の前で名波くんはそのトラックに轢かれて死んでしまいます。 ところが次の瞬間、彼女はなぜか2年生の春、新学期初日にタイムリープしていました。 その後、彼女をタイムリープさせた張本人である"死神"が登場し、「高校2年生の間に小乾さんに告白すること」が名波くんの死の運命のトリガーであることが判明します。 この作品は名波くんの死を回避するために彼から告白を受けないよう奮闘する 小乾さんの姿を描く作品です。 名波くんに告白をさせないために彼と距離を取ろうとする小乾さんですが、何も知らない友人たちが2人の仲を取り持とうと画策してきたり、小乾さんをタイムリープさせた死神がいたずら心から妨害してきたりとなかなか思い通りに動くことができません。 そんなやり取りをしているで彼女に「名波くんと距離を取りすぎると今度は逆に彼に嫌われてしまうのではないか」という思いが芽生え始めます。 名波くんを守りたい気持ちと彼に嫌われてしまうかもという不安とが小乾さんの中で大きな葛藤となり、運命をさらに狂わせていきます。 果たして小乾さんは無事に2年生を終えて名波くんを守り抜くことができるのか、今後の展開を見守っていきたい作品です。 1巻まで読了
朝起きたら妻になって妊娠していた俺のレポート
子持ちの方もそうでない方も、男性は読んで損はない
朝起きたら妻になって妊娠していた俺のレポート 車谷晴子
六文銭
六文銭
一番罪なのは無意識なんだなぁと思いました。 悪気はないけど、思いやる想像力もない、結果、無意識に傷つけてしまうんだと。 この話は、まさにそうでした。 話の内容としては、子供を産んだ直後、妻に別れをつげられるところからスタートして、気がつくと妊娠中の時までタイムスリップ&妻になってしまうという流れ。 主人公が妻になっているだけであって、妻と入れ替わっているわけではないのがポイント。 妻になった自分が、旦那である自分と相対する感じです。 そこで、過去に自分がやってきたことが如何にひどいかを再認識していきます。 思いやりがあって、優しいと自覚していたが、実際は迷惑でしかないし、優しさのおしつけだったりして、自分の行動にキレています。 ただ、それが結構、普通というか、あり得る感じのことなんですよね。 やっている側は無意識でも、やられるとわかるというのが業が深いです。 何気なく言ってしまう一言とか、自分にもあったなぁと読みながら反省してしまいました。 妊娠というのは男が想像する以上に大変なことなので、そういったこともありのまま描いている本作は読むべきだなと思います。 最終的に、やり直しできるのかな?
私とこわれた吸血鬼
"こわれた"吸血鬼と幼馴染の女子大生の倒錯した感情 #1巻応援
私とこわれた吸血鬼 厘のミキ
sogor25
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主人公の山景樹(やまかげ いつき)は中学生の頃に両親が蒸発し、双子の弟妹との生活を支えるため大学に通いながら家事代行のバイトを何本も掛け持つという多忙な生活を送っていました。 そんな彼女の心の支えとなっていたのが、幼い頃に出会ったようちゃんという男の子。 山の上の立派な洋館に住んでいたその子は仲良くなった後すぐに引っ越してしまい、その時に彼から「必ず迎えに行くから待ってて」約束をしていました。 ある日、そのようちゃんが暮らしていた洋館に偶然足を踏み入れることになった樹は、そこでようちゃんと思わぬ形で再会を果たします。 というのもようちゃんの正体は実は吸血鬼で、引っ越すと言っていたその時から10年余りの期間、ある理由から洋館の地下で監禁をされていたのです。 ようちゃんのことをずっと心の支えにして生きてきた樹でしたが、彼が吸血鬼だという事実、そして監禁で心身ともにボロボロになっている姿を見て驚きを隠せないといった様子です。 一方のようちゃんの方はかつて樹と別れる前に、薔薇のトゲで指先に怪我をした樹の家を舐めてしまったことがあり、その結果"吸血鬼の本能"による樹への執着心が高まってしまっています そんなお互い異なる理由、しかも自分の思いとは関係ない理由で惹かれ合っている二人の物語は、ホラーのような雰囲気がありつつもどこか官能的な独特な雰囲気を醸し出しています。 1巻まで読了
カネなしアラサー、おふたりさまぐらし~健康で文化的な老後のための資産形成物語~
早ければ早い方がいいけど伝わらないやつ
カネなしアラサー、おふたりさまぐらし~健康で文化的な老後のための資産形成物語~ おののぶし 村田憲昭
hysysk
hysysk
年上の人からアドバイスされてもあんまりピンとこないお金の話。まぁ現状そこまで困ってる訳でもないし、健康だし何とかなるっしょ、と思う。若いうちは。 ある日気付くと以前ほど集中力が続かなかったり、起きていられなかったり、粘れなくなったりしてくる。その時に初めて、右肩上がりの収入も、維持できる健康もないのだという現実に気付く。 フリーランスになると、直接口座に入ってくる金額は増えるので、稼いでるような気分になるが、確定申告でそれは錯覚だと気付く。厚生年金を払ってない分、老後資金を前もって使ってしまっているという認識がない。会社員って本当に守られていたんだなぁ(嫌なこともあったけど)。 この漫画では働き方の異なる2人が、健康上のリスクなども考慮しながらライフプランを立てているので、色んな視点も確保されていて、最初の一冊としてはかなり参考になると思った(いきなりそこまで稼げる訳ないので証券口座の特定口座は源泉徴収なしでいいだろと思ったが)。あとはこの話をどれだけ切実に感じられるかどうか。。 せっかくマイナンバーカード作ったのなら、証券口座開いてインデックスファンドに月々3000円でも入れてみたらいいと思う。SNSでいいね!もらうより楽しいと思いますよ。
イケナイオトナ。
ヤサシイオトナに癒されるJK #1巻応援
イケナイオトナ。 能登山けいこ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
女の子達が大人の男に脅かされるのを見聞きすると、大人として、男として申し訳ないと思う。辛い思いをした子達が大人の男に警戒心を抱いたとして、怖くないよ、安心だよとは、私には軽々しく言えない。 彼女達に救いをもたらすとしたら……大丈夫な大人もいるよ、と自ら体現して見せる事から?……いや、男である時点で、それも難しいのだろう。 ○○○○○ コンビニで男性客に脅されているバイトの女子高生を助けた、優しくて勇気のある女性。三十路で特にパッとしたところもない彼女だが、その女子高生に惚れられてしまう。そしてその子をきっかけに、更に二人の女子高生が女性のもとを訪れ、様々に関わっていく。 三人の女子高生に共通するのは、大人・男に寂しさや不信感を抱いている事。大人や男に屈折した気持ちを持つ彼女達は、大人として子供を守る包容力と優しさを体現する女性に安心していく。 芽生えた女性に対する感情に戸惑う者、突き進む者それぞれだが、どんな相手の感情にも誠実に向き合う大人の女性の在り方に、学ぶ所は多いと感じる。 この作品を安易に「百合に目覚める」物語とするよりは、子供を大切に受け止める大人と出会えた女子高生達の、幸せとそれまでの不幸に思いを馳せる物語として、真剣に受け止めたい。 この「百合」作品を十代の子達が読んだらどう思うのだろう……聞いてみたい。