日向さんの恋する温度
このクーデレ女子が熱い! 2024 #1巻応援
日向さんの恋する温度 須野ゆき子
兎来栄寿
兎来栄寿
『私の愛した母の恋人』の須野ゆき子さんが描く、クーデレ女子と冷え性男子のオフィスラブです。 早い、強い、かわいい。 三拍子揃っている理系女子の日向こはるは、いわばクーデレ界の吉野家です。 まず、早さについて。本作は展開がとても早いです。自分にはない社交性を持っていて周りを明るくすることのできる蒼井涼介への秘かな憧れが結実して、1話からこはるはデレを見せてきます。友人・同僚以上恋人未満の期間特有のもだもだ感を長く楽しみたいという方には向かないかもしれませんが、その分熱いイチャイチャを長く楽しむことができます。 次に、強さについて。27歳化学メーカー勤務のこはるは、昔から一人で勉強や研究に没頭していたタイプで人とのコミュニケーションに難があるタイプです。それ故に、恋愛についても疎い。理系女子として面倒くさい思考もしがち。しかし、だからこそ距離感がバグっていて強ムーブをしてしまうこともあります。通常だと女の子が冷え性で男の子がそれを温めるのが定番ですが、逆であるのも面白いです。1度燃え上がると実は激しいこはるの強火のデレをたくさん味わうことができます。中学生のような恋愛でありながら、大人なので健康的にやることはやる熱々さが良いです。 そして、かわいい。シンプルに須野ゆき子さんの描く女の子がかわいくて、ここぞという決めシーンでの表情が好(ハオ)なのはもちろんなのですが、社内でのイメージと実際のこはるのギャップはクーデレの真骨頂。おまけマンガなどでも非常に積極的ですが、不器用さも残したこはるの様子がたまりません。初々しくも大好きムーブを連発するこはるのかわいさを堪能してください。 クーデレヒロインが好きな方、理系女子の恋模様を見たい方にお薦めです。
ハルメイ
ハル派? 漣派? #1巻応援
ハルメイ 雨宮うり
兎来栄寿
兎来栄寿
大人気の『ハルメイ』連載マンガ版の1巻が発売となりました。元々、作者の雨宮うりさんがSNSで連作イラストとして上げていた一連の物語が『ハルメイ 雨宮うり ILLUSTRATIONーBOOK』として2022年に発売されており、それをベースにしたマンガとしての連載が2023年より始まりました。 高校1年生の主人公・橘芽衣と、幼いころから親しくしている近所の10歳年上のハル兄。タイトル通り彼女たちの関係性を描いた作品です。 ただ、こちらの連載コミック版では表紙絵が示しているように芽衣と同い年のもうひとりの幼馴染でその美貌が他校生の間でも話題となっているほどの漣との三角関係の色合いが強くなっています。 漣もまた、非の打ち所がないヒーローなんですよね。外見だけでなく性格も良いことがエピソードを通して描かれていて、もしハルがいなかったら心置きなく推せるタイプです。でも、このマンガ『ハルメイ』なんですよね……。漣は漣で幸せになって欲しいと心から願います。 なお、そんな漣の存在によって恋愛感情を意識し出して変わっていく芽衣の姿に危機感を覚えて大人気のない嫉妬を見せるハルはとてもかわいいです。 また良い少女マンガには良い友人キャラがつきものですが、芽衣の友人の環もナイスキャラで好感が持てます。 雨宮うりさんの絵が良いのはもちろんなのですが、少女マンガとしての呼吸もすごく自然体で上手さを感じます。 個人的に好きなポイントは、両ヒーローが決めシーンで少しだけ敬語になるところ。思わず口角が上がってしまいます。 少女マンガが好きな方、歳の差が好きな方、三角関係や複数のイケメンに同時に迫られるシチュエーションが好きな方にお薦めです。
僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~
女性用風俗のセラピストという仕事 #1巻応援
僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~ 水谷緑
nyae
nyae
最近、女性用風俗をテーマにした漫画が増えたなと感じていたけど、女性用風俗の店自体がコロナ禍をきっかけに急増したと書いてあり、そんなところにも影響があったことに驚きました。 「こころのナース夜野さん」を好きで読んでいたのもあり、同じ作者の新作として気になり読んでみました。 主人公のセラピスト(女性に直接サービスをするスタッフ)・悠はとても真面目に仕事に向き合っており好感が持てるものの、こういう人ばかりではないんだろうなと、風俗という業界である以上、警戒心は持ってしまいますね。一方で、女風きっかけで生活に様々な影響が出ている女性たちを見ると、コントラストの強い光と闇がある奥深い人間模様が描けるのは風俗業界特有の面白さだなと思います。 サービスをする側にも悩みはつきません。半年も持たないことが多いというセラピストの仕事を3年も続けている悠の今後も気になります。 ちなみに作者がこのテーマで漫画を描こうと思ったきっかけのひとつに渡辺ペコさんの1122があったといい、確かにいたな!と思い出しました。あまり詳しくないですけど、セラピストを重要なキャラに持ってきた1122って先進的な漫画だったのかなと思いました。
失敗家族
共通の敵によって結束する人類の本質 #1巻応援
失敗家族 小宮みほ子
兎来栄寿
兎来栄寿
6年間引きこもっている上に月に20万以上の請求を負わせる息子。 高校を中退しそうになっているパパ活をしている娘。 そんな子供たちを放棄して不倫に専心する夫。 よそからは「子供が2人いて順風満帆の家庭を営んでいる主婦」と思われていながらも、内情は完全に破綻した「失敗家族」となっていて、半ば諦念しており限界に近づいていた妻が主人公の作品です。 ある日、夫が連れ帰ってきた上司の傍若無人な振る舞いに遂にブチ切れてしまい発作的に殴ったら死んでしまって、それまでバラバラだった家族が「殺人を隠蔽する」という目的で結束していくクライムサスペンスです。 普段、いがみ合っていたり無関心同士であったりしても、そこに共通の外敵となる存在が現れると結束して対処に向かうのは非常に人間的だなと思いました。 『マイホームヒーロー』はまだ明確に自分の家族が下手すると殺されるかもしれない危機が迫っていましたし相手はプロの手合いでしたが、本作は日常の延長線上にある言ってしまえば「嫌な言動をされただけ」で一般人を殺してしまっているところが差異化されているところです。 推理小説に造詣が深いでもなく、特殊な環境で鍛えられた経験もないごくありふれた家族が、自らが犯した犯罪をどう露見させずにやり過ごしていけるのか。 それまでバラバラだった家族が殺人を機に結束する部分もあれば、それを機に決定的に壊れてしまうものもあり、そこの収集もどうなっていくのか気になります。
老犬とわたし~妹は64歳になりました~
飼い主は啜り泣き必至
老犬とわたし~妹は64歳になりました~ 青色イリコ
兎来栄寿
兎来栄寿
無理です、泣いてしまいます。 現在アラフォーの娘(ポメラニアン)と暮らしている私ですが、実際に犬を飼う前であったらここまでは泣かなかったことでしょう。 我が家に来たときにはまだアラサーだったのに、あっという間にアラフォーになってしまった犬の時間の進みの早さは、結構恐怖です。このままの勢いであっという間に老犬へとなってしまうのではないか……。 どうにも自分の子の未来と重ねて読んでしまいます。もし、自分の子がこうなってしまったら。辛い別れのときを迎えてしまったら。決断を迫られるときが来たら。そんな風に考えていたら、全編で涙が溢れてきました。 人間のことを気遣ってくれる健気な所作や、そんなところでずっと待っていなくてもというところで待っててくれているなども、あるあると共感してしまうところ。コーギーのコーギーらしい振る舞いもかわいい限りでした。飼っている犬種が共通する方は、より共感できるポイントも多くあるのではないでしょうか。 明日何があるかは解らなくとも、今日までに貰った笑顔や幸せは永遠。いつか来るその時を迎えるまで、まだまだたくさんの思い出を一緒に作って、目いっぱい幸せに過ごしてもらおうという想いを改めて強くしました。
犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい
犬飼いである私に猫も飼いたいと思わせるチカラがある
犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい 松本ひで吉
さいろく
さいろく
よく「チワワはうるさいよね」「トイプーは懐っこいよね」みたいに種類で偏見的な意見をお持ちの方がいらっしゃいますが(当てはまることが多いのは事実だけど!) 犬も猫も個性があり、表現があり、一つの個体・生命体として千差万別なのです。 一般的にチワワはよく吠えるし大人しくはないと(病院とかで大暴れしたり噛んだりする子はよく見る)いう印象ですが、うちのチワワは驚くほど大人しくて吠えないし家族以外が大の苦手の引っ込み思案です。 世の中のすべての犬猫も個性に溢れていて、家族として迎えることはそうかんたんなことではないのですが、松本ひで吉先生は「迎えることが出来たらこんなに幸せなんだよ」というのを本作で存分に教えてくれてます。 犬も猫も誇張表現があるであろうけれども、本当にこういう子なんだろうなーというのも想像しやすくて萌え死ぬ。 先生の描く猫のツンデレぶりやドジを誤魔化す様がたまらんです。 犬は無償の愛をくれるよねーそうだよねーうんうん、ってうなずきまくり。 本当にタイトルの通りでそれ以外の何者でもないんだけど、それが素晴らしい。 そんな作品です。