ひゃくえむ。
人はなぜスポーツをするのか?(あるいはなぜ生きるのか?)
ひゃくえむ。 魚豊
いさお
いさお
人はなぜスポーツをするのか? 簡単に見えるこの問いだが、全てのスポーツに通ずるような、真理となる答えを見つけるのは難しい。 人に注目されたいから? その答えは、マイナースポーツに対しては通じない。 ともに戦うことで他人と交流ができるから? その答えは、シングルスのスポーツに対しては通じない。 楽しいから? その答えは、確かに存在する、苦しいのにスポーツを続けている者らに対しては通じない。 冒頭の問いに対して、全てのスポーツに通ずる答えを求めるにあたって手がかりとなるのが、「100m走」であろう。 100mを走る。 道具は使わない。チームメイトもいない。速さを求めないなら、ほぼ誰にでもできる。あまりに単純で孤独に見えるスポーツ、それが100m走である。そんなスポーツで、日々最速の地位を求めて努力する選手がいる。 100m走に、彼らは何を求めるのだろうか?この極めてシンプルな、全てのスポーツの原型とも言うべきスポーツに通ずる答えであれば、それはきっと根源的で、真理に近いものであるだろう。 そしてその答えの真理性は、スポーツという枠組みを超えて、人生にまで通ずるものになるかもしれない。 すなわち、わたしたちは100m走を通じて冒頭の問いに思いをはせることで、こんな問いにも、少しだけ答えを垣間見ることができるかもしれない。 人はいずれ死ぬのに、なぜ生きるのか? という問いに。 主人公のトガシは小学生のころから足が速く、そのおかげで人気者でした。 しかし上に行くにつれて、日本トップレベルの速さまで手が届いたとしても、自分よりも速い人も現れるでしょう。 「一番足が速い人」という価値の維持のために人生の全てを捧げてきたのに、その価値が失われていくとしたら、その後、トガシの人生に残るものは何なのでしょうか? スポーツ漫画であり、哲学読本のような作品です。 ぜひ、その真理に触れてみてください。
可愛いだけじゃない式守さん
2巻で華麗なる変身を遂げるTwitter発マンガ
可愛いだけじゃない式守さん 真木蛍五
sogor25
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不幸体質の和泉くんとその彼女の式守さん。普通にしてると式守さんはすごく可愛いんだけど、降りかかるアクシデントから和泉くんを守ろうとする時、彼女は"可愛いだけじゃない"顔を見せる。 当初はTwitterに掲載されていた4ページマンガで、4ページ目の式守さんの表情が4コママンガでいうオチのような役割をしている。その構成のまま1巻は130ページほどで17話収録という内容で、それでも絵の魅力が高いのでラブコメとして充分に面白い内容。 しかし、2巻に入ると少し様子が変わってくる。式守さんと和泉くんだけじゃなく、和泉くんの友人の犬束くん、式守さんの友人の猫崎さんと八満さん、そして和泉くんのご両親などにもフォーカスが当たり、1話12ページ前後のストーリーマンガに華麗なる変身を遂げる。1話あたりのページ数が増えても、キーとなるキメ絵の威力は変わらないので物語に大きな波がなくてもしっかりと起承転結がある。式守さんの表情にも幅が広がり、なにより登場人物の中に悪意が存在しないので安心して読めるラブコメになっている。 きっと「からかい上手の高木さん」や「疑似ハーレム」などの作品が好きな方には気に入ってもらえるはずだし、「うたかたダイアログ」のような1話ごとにストーリーのあるようなラブコメが好きな方にも薦めたい作品。 2巻まで読了。
よすがシナリオパレェド
設定の妙とそれに見合う熱量を兼ね備えた作品
よすがシナリオパレェド 三田誠 川崎宙
sogor25
sogor25
物語を読むことが出来ない体質の主人公がシナリオライター集団の運営する喫茶店と出会うという物語。 設定を提示しつつ1巻で最初におっさんライターに活躍の場を設け、これから個々のライターに焦点を当てていくものだと思ってたら、2巻で伏線を回収しつつ主人公を物語の中心に一気に引き込む素晴らしい展開。この巻での盛り上がりも十分作ったうえで次巻に更なる盛り上がりを期待させる引き方、まさに美しい"序""破"となる1~2巻。ここからどのような"急"の展開になるのか楽しみで仕方ない。 文芸がテーマのマンガだと最近では「乙女文藝ハッカソン」や「ほしとんで」などが思い当たるが、今作では登場するのが職業作家であり、そういう意味では根底にあるテーマは「響~小説家になる方法~」に近いのかもしれない。ただ、2巻まで読んだ所感としては、創作の楽しみや才能というテーマも含みつつ創作に対する熱量をより全面に出しているような感じがする。原作の三田誠さんもあとがきで触れていらっしゃるけど、印象としてより近いのは(文芸ではないけど)「ブルーピリオド」だったりする。 2巻まで読了。