マンバのみんなにも知ってもらいたい、この世界には『遊戯王』以外にも読むべきカードゲームマンガがあることを。
というわけでそこそこの期間カードゲームに親しんできた自分がひとまず3作品選んでみました。カードゲームに詳しくない・興味のない方でも面白がってくれそうなセレクションのつもりです。ちょっとでも興味を持って読んでいただけたら嬉しいです!

一発目はこれ。
別冊花とゆめで連載されていた少女マンガ『カードの王様』。

魔法のカードで戦うとかではなく、少女マンガで純粋にトレーディングカードゲームがテーマなのがまず珍しいし、主人公が女の子で恋愛がしっかり絡んでくるのも新鮮な衝撃がありました。
自分は寡聞にして本作以外に少女マンガでTCGを扱った作品を他に知らないので、どなたかご存知だったら教えてほしいです。

さて、作中ゲームの「CHAOS」のルールや本作の勘所については以下のクチコミに詳しく書きました。こちらも読んでみていただけると嬉しいです。審判必須のカードゲームモノってレアですよね。

試みとして、カードゲームとそのマンガにまつわる時系列を少し整理してみましょう。
世界初のトレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング(MTG)」が日本で広まるのは1994年から95年(初となる日本語版の発売)がひとつの契機とされています。
『遊戯王』の作品内に「マジック&ウィザーズ(M&W)」が初登場したのは1997年で、98年にはそれをメインテーマとした王国編が始動しています。一方で、カードの王様の1巻刊行は1999年。
まさに「トレーディングカードゲーム」という概念が生まれ、育ち始めた頃にほぼ並行して描かれたのが『遊戯王』と『カードの王様』だったのです。

『カードの王様』で描かれる「CHAOS」の特徴としてあげられるのが、対戦相手との対話を通じてゲームが進行することです。カードに書かれた情報をルールに則って処理する一般的なTCGというより、むしろゲームマスターとプレイヤー同士のコミュニケーションを重んじる「テーブル・トーク・ロールプレイング・ゲーム(TRPG)」に形式が近いとも言えます。

TRPGとMTG/TCGの歴史に踏み込むことはここではやめておきますが、実は遊戯王で描かれるM&Wにも当初はTRPG的な要素が多分に含まれていました。遊戯の召喚した岩石の巨兵がフィールドに存在する月を破壊したりしていたのは有名な話です。

TCGブームの萌芽の時期に描かれた2作品においてTRPG的な要素がフォーカスされていたのは、マンガというキャラクターの対話描写を重んじるメディアで、先駆的なジャンルに挑んだことの一種の必然だったのかもしれませんね。

今やカードゲームという文化の中心にどっしりと座を構える『遊戯王』(まさに王です)。実はその歴史の裏側に、「もうひとりの王」として存在していたのが『カードの王様』…なのではないでしょうか。うまいこと言いたすぎでしょうか。しかしそれくらいよくできている作品なのでもっと読まれてほしい次第です。特に遊戯王ファンのひとに。

さきほど『カードの王様』でカードゲームに恋愛が絡むのが斬新!と言ったばかりですがいきなりもう一作品、カードゲームに恋愛がガッツリ絡んでくる作品を紹介します。(『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』も面白いけど今回はそれじゃないよ)

Wizard’s Soul』です。


「恋の聖戦(ジハード)」という物騒なサブタイトルからも分かるように本作のテーマは恋模様です。

カードゲーム「Wizard’s Soul」の腕前が社会的な地位を決める世界。主人公まなかは父親がレアカード詐欺に遭って抱えてしまった借金を返済するため、封印していたカードゲームの腕前を解放し、家族を救うことを決意しますが、そこには恋する相手瑛太との衝突が避けられず…と「カードゲームアニメによくあること」と「それに似つかわしくない重苦しい設定」と「少女マンガ的なラブストーリー」が超融合している作品です。

なかでもパーミッションデッキ(※相手の行動を打ち消したり妨害してコントロールすることが主眼のデッキ)を使うまなかのプレースタイルはおよそ主人公らしくないのが新鮮で、カードバトルものでは定番の「闇落ちしたキャラがカードゲームの楽しさに向き合うパート」もしっかり用意されてあり、読み応えは屈指と言えるでしょう。

『カードの王様』の立野先生は「バトル部分はファンタジーとして描いていた」と語る一方、本作の秋★枝先生はゴリゴリの「MTG」プレイヤー。カードゲームにのめり込んでいる人ほど実感や親しみが湧く展開が盛りだくさんだし、親しくない人は「こんな世界があるんだ!」という面白さが味わえるはず。

作者のTCGに対する造詣の深さゆえか、敢えて明確にゲームルールを設定し切らずとも「カードゲームっぽさとその界隈の雰囲気」を描くことに成功しているのがスゴいです。カードゲームもので尺を取られがちなゲーム描写を適切にコントロールしつつキャラクターの恋愛模様に注力するというアプローチ、ここも『カードの王様』と読み比べると興味深いかと。

3作品目はこれまでとは違い、実在するカードゲームに関わる作品ですが、その前に昨今のカードゲーム業界、販売や売上を巡って避けては通れない話題をひとつ。
残念ながらポジティブなトピックではありません。

そう、ポケモンカードの高額転売です。
2021年の今、ポケモンカードは投機商品ともみなされ、本来のプレイヤーが入手できない状況がまま起きているのは大変悲しいことです。

「欲しいのに売ってないから買えなくて遊べない」

かつてこのジレンマに対し、とある国産トレーディングカードゲームが驚くべき方法で対応したことをご存じの方はいるでしょうか。
それがタカラトミーが展開する『WIXOSS-ウィクロス-』シリーズです。

2014年、初動時点で版元の想像を超える反響を呼んだ「ウィクロス」は一瞬でおもちゃ売り場から消えました。(TVアニメの展開が邪悪すぎん…?と話題を呼んだためです。アニメも見てほしい)
しかし商品はすぐには補充できない。そこでタカラトミーはひらめきました。

カードデータが入ったPDFを公式HPで配布したのです。

それって…自分でカード印刷して切り抜いて遊べってコト…!?(僕も刷って切って遊びました)

「ウィクロス」に何があったのか、そして「ウィクロス」とはそもそも何なのか、いよいよ気になってきましたよね?
そんな破天荒でアットホームなエピソードが端から端まで充填されているのが『ウィクロスを創った漢たち』。


名物プロデューサーの山口Pがスク水好きの変態になっていたり、ド派手な脚色が効いているので業界やゲームについての難しい知識がなくても笑いながら読める一方で、その彼方に薄ら垣間見える「これ、ガチだよな…」というドスの効いた真実に思いを馳せることで適度に肝も冷えるという無二の読書体験が可能です。

値段はちょっと高めですが、カードゲームがどうやって作られるのか、巨大なメディアミックスがどのように動いていくのか、業界の「熱」を裏話を交えて味わえる貴重な資料であることは間違いありません。
また、これは「MTG」プレイヤー向けの情報ですが、プロプレイヤー「ヤソさん」こと八十岡翔太も重要人物として登場しているので、ヤソファンにとっても見逃せない一冊になっています。美少女だったんだねヤソさん…。

初手で在庫を切らしてPDFをプレイヤーに印刷させたあともTVアニメや劇場アニメ、もちろんカードゲームの展開も続いたウィクロス、2021年には第5シリーズ「WIXOSS DIVA(A)LIVE」が発表され、3年ぶりとなるTVアニメ放送も実現しました。

そんなタイミングで改めて『創った男たち』を読むと、国産カードゲームのタイトルを新規で立ち上げたこの熱意にほだされてしまいます。以降のシリーズも引き続き展開されることを、そして願わくばまた『創った漢たち』が描かれたりなんかして…そんなことを期待してやみません。

最後のおまけにもうひと作品だけ。
HUNTER×HUNTER』のグリードアイランド編でTCG要素を組み合わせた今までにないゲームバトルを描いてくれた富樫先生。
その作品履歴の中には、知ってる人は知っている冨樫義博「幻のネーム作品」が存在します。
それが『悪天ウォーズ』です。

なんと内容は自分も未読です。


マンバのクチコミによると将棋をベースにしたボードゲーム?っぽい雰囲気のゲームみたい。
2017年のウルトラジャンププレミアム9月号・11月号に水野ハチ先生が作画担当として描き下ろしたものが載っているらしいのでそれが手に入ったら読めるのですが…。
ネームはいつ頃描かれたものなのかとか、なかなか読めないので読んだ人の感想を聞きたいと思ってるやつです。3選とか偉そうなことを言っておいてなんですが、どなたかゲームの詳細とかご存知だったら教えていただきたいです。

以上、カードゲームをテーマにした自分的にイチオシのマンガ3+1作品の紹介でございました。長文スミマセン。楽しくなってたくさん書いてしまいました。
他にも面白いのあるよ〜とか、大歓迎なので、なんでもコメントいただけると喜びます!それでは〜。

面白く興味深く読ませていただきました!
例の中では恋の聖戦しか知りませんでした…
カードゲーム漫画って沢山あるのですね。勉強になりました。
カードで実際に戦う系ですが、デュエルファイター刃は読んでました。
デュエルマスターズが途中で題材カードゲームを変更した時はド肝を抜かれました。

最近では学研のコレが印象に残っています。
https://bpub.jp/bookbeyond/item/500000512814
ブシロードの宣伝的な意味で…

わー!読んでいただいて嬉しいですありがとうございます!!

『デュエルファイター刃』、自分も存在は知っているのですが読んだことはないんですよね…これが確かMTG初のマンガだった…はず(デュエマとかよりも先)
VR表現とか『遊戯王』にも影響してるのではないかと名前出たりするイメージがあります。いつか読みたい作品のひとつです!
カードゲームマンガ、元になってる作品や雑誌が消失すると自動的に足取りが途絶えるものも多くてなかなか難儀だなと思うことがあります。

デュエマ、マジで何だったんだろうと『マジック:ザ・ギャザリングを使い続ける』読んだあとでも思いますよね(マジで何だったんだ…)

『カードゲームのひみつ』初めて知りましたが素敵ですねこれ。
オリジナルカードゲームを作るのって子どものころ絶対に皆やると思ってたんですが、なんか救われた気分になりました。ありがとうございます!

いやー…アプリ系は鬼門ですよね。撤退の判断もリアルのTCGより早い気がしますし。
でも終わっちゃったとはいえマンガが出ただけまだいいのかも…。

ファイブクロス(ジーンクロス)』っていうリアルとデジタルの融合!みたいなウリで始めて立ち消えていった存在もあるので…久しぶりに思い出しました。
どんな世界でも多くの失敗の上に今生き残ったコンテンツがあるんだと思うんですが、特にTCG界隈では強く感じますね(遠い目)

小野先生マジックのマンガ描かれていたのか…知りませんでした、貴重な情報ありがとうございます。

マナバーンとかあのあたりがもう一回日の目を見ないの、当時やってたホビージャパンとウィザーズの権利の問題とかがあるのかな…

コミックブンブンの『ライブオン CARDLIVER 翔』(あいやーぼーる)が結構好きだったんだけど、ブンブンが廃刊になって打ち切りっぽく終了

というかブンブンが廃刊になったのもポプラ社が社運を賭けたカードゲーム『ライブオン』が遊戯王・デュエマ・バトスピに瞬殺されて3弾で消えたせいと言われてる

カードゲーム漫画はやはり原作カードゲームが人気じゃないと厳しい
架空のカードゲームで長続きして面白い漫画って滅多に無いと思う

ホントこれで、カードが面白くないとマンガが面白くなるわけがないんだよな

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