落語天女おゆい~月島唯・現代篇~

歌丸&天女 vs 妖、東京防衛戦!

落語天女おゆい~月島唯・現代篇~ いけだたかし 桂歌若プロジェクト
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

まず何と言っても、桂歌丸さんが漫画のキャラとして、一冊通じて活躍するというのが熱いですよ。 歌丸さんは社団法人落語芸術協会会長として、六人の天女に「言霊」を授けて東京を妖の手から守る、というお話。……こちらは落語芸術協会の75周年記念事業として作られたアニメのコミカライズなんですね。原作は桂歌若さんを中心とするプロジェクトです。 敵の妖が落語の噺に因んでいたり、落語家さんも多数出演。舞台も末廣亭とか当時の東京がしっかり出ていて、そこで繰り広げられるバトルが壮大。 女の子の描き方について、いけだたかし先生の古いブログを拝読すると、アニメキャラに寄せながらカワイく描くのに腐心されていた様です。 http://ikedaki.blog23.fc2.com/blog-entry-7.html?sp 因みに先生が作品を描かれた順番は ●短編集 ↓ ●FADE OUT ↓ ●おゆい ↓ ●ささめきこと ……だと思います。 『FADE OUT』でも大きく変化は感じられたのですが、『おゆい』での取り組みは「カワイイ女子」の「百合世界」を描く『ささめきこと』に、作画面で貢献したのでしょうか。 そんなもしかしたら、一人の作家さんの変化の歴史を見て取れる「かもしれない(私が勝手に言っているだけなのでね……)」作品でもあるのです。

ささめきこと

残酷な世界は二人を祝福するか?

ささめきこと いけだたかし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

百合作品には大きく二種類あります。一つは女性ばかりの世界で、同性愛が当たり前とされる物。もう一つは異性愛者が多い世界での同性愛を描く物。『ささめきこと』は後者です。 『ささめきこと』は同性愛を「異質」とする、少し古く見えて今もそう変わらない現実世界を描きます。愛らしいコメディタッチの中に、時折キツい正拳突きを繰り出します。 女子に恋した主人公は、空手の猛者で可愛さとは無縁。主人公が恋した女子は同性愛者で、その事で傷ついた過去を持つ反面「可愛い女子が好き」と公言して主人公を傷つける。 さらに同性愛に理解の無い人、興味本位な人は二人を傷つけ、そして浮かれた味方も二人をかき乱す。しかしそんな人々は決して「悪い」とは描かれません。 一方傷つきたくなくて相手に踏み込まない二人はもどかしいけれども、その大きすぎる傷を想像すれば致し方ない。臆病な二人もまた「悪くない」のです。 誰も悪くないのに、無理解と無遠慮に満ちている。そんな現実世界を描く、残酷な作品です。でもその残酷さの果てにはどんな恋愛漫画よりも大きな感慨と、本当は「悪くない」周囲の人々の祝福が待っているのです。