世界の果てでも漫画描き

「キューバ編」感想

世界の果てでも漫画描き ヤマザキマリ
nyae
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世界の果てでも漫画描き、とありますがこの第1巻にあたる「キューバ編」では漫画家として活動するよりも前の話となってます。ヤマザキマリ氏といえば、いろんな国を転々としながら暮らしているイメージですが、1巻ではそのいわゆる“遊牧民型”となるに至った原点についても描かれています。 ヤマザキマリさんのエッセイ漫画の何が好きかって、人間の持つ生命力を感じるところです。人間、命さえあればなんとかなるものなのかも、と思わせてくれるパワーがあります。 イタリア留学中、光熱費もろくに払えないほど金がなかったくせに長年憧れの国だったキューバへボランティア活動をしに行きます。着いて早々風邪をひき、ボランティアとしてサトウキビ刈りへ、大家族のホストファミリーと仲良くなり夜は踊りに町へ出、そして涙の別れをした後、なんと妊娠発覚。当時の彼氏(詩人)とは別れ、出産。乳飲み子を抱えながら生活費を稼ぐために漫画を描き始める。ここから彼女の漫画家人生の始まりです。巻末にそのデビュー作が載っていて、絵画の修復士の話なんですがこれもとても面白いです。 思わず笑ってしまったのが、あとがき漫画で息子さんが「宇宙兄弟」のファンで、テルマエロマエが僅差でマンガ大賞を獲った時に激怒したというエピソード。 そして2巻「エジプト・シリア編」へ続きます。

汚部屋そだちの東大生

結局、環境は言い訳にすぎないでFA?

汚部屋そだちの東大生 ハミ山クリニカ
六文銭
六文銭

タイトルがセンセーショナルだけど、読み方で随分変わるかも。 自分は東大、というところに目がいったので 「こんな環境下でも東大いけんだ」 と、主人公の謎のハングリー精神や、親の教育とはなんぞやと考えてしまった。 これがフィクションなら総ツッコミして終わりだが、 作者「ハミ山クリニカ」先生の自伝的な話なようで、より考えてしまった。 (余談だが作者は、現役で芸大に受かり1年で中退し、東大に進学という「おい、『ブルーピリオド』息しているか?」みたいな、ギャグみたいな経歴の持ち主。) 東大生の家庭環境は、親の平均年収◯万円以上とか、どこどこ出身が多いとか、そういう数値的な一般論を出しがちだけど、 なんか東大落ちに 「自分が「そう」ではないから入れなかった」 という、言い訳を用意してくれているようで、いかがなもんかと思っていた。 昔、塾講師をしていたから、こういう情報が毒にも薬にもなるので。いや、大部分の人にとって毒にしかならない。 だけど、こんな異常値みたい人も当然いるわけで、どんな環境下でも「意志あるところに道がある」 ことを証明してくれて、こっちのほうがよっぽど共感できた。 部屋が汚く料理もしないけど、教育には熱心な母親だからネグレクト?と一概に言っていいのか疑問だが、そんな母親でもしっかり子供は育つ。 一方で、産まれて3歳から塾に通わせ、子供の時間管理を徹底的にして東大受からせた受験ママもいて、正直、自分的にはどっちも狂気だなと思う。 親と子供の関わり方、親の役割ってなんだろって考えさせられました。 4話ぐらいで父親との関係もわかってきて家庭環境の複雑さが増していきます。 なんにせよ、これから主人公が世間と接点をもって、いわゆる「普通」に変わっていくにか、「普通」との乖離に絶望するのか、どっちに転ぶのか楽しみです。 最新6話の終わりが不穏なだけに、頑張ってほしいっ!

異星人の子を授かりまして。

妊娠期間20カ月(白目)近未来SF出産エッセイ

異星人の子を授かりまして。 まるかわ
ぺそ
ぺそ

ロマンチックな異種婚姻譚や異種族恋愛ものって沢山あるけど、その後の妊娠と出産に注目した作品ってみたことない!着眼点がすごい。しかもエッセイマンガ風に描かれてるからリアリティしかないです。(開幕主人公のお辞儀から始まっててこの人わかってるな・・・!と思いました) https://comic.pixiv.net/works/7396 先進的な技術と制度を持つオロエレ星人・ヴッさんと結婚した地球人の主人公。 妊娠期間が20カ月間なだけでもエゲツないのに、さらに恐ろしいのがず〜っとつわりが続くうえに「つわりが酷いほど元気な子が生まれる」という迷信があること・・・無理すぎる😭 ヴッさんみたいな素敵な旦那さんじゃなきゃ絶対耐えられないし、2人目産むとかありえない。4人も産んだ義母さん超人すぎる。 異星人ならではの生物的特徴や、先進技術とつわり前提の社会システム、安産祈願の風習の違い、実家や義実家との付き合いなど。作り込みが半端じゃなくて真剣にハラハラ心配しながら読んでしまいました。 ここに描かれた何割かは地球人の子供を産むときにも当てはまるんだよな思うと、やっぱり怖い。そして自分の母や友人を含めた世のお母さんたちって皆すごいな・・・と尊敬してしまいます。 各家庭へのオロエレ製の家政ロボットの導入は無理でも、旦那さんのテレワークや時短勤務育休くらいは地球人でも取り入れられそうだし、早くそうなって欲しいです。