傲慢と善良

辻村深月のベストセラー恋愛ミステリー小説がコミカライズ!

傲慢と善良 辻村深月 鶴谷香央理
名無し

『メタモルフォーゼの縁側』の鶴谷香央理さんが辻村深月さんの小説『傲慢と善良』をコミカライズした本作。 小説は久しく読んでいない自分でも知ってる有名小説家の辻村深月さん。 コミカライズ&アニメーション映画化された『かがみの孤城』は、恥ずかしながら原作は未読ですが漫画も映画もとても素晴らしかったです。 それにしても豪華なタッグ! https://webtripper.jp/m/mdf185579bb2a 39歳独身で若くして社長になった架(かける)と、マッチングアプリで出会い婚約した真実(まみ)。ときおり真実の周囲に不穏な影はあっても二人は順調そうに見えたが、ある日、真実は行方不明になってしまう。果たしてそれは事件性のあるものなのか、失踪なのか。架は真実を探し回るが…。 ジャンル的には「恋愛ミステリー」とのことでどうなっていくのか楽しみです。 現時点で公開されている3話まで読んだんですが、本題に入る(真実が失踪する)前までに微妙に引っかかるポイントが上手に散りばめられていてこれがどう効いてくるのか気になりますね。 とにかく自信が無さそうで大人しい真実と、正反対に社交的で明るく仕事もバリバリできそうな雰囲気の架。 架の友人関係も、嫌というほどではないけど微妙に派手というか、思ったことはっきり言う口の悪さというか、カースト高そうで苦手な人は苦手そうな界隈を描くのが上手いです。 架が二十代?のときの元カノのアユを引きずって意識している様子から、アユの代替品として真実を扱ってたんじゃないか?とかいろいろ考えちゃいます。 真実が行方不明なのにあまり心配してるふうじゃない真実の親とか、むしろ世間体を気にしてそうな部分に嫌な感じがします。 何か知ってそうな真実の英会話スクールの元同僚も気になるし…。 失踪したことで真実自身の人間性も果たして大人しく引っ込み思案だったのか、何か隠していたこともありそうだし、架に近づいた理由があるのかもしれないし、謎は深まるばかり…といってもまだ序盤なのでネタバレを踏まないように気を付けながら謎を楽しみたいところ。 小説公式サイトはこちら https://publications.asahi.com/feature/gouman/ 調べてたら今年9月末から映画化も決まってたのを知りました https://www.youtube.com/watch?v=OusWAswTcnI いろいろ合わせたタイミングで仕掛けた連載開始だったんですね。 ここまで人気ということを知ると原作で読みたくなってしまう自分もいるのですが、鶴谷香央理さんも好きなのでとりあえず漫画で追ってみることにします。

みんな私のこと「かわいい」って言ってくれるけど本命にはしてくれないね?

地味な女性が主人公で、“白雪姫”がいわゆるザマァ役かと思いきや

みんな私のこと「かわいい」って言ってくれるけど本命にはしてくれないね? むぎ
ゆゆゆ
ゆゆゆ

あざとい、ぶりっ子、若さと顔だけ、マウントとりがち、彼女が気に入った人以外の敵。 彼女を批判する言葉は他にもいくらでも出せる気がする。 それでもターゲットとした男性からは恐ろしく好かれる、ある意味要領が良い女性。 「白雪姫」こと、白雪愛莉が主人公である。 『みんな私のこと「かわいい」って言ってくれるけど本命にはしてくれないね?』というタイトルは、悪役側のセリフではない。 イケメン&ハイスペック男性に選ばれしオンナになりたい愛莉。 加えて、羨望や褒め言葉などはすべて自分に集めたいという、こじれた性格をしている。 なので、イケメン&ハイスペックを求めて、男を取っ替え引っ替え。 アクセサリーのように、取っ替え引っ替え。 より貢いでくれる男を求めて取っ替え引っ替え。 しかし、選ぶ男は誰も彼もダメ男。 そこはだめだろうという要素を、ぶち抜く勢いで踏み抜いたダメ男。 あまりの男を見る目のなさに憐れみが出てくるけども、次の男への切り替えも非常にあっさりしていて、憐れむ隙を与えない。 そして変わらず、イケメンが現れたら値踏みしつつ、男受けする性格を演じ、落とそうと画策する。 いやあ、非常に良い性格をした、したたかな姫である。若さが保たれるうちは、王国も安泰ですね。 ちなみに、地味女性のほうを主人公にしてもお話ができそうなほど、ステキなキャラクター設定。 日本酒&せんべろ&御曹司をテーマに、一つ読んでみたい。

どちらかの家庭が崩壊する漫画

主婦・ユイのほうの義母がリアル

どちらかの家庭が崩壊する漫画 横山了一
ゆゆゆ
ゆゆゆ

孫に会いたい気持ちと、良いことをしている自分に酔うのを並立させちゃうかんじがリアル。 突然理由をつけて行くよ連絡に始まり、好みでない服を渡されるとか、子どもの面倒をみるといって古い知識で対応されるとか。 さらに、ユイの夫はダメ男過ぎて、読んでいて心がしんでしまう。なんでこいつと結婚した。 とはいえ、対照となる毒山家がイクメンお父さんとなっているのは、働いてないからだろうなと思った。 二人でみているから余裕がある。 お金はないけど。 赤ちゃんは大人二人で1から10まで面倒をみないと、とても大変。 そして毒山家義母は、嫁に好みでない、サイズも不確かな服じゃなく現金を手渡してくれる。 よくわかっている。 現金。 商品券じゃなく、現金。 取っておけば、子どもが成長したときの資金になり、使えば今助かる。 封筒にすら入ってないのが生々しいけど、そんなのは些末に感じるほど、いらない服や夫婦で決めたかったアレヤコレヤの押し付け(知人談)と比べると、現金は嬉しい。 作中の義母ふたりは、自分が当時必要だったものを与えているだけかもしれない。 それなのに差が生まれるのは、結婚相手の親は選ばなくても身内になってしまう他人、という距離感を忘れているからと思える。 夫婦の関係も危ういのに、義母が更に危うくしてくる。 どちらも崩壊しそうな、危ういところに立っている御夫婦のお話。

うちの母は今日も大安

素敵で前向きで偉大なお母様 #1巻応援

うちの母は今日も大安 ありま
兎来栄寿
兎来栄寿

私がありまさんを認識したのは、Twitterで公開されていたこの本のChapter1 第1話にある 「アメリカで事故ってハッピーバースデーを歌ったうちの母」 でした。 アメリカのスーパーの駐車場でバックしていたら、ショートカットしようとしたおじさんと衝突してしまい烈火の如く怒鳴り散らされたものの、「It′s my birthday」というフレーズを聴き取った筆者の母君が店員さんたちと一緒にバースデーソングを歌うと途端に機嫌が良くなり謝ってくれたというほっこりエピソードです。 本書は、そんな素敵な母君様の心温まるエピソードや人生を生きる上で大切にしたいことが詰まった1冊です。 夫の仕事の都合で行った慣れないアメリカで、言葉が解らないときにどうやって英語を覚えていったのか。 介護でしんどくなってしまったときにどう対処したのか。 子どもが元気がなくて学校を休んだときにはどうしたか。 さまざまな、身近にあるシチュエーションで輝く母君の言動に読んでいて心が解れ前向きになっていきます。 バイクの免許を取ったりフルマラソンを走ったり、いくつになっても新しいことに挑戦し続ける気概や、実家での本格的な擬似縁日開催を全力で楽しむ様子を見ていると「人生の達人」と呼ぶのが相応しい気がします。 私もどちらかというと全力で物事を楽しむ方で、そこに一緒になって楽しんでくれる人が集まってくれることが多くて感謝しきりなのですが、母君様には似た気質を感じて共感します。 他方で、 「好きなものをちゃんと持っておく」 「自分の人生を生きなきゃ」 「そもそも人に謝罪と感謝を求めてはなりません」 といった言葉は、心に留め置いて大事にしておきたいものです。 ありまさんが母君様の言葉や存在によってどれだけ助けられ感謝しているかも伝わってくる内容でした。 心を前向きに持っていきたい方にお薦めです。これを読んで、人生を大安にしていきましょう。

わたしって害悪ですか?~お花畑声優厨の場合~

推し活の光と闇の相転移 #1巻応援

わたしって害悪ですか?~お花畑声優厨の場合~ 岩城そよご 科丈ひとな(セブンデイズウォー)
兎来栄寿
兎来栄寿

推しを推す。 それは、人の営みの中でもとりわけ尊いものです。しかし、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。その行為や付随する感情も、行き過ぎてしまうとむしろマイナスに働いてしまうことが往々にしてあります。 本作は、新米声優・土岐野カエデ(23)を推す会社員・美花(26)の推し活の物語です。 初めてアニメで主役を得たことで、露出が増えファンも増えていくフェーズにあるカエデ。しかし、そうなると必然的にアンチの声も目立ってきます。 本作ではSNSや配信コメント、現場などにおけるアンチの描写がかなりしっかりと描かれており、非常にリアルです。美花は大好きなカエデの活動に支障が出ないよう推し活の延長線上として、そうしたアンチに対する″駆除″活動を行っていきます。ファンは原義を辿ればfunではなくfanatic。光と闇は紙一重です。 ただ正直、美花の行為自体はやり過ぎであるとしても、そこで生じるモヤモヤとした気持ちには誰かや何かを強く推した経験がある人なら大なり小なり共感できるのではないでしょうか。 また、美花のそうした行為が生じている原因のひとつに会社のブラックさがあるのは現代社会の暗部だなと感じます。他の人より仕事が早いと待遇は変わらないのに労働量が多くなるので、生産性を下げることが最適解となる矛盾。昼休みまるまる使っても愚痴を言い足りない部長。そこで溜めたストレスが、推し活での快楽をより大きいものにして依存性を高めてしまう。 そんな美花の愚痴を嫌な顔ひとつせずに聞いてくれて、推し活の応援もしてくれて、抽選にも付き合ってくれる友人のゆずちゃんのような存在は大事にすべきです。主人公が幸せになるのは難しいかもしれませんが、ゆずちゃんには幸せになって欲しい……。 推す熱量の軽さの割に美味しいポジションを確保していてモヤっとするまりんちゃんや、同担で戦友感のある蘭之介さんなど、味のあるサブキャラクターも豊富で今後も楽しみです。 推しは推しても害悪にはなるな、という反面教師的な役割を担ってくれる作品です。