ふたりぼっちのオタサーの姫(読切)

「オタクと姫」の新しい関係性にキュンとする!

ふたりぼっちのオタサーの姫(読切) クール教信者
たか
たか

読み始める前はエロを意識したカラー絵を見て「作風が合わないかも…」と危惧していたけれど、全然そんなことなかった! かなり前のめり気味で「オタサーの姫になってチヤホヤされたい」女の子・大山さんが主人公。 「チヤホヤされるため、いかにも姫っぽいフリルの付いたブラウスにハイウェストのスカートを着て、サークルの中でも人数が少ない(=他に姫がいない)サークルに加入するが、人数が少なすぎて自分の他にはオタク男が1人しかいない」というあらすじ。 この唯一のサークルメンバーであるオタクの「タク」の性格がすごくいい…! 主人公の色仕掛けに微塵も動じず、ただ淡々と褒め続けるところは少女漫画のヒーローなみにクール。(むしろなんでそこまで女の子に慣れていてオタクなんだよというレベル) **本当は大きなサークルで姫として君臨したいのに、オタクくんの大変素晴らしいチヤホヤにほだされてしまう姫がすごく可愛い。** 超次元ラクロスアニメにハマった大山さんが、話について来れないイケメン(オタクの友達)よりオタクと盛り上がるシーンではニヤけてしまった。 この2人の毎日のサークル活動や、タクとイケメンの過去など、これは連載でもっと見たい…!

私たち家族に必要な時間

地味だけど良作の予感 #1巻応援

私たち家族に必要な時間 こじまなおなり
六文銭
六文銭

読んでまず、すごく丁寧につくっている作品だなという印象でした。 自分が好きな作家八十八良先生(「不死の猟犬」「ウワガキ」)のようなやわらかい絵柄で読みやすく、昨今のストーリー漫画に多い、飽きさせないようにやたらとヒキをつくり「がち」なものが、この作品にはない。 (ない…は言いすぎたが、無理がなく、仰々しくもない。) 悪く言うと地味なのかもしれないが、家族を題材とした内容とよく合っており、個人的に好感がもてる。 さて、大まかなストーリーだが、地元でワルだった父親と娘の二人の話。 母はすでに他界しており、いない。 素行不良だった父親のせいで、周囲から孤立してしまった娘は、いつしか父親を恨み、避けるようになる。 父親も父親で「過去は変えられないから」と、昔に何があったか話そうとしない。 そんな父親の煮え切らない態度が原因で大喧嘩をし、父親が出ていってしまう。 数日後、帰ってきたときは、なぜか赤ちゃんになっていて…という話。 赤ちゃんになった父親とともに現れた、死神を自称する猫サンシロウ。 なんでも彼がミスったことが原因で、父親の肉体までもリセットしてしまったという。 しかも、成長速度が早い状態で。 そんな感じで、子供に戻った父親と娘の、少し変わった親子の物語。 面白いなと思うのは、娘に育てられてワルだった父親はどう変わるのかということと、結果娘と父親の関係はどうなるのかというところ。 過去は変えられないという父が、子供からやり直し、何かを変えていくのか。 父親がいなくなったことで、少しづつ明らかになる、子供になる前の父親の素顔と、それに伴って起きる娘の心境変化。 親子関係を中心に面白くなりそうな仕掛けが色々あり、どう転ぶのか楽しみです。また娘が現実を受け入れながら、学校と育児をこなして成長していく姿は、素直に応援したくなります。 大変で、愚痴るときもあるけど、何だかんだ頑張ってしまう姿は、リアリティあってグッときます。 久しぶりに完結まで続いて欲しいと思った作品でした。

魚の見る夢

傷付け束縛する、壊れた姉妹の愛憎

魚の見る夢 小川麻衣子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

高1の妹が、高3の姉に首輪をつけて束縛する……そんな始まりのこの物語は、常に幾らかの息苦しさを纏っている。 母を失って「壊れた」家庭で、大切だった家族の関係を妹との間だけでも守ろうとする姉。姉に家族以上の感情を抱いてしまった妹は、気持ちをぶつけ、姉を翻弄する。 好きって何? 女の子同士で? 家族だから何? 疑問符だらけの中を、二人は迷走する。 互いが大切なのに、自分の「大切」の形を守ろうとして、却って互いを縛り、傷付けていく姉妹……二人の張り詰めた心に、重い痛みを覚える。 更に両者とも、友人関係にもこの息苦しさは形を変えて現れ、一筋縄ではいかない重い物語のバリエーションが展開される。最後まで息継ぎをする瞬間は、無い。 この息苦しさを救うのは、小川麻衣子先生の流麗ですっきりとした、軽みのある絵。優しさと、どこか重力を感じさせない浮遊感が、タイトルの様に「水中の夢」を見ているのでは?という気にさせる。 この作品が「夢」なのだとしたら、読み終わった時に、私達は夢から醒める。心の痛みと、纏わり付く甘く息苦しい感情を思い出しながらも、少しずつ、忘れていく。 また思い出す為に、手に取るに違いない。