電波青年 単行本版

人を殺したラジオ配信者とそのリスナーの孤独な逃避行

電波青年 単行本版 安田佳澄
ANAGUMA
ANAGUMA

殺人を犯したネットラジオの配信者フジオとそのファンの女の子ヨーコが出会い、ふたりで配信をしながら捜査から逃げるというバディロードムービー的な筋書きです。 フジオは孤独な男です。 芸人として成功できず、ネットラジオで承認欲求を満たし、自身の価値をギリギリのところで認めています。彼を評価し、孤独の境界に踏み止まらせているのは顔の見えないリスナーたちだけなのです。 ヨーコが彼のラジオで救われていたのも、フジオと同様に、自分が孤独だと感じていたからです。 互いの孤独を癒やすように共に居ることを選択するふたりの姿は、痛々しくもとても尊いものに感じられます。 皮肉なことにフジオは彼のリスナーたちと出会うことで、さまざまな出来ごとに見舞われ、時には追い詰められ、時には助けられ、運命に翻弄され、のっぴきならない状態に陥っていきます。 優れた物語は「次はどうなるんだろう」という気持ちがずっと持続するものだと思います。自分は一気に読んでしまいました。 フジオの罪の真相と、ヨーコとの孤独な旅路がどこに行き着くのか、ぜひとも見届けてほしいです。

小百合さんの妹は天使

天使の妹と、壊れそうな姉妹百合

小百合さんの妹は天使 伊藤ハチ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

仕事以外は人と関わらずに、孤独に生きていた小百合の前に、13年間音信不通だった妹の美琴が現れた。 幼い頃、天使の様だった美琴の久しぶりの姿に、小百合は愕然とする。女子高生になってもふわふわとした愛らしい美琴の、頭には光輪、背には白い翅。 ……美琴は、天使になっていた。 そして美琴は唐突に言う。 「お姉ちゃんと恋人になりたい」と。 ♡♡♡♡♡ 愛くるしさを振り撒きつつ、小百合に迫る美琴はマジ可愛い天使!と思う瞬間、私の目は彼女の光輪と翅を捉え、ふと我にかえる。ああ、本当の天使なんだっけ……。 彼女が天使である理由は、なかなか語られない。光輪と翅はちょっとした違和感となり、美琴の強引さや焦りと共に、単純に可愛さを消費させない澱みを小百合にも、私達の心にも残す。 二人は日常を共にし、愛情を深め、感情を確かめ合う。 春夏秋冬を美琴と暮らす小百合の日々は煌めきに満ちていて、小百合の閉ざされた心が少しずつ明るくなっていく物語に、私達の心も温かくなる。 それなのに、光輪と翅の存在は私達に違和感と、一筋縄ではいかない複雑さを常に忘れさせない。 私達は壊れ物を優しく掌で包むように、二人を見続ける。二人の小さな幸福は続いていくのか、それとも……。

Bowing! ボウイング

どこか懐かしい雰囲気がたまりません! #1巻応援

Bowing! ボウイング きゅっきゅぽん
せのおです( ˘ω˘ )
せのおです( ˘ω˘ )

とても懐かしい感じがたまらない空気感の漫画でした! 舞台の田舎が、「夏休みにおじいちゃん家に来た」かのような景色が、私の心をくすぐってしまいます。笑 良い意味で、児童向けの漫画を読んでいるような感覚で、 でもものすごく感情と音が溢れている、表現力が素晴らしい作品でした! 全ての景色と言葉が、中学生の目線で語られていて、 それでもその素直な感情が、腐った大人になっちまった自分にもすごく響いてきます。笑 主人公の朝倉てん君が、すっごく初々しいくて可愛いんです!! 中学校一年生なのですが、ついこの間まで小学生だった年頃がそのまんまキャラクター性に表れていて可愛らしいんですが、 そこが今後、音楽を通じてどう成長していくのか楽しみです。 もう一人の主人公、都会から引っ越してきた表紙の女の子、りおちゃんも魅力的な人物です。 都会から田舎にやってきたちょっと強気な性格が、舞台の田舎とのギャップになっていて、そこがより作品の雰囲気を引き出しています。 「天才肌」なタイプのキャラクターではなく、年相応で素直な性格の2人に、目が離せないです。 続刊楽しみにしています!!