赤塚不二夫の旗の下に フジオプロの青春

フジオプロが一番輝いていた時代を知る

赤塚不二夫の旗の下に フジオプロの青春 てらしまけいじ
ひさぴよ
ひさぴよ

数々の逸話を残す赤塚不二夫のプロダクション「フジオプロ」での日々を回顧したエッセイ漫画です。 主に70年代の思い出が中心です。チーム体制でバカボンのアイデアを練っていたブレーンたち、長谷邦夫、古谷三敏の活躍や、小学館の武居俊樹、五十嵐隆夫などの名物編集者、曲者だらけのアシスタントたちが登場します。タモリとのエピソードも少しだけ出てきます。フジオプロが一番輝いていた時代。 さまざまな媒体でフジオプロの逸話は語られてきましたが、これまでのイメージをさらに上回ってメチャクチャな現場のように感じました。これでよく制作現場が成り立ってたな・・・とあきれるような感心するような。 フジオプロといえばやはり、お酒のエピソードには事欠かない様子。 職場で飲むのは当たり前、仕事終わりはみんな深夜まで飲んで騒ぎます。 迷惑な酔っぱらいでしかないのですが、やることなすこと面白いから許せてしまう所がありますね。叱られたときは「ごめんなさい!永井豪とダイナミックプロでーす!」と騙って逃げるのには笑いました。 漫画内では貴重な写真をはさみながら、東京新宿区の落合エリアの紹介もされていますので、聖地巡礼する際には参考にしたいと思います。 全体的に湿っぽい話はほとんどなく、楽しい気持ちだけが残る漫画でした。 あとがきは、酒の勢いに任せて書いた文章ということですが、ちょっと意味するところが分からない部分もあり、もう少し真面目に締めてほしかったのが正直な所。しかし同時に「これでいいのだ」とも受け取れました。

はやて×ブレード

バカ・大袈裟・暑苦しい剣撃乙女の相棒物語

はやて×ブレード 林家志弦
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

中高一貫女子校の天地学園には、剣の腕が評価される「剣技特待生」制度がある。双子の姉の因縁と、古巣の存続を背負って剣技特待生となった中1の黒鉄はやては、過去のトラウマに苦しむ中3の無道綾那と「刃友(しんゆう)」となり、共に上を目指す。 様々な目的とこんがらがった思いを抱えた剣撃乙女達の、熱い青春友情コメディ……笑って泣いて、バカになれ! ★★★★★ 互いの背中を預けて闘う二人、という最高に燃えるシチュエーションの為にあるような、天地学園の「刃友」という相棒システムは、様々な女子二人の関係性を描き出す。 友情、取引、相互補完、主従……スタートはそれぞれだが、そこから信頼関係を構築し、本当の相棒になっていくドラマは熱い。 剣闘漫画としては、速さ・勢い・軽いいなし・重い斬撃etc……強烈なギャグとバトルがテンポ良く交互に展開していく。そして美しい戦闘姿勢の描写が印象的だ。 頂点の天地会長×宮本組から駆け出しのバディまで、性格にリンクした様々な戦闘スタイルも面白く、単純にバトル漫画としても、ワクワクする。 対戦に細かいルールはあるが、面倒な説明は最小限に、様々な例外やイベント、面白ければ何でもありな(天地会長の)姿勢で盛り上げ、見ていて飽きない。 その上で、闘いの中に交わされる感情が、昂り熱を帯びてゆき、私達を揺さぶる。剣を通して、ぶつかり合い理解り合う二人の魂の交感……体を張った激しい漫才の中に織り込まれる感動で、笑い泣きが止まらない! 主人公・黒鉄はやてのハイテンション百合ボケと、あらゆる女子に百合エロを妄想する久我順の存在はあれど、それ以外の人はエロや恋愛とは無縁。それなのに刃友同士の関係性は、ひとつひとつが愛おしい。 百合好きでない人にも、熱い相棒バトルコメディとして絶対楽しめる作品。その一方で、「百合とは女性同士のあらゆる感情の描写である」ということがよく分かる作品でもある。 (それ故、この作品を百合ではなく、敢えて「ロマンシス(女性同士の強固な友情)」と紹介するのもありだと思う) 先ずは3巻〜4巻冒頭、静馬×久我組vs黒鉄×無道組のバトルと、静馬×久我組の「主従」「無二の親友」の関係を越えた重いドラマに泣こう。その先にある沢山のドラマを、読まずにはいられなくなる、はず!

ゆりなつ

甘美…島の民宿に百合の花咲く!

ゆりなつ もちオーレ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

とある島の民宿「かがや」は女性だけの一家で切り盛りする小さな宿。そこには様々な女性二人組がやって来る。 女性二人組の来客に対応する度、従業員の姉妹達はそれぞれに「萌え上がる」。長女は二人を百合方面にからかい、次女は横目で二人を伺い、三女は二人を盗撮・盗聴しようとし(コラっ)、五女は自分が何とかしなきゃ!とソワソワする。 そんな百合民宿では次々百合カップルが生まれる一方、姉妹達はそれぞれの「姉妹百合」に身を焦がす。さらには彼女達の母の、民宿の女将も、板前の姉(姉妹の叔母)といい感じ……。 何だこれ、百合成分が濃すぎる! 2ページに一回は悶えてる……。 しかし決して、甘く楽しい恋愛がストレートに描かれはしない。 描かれるのは、プライドのために相手の弱みを突き、優位に立って安心を得ようとする者と、それを受け止める者の様々な在り方。そして相手を安心させてマウントを解き、素直にさせて、ようやく向き合う瞬間の高揚感! こんな脳味噌がはち切れそうな幸せな読書体験があるから、「百合」はやめられない。そう思わせてくれる作品だ。 ♡♡♡♡♡ 例えば1巻を読んで気に入ってもらえたら、出来れば2巻の前にもちオーレ先生の別作品『出会い系サイトで妹と出会う話』を読んでいただきたい(『出会い系サイトで〜』は、わかりづらいが2巻ある)。表題作でどうにも救われなかった一人の女性のエピソードが、『ゆりなつ』の2〜3巻に描かれている。