ノラの家

加害者と被害者

ノラの家 夕海
名無し

加害者と被害者は表裏一体であり、私たちもみなそのどちらにもなる可能性を秘めている……ていうのがテーマなんだろうけど、少し惜しいと感じた。 今のところ(12話まで)出てくる「加害者」側のキャラも、なんというか蓋を開けてみるとそこまで「加害者」ではないような〜…。 美大生の子の罪はアウティングされた相手と揉めてスコップで顔に傷をつけてしまったこと。 メガネの罪は人を轢いたこと。でも轢き殺したわけではなく、妊婦を轢いて流産させてしまい、妊婦はそれを苦に自殺、という、確かに罪は罪なのだが間接的で…。 それにメガネは元々家族からいじめられていて、挙句兄の虐待から姪っ子を守っていた、という可哀想なエピソードも描かれる。(途中までてっきりロリコンなのかと思った) 加害者はある意味被害者の側面もあり、加害者にも同情の余地があるんだよ!というテーマならこれでいいのかなあ〜…。 加害者虐待被害者をテーマにした作品は「羊の木」「モリのアサガオ」などがあるけど、これらの作品と比べると今作の登場人物たちが抱える「罪」は、なんというか「割と許してもらえそうな罪」であるように感じた。読者のストレスにならない程度の罪というか。 だからこそ熱血主人公のはからいであっさりわだかまりが解けていくんだけど、うーーん。 ハードでスリリングであればいい!というわけではないし、この作品の目指す方向とは違うのも分かるんだけど、それにしても全体的に少し予定調和に感じてしまったかも…。 しかし作者さんは浅野いにおのアシスタントらしく、背景や作画は一流。どこか鳥海茜っぽさも感じられる絵柄。今後、女性誌などでも活躍しそう。

DOGA

不思議なコンビが世界を往く #1巻応援

DOGA 武田登竜門
兎来栄寿
兎来栄寿

『BADDUCKS』や、SNSでバズった読切「大好きな妻だった」などで知られる武田登竜門さんの最新作です。 魅力的なファンタジーは、その世界にリアリティを感じさせてくれます。虚構として大小の嘘はありながらも、その世界が本当に存在しているのではないかと思わせてくれる肉感。それを生じさせるのは嘘を下支えするディティールと、何よりヴィジュアルが生み出す説得力です。 『DOGA』は、そういう意味でとても魅力的なファンタジーです。庶民の衣食住や仕事や娯楽、この世界独自のシステムなどを通して、そこに住む人の息遣いが感じられます。武田登竜門さんの新鋭とは思えない高い画力が紡ぎ出す世界の情景に、異国の地を旅している気分を味わえます。見開きでバーンと豪奢に描かれる世界は、見ているだけで楽しめたりワクワクしたりします。 世界のほとんどが海であり陸地が1/10以下の星の上で、ソテルナの新領主となったヨーテルダと雑多な労働やゴミ漁りでその日暮らしをしている孤児のドガ。 身分のまったく違うふたりが出逢い、旅をしていく物語となっています。 メインキャラクターも今風のわかりやすいイケメン美女ではないところがまた硬派で、味を生んでいます。ドガの豪放磊落な性格と、未知と遭遇した時のリアクションが読んでいて楽しいです。この世界のことを知らない私たち読者と同じ目線を提供してくれるので、物語に入り込みやすくなっています。 最近では、主人公の名前だけがタイトルになっている作品も珍しくなっているので、そういうストレートな部分も良さが感じられます。 旅をするには不向きであり、かつタイムリミットが生まれてしまっているヨーテルダとの困難多き旅路は果たしてどうなっていくのか。 人魚は本当にいるのか。 ヨーテルダは命を繋ぐことができるのか。 ヨーテルダの兄、ビヨルクが握るソテルナの秘密とは何か。 何より、まだ見ぬ広い世界にどんな光景が待っているのか。 この先も楽しみです。

友人の式日 るぅ1mm作品集

頬を染め、濡らす少年たち #1巻応援

友人の式日 るぅ1mm作品集 るぅ1mm
兎来栄寿
兎来栄寿

『怪獣くん』のるぅ1mmさんによる、4つの短編を収録した作品集です。 『怪獣くん』のような男の子と女の子のお話もあれば、「あさみちゃんのなくしもの」のような百合もあれば、本作に収録されているような男の子同士の関係を描いた作品もあり、いずれにおいてもその筆致を遺憾なく発揮しています。 1番最初に収録されている「ななしの恋人」だけは全編アクションwebにて読めるので、試し読みとしてまずそちらを読んでいただくのが何より早いでしょう。個人的にもこの本の中で特に好きな作品です。 https://comic-action.com/episode/316190246979767734 闇深い泥沼のような感情を描くことも多いるぅ1mmさんですが、本書に収録された物語は比較的光の部分が目立ちます。2作目の「幽霊屋敷ラブロマンス」などは特に顕著ですね。るぅ1mmさんのかわいい絵柄は、こういった方面の物語でもマッチするのだなぁと得心します。 かと思えば、3作目の「フランケンシュタインの友人」で見られるような倒錯的な感情こそ醍醐味であるなぁと思い直します。 そして、4作品目の表題作「友人の式日」で余韻を残して締め括られる。1冊の短編集として、収録順が完璧だと思います。 普段からBLを嗜む方にはもちろん、そうでない方にも必然性を持つふたりの関係性を描いた作品群として読んでみて欲しいです。真夏の残照のように、胸を焦がされることでしょう。

魔法少女201

かわいいマムちゃんと、悪役かつヘタレお色気担当のフジヤマさん。

魔法少女201 むちゃ
ゆゆゆ
ゆゆゆ

フジヤマさん、ボンテージを着てるシーンが少ないような… 積極的に働くと、魔法少女のマムちゃんが出てきて爆散させられて敗退罰則金が生まれるし、積極的に働かなくても偉い人に怒られるし。 まさに前門の虎、後門の狼。 とはいえ、魔法少女へ変身したマムちゃんは強すぎる。 普段から魔法少女に変身していてパワー的には隙なし。 仲良くして弱点を探そうとしているのに、可愛らしさ以外は恐ろしく強いことしかわからない。 マムちゃんの強さを目の当たりにしてクラクラしそうになったところで告げられる、厳しすぎる魔法少女の鉄の掟 なんなんだ、この魔法少女業界は。 月給30万(罰則による減給あり)で働く、悪の組織・女幹部フジヤマさんの敵としては、生粋の魔法少女・マムちゃんは強すぎる。 フジヤマさんも後輩のようにうまく立ち回って、魔法少女とエンカウントを減らして、寿命を長くしてほしい。 ちなみに、マムちゃん(10才)が金欠のフジヤマさん(アラサー)へ、しばしお裾分けしてくれる貰い物。 出どころがわかってもわからなくても、マムちゃんのピュアさにフジヤマさんの心は漂白されてしまう気がするなと思った。

メイドスケーター【電子特典付き】

愛しか感じない「メイド」×「スケボー」マンガ #1巻応援

メイドスケーター【電子特典付き】 すずしろ
兎来栄寿
兎来栄寿

多様性の時代である令和。最近はメイドも多種多様です。 ひたすら食べるだけの子もいれば、アキバで抗争するメイドもおり、ゴミ捨て場で拾われるヒゲ面メイドもいます。 そんな中、こちらはスケボーで空中を舞うメイドのお話です。 世の中、掛け算が大事で。単体ではありきたりであっても、掛け合わせることによって独自の組み合わせとなりそこに魅力が生じてくるのは人間でも作品でも同様です。 「スケートボード」×「メイド」。 通常では交わることがほとんどないであろうふたつの要素をどちらもこよなく愛する筆者によって、唯一無二の作品が誕生しています。レースを振り乱しながら、激しく華麗なトリックを決める姿が新感覚です。 すずしろさんの画力がとにかく高く、女の子はそのままラブコメにしても問題がないくらいかわいいのですが、そのかわいさを保ったまま少年マンガのアクションのように格好良く迫力のあるスケボー捌きを見せてくれます。表紙絵だけでも伝わるであろう、躍動感と疾走感がたまりません。大胆に見開きや大ゴマを駆使して目だけで楽しませてくれます。 個性豊かで魅力的なメイドたちのみならず背景も美しいのですが、西洋風の街並みの中に現代的なスケボー専門店が存在しており、細部の部品まで精緻に描かれているのに愛を感じずにはいられません。 「好き」は最強ですが、この作品には確かな「好き」が溢れています。 描きおろしでも見られる、スケボーから離れた日常の部分だけでも彼女たちの息遣いが感じられて好(ハオ)です。 マンガでも十分面白い作品ですが、アクションが非常に動画映えするであろう作品なのでアニメ化されたら海外などでも大ブレイクしそうで今後の展開が楽しみです。