青年マンガの感想・レビュー15397件<<348349350351352>>月に3万円足りなくて苦しみながら買われる女子医大生東京貧困女子。 中村淳彦 小田原愛兎来栄寿『漫画ルポ 中年童貞』などでもお馴染みの中村淳彦さんが、東洋経済オンラインで「貧困に喘ぐ女性の現実」と題した2016年からのシリーズ連載で1.2億PVを突破した記事を書籍化した『東京貧困女子。―彼女たちはなぜ躓いたのか』をコミカライズした作品です。 その後、筆者の中村淳彦氏は『新型コロナと貧困女子』という本も上梓していますが、このコミカライズに当たってはコロナ禍も非常に意識されていてコロナ以前・以後が明確に描かれています。 連載時のように数話につき一人の人物にフィーチャーして語るという内容ですが、様々な現代の地獄絵図が描かれます。 一番最初の「広田優花」から、国立大学の医学部に進学しながらも親から金銭的援助が受けられないという状況で奨学金制度という名の多額の借金を背負い、普通のバイトでは稼ぎも時間も足りないのでそちらの道へ進み、客である中高年男性から「楽して稼ごうなんて良くない」と説教されるという吐き気を催すような構図が描かれます。買われる女性と買う男性は、視点を引いてみれば格差社会における強者と弱者という構図で、弱者はもっと強者に怒って良いはずなのになぜか強者が訳知り顔で弱者を糾弾し、あまつさえ自己責任だなどという歪んだ構造は是正されていかねばなりません。 別に、ブランド物を買い漁って贅沢したい訳でも何でもなく、成人もしていない女の子が、普通に大学に通い普通に勉強して普通に部活をしたいという極当たり前の欲求を叶えるために、望まぬ道に身を堕とす様は読んでいて酷く居た堪れない気持ちになります。小田原愛さんの描く女性がとてもかわいらしく、その一方で気持ち悪いおじさんも十全に描いていることもあって臨場感たっぷりです。自分の意思としては絶対にやりたくない行為を、お金のためにやらされる苦しみ、そしてやってしまった後の強い後悔と不快感が痛いほど伝わってきます。 とりわけ日本では奨学金制度は度々問題として取り沙汰されますが、高等教育を受けるために裕福な家庭に生まれなかった人は身も心も磨り減らさねばならない状況というのは絶対に間違っています。世界でも圧倒的な少子高齢社会なので全体的に見て衰退していくのは避けられないとしても、そうであるからこそ尚更教育には国の予算を割いて然るべきだと思います。 おそらく、こういう状況を想像もできない政治家や上の世代の人も多いことでしょう。お金に困ったことがない人、大学で全然勉強せず大学は遊ぶところだと思っている人……そういった人たちにこそ、この本を読んで現実を知って欲しいです。「虫」というハードルはあるが先が気になる作品 #1巻応援クモノイト~蟲の怨返し~ 荒巻美由希なかやま作品のタイトル通り「虫」です! 全話余すところなく「虫」!苦手な人は生理的に受け付けないはず そこを無理に「虫は出てくるけど、いいですよ!」で読んでもらうのはちょっと違うと思うので、虫は嫌いだけどちょっと気になった人は、作者さんの過去作 時忘の捨姫 をどうぞ あらすじ 主人公の恩田は子供の頃から虫が好きだった ただ、誰しもが持っている子供時代の無邪気な無残さによって多くの虫を興味本位から殺してしまっている 大人になった恩田にその虫たちが【怨】を返しに来る・・・ 私の感想ですが「虫」が出るは出るのですが、イメージとして"グロい"というのは感じませんでした、どことなくギャクテイストです。 これが意図したものなのか?それとも読むハードルを落とすためのものなのか?が個人的に非常に気になっています。 この作者さんの作品を読むとなかなか知的な主人公たちが登場するので、現状「虫」たちにかき回されている恩田くんがバケる可能性も大いにあるかと思っています。 先の展開も気になる作品です。 そしていい感じに着地点が見えないのも個人的にポイント高いです。 完全に「怨」で終わるのか、それとも「恩」が出てくるのか? 完全にバッドエンドで終わることも、この主人公だったらみんな納得はできるけど、もう少し足掻く部分を見てみたい気もする! そしてタイトルの クモノイト ですが、1巻時点では蜘蛛は出てきていません・・・ 二巻が気になる注目作です2020年読んだ漫画の中でも特にすきだなよりみち日記 道草晴子starstarstarstarstarマンガトリツカレ男前作の「みちくさ日記」も好きでしたが今回のはより面白かった。バイトの話もいいですが特に好きなのは「人のいない和室の絵をかく無職のおじさん」との絡みかな。 あとこの作者のちばてつやへの思い/尊敬/敬愛ほど素晴らしいのはあんまり見たことがない。 ちばてつや賞の受賞作もいつか単行本に入れて欲しい。 やはり名作だったあさひなぐ こざき亜衣名無し改めて読んでみると、やはり素晴らしかった。 なぎなたが高校の部活である前に武道であること、それでも高校の部活でやるということ、主人公のひたむきさ、挙げていくと限りないほどに愛おしい青春が詰まっていた。 内容のことは他の人が感想を書いてるだろうから感覚的な話を。 主観でしかないけどこの漫画に感じるのは、真冬のしんと静まり返った朝に誰も起きてない外に出て深呼吸をしたときに少し鼻がツンとするような爽やかな感じ。 彼女らの頑張りに涙ぐみ、名言に震え、こうありたいと憧れ、どうか勝ってくれと応援してしまう。 また少し時間をおいて読みたい作品の一つ。 面白くなりそう!ミワさんなりすます 青木U平名無し自己主張が上手くできず、ちょっとコミュ障で、映画好きすぎてレンタルビデオ屋をクビになってしまった彼女は新たな仕事を探すと、超超超憧れの俳優の家の家政婦の募集があった!が!その条件は果てしなく高く諦めてせめて合格者を見ようと家に行くと・・・。 なりすましサスペンスコメディーって感じなのかな? 楽しそう! フリンジマンでも映画の知識でカバーするような展開もあったし、今回もありそう!バレずに家政婦を続けられるのか!?テレビ局の表と裏の話だけではない電波の城 細野不二彦starstarstarstarstarマンガトリツカレ男テレビ界で色々な駆け引きをしながら謎の女、天宮詩織が「電波の城」であるTV局の頂点を目材していく物語を天宮詩織の近いところにいた真摯なジャーナリストである谷口ハジメの回想録という形で進んでいく。 最初の方はTV局での女性同士の戦いがメインで天宮詩織が問題に対処しながら徐々にTV局での主導権を握っていくことになる少しづつ天宮詩織の過去が小出しになっていき謎は深まっていく。中盤からTV/ジャーナリストの未来と天宮詩織の過去が並行して進んでいくが途中から天宮詩織の過去にとって重要な宗教団体などが絡んでくる。この宗教団体は80年代後半から90年代を生きていた人に忘れられない某宗教や、ジム・ジョーンズの人民寺院を思い出させる内容だった。 天宮詩織の過去を知ろうとするジャーナリスト、関係者同士の意図していない繋がり、最愛の父の病状などが絡み合って伏線を回収しながら最終回に向かっていく。 最初からこういう最後を考えて進んでいたかどうかはわからないが、天宮詩織に起きる出来事の順番が少し違うだけでも全く違うラストが想像もできた。この終わり方はある意味納得できるから好きかな ちょうどいい待ち時間踏切時間 里好野愛電車が通過するのを待つ間。降りた遮断機がまた開くまでの間。 一瞬のような、時が止まったような、限られた時間を切りとった短い日常漫画です。 踏切を待つ間だけ妙にセクシーな同級生をじっと見つめられたり、隣に立っているのにSNSで会話したり、閉じた遮断機から想像を膨らましポエムをしたためたり…短い短い間で、登場人物たちは物語をちゃんと動かしていくのです。なんもしないでボーッとしているように見えても、心のうちは目まぐるしく動いています。 もうちょっと長かったら間延びしちゃうかもしれない、もうちょっと短かったら物足りないかもしれない。踏切が開くのを待つくらいがちょうどいい。 学生の日常を切り取るのにちょうどいい「踏切時間」という題材を見つけた作者の発想か何よりも素晴らしいです。天才の所業。 ホラーテイストだったり甘酸っぱかったり、でも最後はコミカルでほのぼの終わるのがとても心地よいのです。踏切以外の瞬間も知りたくなっちゃうけど、その距離感がまた良いのです! かぐや様同人版の無料動画を見て、感想を語るスレかぐや様は告らせたい 同人版 茶菓山しん太 赤坂アカかぐやマスターいまヤンジャンが公式YouTubeで無料配信してるから皆んなで見て、感想言おうぜ 1話:藤原書記のパンツ回 https://youtu.be/yjUISl849bk 2話:藤原姉妹が水鉄砲で服が透け透けになる回 https://youtu.be/S-s7hVh5ZUk 3話:催眠術にかかった、かぐや様回 https://youtu.be/CRBK0DiXGa4 4話:ミコちゃんむっつり回 https://youtu.be/D35NxAMee5Q 5話:石上とつばめ先輩が体育倉庫で閉じ込められる回 https://youtu.be/2tWcNFOJGRg 6話:かぐや様と早坂でブラを買いにいく回 https://youtu.be/crKEjT2rUj4 7話:白銀妹のお風呂回 https://youtu.be/r7wYdFJNlzA 個人的には7話の白銀妹回が同人って感じで良かった真面目系クズなヒモ男の絶妙なリアルさほろ宵セレナーデ 玉置勉強兎来栄寿顔は良いのに社会生活を送るのに少し向いてない若い青年が、ダブルワークの女性に体目当てで養われる物語。 絶妙なのは、青年が基本的な気質は真面目であるにも関わらず、純粋に仕事ができないのとコミュニケーション能力にも長けていないことで、自分にもっとできることはないかと日々罪悪感を覚えながらヒモ生活を送るところです。女に稼がせて自分は悠々自適、というヒモとは一線を画します。 しかしながら、そんな中でもナチュラルなクズっぷりも各所で発揮していき、総体として表出する人間らしさのリアルな描写に感じ入ります。 単巻で綺麗にまとまっており、読後感はとてと良いです。夜の街に漂う世の中の酸い・甘いをしみじみ味わいたい方にお勧めです。 巻末で触れられている、ゴリラスロウ名義での『ツインズシング』も面白いのですが、玉置勉強さんはこういったテイストの作品で一際輝きを放むと感じます。 勤め先のバーで起こる、「ワリヤス」に頼み忘れてドリンクが足りなくなってしまうことや、少し空気の読めない客への対応など、バー的なお店をやっていた身として共感を覚えるシーンも多々ありました。ハルとアキの同居生活、続編春と秋と奏ちゃんと。 むんこnyaeなるほど、あとがき読んで知りましたが元々同人誌として出していた作品なんですね。この作品のメインキャラ・奏ちゃんは商業誌では絶対に主役には置かないタイプなんだそう。 前作「春と秋について」の続編で、ハルとアキの同居生活に、あることがきっかけで不登校になり他人と関われなくなった少女が加わる1週間を描いてます。 傷ついて自分の殻に閉じこもった子どもに、常識を押し付けたり人格を否定するような大人がいなくてよかった。父親も思い切って他人に頼ったからいい結果につながった。奏ちゃんと直接関わることはなかったけど、須賀さんがかなりいい仕事してくれてます。 須賀さんの「いくらでも逃げていいって思いませんか!?ただそのことに自分で気付かなきゃ意味がないんです」という言葉が印象に残っている。 10巻読んで、ますますハマる血の轍 押見修造六文銭※ネタバレを含むクチコミです。甘酸っぱい青春×サスペンス青年少女よ、春を貪れ。 山田シロ彦六文銭青春時代恋愛カースト最下位みたいな男はすべからく初恋こじらせ系男子だと思っているのだが、かくいう自分もその類で、本作が語る初恋とは?の内容がビシビシ古傷をえぐってきます。 年食ってくると青臭いものが、気恥ずかしさと慣れ(その悩みはすでに自分にとって1万回目のループだ、的な)で、飽きも含めて受けつけなくなってくるのですが、本作は久々に良い感じに共感をえました。 また、青春群像劇だけでなく、ヒロインの謎の死を追う感じで、サスペンス的な要素がまたそうさせるのだと思います。 初恋も、謎といえば謎ですからね。 あの時の熱狂とかは、今思うとなんだったのか?と。 事件とともに、自分の初恋を再認識していく過程は、なかなかおもしろい試みだと思いました。 はやくも、続きが楽しみです。久しぶりの良作人類を滅亡させてはいけません 高畑弓 蒲夕二名無しこの手のジャンルの中ではピカイチ!表情がコロコロ変わるリリンちゃん可愛いし、これから色々と成長が楽しみ! エロの先にピュアがありそうなラブコメ♡ #1巻応援だぶるぷれい ムラタコウジ名無し表紙が少女漫画の女の子みたいにキラキラしてるので本屋の新刊コーナーで目に付いたけどムラタコウジ先生の作品だと気付くまで時間がかかりました(笑) 野球部ではタマヒロイなんてあだ名で呼ばれていた冴えない主人公・広井玉緒と学年イチの美少女でソフトボール部のエース・穂村蘭がそれぞれの両親の再婚によって同居することになるのですが、そんな事情を知らないうちにエロシーンから始まるのでびっくりしました。弱みを握られた主人公は蘭から「奴隷」と呼ばれエッチなことを強制されるようになるのですが、蘭は主人公が嫌いなのではなく大好きなのでは…?と感じさせるシーンが度々あるのが気になるところです。 割とエロエロな内容ではありますが、その先にものすごいピュアが隠されていそうな予感がします!作者の私信が漫画になってるけどそれが一番よかった愛を喰らえ!! ルネッサンス吉田名無しルネッサンス吉田先生の代表作といえばこれなのかなと思って読んでみました。古い花街の風俗店で店長をしている百花の話が中心になっていますが、百花の祖母の若い頃の話だったり、百花の店で働いてる優美の話もあります。優美の話にはタイトルに「私信」と付け加えられていたり、優美がこの漫画を描いたというラストになっていたので、作者自身の体験がモチーフになっているのかなと思いましたが、どれくらいの割合で事実なのか創作なのかは分かりません…。でも私は優美の話が一番好きでした。変態のユートピアには住みたいとんでもないオヤジ【同人版】 WataruStudio野愛でっかいネコとか変態とか出てきておもしろかったです。 くらいの語彙力喪失した感想しか出てこないのです。 あらすじを説明しようにも難しいのです。 主人公はマックスという男に剣術とかなんやらを教えてた先生で、変態だからマックスを盗撮してて、閉め出されて金玉のお姉さんに会ったり殺されてグミになったりアイドルになったりするけどなんか闘って変態に勝つ?みたいな話? 何を言ってるかわからないと思うけれど、本当にこんな話です。 マウスで絵描くのがうまいやつイラストみたいな絵柄が絶妙で癖になります。 マックスと先生の薄い本はちょっとだけ欲しいです。 でっかいネコとか変態とか金玉のお姉さんとか出てきておもしろかったです。 いい同居マンガだな春と秋について むんこnyae対人恐怖症の版画家・ハルと、彼と芸大生時代に知り合ったけど今はサラリーマンをやっているアキの、ほのぼの、時々、ヒリヒリな同居物語。 恋愛関係では全くないものの、口は悪いけど心根は優しいアキに依存しているハルと、アーティストとして評価されるハルに複雑な感情を燻らせるアキ。相性がいいのか悪いのか、一緒にいるのが当たり前になっていて、いわゆる普通の生活とは違うけど、このふたりがバラバラになったら何かが崩壊する様な脆さもある。絶妙な距離感と関係性を保ちながら、結果的にこれがベストバランスなんだなと納得するかんじ。 続編が最近出たので、まず前作を読んでみたらものすごくいい同居マンガでした。警眼、最新話を読んで警眼ーケイガンー 早坂ガブ名無し※ネタバレを含むクチコミです。小学生男子らしさ全開の弟のキャラが最高転がる姉弟 森つぶみかしこ脚本家の木皿泉さんの帯文が目に入り本屋でジャケ買いしました。正直に言うとなんとなく買ってみたくらいの気持ちだったので「こんなに面白いとは…!」と衝撃を受けて今急いで感想を書いている次第です。木皿泉さんでピンとくる方は読むべきだと思いますよ!そのままドラマ化して脚本を書いて頂きたいくらいピッタリです。いわゆる普通の女の子である高校生の主人公と父親の再婚相手の連れ子である義理の弟が一緒に暮らすところから物語が始まるのですが、小学生男子らしさ全開の弟のクセの強いキャラが笑えるしほのぼのするし最高でした!まだ1巻しか出ていないので多くを語るべきではなさそうですが、絶対に2巻も買うことを断言します!! デザイン会社経営とマルクス主義青木雄二物語 青木雄二プロダクションhysysk『ナニワ金融道』の名前はもちろん知っていたが、基本的にお洒落なマンガしか読まない私は完全にスルーしていた。 ある時誰かのツイートで、青木先生がデザイン会社を営んでいて、書体の指定について話をしているコマを見て、「これ読まなあかんやつやん!」となって読んだのだが、めちゃくちゃ面白く、強烈な思想が反映されていて背筋が伸びる作品だった。 仕事に対する姿勢、資本主義に対する態度、逆境での振る舞いなど、ここまでやれるし(やりたくないけど)泥臭くやり抜こうとする人間を決して人は見放さない。世の中の理不尽なルールに対して、そのルールで戦って勝った上で物申せるのは本当にかっこいい。 私も自分の会社がどうにかなってしまったら資本論を読んでマンガを描こうと思います。最強タッグが描く最強の2人トリリオンゲーム 池上遼一 稲垣理一郎六文銭端的に言ってすごく好きです。 GAFAに代表される世界的IT企業(それに付随する大金持ちの創始者)は米国ばかりですが、日本でもやれるんだ!という夢と希望がつまってます。 池上遼一が描くとんでも主人公好きなんですよね。 これと、「Dr.STONE」「アイシールド21」の原作稲垣理一郎の予測のつかない展開があわさって、 疾走感あり、ド派手な描写ありで、読んでいて気持ちいいです。 また、生き馬の目を抜くIT業界の速度とマッチしてていいですね。 まだ、話数少ないのですが、経済・政治・業界などがからみ、大人の極上エンタメとしておすすめしたい作品です。マル暴おんな刑事ビッチによるトンチキ・バトルアクションが最高マル暴おんな刑事ビッチ 篠原とおる 原麻紀夫名無し※ネタバレを含むクチコミです。 諸行無常の響きあり狂人関係 上村一夫野愛天才浮世絵師・葛飾北斎という圧倒的な存在を軸に、弟子・捨八や娘・お栄らの生活を描いた作品。 捨八と彼を取り巻く女達の姿が艶っぽく、移ろいゆく四季と相まって心を掻き乱されるのです。 捨八への想いを内に秘めたまま彼を見守るお栄と、派手好きで大胆なお七、正反対のような女2人がなんとも魅力的。 どちらも激しくて悲しくて、どうしようもないくらいに「女」として描かれています。 個人的に一番感嘆したのはお栄の手の描写です。冬は北斎や捨八の世話を焼く手があかぎれだらけになり、だんだん暖かくなるにつれてもとの白い手に戻っていく。綺麗になった頃にはまた厳しい冬がやってくる。 季節の移り変わりとともに、お栄という女の強さと儚さがこの描写に凝縮されているように思います。 手が綺麗になっても、男と女が関係を持っても、浮世絵が完成しても、終わりに向かっているだけである。失われていくだけである。 激情に満ちていながらも、根底に流れる諦念のようなものが美しく儚い作品でした。純文学に出会えました。 決して理想的ではないけれど捨八に惹かれてしまうのは女の性だし女の業ですね。狂おしいほど好きです、捨八。ドライビングドクター黒咲の最新話を読んでDriving Doctor 黒咲 神尾龍 ユウダイ 福本祐一名無し※ネタバレを含むクチコミです。<<348349350351352>>
『漫画ルポ 中年童貞』などでもお馴染みの中村淳彦さんが、東洋経済オンラインで「貧困に喘ぐ女性の現実」と題した2016年からのシリーズ連載で1.2億PVを突破した記事を書籍化した『東京貧困女子。―彼女たちはなぜ躓いたのか』をコミカライズした作品です。 その後、筆者の中村淳彦氏は『新型コロナと貧困女子』という本も上梓していますが、このコミカライズに当たってはコロナ禍も非常に意識されていてコロナ以前・以後が明確に描かれています。 連載時のように数話につき一人の人物にフィーチャーして語るという内容ですが、様々な現代の地獄絵図が描かれます。 一番最初の「広田優花」から、国立大学の医学部に進学しながらも親から金銭的援助が受けられないという状況で奨学金制度という名の多額の借金を背負い、普通のバイトでは稼ぎも時間も足りないのでそちらの道へ進み、客である中高年男性から「楽して稼ごうなんて良くない」と説教されるという吐き気を催すような構図が描かれます。買われる女性と買う男性は、視点を引いてみれば格差社会における強者と弱者という構図で、弱者はもっと強者に怒って良いはずなのになぜか強者が訳知り顔で弱者を糾弾し、あまつさえ自己責任だなどという歪んだ構造は是正されていかねばなりません。 別に、ブランド物を買い漁って贅沢したい訳でも何でもなく、成人もしていない女の子が、普通に大学に通い普通に勉強して普通に部活をしたいという極当たり前の欲求を叶えるために、望まぬ道に身を堕とす様は読んでいて酷く居た堪れない気持ちになります。小田原愛さんの描く女性がとてもかわいらしく、その一方で気持ち悪いおじさんも十全に描いていることもあって臨場感たっぷりです。自分の意思としては絶対にやりたくない行為を、お金のためにやらされる苦しみ、そしてやってしまった後の強い後悔と不快感が痛いほど伝わってきます。 とりわけ日本では奨学金制度は度々問題として取り沙汰されますが、高等教育を受けるために裕福な家庭に生まれなかった人は身も心も磨り減らさねばならない状況というのは絶対に間違っています。世界でも圧倒的な少子高齢社会なので全体的に見て衰退していくのは避けられないとしても、そうであるからこそ尚更教育には国の予算を割いて然るべきだと思います。 おそらく、こういう状況を想像もできない政治家や上の世代の人も多いことでしょう。お金に困ったことがない人、大学で全然勉強せず大学は遊ぶところだと思っている人……そういった人たちにこそ、この本を読んで現実を知って欲しいです。