HaHa

やっぱり母は偉大だった

HaHa 押切蓮介
六文銭
六文銭

『猫背を伸ばして』『ピコピコ少年』などで著者の作品にちょいちょい出てくる作者のお母様のお話。 パンチパーマ姿で口うるさく、破天荒ながらも、 時折真理をついてくる金言の数々に胸うたれ、 「押切蓮介の母」ファンも多かったと思います。 実は、 私もその一人です。 本作の内容は、母の若かりし頃のお話。 意外にも母は、父親は警察署長、母親は老舗旅館の女将の娘という、 みるからに良いところの家育ち。 躾に厳しく、それが息子である著者にも口うるさくなっている部分だったのかと納得しました。 母親の母、著者にとっては祖母にあたる方から、連綿と続く人生哲学ともいえる価値観は純粋に良いなぁと思いました。 そうやって、行動指針、習慣は受け継がれていくんだなとシミジミ思いました。 ネタバレになるので詳細は控えさせていただきますが、 家庭環境など、なかなかの波乱万丈な人生で、結果として何事にも動じない、ほろ苦い「人生の味」を滲み出すようになったのかと納得できます。 最後の母の手紙(おそらく直筆)は、 その人生の過程を想像し涙を誘います。 なにはともわれ、母(母の母も)は偉大だと痛感しました。

猫背を伸ばして

押切蓮介の自伝的作品

猫背を伸ばして 押切蓮介
六文銭
六文銭

押切蓮介氏って多才だと思うんですよね。 現時点で代表作である『ハイスコアガール』のような青春群像劇、『でろでろ』のようなホラー✕ギャグを融合させた作品、『ミスミソウ』のような復讐劇、『焔の眼』のようなファンタジーバトル。 などなど。 ギャグベースからシリアスまで、本当に色んなジャンルの作品を世に出し続けておりますが、本作はその中の1つ、『ピコピコ少年』と同系統の自伝的なエッセイ作品。 漫画家になる前に、バイト先やら私生活やら何やっても報われなかった日々をシニカルたっぷりに描いております。 本作で著者がよく使う「俺クオリティ」という表現が出てきます。 不幸な出来事が、まるで自分にだけ頻繁に起きてしまうように感じ、 心のカンシャクを起こす状態のことをさします。 例えば、文化祭の日に限って熱を出すとか。 皆できるのに一人だけできないとか。 なんとなく共感できてしまうのが悲しい。 しかし、そんな陰惨な気持ちをふっとばすのが、著者の「母」の存在。 容姿こそパンチパーマで気合入ってますが、いざという時、作者の支えになっている感じがとても暖かい。 作者の母ですが、まるで自分の母親のような、 否、皆の母ちゃんな感じがします。 タイトルも母の言葉のようで、人生は辛く苦しいことは多いのですが、それを糧に前を向いてシャンとしたくなるそんな1冊です。 自伝的作品ですが、ただの著者のファンアイテムではなく、 人生にちょっと疲れた方に読んでみてほしいです。

ブラックサッド

マンガ家にファンが多い(気がする)海外マンガ

ブラックサッド 大西愛子 ファン・ディアス・カナレス フアンホ・ガルニド
ANAGUMA
ANAGUMA

メビウスとかマイク・ミニョーラみたいになんとなく「日本のマンガ家のあいだで名前が通っている海外マンガ(家)」ってのがあると勝手に思ってるんですけど『ブラックサッド』はその中ではまだまだ知られていないとさらに勝手に思っています。なので今日このクチコミを読んで知ってほしい。 マンガ家に人気の理由の一端はページを開いてすぐわかるんですけど、作者は元ディズニーのアニメーターでとにかくべらぼうに絵がうまいです。 その絵のうまさも、正確な形を描き出すデッサン力、演出に合わせた色彩感覚、決まりまくった画面構成(レイアウト)…と、もう絵を描く人だったら喉から手が出るくらい欲しい物が全部網羅されています。 まず動物擬人化ものって技術がないとどうしてもコミカルにやりがちというか、生き物の構造を無視した描き方に逃げちゃうことが多いというか…写実とデフォルメのバランスが難しいジャンルだと思うのですが、本作の場合は動物がきちんと描けるひとなんだなというのが一瞬で理解できます。 海外マンガに慣れてない人が敬遠しがちなフルカラーも色合いが水彩ぽくてソフトですし、各場面に合わせた演出としてコントロールされているので違和感なく読めるんじゃないかなと思います。「マンガを読む」という行為を邪魔しない、むしろ上手に手助けするような色使いがされています。 色合いとダブルで効いているのがパキパキとしたカメラアングル。作品のハードボイルドなテイストにすごく合っていて、この辺りも映像畑出身の方の上手さだな…と舌を巻いてしまいます。 …とダラダラと書いてきましたがひとまず試し読みで見てほしい作品です。海外マンガ、「百聞は一見にしかず」タイプの作品が多いですが、そのなかでも『ブラックサッド』は特に「見たらわかる!」度が高いマンガだと思うので…。