百木田家の古書暮らし

三姉妹と看板建築 #1巻応援

百木田家の古書暮らし 冬目景
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

この建物見たことある気がする……三姉妹の住む古書店兼住宅を見て思う。 しかし少しネットで探ってみても、同じ建物はヒットしない。……そう「看板建築」って言うんだったな。店舗部分だけ洋風にした家屋。ネットには良い感じの古建築の写真がいくつかあるが、同じ物は見つけられなかった。幻だったのだろうか……。 三省堂の店舗が建て替えになると聞いた。また少し変わる風景。思い出の中でうろ覚えになる街の姿。そんな場所で、慣れない古書店業に右往左往する次女、彼女を支える長女と三女の三姉妹。リアリティを感じられる範疇での三人の冒険譚は時にのんびり、時にスリリングで楽しい。古書店業の業務も興味深い。 隣の同業者の従業員と何か縁のある次女、昔の恋を忘れられない長女。そしてDV男と離れられない同級生が好きな三女の想いは、殊の外強烈だ。恋と古書店サバイバル、さらにお隣の秘めた思惑が不穏さを醸し、気持ちがざわつく第1巻。 そして古書の町である神保町は、出版社・カレー、そして古い建築のある場所。この作品には街並みがそのまま描かれて、雰囲気も良いし、行ったことのある人は盛り上がれる事請け合い。 私が知っている"ような気がする"建物で、三姉妹が生活している事を空想する。本の中に"変わらない"神保町とイキイキと動く「空想の」彼女達を封じ込めた、と考えると、虚実入り混じった記憶のバグを泳ぐ様な不思議な感覚があった。

人生山あり谷口

人生とりあえず登るしかないもんね

人生山あり谷口 谷口菜津子
野愛
野愛

生きるっていいことばっかりじゃなくて、めちゃくちゃ頑張って疲れてボロボロになってなんとかたどり着いた先にあるものがめちゃくちゃ素晴らしいとも限らない。でもまあよかったような気がするなあ楽しかったっちゃ楽しかったかなあ、みたいなことの連続だ。 それでも一度幸せを味わってしまうと、また味わいたいって思ってしまう。 谷口先生の人生も登山もまさにそんな感じ。 辛いことが重なって眠れなくなって、でもなんでもない顔をしながら舐めすぎなくらいの軽装&無知で山に登る。 もう二度とやりたくない!って思ってもいいはずなのに、周囲の人を巻き込みながら知識を身につけながら再び山に登る。 なんでも面白く作品に昇華できちゃう谷口先生だからできることかもしれないけれど、登山って人生だなあなんて思ってしまった。 イラストらしくデフォルメされてるのに妙に生々しい自然、くだらない日常会話の中に見え隠れする人間讃歌、生きるとはなんと辛く馬鹿馬鹿しく幸せなことか。 共に山を登るメンツの豪華さも霞むくらいに人生とは何かが描かれています。でも霞まないくらい豪華です。 人生って面白いね。

与えられたスキルを使って稼いで異世界美女達とイチャイチャしたい(コミック)

なろう異世界チーレムスローライフ小説が絵師ガチャSSRを引いた件

与えられたスキルを使って稼いで異世界美女達とイチャイチャしたい(コミック) 阿見阿弥 レンキしゅん
えっちな名無し

いやもうそれ以外何を言えと… 原作はタイトル通りというか、ノクターン連載の異世界転移でチート能力でハーレムなスローライフなご都合主義なイチャラブ物で大変にエロい作品なのだが… コミカライズに際してなんと絵師が、大変にやーらかそうでかわいいおにゃの子と、えっちなおひげ(歪曲的表現)に定評のある女流エロ漫画家、井ノ本リカ子先生という、大当たりを引き当てているのだ。 一応年齢制限はついてないため、女性のえっちなおひげ(歪曲的表現)は描かれていないし、この世界では貧乳の方が人気という設定なのでヒロインは巨乳美女ばかりで、井ノ本リカ子先生ならばスレンダー美少女でも大変にかわいいのがモブキャラでしかないというのは残念な所だが、なにせポプリクラブ休刊後は女性向けBLが多かった方なだけに、男性向け作品の連載というのは正に待ち望んでいた作品である。 しかも原作は結構な長編なので、どこまで描くかによるが長期的に描いてくれるという期待感も非常に大きい。 内容自体は割とノクターンノベルズではよくあるチーレム物というか、異世界に転移してチート能力で稼いでスローライフしつつ、美女を身請けしたり慕われてのハーレム物で、世界観やエッチ描写は原作の文章に比べるとやや淡泊にも感じるが、青年漫画であればやむ無しだろうし、この絵であればそんな淡泊さなんて全く気にならない。 失礼ながら原作小説のコミカライズという部分より、井ノ本リカ子先生の男性向け連載作品という部分が自分の中で非常にウェイトが多いのだが、激しいバトルや陰謀などの要素も薄く、安心して異世界スローライフを楽しむ日常エロ物語として十分におススメできる内容、どうか長期連載して欲しい。

真夜中の訪問者 -ハトリアヤコ作品集-

4月お薦めの解像度高め短編集 #マンバ読書会

真夜中の訪問者 -ハトリアヤコ作品集- ハトリアヤコ
兎来栄寿
兎来栄寿

注目の新鋭、ハトリアヤコさんが近年に『アフタヌーン』、『ビーム』やWeb等で発表された作品を集めた短編集です。 家賃1万円の部屋に移住したら幼馴染の生霊が現れるようになった「真夜中の訪問者」は、切れる縁の一方で、繋がる縁もあるということにしみじみと思いを馳せさせてくれます。 絶妙な距離感の高校生の日常が描かれる「根部くん干垣くん」は、自然体が気持ち良くスッと入ってくる掌編。8人しかいない野球部の試合を休んで、本初子午線を見に行くというシチュエーションが好きです。 小学校の同窓会に行くコンビニバイトの女性を描く「カタツムリ溶かす」に宿る若気の至りや歪んだ感情は、人によっては強く共感し刺さるところでしょう。 学校内カーストでは下の方でありながら、とても仲の良い友達との悲喜交交の日常が切り取って呈される「鈴木と山田。」は、それぞれのワンシーンの解像度の高さが光ります。同じクラスの退学したヤンキーの彼は今どうしているのかな……。 田舎の女子大生に生じる微妙な感情が紡がれる「花のつぼみ」には、言語化し難いところを上手く掬った『ちーちゃんはちょっと足りない』を髣髴とさせる部分もあります。 「ミモザより」は読んだ後に心が軽くなり、そしてもう一度最初から読み返してしまう物語。私も3月にミモザを買ってドライフラワーで家に飾ってあります。 「日常ポリッジストーリー」は一番最近の作品ですが、今だと「タコ○○(ピー)」を思い出さざるを得ない宇宙からの来訪者が登場するお話。読了後の爽快感がとても素敵で、更なるマンガ力の高まりも感じられる作品です。 帯には幸村誠さんの「この方の描く漫画には、人の心をかきみだす何かがある!」というコメントが寄せられていますが、良感情・悪感情どちらのベクトルにも引っ張ってくれる確かな力量があり、今後のご活躍もますます楽しみです。