おおきくて窮屈なこの世界で。

少年は彼方の地で居場所を見つける。 #1巻応援

おおきくて窮屈なこの世界で。 あすかいくに
兎来栄寿
兎来栄寿

「君はたまたまここになじめなかった  それだけのことさ  なら別の場所に行けばいい  ″生まれた場所″(ここ)は世界の全てじゃない  居場所を作るんだ」 いつの時代にも、世界のどこの場所でも、自分の居場所がなくて苦しんでいる人はいます。そんな時に、こんな言葉を掛けてくれる人がいたら。 時は大正9年。大阪の船場で自分の居場所の無さに喘いでいた少年が、とあるきっかけでイタリアへと渡りエチオピア人の少年、ナポリの少年とバチカンで生活を共にして新たな居場所を得ていく物語です。 全く新しい環境で文化も規律も何もわからない所で始まる新生活を、違う時代に生きる私たちは主人公と同じ目線で興味深く眺めることができます。そこにはもちろん苦労もあり、アジア人であったり肌が黒いということであったりで謂れのない迫害を受ける時代の雰囲気も存在していますが、天真爛漫な主人公の性格が周りの人々にも影響を与えながら良い方向へと進んで行く感触が気持ち良いです。 煌びやかなベネツィアや荘厳さに震えるほどだったバチカンに行った時のことを思い出しながら、またイタリアに行ってジェラートを頬張りたいなと思わせられました。 世の中には幸せで愛しい窮屈さもある。そんな窮屈さを感じられる瞬間、それを生んでくれる周りの人々を大事にしたいものです。

くらまし屋稼業

骨太な時代劇、されどスタイリッシュで現代的 #1巻応援

くらまし屋稼業 ユウダイ 今村翔吾
兎来栄寿
兎来栄寿

魅力溢れる主人公が、バッサバッサと悪党を斬り倒していく。正に時代劇の真骨頂と爽快感がここにあります。 本作の主人公・堤平九郎が営むのは表向きは飴屋、しかし真の姿は「くらまし屋」。高額な報酬と引き換えに人間を「くらます」ことを生業としています。手練れが跋扈する江戸の街でそんな芸当を可能にするのは驚くべき彼の設定。現代的に言えば「チート」とも表現できるその部分はぜひ読んで確かめてみてください。男の子はこういうの大好きなんですよ。 また、本作は『Driving Doctor 黒咲』でも秀逸だった、ユウダイさんの画力の高さが非常に光ります。男は格好良く、女の子はかわいい。そして、江戸の街の風景や小道具までが非常に写実的に描かれていて目だけでも楽しめます。 ヒロインの七瀬はかわいいだけではなく頭も切れて参謀役となっているところも非常に魅力的です。派手な殺陣もありつつ、頭脳的にピンチを切り開いていくシーンもあり、抑揚のついたエンターテインメントとして楽しめます。 非常に上質な時代物で、このまま実写化されてもまったくおかしくないなと思える作品です。