花は口ほどにモノを言う(読切)

主人公の傷つきやすさの表現がすごい

花は口ほどにモノを言う(読切) 追本
天沢聖司
天沢聖司

主人公の傷つきやすさがすごく良く表現されて上手いなぁと思います。 「お姉ちゃんは上位だったのにあんたは似なかったのね」から始まる家族の言葉。発言者の口元だけが描かれ背景が真っ黒なことから、悪意がある言葉なのだと思いきや、主人公の大声に驚いた家族の表情を見れば、全く主人公を攻撃したり貶める意図がないことがわかります。 本当になんてことないただの家族の会話なのですが…思春期はこういう言い回しにどうしても傷ついてしまいますよね。 あるあるな光景を切り取る視点の鋭さも、それを効果的に見せる表現方法もとても素晴らしかったです! またこの作品はカラー版とモノクロ版が存在しますが、カ植物が本当に美しいのでぜひカラー版を読んでみてほしいです! ▼ツイシリ公式Twitter(カラー) https://twitter.com/twi_sirius/status/1334059942735560705?s=20 ▼マガポケ掲載ページ(モノクロ) https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13933686331748151697 (余談) この漫画を読んで、これとは別に頭から花生える漫画あったなぁ〜とマンバの思い出せないマンガで調べたところ、『ひらりふたり、花の国』でした(自己解決) こちらもいい作品なのでぜひ。

【連載版】人生崩壊【タテヨミ】

人生崩壊を食い止められるなら、何をする?

【連載版】人生崩壊【タテヨミ】 T.Jun
野愛
野愛

久しぶりに再会したいじめられっ子の森といじめっ子の赤城。 逃げようとしてうっかり高所から落ちたと思ったら、森の体に赤城の精神が入った状態で高校時代に転生してしまう。 赤城は元の世界に戻るべく、森の人生を崩壊させた事件を解決していく…というお話。 あらすじだけを読むと「???」となってしまいますが、これがまた面白い。 いじめっ子といじめられっ子が入れ替わるわけではないので、赤城は過去の自分自身にいじめられることになる。 森がやり返すわけではなく(森自身は人魂みたいに赤城の近くを漂ってる)、赤城が自らの行動を反省したりやり直すことで未来が開かれていくという構図。 いじめっ子がただただ改心していくシリアスなお話ではなくポップなノリのギャグ漫画でめちゃくちゃ笑えるのもよい! 森の親友でこれまたいじめられっ子の卓や、森に恋するクラスの女王愛梨、校内の風紀を取り締まる菊池、赤城の舎弟やまじんなど、いじめられっ子もいじめっ子もそれ以外もみんな個性的で愛すべきキャラクターだらけ。 だからこそ、いじめ描写の残酷さが際立つ。 いいところも悪いところもある普通の愛すべき人間が、理由もなく暴力を受ける悲しさ。理由もなく暴力を振るう歪さ。 話せばわかりあえるのに、人を好きになったり笑ったりできる同じ人間なのに、そう思ってしまうからより恐ろしく悲しく感じられる。 しかもいじめ描写は作者さんの実体験がもとになっているそうで。もう言葉も出ませんね。 森と赤城のように人生をやり直すことはできないけれど、生まれ変わったつもりでファイティングポーズをとったり逆に拳を下げたりはできるかもしれない。 さんざん笑って少し立ち止まって、人生を見つめ直せるかもしれない作品でした。

プロレス・スターウォーズ

これは真のオールスター戦、夢の「スターウォーズ」だ

プロレス・スターウォーズ みのもけんじ 原康史
さいろく
さいろく

ワールドプロレスリング(番組)をご存知のプロレスファンの皆様、こんにちはこんばんは。 なんとワールドプロレスリングの実況解説を行っていた桜井康雄さんのペンネームが本作の原作者である原康史なのだそうです。 wikipediaによると _________ 実際は作画担当のみのもけんじが全てのストーリーを考えており、桜井康雄はクレーム対応のために名義を原作者として貸していただけである。これは桜井が嘗て上梓した小説『プロレス太平洋戦争』の基本設定を採用して描かれた漫画だからである。 _________ とのことなのでストーリーはみのもけんじ先生が考えた夢の対決にプラスして、桜井さんが週刊ゴングで連載していた架空の小説をベースとした、超ファン目線のスペシャル妄想オールスター合戦となっています。 好きな選手をとことんまでカッコよく、かつ英雄として仕立てた文句なしのプロレスファン妄想話。 こういうのをプロレスファンは妄想したり飲みながら語ったりするのが楽しくてしかたなかったりするんですが、それをしっかりと漫画に仕上げてしまった。 そして怒られないように原作者としてゴングでトンデモ小説を連載していた実況の桜井さんを立てた。 完璧です。 あとは「俺が考えた最強のプロレス番付」をとことんまでかきあげるだけ! なんと11巻までしっかり存在していて…こんな作品が電子で読める(一部無料で公開されてた)なんて素晴らしすぎる。 プロレススーパースター列伝は「史実」ですが(無粋なツッコミは不要) こちらのプロレス・スターウォーズはれっきとした妄想、「フィクション」であります。 フィクションでもプロレスは面白い。それはキン肉マンでも証明されてますからね。