あらすじある日、病院を訪ねたら今日子の姿が消えていた。義父が次郎に内緒で今日子を信州の病院に転院させたのだ。屈辱と、口惜しさと、喜びと、安堵と、複雑な感情が胸をかけめぐる次郎。そして今日子のいない生活に漂う、心の芯から冷えていくような孤独。今、二人の愛は引き離された――。
「愛はいつもいくつかの過ちに満たされている。もし愛が美しいものなら、それは男と女が犯すこの過ちの美しさにほかならぬであろう。そして愛がいつも涙で終るものなら、それは愛がもともと涙の棲家だからだ。」 冒頭から哲学的な文章で始まるこの作品。読んでいくうちに不思議と引き込まれる上村ワールド。 私はこの作品で初めて上村一夫作品を読みましたが、一つ読むだけでどっぷりハマること間違いなし。この絵と話のバランス、この人の漫画は別格です。 自分を確立させるために必死に主張する次郎と今日子の愛の物語。 同棲するということと、男と女の境界。草食系男子にはないであろう古い形の男性像ではありますが、親近感が持てます。 上村一夫の世界への第一歩としてもオススメです。