1878年(明治11年)、動乱の幕末は遠ざかり、長崎では海外貿易で莫大な利益を得る商人が多く現れはじめていた。西南戦争で親を亡くした少女・美世(みよ)は奉公先を求めて鍛冶屋町の道具屋「蛮」(ばん)の扉を叩くが、そこで彼女を待っていたのは、店主・小浦百年(こうら・ももとし)がパリ万博で仕入れてきた最先端の品々と、それらに宿るベルエポックの興奮と喧騒だった……ジャック・ドゥーセのドレス、ダニエル・ペーターのミルクチョコレート、シンガー社のミシン、セーラー服、エジソンの蓄音機、革ブーツ、眼鏡、幻灯機(マジック・ランタン)……先進と享楽の都・パリ渡来からやってきた“夢の品々”に導かれ、少女はまだ見ぬ世界へ歩み出す……
「君を10年以上ずっと恨んでいた。つまり…… 愛していたんだ…」きらびやかなパリの街で再会した日本の青年と碧眼の美女。再び動き始めた愛の時計は、やがて頽廃と破滅の時を刻み始め―― 1878年・長崎―パリ万博で最先端の品々を仕入れてきた小浦百年は、今度は日本の優れた工芸品を海外で販売するため渡仏を決意する。出発間際、美世から恋心を打ち明けられた百年だったが、彼の懐中時計には碧眼の美女の写真がしまってあり……。既刊大重版&各界から絶賛の嵐!! 明治ハイカラ・アンティーク浪漫、大注目の最新刊!! 【第20回(2017年)「文化庁メディア芸術祭」審査委員会推薦作品】【THE BEST MANGA 2017「このマンガを読め!」第4位(フリースタイル刊)】【ダ・ヴィンチ「絶対にはずさない!プラチナ本」掲載(KADOKAWA刊/2016年11月号)】【2017年&2016年「手塚治虫文化賞」ノミネート作家】
舞台は明治の長崎。西南戦争で親を亡くし、叔父の家で世話になることになった少女・美世。彼女には「触れた物の過去や未来の持ち主が分かる」という神通力があった。その能力を買われて、店主・小浦百年がパリで仕入れてきた最先端の品々を取り扱う道具屋「蛮」で奉公することになった彼女の物語。 当時の長崎の風景を丁寧に表現していたり、実在の人物も登場したりして、基本的には明治時代の雰囲気に忠実な作品なのですが、美世の"神通力"という設定もあり、若干のファンタジー感を漂わせながら物語は進み、そのなかで主人公・美世の人間的な成長が描かれていきます。序盤は"神通力"のファンタジー感もあって不思議な魅力のある作品だと思っていたましたが、巻が進むにつれて美世の人間的な成長を中心とした重厚なヒューマンドラマが描かれ、確かな魅力のある作品に変わっていきました。 また、実は美世の"神通力"にはある秘密が隠されているのですが、その秘密が明かされた時に美世の最も大きな成長が見られ、更にそれが最終盤になって活きてくるという、仕掛けの巧みさも兼ね備えています。 私は単行本を1巻から追っていたのですが、美世の人間的な成長と世界観の広がりを読み取れるため、また時間の流れを作品全体から感じられ、読み終わった瞬間また最初から読み始めたくなる作品なので、ぜひ全6巻まとめ読みで読破してほしい作品です。 全6巻読了。